98 / 200
第十五話 兄の条件
7
しおりを挟むその頃ティアは衣装選びをしていた。
煌びやかな娼婦達の衣装が綺麗で羨ましいと言ったら貸すから着て見せてと衣裳部屋へ連れて行かれた。
「これはどうかしら蝶の柄よ?可愛いでしょ?」
「こちらの方も似合いそう。ピンクの花柄。金髪が映えそう」
「この菫色の衣装はどうかしら?花火の模様がいい感じ。大人っぽいかしら?」
「大人っぽいのがいいの?ティア様。でも今にしかない魅力と言うのがあるのだからそこを前面に出さないと」
「今のままじゃ全然恋人は靡かないもの」
「ティア様に靡かない人って、ちょっと見てみたいわ。普通の男性ならまず靡くと思うのよね」
「そうよね、ちょっと想像できないわ」
衣装を交互に合わせるとやはり赤い蝶柄が似合う。姫の白い肌と金髪が良く映えて衣装が色気と華やかさを演出している。
「これがいいわ、あと髪を少し纏めて飾り蝶の髪留めを付けて、首飾りの宝石も付けましょう。緑がいいかしら」
「お化粧は?そんなに必要ないけどちょっと紅をさす位。―――ああ素敵!」
リイラとカレンに飾り付けられて楽しまれてしまった。
「なんて綺麗なの。これなら今すぐにでもトップの娼婦に上がれるわ」
「馬鹿ね、駄目よ?お姫様なんだから。でもなんて美しいの。皆に見せて回りたいわ。ねえちょっとだけ、部屋を出てみない?」
「そうよね、このまま着替えて元に戻るのは余りにも勿体無いわ。ちょっと誰かに見せたい。芸術は皆で楽しまなきゃ」
「まあいいわよ…」
二人に賞賛されたので部屋の外での反応も気になった。
三人はそろそろと部屋を出た。
明るい娼館の夜は静かに更けていく。
夜になっても娼婦を欲する男達は途絶えることはない。
「レィスティー」
「おや、まだ休んでいなかったの?アイカはどうしたのさ?フレイ」
「うーん、もう眠ったよ」
フレイが傍に寄って来てレィスティーをそっと抱きしめる。
「あのね、何度も言うけど私は経営者。娼婦じゃないよ?」
「知ってる。だからタダで抱かれてくれない?」
「ふざけんじゃないわ、私は娼婦より高いんだよ」
フレイはしぶしぶレィスティーを離す。
「全く今夜は別の理由で現れたと思ったら結局これかい?」
「いや仕事は仕事だよ。姫様は大切な護衛対象さ。うちの城に届けるまで気を抜けない」
「なら真面目に仕事しな」
「ここに連れて来たのはあの二人だよ、完全に不可効力だ。私のせいじゃない」
「どうでもいいよ、お陰で儲かったし」
レィスティーは勘定帳を捲る。いい客には違いない。
「レィスティー様」
娼婦の一人が焦った様子で入ってきた。
「大変です!お客様達が騒いでます」
「どうかしたのかい?」
「それが、娼婦を出してくれと。それが分からなくて…」
「うん?なんだというんだい?」
レィスティーは腰をあげてお客達の元へ向かう。後ろからフレイが付いてきたが気にする暇もない。
「お客様方、どうされました?落ち着いてお話になって下さい」
女主を見たお客達十数名はその場で膝をついていきなり懇願しだした。
「主様、お願いです!どうかどうかもう一目だけでいい、あの美しい女性を見せて下さい!」
「まるで月の妖精のような!いくら払ってもいい!話だけでもさせてほしい!」
「ここの秘蔵の女性ですか?いくら払えばお会いできますか?」
「お客様方、落ち着いて。どう言う事だい?今日出ている子達は全員居るだろう?」
娼婦が困ったように客達を見る。
「金髪の子のようなので全員連れてきて会わせたのですが皆違うと言われまして。でも他に金髪はいないし困ってしまって」
「お客様、どこか違う所の子では?そのような娘はここにはおりませんよ?」
「そんな事はない、すぐそこの庭にいたのを二階の窓から見つけたんだ!」
「私は外の窓から、廊下を歩いているのが見えた」
「私など廊下で一瞬すれ違った」
「……それじゃ、ここにいる娘だね。娼婦かどうかは分かりませんが正体を突きとめてみましょう。今日の所は他の娘達でご容赦くださいませ」
レィスティーは場を収めて、自室に戻る。
戻ると若い娼婦達が楽しげに話していた。
「……人の部屋で何してるんだい?」
「あっ、レィスティー様、見て見て見て下さい、どうです?すごいでしょう?」
「リイラ、カレン、何だい…‥…?」
「着物は私が選んだのよ、可愛く着飾ったでしょう?」
「お化粧と装飾は私よ、素晴らしい出来になったわ」
「―――――まあ確かに、すばらしい出来だね…」
ティア姫が完璧に娼婦仕様に飾られていた。
当人も褒められてまんざらでもない様子だ。
どうやら騒いでいたお客の求めていたのは彼女らしい。ともあれすぐに正体が分かってホッとした。
「完璧で素晴らしい出来だが、気がすんだら早く元に戻すんだよ?ここは娼館、そんな恰好しているとどこかの男に奪われてしまうよ?」
「ホントに美しい。元がいいから余計に。確かに君のこの姿は危険すぎる。すぐ着替えた方がいいな。護衛するから部屋に戻ろう」
真面目な顔で手を差し伸べるフレイをティアはじっと見た。
「―――――ちょっと待って」
「は、なにを?」
「あなた何でここにいるの?」
「え?は?……あっ…!」
下がろうとするフレイの胸倉をティアはすかさず掴む。
「まさかルウドもいるの?言いなさい、正直に吐きなさい!」
「うわああ、ひっ、姫、いますよ、来てますよ。離して下さい!」
「どこにいるの?…ちょっと、ここ娼館よ?ここにいるって事はまさか……」
「もちろん娼婦と一緒さ。娼館だからね」
「―――――――っ!どこよ!どこにいるの!そんなの許さないわ!絶対許さないわ!私のルウドに何させてんのよ――――!」
「うわああああっ、お、落ち着いて、落ち着いて下さいいいいっ!」
0
あなたにおすすめの小説
迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた
月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。
崖っぷち令嬢の生き残り術
甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」
主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。
その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。
ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。
知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。
清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!?
困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる