意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十五話 兄の条件 

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 その頃ティアは衣装選びをしていた。
 煌びやかな娼婦達の衣装が綺麗で羨ましいと言ったら貸すから着て見せてと衣裳部屋へ連れて行かれた。

「これはどうかしら蝶の柄よ?可愛いでしょ?」

「こちらの方も似合いそう。ピンクの花柄。金髪が映えそう」

「この菫色の衣装はどうかしら?花火の模様がいい感じ。大人っぽいかしら?」

「大人っぽいのがいいの?ティア様。でも今にしかない魅力と言うのがあるのだからそこを前面に出さないと」

「今のままじゃ全然恋人は靡かないもの」

「ティア様に靡かない人って、ちょっと見てみたいわ。普通の男性ならまず靡くと思うのよね」

「そうよね、ちょっと想像できないわ」

 衣装を交互に合わせるとやはり赤い蝶柄が似合う。姫の白い肌と金髪が良く映えて衣装が色気と華やかさを演出している。

「これがいいわ、あと髪を少し纏めて飾り蝶の髪留めを付けて、首飾りの宝石も付けましょう。緑がいいかしら」

「お化粧は?そんなに必要ないけどちょっと紅をさす位。―――ああ素敵!」

 リイラとカレンに飾り付けられて楽しまれてしまった。

「なんて綺麗なの。これなら今すぐにでもトップの娼婦に上がれるわ」

「馬鹿ね、駄目よ?お姫様なんだから。でもなんて美しいの。皆に見せて回りたいわ。ねえちょっとだけ、部屋を出てみない?」

「そうよね、このまま着替えて元に戻るのは余りにも勿体無いわ。ちょっと誰かに見せたい。芸術は皆で楽しまなきゃ」

「まあいいわよ…」

 二人に賞賛されたので部屋の外での反応も気になった。
 三人はそろそろと部屋を出た。





 明るい娼館の夜は静かに更けていく。
 夜になっても娼婦を欲する男達は途絶えることはない。

「レィスティー」

「おや、まだ休んでいなかったの?アイカはどうしたのさ?フレイ」

「うーん、もう眠ったよ」

 フレイが傍に寄って来てレィスティーをそっと抱きしめる。

「あのね、何度も言うけど私は経営者。娼婦じゃないよ?」

「知ってる。だからタダで抱かれてくれない?」

「ふざけんじゃないわ、私は娼婦より高いんだよ」

 フレイはしぶしぶレィスティーを離す。

「全く今夜は別の理由で現れたと思ったら結局これかい?」

「いや仕事は仕事だよ。姫様は大切な護衛対象さ。うちの城に届けるまで気を抜けない」

「なら真面目に仕事しな」

「ここに連れて来たのはあの二人だよ、完全に不可効力だ。私のせいじゃない」

「どうでもいいよ、お陰で儲かったし」

 レィスティーは勘定帳を捲る。いい客には違いない。

「レィスティー様」

 娼婦の一人が焦った様子で入ってきた。

「大変です!お客様達が騒いでます」

「どうかしたのかい?」

「それが、娼婦を出してくれと。それが分からなくて…」

「うん?なんだというんだい?」

 レィスティーは腰をあげてお客達の元へ向かう。後ろからフレイが付いてきたが気にする暇もない。

「お客様方、どうされました?落ち着いてお話になって下さい」

 女主を見たお客達十数名はその場で膝をついていきなり懇願しだした。

「主様、お願いです!どうかどうかもう一目だけでいい、あの美しい女性を見せて下さい!」

「まるで月の妖精のような!いくら払ってもいい!話だけでもさせてほしい!」

「ここの秘蔵の女性ですか?いくら払えばお会いできますか?」

「お客様方、落ち着いて。どう言う事だい?今日出ている子達は全員居るだろう?」

 娼婦が困ったように客達を見る。

「金髪の子のようなので全員連れてきて会わせたのですが皆違うと言われまして。でも他に金髪はいないし困ってしまって」

「お客様、どこか違う所の子では?そのような娘はここにはおりませんよ?」

「そんな事はない、すぐそこの庭にいたのを二階の窓から見つけたんだ!」

「私は外の窓から、廊下を歩いているのが見えた」

「私など廊下で一瞬すれ違った」

「……それじゃ、ここにいる娘だね。娼婦かどうかは分かりませんが正体を突きとめてみましょう。今日の所は他の娘達でご容赦くださいませ」

 レィスティーは場を収めて、自室に戻る。
 戻ると若い娼婦達が楽しげに話していた。

「……人の部屋で何してるんだい?」

「あっ、レィスティー様、見て見て見て下さい、どうです?すごいでしょう?」

「リイラ、カレン、何だい…‥…?」

「着物は私が選んだのよ、可愛く着飾ったでしょう?」

「お化粧と装飾は私よ、素晴らしい出来になったわ」

「―――――まあ確かに、すばらしい出来だね…」

 ティア姫が完璧に娼婦仕様に飾られていた。
 当人も褒められてまんざらでもない様子だ。
 どうやら騒いでいたお客の求めていたのは彼女らしい。ともあれすぐに正体が分かってホッとした。

「完璧で素晴らしい出来だが、気がすんだら早く元に戻すんだよ?ここは娼館、そんな恰好しているとどこかの男に奪われてしまうよ?」

「ホントに美しい。元がいいから余計に。確かに君のこの姿は危険すぎる。すぐ着替えた方がいいな。護衛するから部屋に戻ろう」

 真面目な顔で手を差し伸べるフレイをティアはじっと見た。

「―――――ちょっと待って」

「は、なにを?」

「あなた何でここにいるの?」

「え?は?……あっ…!」

 下がろうとするフレイの胸倉をティアはすかさず掴む。

「まさかルウドもいるの?言いなさい、正直に吐きなさい!」

「うわああ、ひっ、姫、いますよ、来てますよ。離して下さい!」

「どこにいるの?…ちょっと、ここ娼館よ?ここにいるって事はまさか……」

「もちろん娼婦と一緒さ。娼館だからね」

「―――――――っ!どこよ!どこにいるの!そんなの許さないわ!絶対許さないわ!私のルウドに何させてんのよ――――!」

「うわああああっ、お、落ち着いて、落ち着いて下さいいいいっ!」




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