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第十七話 伝記作家フレデリック=ネオ
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十七話 伝記作家フレデリック=ネオ
公爵子息フレデリック=ロレーヌには捜し物があった。
それはきっと生涯かけても見つからない、そう言う代物だ。
だがある時『ある』と知ってしまった。知ってしまったからには捜さずにはいられない。
沢山の文献を調べ、情報を模索する為にも作家と言う肩書を得た。
書いている内容は歴史の記述から想像したただの恋愛小説云々だが実はそうでないものもある。
小説の中にいくつかのキーワードを入れ、それを知っているという者達の情報を得るのだ。
今の所その成果は全くなかったが、これは長期的な戦略だと思っている。
ともあれ今日のフレデリックはご機嫌だった。
昨日やってきた隣国の姫が会いたいと連絡を寄こしてきた。
今日こそは色々と話を聞きたい。
マルス国の姫、彼女の国のロマンスは元より、魔女の話など。
フレデリックの探し物のヒントが彼女の話の何処かにあるかも知れない。
フレデリックは大喜びでお城のティア姫の元へ訪れた。
「おはようございます姫様、姫様からのお呼びなんて嬉しいなあ」
部屋にはティア姫とスティア皇子、騎士隊長のルウドと、フレイが居た。
「やあ皆さんお揃いで。何かお話があるとか?何でも言って下さい、不詳この私、分かることなら何でも話します」
「まあ嬉しい、フレデリック=ネオさん?昨日は知らなかったのだけど私、貴方に会いたかったのよ」
姫はにこやかに微笑みながらフレデリックの前に歩み寄る。
「私の名をご存知でしたか。嬉しいなあ」
照れるフレデリックにティア姫の右ストレートがさく裂した。
「――――――えっ?」
尻もちを着いて、あっけに取られるフレデリックの前で姫が憂鬱そうに騎士達に言う。
「ルウド、見てよ。やっぱり私の腕力じゃこの程度じゃない。これで何になるのよ?私の悔しさはこんなものじゃないのよ?」
「……いやそう言われても…‥」
「もういいわ」
姫は懐から何かを取り出すと素早くフレデリックの口にねじ込んだ。
「――――――えっ?」
「わっ、ひひひひひひ姫!そソソそれは…!」
冷酷な姫の目がフレデリックを捕える。
「――――――死んでおしまい!」
「――――――!」
「うわあああああっ、姫っ、駄目ですよ!殺しちゃいけません!まだ聞きたい事もあるのでしょう!」
「……そうだったわね」
姫は仕方なく銃をフレデリックの口から離した。しかし銃口がまだ向いている。
ルウド隊長が慌てて姫の傍に寄る。
「何でそんな物持っているのですか?渡しなさい。危険物ですよ?」
「それは北の国が所有する拳銃というもの。姫、どこでそれを?」
「もちろん北の国の皇子から取り上げたのよ?迷惑料に」
「……‥へえ…」
スティア皇子と騎士フレイが引いている。
ルウドが銃を姫から取り上げようとして姫と揉める。
「渡しなさい!姫が持つ物ではありません!」
「嫌だったら!私が手に入れたものなんだから!」
「うわああああ!頼むからこっちに銃口向けたまま揉めないでくれえええっ!」
フレデリックは慌ててスティアの後ろに逃げ込んだ。
「何なんだ?なんでだよおっ?」
「いや何か、君がご先祖様を愚弄したとかで、大変ご立腹だよ?」
「スティア…、覚えがないよ。私が他国の先祖の名なんか知るわけないだろう?」
「……うーん、そうなのかい?」
「とぼけるんじゃないわよ!」
姫の銃口がスティアに向けられる。
「……姫、危ない。フレディー、向こう行ってよ」
「嫌だあああ、僕が何したってんだよ?」
「この本を書いたのはあなたでしょう?」
姫は突き出したそれは【勇者と暁の魔女】。間違いなくフレデリックが書いたものだ。
「すべて回収なさい。そして訂正してわびを入れなさい」
「…確かに書いたのは私だが、そんな他国の先祖を傷つけるような記述など……」
「あるのよ!偶然でも許さないわ!死になさい!」
姫は怒りのままに引き金を引いた。
「―――――ひっ、姫!」
「うわあっ、ぶはっ!」
スティアの前に出たフレイの顔にそれは命中した。緑色の液体だ。
「何だこれ?水?にしては何かまずいな」
「…というか姫、何ですかこれ?水鉄砲?」
「不愉快だわ、こんな子供だまし。私の手に渡る前にゾフィーに改造されてしまったのよ」
「水鉄砲に。さすがゾフィー殿…」
ルウドが安堵の息をもらす。
「だからと言ってただの水な訳はないわ。効果の程はいかがかしら?フレイ隊長」
全員がフレイに注目する。
「うっ、なんかざわざわする、こうなんか喋らずにはいられないような感じ?」
「何を飲ませたのです?姫」
「口が滑る薬」
「ううっ、そもそもこの私めがこのロレイア王国の騎士となったいきさつはかれこれ五、六年前、とある東の辺境にいた折……」
「聞きたくないわ、黙ってなさい」
「…………」
フレイがへこんだ。ルウドが非難の目を姫に向ける。
「……そ、それで、その私の本のどこにそのような記述があるのですか?」
スティアの後ろに隠れたままフレデリックは怖々と姫に聞く。
「暁の魔女ロヴェリナ。あなたどうしてこの名を出したの?偶然出る名前かしら?」
「あ、その名前はある文献をもとに出した名でして。そもそもその話もその文献を参考にして書いた小説なのですよ?」
「だからってなんで世界を滅ぼした魔女なんてでっち上げ!酷過ぎるわ!」
「……しかし文献にはそう書いてありましたので。それを元に国を救った勇者と滅ぼした魔女の話を書いた訳で」
「嘘よ!そんな事をするわけないわ!信じられない!」
フレデリックはスティアの後ろから出て姫の傍に寄る。
「姫様、文献は城の図書室にあるのです。この国は元々、大昔に幾つもの国を吸収して大きくなった国ですから昔あった国の文献も沢山あるのです。
信じられないならご自身で確認されるといいでしょう。どうします?」
「行くわよ。案内なさい」
「分かりました。では文献をご覧になって納得されたら次は姫様がその名を知ることになったいきさつを教えてくださいね」
にこやかにフレデリックは言う。
まさか捜し物の鍵が自ら飛び込んでくるとは思わなかった。
公爵子息フレデリック=ロレーヌには捜し物があった。
それはきっと生涯かけても見つからない、そう言う代物だ。
だがある時『ある』と知ってしまった。知ってしまったからには捜さずにはいられない。
沢山の文献を調べ、情報を模索する為にも作家と言う肩書を得た。
書いている内容は歴史の記述から想像したただの恋愛小説云々だが実はそうでないものもある。
小説の中にいくつかのキーワードを入れ、それを知っているという者達の情報を得るのだ。
今の所その成果は全くなかったが、これは長期的な戦略だと思っている。
ともあれ今日のフレデリックはご機嫌だった。
昨日やってきた隣国の姫が会いたいと連絡を寄こしてきた。
今日こそは色々と話を聞きたい。
マルス国の姫、彼女の国のロマンスは元より、魔女の話など。
フレデリックの探し物のヒントが彼女の話の何処かにあるかも知れない。
フレデリックは大喜びでお城のティア姫の元へ訪れた。
「おはようございます姫様、姫様からのお呼びなんて嬉しいなあ」
部屋にはティア姫とスティア皇子、騎士隊長のルウドと、フレイが居た。
「やあ皆さんお揃いで。何かお話があるとか?何でも言って下さい、不詳この私、分かることなら何でも話します」
「まあ嬉しい、フレデリック=ネオさん?昨日は知らなかったのだけど私、貴方に会いたかったのよ」
姫はにこやかに微笑みながらフレデリックの前に歩み寄る。
「私の名をご存知でしたか。嬉しいなあ」
照れるフレデリックにティア姫の右ストレートがさく裂した。
「――――――えっ?」
尻もちを着いて、あっけに取られるフレデリックの前で姫が憂鬱そうに騎士達に言う。
「ルウド、見てよ。やっぱり私の腕力じゃこの程度じゃない。これで何になるのよ?私の悔しさはこんなものじゃないのよ?」
「……いやそう言われても…‥」
「もういいわ」
姫は懐から何かを取り出すと素早くフレデリックの口にねじ込んだ。
「――――――えっ?」
「わっ、ひひひひひひ姫!そソソそれは…!」
冷酷な姫の目がフレデリックを捕える。
「――――――死んでおしまい!」
「――――――!」
「うわあああああっ、姫っ、駄目ですよ!殺しちゃいけません!まだ聞きたい事もあるのでしょう!」
「……そうだったわね」
姫は仕方なく銃をフレデリックの口から離した。しかし銃口がまだ向いている。
ルウド隊長が慌てて姫の傍に寄る。
「何でそんな物持っているのですか?渡しなさい。危険物ですよ?」
「それは北の国が所有する拳銃というもの。姫、どこでそれを?」
「もちろん北の国の皇子から取り上げたのよ?迷惑料に」
「……‥へえ…」
スティア皇子と騎士フレイが引いている。
ルウドが銃を姫から取り上げようとして姫と揉める。
「渡しなさい!姫が持つ物ではありません!」
「嫌だったら!私が手に入れたものなんだから!」
「うわああああ!頼むからこっちに銃口向けたまま揉めないでくれえええっ!」
フレデリックは慌ててスティアの後ろに逃げ込んだ。
「何なんだ?なんでだよおっ?」
「いや何か、君がご先祖様を愚弄したとかで、大変ご立腹だよ?」
「スティア…、覚えがないよ。私が他国の先祖の名なんか知るわけないだろう?」
「……うーん、そうなのかい?」
「とぼけるんじゃないわよ!」
姫の銃口がスティアに向けられる。
「……姫、危ない。フレディー、向こう行ってよ」
「嫌だあああ、僕が何したってんだよ?」
「この本を書いたのはあなたでしょう?」
姫は突き出したそれは【勇者と暁の魔女】。間違いなくフレデリックが書いたものだ。
「すべて回収なさい。そして訂正してわびを入れなさい」
「…確かに書いたのは私だが、そんな他国の先祖を傷つけるような記述など……」
「あるのよ!偶然でも許さないわ!死になさい!」
姫は怒りのままに引き金を引いた。
「―――――ひっ、姫!」
「うわあっ、ぶはっ!」
スティアの前に出たフレイの顔にそれは命中した。緑色の液体だ。
「何だこれ?水?にしては何かまずいな」
「…というか姫、何ですかこれ?水鉄砲?」
「不愉快だわ、こんな子供だまし。私の手に渡る前にゾフィーに改造されてしまったのよ」
「水鉄砲に。さすがゾフィー殿…」
ルウドが安堵の息をもらす。
「だからと言ってただの水な訳はないわ。効果の程はいかがかしら?フレイ隊長」
全員がフレイに注目する。
「うっ、なんかざわざわする、こうなんか喋らずにはいられないような感じ?」
「何を飲ませたのです?姫」
「口が滑る薬」
「ううっ、そもそもこの私めがこのロレイア王国の騎士となったいきさつはかれこれ五、六年前、とある東の辺境にいた折……」
「聞きたくないわ、黙ってなさい」
「…………」
フレイがへこんだ。ルウドが非難の目を姫に向ける。
「……そ、それで、その私の本のどこにそのような記述があるのですか?」
スティアの後ろに隠れたままフレデリックは怖々と姫に聞く。
「暁の魔女ロヴェリナ。あなたどうしてこの名を出したの?偶然出る名前かしら?」
「あ、その名前はある文献をもとに出した名でして。そもそもその話もその文献を参考にして書いた小説なのですよ?」
「だからってなんで世界を滅ぼした魔女なんてでっち上げ!酷過ぎるわ!」
「……しかし文献にはそう書いてありましたので。それを元に国を救った勇者と滅ぼした魔女の話を書いた訳で」
「嘘よ!そんな事をするわけないわ!信じられない!」
フレデリックはスティアの後ろから出て姫の傍に寄る。
「姫様、文献は城の図書室にあるのです。この国は元々、大昔に幾つもの国を吸収して大きくなった国ですから昔あった国の文献も沢山あるのです。
信じられないならご自身で確認されるといいでしょう。どうします?」
「行くわよ。案内なさい」
「分かりました。では文献をご覧になって納得されたら次は姫様がその名を知ることになったいきさつを教えてくださいね」
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