125 / 200
第十九話 悪夢の剣技大会
3
しおりを挟む「対戦表を見ると隊長クラスが集まっているのが牧場の六、七、八競技場だな。薄紫の精鋭とマルスの精鋭も結構集まっているな。青、黄色の隊長や、クライブ皇子まで入ってるぞ。雑魚には興味ないが大者たちの勝負は気になるな」
「私も気になります。どうせ二回戦は午後からでしょうし、行きましょう」
「……ああ」
ルウドは呑気に牧場へ向かう。
ベリルは後を追いつつ不安になる。
いいのだろうかこんな呑気で?
ルウドのいる第三競技場には隊長や皇子などはいないがレベルの高い黒騎士、赤騎士達が集まっている。
ルウドの初戦の相手、黒騎士グレンも次世代の隊長と目される人物だった。
他にも王や皇子に注目される強い騎士達がゴロゴロ集まっているのだがそれを見もせずによそを渡り歩いていいのだろうか?
第三競技場はけして雑魚ばかりではない事を言った方がいいのだろうか?
しかしベリルは牧場に入ったとたんそんな瑣末事は忘れてしまった。
六、七、八が同時進行で怖い事になっていた。
大者と小者の実力が著しく違いがあれば勝負は瞬時につく。
やたら大者ばかりが固まっている競技場では実力差が明らかに見て取れ、勝負の進行も早かった。
牧場の競技場はすでに初戦の終盤になっている。
第六競技場一回戦最後の試合は黒騎士ローリーとマルスの精鋭ポールである。初戦からとんでもないくじを引いてしまった彼はすでに腹を決めて黒騎士に立ち向かっている。
――――――が。
「あっ!隊長!ルウド隊長見て下さい!私の相手黒騎士隊長ですよ、すごいでしょう!」
ルウドの姿を見たとたんポールは自慢げに泣きついてきた。
「ロレイア一の騎士ですよ!私などが勝てるはずもありません!」
「……ああそうだな、そんな相手と初戦から鉢合わせとはすごいな。大当たりじゃないか。死ぬ気でやればなんとかなるだろ」
「そんな隊長!初戦敗退の罰ゲームは許して貰えないので?」
「許さん。相手は考慮しない。赤騎士破った奴もいるんだ、甘えるな!」
「そんなああああああ!レベルが全然違うでしょう?隊長クラスですよ!私が勝てるはずありませんよおおおっ!」
黒騎士ローリーが半ば呆れつつ手を休めてポールを眺め、ルウドに向けて手を振って笑う。
「やあルウド隊長、うちの部下一撃で倒してくれたそうだね。弛んでいた部下を懲らしめてくれて有難う。お礼に君の部下にも手加減なしで行こうかな」
「ローリー殿、うちの部下はもっと弛んでいます。弛みきっています。このままでは国にも安心して帰れません。どうぞご存分に鍛えてやって下さい、国一番の剣技を彼に叩きこんでやって下さい」
「……厳しいんだね…‥」
ローリーはポールを見据え、構える。
「ルウド隊長、なんてことを!いやそれより私死んじゃいますよ!」
「死なん程度に頑張れ、何とかなるだろ」
「ひいいいいいい!」
「じゃ、行くよポール君」
ものすごい勢いで押し迫り、容赦なく斬撃を繰り出すローリーにポールは必死に応対する。
「ローリー様、私ごとき小者、手加減して下さいよ!勝負ならルウド隊長と!」
「そんな訳にはいかないな、頼まれちゃったし。謙遜するほど小者じゃないし君。手加減したらこっちがやられる」
「そんなあああああっ!」
ポールは存分に手加減なくローリー隊長に扱かれた。
結果的には負けたがローリーと対した経験は彼には大きな実になっただろう。
第七競技場は隊長同士の決戦が行われていた。薄紫と青の隊長だ。
ルウドはその対戦に着目した。
なにしろフレイ隊長の剣技をまだ見た事がない。余り人に剣技を見せたがらないらしい。
他国に噂になるほど強いとは聞いても実際どのくらい強いのか想像できない。
青の隊長ラウルは大ぶりで派手な剣技を見せる。しかも深くて重い。
その剣技を受けるフレイ隊長は軽々と流すように受けている。
「フレイは元々東方から来たやつだから剣技も独特なんだ。しかも自己流らしい。
その剣技がまたロレイアとは相性が悪くて対応しにくい。ロレイアの型が身についていない者が下手に相手をすると型を崩したりする。
だからこそ必要なのだがフレイはこんな時でなければ自分の剣技を見せたがらないんだ」
「今が貴重なんですね。うちでもフレイ隊長の剣技は珍しいです」
クライブ皇子が二人の対戦を見学がてら説明してくれた。
「そう言えば君はどこで剣技を覚えたんだ?」
「私はずっとマルスです。他国に来たのは今回が初めてなんです」
「じゃあ生まれはマルスなんだね」
「……ええ」
そうだったのだろうか?幼い頃マルスに来たのは覚えているがその前どこにいたかは覚えていない。
フレイの剣技を見つめながら考えてみるがあまり意味はない。
最初派手に剣を振っていたラウル隊長は軽々と剣を受け流すフレイ隊長に次第に押されてきた。フレイ隊長は剣を受け流すと同時に攻撃する。
大ぶりの剣を振るうラウル隊長は攻撃後隙が出来てしまう。その隙を突かれるとラウル隊長は弱いが何度もフレイと対決してきてなんとかその弱点も克服できている。
攻撃後すぐに下がるか、素早く防げばいいのだ。毎回フレイにやられているラウルはフレイ対応を万全にして大会に挑んでいる。
―――――しかし。
「君の悪い癖だよ、パターンの同じ攻撃はいけない」
フレイの攻撃を防いで再び攻撃に転じようとすると突然フレイの動きが変則的に変わり、手元から剣を打ち上げられてしまった。
「――――――一本!」
ラウルは苦々しく思いながら撃ち落された剣を拾う。
フレイの攻撃でも特に苦手なのがその予測の出来ない変則的な動きだ。型どおりの剣技を振るうラウルには頭で分かっていても中々身体が対応できない。
ラウルは間合いを取ってフレイの動きを探る。
「……悪いがまだ皇子の相手をせねばならなくてね、余り時間はとれないんだ。そちらが来ないならこちらから行かせて貰うよ?」
フレイは剣を逆手に持ちかえ、突然素早い変則的な動きで迫ってきた。
「―――――!」
防御の構えをしたがフレイには効かなかった。
「―――――――一本!フレイ隊長!」
またあっさり負けてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
崖っぷち令嬢の生き残り術
甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」
主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。
その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。
ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。
知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。
清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!?
困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
とめどなく波が打ち寄せるように
月山 歩
恋愛
男爵令嬢のセシルは、従者と秘密の恋をしていた。彼が従者長になったら、父に打ち明けて、交際を認めてもらうつもりだった。けれども、それを知った父は嘘の罪を被せて、二人の仲を割く。数年後再会した二人は、富豪の侯爵と貧困にあえぐ男爵令嬢になっていた。そして、彼は冷たい瞳で私を見下した。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる