130 / 200
第二十話 勝敗の行方
1
しおりを挟む二日目は三回戦、四回戦、五回戦が開催される。
五回戦で勝ち残った各競技場の一人が三日目の王族御前試合に出る資格を得る。
三回戦は各競技場四戦ずつ、終わった所から四回戦、五回戦と進んでいく。
試合回数が少ないので見物人も見たい試合に集まり、注目される試合は人々がごった返す。
もはや三回戦の時点で無様な試合は出来ないとマルスの騎士達は緊張感を持った。
さらに黒騎士隊長ローリーと薄紫スティア皇子に当たる四人の顔は土気色だった。
「大丈夫なのか…‥?」
「さ、三回戦で負けたら…‥」
「初戦負けの罰ゲームより恐ろしいデスゲームだろうな。ルウド隊長とティア姫様、どちらが恐ろしい罰を考えるかな?」
「……ほら、いつもはハリス隊長とかパラレウス皇子とかゾフィー殿とかがいて助け船もあるんだけど今回ないしな……」
「助け舟、ここではスティア皇子くらいしか……。なのにその皇子を倒さないといけないとは……」
「フレイ隊長の助けも望めないぞ?つまりここでは誰の助けも来ない。絶望だ」
「絶望…、ああマルスに帰りたいなあ……帰れるかなあ…‥?」
「姫の機嫌いかんでは永久追放されるかもなあ……」
「………」
うつろに呟く彼らの前では人々がごった返し、試合を見るための場所取り競争が始まっている。競技場の外側では何故だか露店まで立っている。
もはやお祭り騒ぎだ。
不幸なマルスの騎士達は他国の楽しげな騎士達を羨ましげに遠巻きに眺めていた。
そして彼らと同様、ルウドも顔色が優れなかった。
部下とは別の理由でルウドも大変切羽詰っていた。
―――――何でこんな事に…。
黒騎士隊長ローリーを倒さねばならない。その前にあのぼろ雑巾を片づけてしまわねばならない。
断固として姫にあのようなモノを見せる訳にはいかない。
三回戦は始まっていた。ルウドは第三試合なのであまり第三競技場から離れられない。
しかし近くの競技場を見学しようにもどの競技場も満員御礼で中が見れない。
「選手なら出番待ちの席があるから第三競技場の試合なら見られるぞ?」
「ベリル様、昨日はうちの姫が失礼をして申し訳ありません」
「気にしてない、喧嘩を買っただけだし。それよりお前、顔色悪いぞ?それで大丈夫なのか?」
「平気です。色々と思う所がありまして……あの」
「賭けの事なら有効だぞ。撤回はしない」
「……そうですか……」
「ともかく試合まで選手席で休んで待っていたらどうだ。どうせよそは見れないし」
「皇子は?」
「ちゃんと見晴らしのいい特等席があるんだ。出場者でなければルウドも誘うつもりだったがまだ試合があるからな。じゃあ頑張れよ」
ベリル皇子は特等席へと向かって行った。人ごみにまぎれてすぐ姿が見えなくなる。
ルウドは第三競技場の選手席に収まった。
第三競技場の第一試合は薄紫対赤騎士である。
二人はもうすでに汗だくで白熱したせめぎ合いをしている。
「あ、ルウド隊長」
「ええと、君は薄紫の……」
「アレンですよ、下っ端の。余り存在感ありませんが。第二試合なんです。相手は怖い黒騎士ですよ」
怖いと言いつつへらへらと笑っている。余裕があるのか、とルウドは思った。
「あはは、それより見て下さい。うちの先輩強いでしょう?」
「あれは確かリルガか」
「もともとフレイ隊長と共にこの国にきた人だから半端なく強いですよ?隊長仕込みの剣技ですから相手はやりにくいでしょうね」
見ると確かに赤騎士はやりにくそうだ。
「しかし毎回戦っている相手ではないのか?」
「うちの隊が剣技大会に全員参加するのは今回が初めてですよ?毎回義理付き合い的に新人数名が参加するのですが基本上級者は参加しません。
ほら、そもそも剣の型が違うから相手にも良くないし、余り理がないと言うか」
「今回は全員参加しているようだが?」
「客人のマルスの騎士が全員参加しているのに薄紫が不参加な訳にはいかないでしょう?」
「いろいろ気を使ってくれていたのか。有り難いが………」
「あはは、皆マルスの騎士と戦いたかったのですよ?楽しんでいるでしょう?」
「……そうだな…‥」
「そして優勝すれば姫様の熱いキス!なんて張り合いの出る事でしょう!」
「……」
隣のアレンは夢見がちに試合を見つめる。
そうこうするうちに決着はついた。
「―――勝者薄紫!」
「さあがんばるぞ!」
張り切って柵の中へ入って行ったアレンに代わり、勝者のリルガが入ってきた。
「ルウド隊長、いらしたので」
「ああ、リルガ君、強いね君」
リルガは鋭い視線をルウドに向ける。
「貴方とは決勝で当たる事になる」
「楽しみだね」
ニコニコと笑うルウドにリルガはふっと視線を緩ませる。
「しかしあなたの次の相手は赤騎士の精鋭ですよ?」
「うん、紫と余り当たらないのが不運というか、良くない。まだ倒せる相手の内に対策を練っておきたかったのだが…」
「いやそうではなく……」
「赤と黒にしか当たっていないんだ。もっと幅広くカラーの騎士に当たりたかったのだが……」
「もう強い騎士しか残っていませんから……」
呆れるリルガと共に試合の方へ眼を向けると薄紫アレンが黒騎士に追われていた。
「……余裕があったんじゃないのか?」
「違います、ただ笑ってただけです。全く困った奴だ、後で仕置きだな」
「……」
ほどなくしてアレンは黒騎士に破れた。
「あはは―、負けちゃいましたー」
「……アレン」
「あっ、リルガさん、ぼくが黒騎士に勝てるわけないでしょう?ふふふっ」
「貴様、あとで仕置きだ覚えとけ」
「……‥」
リルガに睨まれて、アレンは肩を落として去って行った。
そしてルウドが柵に入った。相手は赤騎士ローガンである。
二人が対したところでやはりまた謎の歓声が上がった。
やはり歓声の意味がさっぱり分からないルウドは目の前の赤騎士相手にローリー対策を考える。
赤騎士の剣技は黒騎士とほぼ同じだ。
そも両隊長がここで剣技を教わったのだからそれも道理。
彼らの剣技はルウドにとって対し易かった。だからと言ってローリー隊長に勝てるとは思っていない。だからこそ、今のうちに色々試したかったのだ。
「―――――始め!」
合図とともにルウドは動く。
三回戦ともなると赤騎士も油断していない、素早くルウドの剣を受け止める。
しかし―――――
「――――――っ!」
赤騎士の剣が弾き飛ばされ、すかさず小手を入れられた。
「――――一本!」
辺りが騒然とし、赤騎士は再び剣を拾う。
そして赤騎士からルウドに向かって斬撃を落す。ルウドは赤騎士の剣を払い、返す刀で銅を払い、素早く下がる。
「――――――!」
「―――――一本!ルウド隊長!」
赤騎士は呆然とした。
そして周囲も静まり返る。
それなりに強い赤騎士が何故まともに勝負できないのか、傍目からでは全く分からなかった。
「……」
ルウドは不満そうな顔をして選手席に戻る。
「ルウド隊長、凄いですね、何で不満そうなのです?」
「あれではローリー隊長対策がままならない」
「そうですね……」
決勝戦に向けてルウド隊長の試合をじっくりみていたリルガもがっかりした。
ただの二撃では対策の取りようがない。
柵の中では既に四試合目が始まっていた。
0
あなたにおすすめの小説
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
契約結婚のススメ
文月 蓮
恋愛
研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる