意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十話 勝敗の行方

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  二日目は三回戦、四回戦、五回戦が開催される。
 五回戦で勝ち残った各競技場の一人が三日目の王族御前試合に出る資格を得る。
 三回戦は各競技場四戦ずつ、終わった所から四回戦、五回戦と進んでいく。
 試合回数が少ないので見物人も見たい試合に集まり、注目される試合は人々がごった返す。

 もはや三回戦の時点で無様な試合は出来ないとマルスの騎士達は緊張感を持った。
 さらに黒騎士隊長ローリーと薄紫スティア皇子に当たる四人の顔は土気色だった。

「大丈夫なのか…‥?」

「さ、三回戦で負けたら…‥」

「初戦負けの罰ゲームより恐ろしいデスゲームだろうな。ルウド隊長とティア姫様、どちらが恐ろしい罰を考えるかな?」

「……ほら、いつもはハリス隊長とかパラレウス皇子とかゾフィー殿とかがいて助け船もあるんだけど今回ないしな……」

「助け舟、ここではスティア皇子くらいしか……。なのにその皇子を倒さないといけないとは……」

「フレイ隊長の助けも望めないぞ?つまりここでは誰の助けも来ない。絶望だ」

「絶望…、ああマルスに帰りたいなあ……帰れるかなあ…‥?」

「姫の機嫌いかんでは永久追放されるかもなあ……」

「………」

 うつろに呟く彼らの前では人々がごった返し、試合を見るための場所取り競争が始まっている。競技場の外側では何故だか露店まで立っている。
 もはやお祭り騒ぎだ。
 不幸なマルスの騎士達は他国の楽しげな騎士達を羨ましげに遠巻きに眺めていた。

 そして彼らと同様、ルウドも顔色が優れなかった。
 部下とは別の理由でルウドも大変切羽詰っていた。

 ―――――何でこんな事に…。

 黒騎士隊長ローリーを倒さねばならない。その前にあのぼろ雑巾を片づけてしまわねばならない。
 断固として姫にあのようなモノを見せる訳にはいかない。






 

 三回戦は始まっていた。ルウドは第三試合なのであまり第三競技場から離れられない。
 しかし近くの競技場を見学しようにもどの競技場も満員御礼で中が見れない。

「選手なら出番待ちの席があるから第三競技場の試合なら見られるぞ?」

「ベリル様、昨日はうちの姫が失礼をして申し訳ありません」

「気にしてない、喧嘩を買っただけだし。それよりお前、顔色悪いぞ?それで大丈夫なのか?」

「平気です。色々と思う所がありまして……あの」

「賭けの事なら有効だぞ。撤回はしない」

「……そうですか……」

「ともかく試合まで選手席で休んで待っていたらどうだ。どうせよそは見れないし」

「皇子は?」

「ちゃんと見晴らしのいい特等席があるんだ。出場者でなければルウドも誘うつもりだったがまだ試合があるからな。じゃあ頑張れよ」

 ベリル皇子は特等席へと向かって行った。人ごみにまぎれてすぐ姿が見えなくなる。
 ルウドは第三競技場の選手席に収まった。






 第三競技場の第一試合は薄紫対赤騎士である。
 二人はもうすでに汗だくで白熱したせめぎ合いをしている。

「あ、ルウド隊長」

「ええと、君は薄紫の……」

「アレンですよ、下っ端の。余り存在感ありませんが。第二試合なんです。相手は怖い黒騎士ですよ」

 怖いと言いつつへらへらと笑っている。余裕があるのか、とルウドは思った。

「あはは、それより見て下さい。うちの先輩強いでしょう?」

「あれは確かリルガか」

「もともとフレイ隊長と共にこの国にきた人だから半端なく強いですよ?隊長仕込みの剣技ですから相手はやりにくいでしょうね」

 見ると確かに赤騎士はやりにくそうだ。

「しかし毎回戦っている相手ではないのか?」

「うちの隊が剣技大会に全員参加するのは今回が初めてですよ?毎回義理付き合い的に新人数名が参加するのですが基本上級者は参加しません。
 ほら、そもそも剣の型が違うから相手にも良くないし、余り理がないと言うか」

「今回は全員参加しているようだが?」

「客人のマルスの騎士が全員参加しているのに薄紫が不参加な訳にはいかないでしょう?」

「いろいろ気を使ってくれていたのか。有り難いが………」

「あはは、皆マルスの騎士と戦いたかったのですよ?楽しんでいるでしょう?」

「……そうだな…‥」

「そして優勝すれば姫様の熱いキス!なんて張り合いの出る事でしょう!」

「……」

 隣のアレンは夢見がちに試合を見つめる。
 そうこうするうちに決着はついた。

「―――勝者薄紫!」

「さあがんばるぞ!」

 張り切って柵の中へ入って行ったアレンに代わり、勝者のリルガが入ってきた。

「ルウド隊長、いらしたので」

「ああ、リルガ君、強いね君」

 リルガは鋭い視線をルウドに向ける。

「貴方とは決勝で当たる事になる」

「楽しみだね」

 ニコニコと笑うルウドにリルガはふっと視線を緩ませる。

「しかしあなたの次の相手は赤騎士の精鋭ですよ?」

「うん、紫と余り当たらないのが不運というか、良くない。まだ倒せる相手の内に対策を練っておきたかったのだが…」

「いやそうではなく……」

「赤と黒にしか当たっていないんだ。もっと幅広くカラーの騎士に当たりたかったのだが……」

「もう強い騎士しか残っていませんから……」

 呆れるリルガと共に試合の方へ眼を向けると薄紫アレンが黒騎士に追われていた。

「……余裕があったんじゃないのか?」

「違います、ただ笑ってただけです。全く困った奴だ、後で仕置きだな」

「……」

 ほどなくしてアレンは黒騎士に破れた。

「あはは―、負けちゃいましたー」

「……アレン」

「あっ、リルガさん、ぼくが黒騎士に勝てるわけないでしょう?ふふふっ」

「貴様、あとで仕置きだ覚えとけ」

「……‥」

 リルガに睨まれて、アレンは肩を落として去って行った。



 
 
 
 そしてルウドが柵に入った。相手は赤騎士ローガンである。
 二人が対したところでやはりまた謎の歓声が上がった。
 やはり歓声の意味がさっぱり分からないルウドは目の前の赤騎士相手にローリー対策を考える。
 赤騎士の剣技は黒騎士とほぼ同じだ。
 そも両隊長がここで剣技を教わったのだからそれも道理。
 彼らの剣技はルウドにとって対し易かった。だからと言ってローリー隊長に勝てるとは思っていない。だからこそ、今のうちに色々試したかったのだ。

「―――――始め!」

 合図とともにルウドは動く。
 三回戦ともなると赤騎士も油断していない、素早くルウドの剣を受け止める。
 しかし―――――

「――――――っ!」

 赤騎士の剣が弾き飛ばされ、すかさず小手を入れられた。

「――――一本!」

 辺りが騒然とし、赤騎士は再び剣を拾う。
 そして赤騎士からルウドに向かって斬撃を落す。ルウドは赤騎士の剣を払い、返す刀で銅を払い、素早く下がる。

「――――――!」

「―――――一本!ルウド隊長!」

 赤騎士は呆然とした。
 そして周囲も静まり返る。
 それなりに強い赤騎士が何故まともに勝負できないのか、傍目からでは全く分からなかった。

「……」

 ルウドは不満そうな顔をして選手席に戻る。

「ルウド隊長、凄いですね、何で不満そうなのです?」

「あれではローリー隊長対策がままならない」

「そうですね……」

 決勝戦に向けてルウド隊長の試合をじっくりみていたリルガもがっかりした。
 ただの二撃では対策の取りようがない。
 柵の中では既に四試合目が始まっていた。



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