意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十話 勝敗の行方

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 マルスの騎士達の作戦は見事成功した。
 しかし王族用の控えの部屋の隅で泣いている姫を見たルウドは悪い事をしたと気が咎めた。

「……ティア様…‥もう大丈夫ですから…」

「ルウド!ちゃんと会場消毒したのでしょうね?あれはもう処分したのでしょうね?」

「しましたよ。もう出ませんから……」

「本当?でもあれは一匹いたらあと三十匹はどこかに潜んでいるというわよ?本当に大丈夫なの?」

 ルウドは困って周囲を見るとクライブ皇子と目があった。

「クライブ様、平気ですよね?」

「……勿論だよ、わが城にあんなモノが棲んでいる訳がない。どこから紛れ込んできたのか知らないが、嫌だな。もう二度とあのような事がないように手配するから安心してほしい。姫様にも、不快な思いをさせて申し訳なかった。どうかお許しください」

 ルウドにしがみ付いたままのティア姫にクライブ皇子は微笑む。

「……そう、それならいいのだけど…」

 クライブ皇子の顔を見てティア姫はようやく落ち着いた。

「そう言えばルウドの試合は?」

「もう終わってしまいましたよ?」

「そんな、何時の間に。見たかったのに……」

「勝ちましたからまだ次がありますよ」

「そう、良かった。でもスティアはどうしたの?役立たずな上に姿も見えないなんて。いいとこなしね彼。ルウドに負けてへこんでいるのかしら?」

「………」

 しまった。スティア皇子のフォローを全く考えていなかったルウドはクライブ皇子に助けを求めたが視線を横にそらされた。

「……ええと、皇子もすぐに気を取り直してここに来られますよ?まだフレイ隊長とクライブ皇子とローリー隊長の試合も見たいでしょうから」

「そうね…」

 さして興味もなさそうに姫は呟く。

「ええと、姫様、嫌な事は忘れて試合を見に行きましょう?今は第二試合、赤騎士ビビアン様とフレイ殿の勝負中ですよ?早くいかないと終わってしまいます!」

「……‥」

「不吉なモノはもういませんから心おきなく試合を鑑賞いたしましょう!うちの部下二人は三試合目と四試合目ですよ」

「知ってるわよ、あの二人。なんて運がいいのかしら。いつも思うのだけどあの運の良さをもっと有効活用する手段はないのかしら?」

「………そうですね…‥」

 姫をエスコートして王族用会場席へ誘導するルウドは笑みを引き攣らせる。
 見事御前試合にまで這い上ってきた実力と幸運を備えた騎士は、姫に目をつけられ最早下僕にされている二人である。
 しかもこの二人は初戦から黒騎士ローリーとクライブ皇子にばっちり大当たりした。
 王国の最強とされる騎士と皇子である。
 確率が高いとはいえ、何と言う悪運の強さだろうとルウドは不憫を通り越して感心した。







 ルウドに害虫退治され樽にほおり込まれたスティア皇子は強制的に皇子の部屋へ戻され、待ち構えていた皇子の執事や使用人、さらに医者に取り囲まれ、害虫から人間へと短時間で完璧に修正された。
 しかしスティア皇子の心の傷は短時間では修正されない。
 薄紫宿舎の地下に一人籠った皇子は出てこなくなってしまった。
 地下訓練場を閉めだされてしまった騎士達が心配してドアの外から様子をうかがう。

「……スティア皇子?」

「………私は虫……どうせ虫…‥嫌われものの害虫さー……」

「お、皇子、そんな…!そんな事ないですよ!」

「……もういいんだ、私の人生おしまいさー。姫にもきっと嫌われた…‥…」

「お、皇子!そんな事ありません!早まらないで下さい!おしまいなんかじゃありませんから!」

 騎士達は慌てて隊長の所に飛んでいくがあいにくフレイ隊長は未だ真剣勝負中だった。
 なのであの結果の原因となったルウド隊長を呼んだ。

「ルウド隊長!皇子を何とかして下さいよ!責任とって下さい!」

「……‥ああ、すまない…」

 ルウドは地下の入り口に降りて中の様子をうかがう。

「……スティア皇子?」

「……ほっておいてくれ私の様な虫けら……」

「………」

 皇子の傷は深そうだ。

「…スティア様、試合見に行きましょう?姫様も待っていますよ?」

「…‥ルウド、そんなわけない。きっと忌み嫌われてる」

「大丈夫ですよ、皇子が皇子のままでいて下されば誰も嫌いませんから」

「……何故なんだ?強いと嫌われるなんて分からない。皇子は強くあるべきだと皆言っているし、ルウドだってそう思っているだろう。だから頑張ったのに…」

「姫にあんな血なまぐさい姿を見せたりしないでください。あんな姿見せたら確実に嫌われますよ?」

「いいよもう、嫌われたし…」

「あれが貴方とはばれていません。上手く誤魔化せましたから」

「そんな嘘だ。はっきり忌み嫌ってたじゃないか」

「事前に恐怖の大虫が居ると知らされてはっきり直視出来るわけないじゃないですか?何か黒いものを認めてすぐに部屋へ引き返しましたよ姫は」

「…………」

「皇子、別に強さなどで姫の気を引かなくともいいでしょう?そんな事をしても姫は興味も持ちませんよ?知っているでしょう?」

「……だったらどうすればいいんだ?私なんか何のとりえもない皇子なのに」

「そのような事はありません、もっと自信を持って下さいよ」

「……‥」

「ルウド、何してるのよ?第二試合終わっちゃったわよ?」

「ティア様」

 姫が地下に降りてきていぶかしげにルウドを見る。

「何なの?」

「スティア様が籠ってしまいまして…」

「スティアが?全く情けないわね、ルウドに負けた位で何いつまでもへこんでんのよ?最初っからルウドに勝てるわけないのは分かってたんだからいちいち引き摺ってんじゃないわよ!」

「ひ、姫様…‥」

「そんな事より何よ、フレイ隊長の試合を見にもいかないで!あなたの騎士でしょう?ちゃんと応援しなさいよ!」

「…姫様、フレイは…‥?」

「勝ったわよ!次の相手はルウドよ?さっさと出てきてフレイ隊長の所に行きなさい!」

「は、はいいいいいっ!」

 スティア皇子は慌ててドアを開けて宿舎を出て行った。

「……」

「ルウド、私達も行きましょう。ばっちり睨みを効かせてないとローリー相手に簡単に諦めるわよあの根性無しは」

「……はい」




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