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第二十話 勝敗の行方
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しおりを挟む第三試合、黒騎士ローリーに対した不幸な騎士はこれ以上ない位の不幸な状況を味わっていた。
相手がロレイア最強の騎士というのは仕方がない。勝ち上がれば王族御前の試合である事も覚悟していた。
無様な試合は出来ない、この場で出来る精一杯の戦いをすればいい。
彼の力ではローリーに適う筈もない事は分かっていた。なのに…‥。
「何が何でも勝ちなさい!刺し違えても勝ちなさい!いっそローリーを道連れに墓場に入りなさい!」
ティア姫様が怖い事を言っている。
しかもルウド隊長と共にこちらに異様な迫力でギンギンと睨みをきかせている。
――――――負けたら間違いなく墓場行きだ…・。
もはや不幸過ぎる騎士は真っ青になってローリー隊長を見据える。
「……君、不憫だね…」
「そう思うならどうか、勝ちを譲って下さい…」
「私に勝ってもまだ先があるよ?」
「……そうですね……」
勝ち上がるごとに不幸度が上がる騎士の緊張は最早ピークに達していた。
「……ローリー隊長、一緒に墓場に行きませんか?」
「……嫌だよ、一人で行ってくれ」
さて次の試合のクライブ皇子と当たるジルとどちらが不運だろうか?
どうでもいい事を考えてつい現実逃避してしまう。
「さあもう始まるよ、覚悟したまえ」
「うううっ、ハイ…」
不幸な騎士は剣を構え覚悟を決める。
開始の合図とともに息も吐けぬ剣技の応酬が始まった。
「フレイ、ビビアンに勝ったって?すごいじゃないか。おめでとう」
「おやスティア皇子、もう立ち直られたので?」
選手控えの部屋で汗をふきながらフレイはスティアを見て微笑む。
「地下で籠って落ち込んでいると聞きましたが?」
「ティア姫様に怒られてしまって。ルウド隊長に負けた位で何時までもへこんでちゃダメだって。でも、ルウドさんにだけは勝ちたかったな…‥」
「本当の目的でしたものねえ。でもやはり大きすぎる壁でしたか」
「何かただの害虫として退治されてしまったよ。悲し過ぎる」
「姫にあだなす害虫ですか。やはり挑み方を間違えましたかねえ…」
「本当にもうどうすればルウドを倒せるのか分からないよ…」
控え部屋の窓から会場を見るとローリーとマルスの騎士が激しい打ち合いをしている。
「ローリー隊長相手に同等に打ち合っているぞ?何者だあのマルスの騎士」
「でも何か異常な緊張感を感じるな。ローリー相手だからかな?」
ふと王族用客席を見るとティア姫とルウド隊長が鬼のような形相で試合中のマルスの騎士を睨んでいた。
「……」
不憫なマルスの騎士はただの一瞬ですら気を抜けず、最早刺し違える覚悟で挑んでいる様子だ。
「こらーっ!気を抜くんじゃないわよ!諦める前に墓場に道連れになさい!死ぬなら道ずれを連れて行きなさい!」
たまに酷いヤジ、いや姫様の声援がマルスの騎士に突き刺さる。
姫の脅し、いや声援を聞いて彼は更に普段の能力以上の力を発揮する。
「………」
そんなに姫が怖いのか?
フレイにも、対戦しているローリーにもその他ロレイアの騎士達にも分からなった。
不幸な騎士は姫とルウド隊長に見守られ、ひと時の息も吐けずに戦い続けていた。
少しでも甘い剣技を見せるとすぐに声が飛んでくる。
「何弛んでんのよ!しっかりなさい!根性見せなさい!」
目ざとい姫にはごまかしはきかない。まだルウド隊長の方が優しい。
「こらーっ!そんななまくら剣でマルスの騎士が務まると思ってんの!永久追放するわよ!置いて帰るわよ!」
「………」
姫は本気だ。
しかしもう不幸な騎士は限界に来ていた。何とかローリーの剣を受けているが意識すら朦朧としてきた。
「―――――くっ…‥…ローリー様……道連れ……」
「嫌だって……」
足腰がフラフラになって、とうとうローリーの剣を受け止めきれなくなった。
「何やってんよ!しっかりなさいっ!」
もう姫の声も遠い。
「…‥あの、君ね、姫に見捨てられたら、もしよければ私の所へおいで。何時でも歓迎するから」
ローリー隊長がそう言って、容赦ない一撃を入れた。
「君良く頑張ったよ、根性無しなんかじゃないさ」
不幸な騎士の意識がプッツリ途切れた。
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