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第二十二話 亡国の歴史
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しおりを挟む何千年もの時を紡ぐその図書室にはその何千年分の歴史の書籍があった。
大体の書籍はその図書室に行き、諦めずに捜しまくればいつか見つかるはずであった。
しかしけして見つかる事はないもの。それはただ一人の誰かの為にあり、その誰かが見つけない限りけして表に出る事はないもの。
そのような書籍がある。いうなれば禁書と言うものだ。
禁書はそれを見るべき持ち主でなければ見つける事は出来ない。
―――――見つけてしまった、その禁書のある場所を。
あとはその場所を持ち主であるものに教えれば禁書は開かれ持ち主に知るべき事を知らせる事が出来る。
だけど…………。
ロヴェリナは迷っていた。
それは今の彼には必要のない事だから。関係のない知識を知れば自分との関係性を知ることになってしまうから。
だがそれがいつか彼にとって必要になるかも知れない事ならば…。
剣技大会の三日後、薄紫騎士、マルス騎士合同強行演習が行われた。
大会で負けた者の為の隊長主催の罰ゲームなのだが初戦負けの者だけでなく全員が参加することになった。
何しろ優勝者が姫。ティア姫は自分の壁にもなれなかったマルスの騎士五十名を許さなかった。
「真剣みが足りないのようちの騎士どもは。ルウドまでへらへら笑いながらあっさりローリーに負けて。あれが戦場だったら私だって死んでたわよ」
「申し訳ありません」
「とにかく私忙しいから。騎士達の処罰は任せるわよ。貴方も含め、自分の始末は自分達でつけなさい」
マルス国へ帰る時期が迫っているのでティア姫は焦っていた。未だに目的の書物の片鱗すら見つからない。
騎士達を虐めるよりも書籍の調査の方が優先順位が高いようだ。
そして薄紫も隊長自ら喜んで地獄の合同演習に参加する。
合同演習は早朝夜明け前から山に登り、頂上に着いたら断崖絶壁を降り、居りきったら森を突っ切り断崖絶壁の山を登り、頂上に着いたら昼食休憩をとり、その後筏を造り激流下りをし、下流に着いたら海まで泳ぎ、浜に着いたらキャンプをし、食事休憩をとったら後は浜から王城まで走り込みである。
ちなみに翌日昼までに王城までたどり着けなかった騎士には更なる罰ゲームがあるのだが、それがあのルウドでさえ見せて貰えなかった『薄紫地下室行きコース』だという。
地下室行きには興味はあったが合同演習は手を抜けるほど簡単なコースではない。
姫が聞いたら『大自然を満喫できる素敵なコースね』と言われそうだが実際コースを回る者には命がけの演習だった。
そしてマルスの騎士はともかく薄紫の騎士達は『地下室だけは勘弁して下さい!』と必死になって演習に取り組んでいた。
結果としてはロレイアの騎士三名とマルスの騎士五名ほどが地下室行きとなった。
「それにしてもフレイ殿には本当に良くしていただいて。申し訳ないくらいです。フレイ殿も疲れているでしょうに最後まで訓練に付き合って下さるなんて。ホント勿体無い」
「ルウド隊長、そんなに気にしなくていいですよホントに。皆楽しんでしている事ですし、フレイも今回ホントに面白いらしくて何でも進んでルウドさんに付き合っていますし」
「そうなのでしょうか、スティア様」
「うん、もともとそんなに他国の騎士に興味を持つタイプじゃないんだよ。剣技もねえ、あまり見せたがらないし、訓練も地下だしね」
「…地下の秘密訓練、見せて貰えませんでした」
「……見ない方がいいよ」
「皇子は受けてあんな姿に……?」
「いやホント、あれはもう忘れてくれたまえ…」
「……」
地下送りになったマルスの騎士五人は訓練を受けて地下を出てきたとき、誰ひとり何も口を開かなかった。なので薄紫地下訓練はルウドには永遠の謎となってしまった。
現在ルウドとスティア皇子は姫のいる図書室に向かっている。
ティア姫は大会後からずっと図書室に籠りきり出てこない。
「ティア様、そろそろ図書室から離れて外へ出ませんか?」
「もう時間がないのよ!そんな場合じゃないわ!」
「もう少しの時間をここで過ごしても結果など知れてますよ?調べ物は他の方に任せて貴方は貴方の役目を果たすのです。それ以外の重要な用事が残っているでしょう?」
「……‥」
「姫様、外はとてもいい天気ですよ?外へ出て息抜きしましょう?」
「スティア……そうね、まだここでする事があるし…」
姫が仕方なく席を立ったので、スティアとルウドはほっとした。
姫はほっておくと永遠に図書室に籠って出てこなさそうだ。
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