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第二十六話 ルウドの選択
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しおりを挟む朝になってミザリー姫はすっかり元の煩い姫に戻っていた。
心配していた一家はほっと胸をなでおろした。
朝食後、魔術師の塔へ入ったティアは魔術師ゾフィーに愚痴る。
「全く何なのかしらミザリーお姉さまは。訳分からないわ」
「……ミザリー様も難しい年頃ですからそんな日もありますよ。いいじゃないですか元気になられたのなら」
「まあね、お姉さまの事はどうでもいいわ。他に考える事が沢山あるし」
ティアはロレイアから調達してきた書物を傍らに置いて丹念に調べる。
「ロレイアから沢山借りて来たけど、あまり有益な情報って無いのよね。たまにロヴェリナ様の名が出ても真偽の確かめようがないし。やっぱり確実なのはあの本なのよね」
ゾフィーがびくりと震える。
「―――――え?あの本、とは?」
「とぼけなくていいわよ、『ロヴェリナの記述書』。あれを取り戻さなければ埒が明かないわ。どこにあるのかしら?」
「…‥え?それは…?」
「ルウドが安心して隠せる場所、あるいは預けられる場所よね。ルウドだってあれが何かは分かっているから迂闊に人に見せたり任せたりするわけないと思うし。
ルウドの日常生活圏の何処かに違いないわ。彼に見つからないように捜索しないと」
ゾフィーの背筋がひやりとする。
どうしよう?姫に真実など話せない。この事実をルウド隊長にも話せない。
ゾフィーは口を閉じるしかない。
その頃ルウドは外からの客人の呼び出しを受けて街の食堂にいた。
「やっと着いたのかロズ。随分ゆっくりだったな。夜になれば寒くもなってきたろうに」
「僕は旅人、防寒の類は万全だよ。冬でも野宿出来る格好してるから平気だよ」
「そうか。それでこれからどうするんだ?しばらくここにいるのか?」
「うん、これから冬だし、今から他国へ行くのは難しいからね。当分この国と周辺くらいで調べ物をするかな。といってもこの国の情報は乏しいんだ。
皇子一人と王女が三人いるくらいか。あとは何の変哲もない田舎の小国と言う事くらいか。情報はどこへ行けば手に入るだろうか?」
「…‥田舎の小国だからね。街に居てもたいした情報は得られないだろう。他国の王子様や重鎮たちはお城に入って客人どうしで情報交換とかしているんだ。ああだけど情報の質とかあるかな。ロズの欲しい情報があるかは分からない」
「お城か。興味はあるけど、そうだな、一度はお城に入ってみたい。その前に街で情報を集めようかな。この国の歴史にまつわる書物とか集めたい」
「この国の歴史に興味があるのか?」
「そうだよ。この国は一見ただの田舎国だけど不思議な事が多いんだ。まずこんな田舎の小国であるのに侵略の歴史がない。おかしいとは思わないか?特に何も無い普通の国と言うだけで大国が目をつけないという理由がない。
この長い歴史の中でそれがないという国の方がおかしいんだ。その訳が知りたい」
「…‥そういえば、なるほど…‥。しかしこの国は他国人と交流、交易が盛んな国と言う事で余り侵略には縁遠いものと思っていた」
「大国なら普通考えるものと僕は思っていたよ。今の時代であっても北の大国にとってはこの国は得体の知れぬ未知の国だから」
「そうか。そうだな。私はただの呑気な田舎者だな。危機感が薄すぎる」
「うーん。でもこの国の姫様は大国の皇子様と懇意にされているそうだから危機感が薄いのも分かる気がする。それでも大国だからいろんな人間がいるが」
「私は先日ロレイアに行って来たんだ。皇子達も騎士達も皆いい人たちだった。それでもあの国には沢山の侵略の歴史がある。歴史はあるがあそこにいた人達を疑うのは個人的にはいやだな」
「…‥まあ友人を疑うのはいやだね」
「そういうことだ。しかしこの国の歴史か、昔学校で習ったがとくに何の変哲もなく面白くもなかったな。昔の英雄とか騎士とかもそんな特化して有名とかでもなかったし。
だけど今から考えると少し調べてみるのも面白いかも」
「うん?何か興味を引くものがあるとか?」
「ああ、うちのお城には沢山面白いものがあるぞ?きっと退屈はしない。お城に入りたくなったら言ってくれれば私の客人として迎えよう」
「それは楽しみだね、有難う」
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