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第二十六話 ルウドの選択
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しおりを挟む夜明け前には姫を部屋へと送り返した。
簀巻きにして部屋の隅に捨てておいたのだが、人に見られるとまずいので簀巻きのまま姫の部屋へと返還した。
姫は怒っていたが知ったことではない。
あのまま先へ進んでいたらとてもまずい事になっていた。
「全く姫には困ったものだ…」
しかしもうルウドの部屋に忍び込みには来ないだろう。
記述書もいい加減に諦めて貰いたい。
昨晩のもやもやを晴らすためにルウドは朝から訓練場で汗を流していた。
すると珍しくハリスがやってきた。
「ルウド…」
「何だハリス?珍しい。一緒にやるか?」
「…‥それは後で。ところでお前、姫を簀巻きにして連れていたと噂になっているぞ?」
「…‥見た者がいたか…」
「な、何をしたんだ?まさか…?」
「何もしてない。部屋に忍び込んできたので捕まえただけだ」
「姫様を簀巻きにするか?」
「寝台から降りて下さらなかったので」
「……寝台…?」
「している事はもう夜這いだな。寝ている所に入ってくるなど。姫様のすることではない、きつくお仕置きしておいた」
「…そ、そうか…」
ハリスが何だか疲れたように去って行った。
朝から魔術師の塔へ着たティア姫はぼんやりとしている。
―――――なんだろう?
ゾフィーが不安げに姫を見守る。
「…‥ねえゾフィー」
「…‥はい?」
「…‥男の人はねえ、愛していなくても女性を抱けるのだって…」
「………は…?」
「どう言う意味かしら?」
ゾフィーが真っ青になった。
「……ああああああの、誰がそんな事を…?」
「ルウドが」
「………‥ななななな、何があったのです?」
「昨晩、ルウドの部屋に忍び込んで捜し回ってたら捕まって」
「――――――…まさか…?」
「お仕置きだって…‥」
姫の首筋にくっきり跡が残っている。
「…ルルルルルウドさんが?」
「……私の事、愛しい人とか言って、あんな事までしておいて。
――――ルウドが分からないわ」
「……‥」
姫には分からないだろうがゾフィーには分かった。
好きな女性が夜中に忍んでやってきた。捕まえて、何でも許される状況で、それで何もせずにいられるなんてあり得ない。
ルウド隊長の鉄壁の理性はあとどのくらい持つのだろうか?
お昼からは街へ出てロズと共に資料散策に出る。
昨晩のもやもやが抜けないルウドにはいい気分転換になる。
街の図書館へ行ってしばらく本を漁ってから、調べ回る。
「…‥手に入る情報はだいたい同じような事ばかりだね。もっと深く詰めたいならやはり
王宮の図書館だね。
でもその前に行きたい所があるんだ?ルウドも一緒に来てくれるかい?」
「いいよ。どこへ行くんだ?」
「ある貴族の別邸だよ。昔からお世話になっていてね、本邸は隣国にあるのだけど今丁度別邸に来ているらしいんだ」
「貴族…?私の様なものが行っていいのだろうか?」
「良いに決まってる。王家の騎士隊長の君が何遠慮しているのさ?」
「役職はそうだが私は身分などないただの庭師だ。個人的に貴族に見える権利などない」
「僕だって身分などない旅人だよ?そんな堅苦しく考える事はないよ」
「…そうなのか…?」
図書館を出てからひたすら街のはずれへと歩き続ける。
街外れに行き着くと別宅と言うにはあまりある大きさの館に着いた。
「ビルディ=オーレイという伯爵のお屋敷だよ。高齢の紳士でね。旅人の話を聞くのが好きなんだ。それで良くしてくれる」
「なるほど」
門前でロズが名を告げると門が開き、案内人が現れ屋敷の中へ案内してくれた。
客間に通されて、しばらく待つ。
「どんな話をするんだ?」
「うん?まあ僕が見てきた情報かな。彼はずっと人を捜していてね。ずっと手がかりを欲しがっていた」
「人捜しか…‥大変だな」
しばらく待つと館の主がやってきた。高齢だががっしりした体つきの大柄の紳士だ。
彼は椅子に座り、旅人達を迎える。
「―――――よく来てくれた、ロズアルド=エレーヌ。それと…」
「はじめまして、ルウド=ランジールと申します」
「……ルウドか…‥」
オーレイ伯爵は目を細めてルウドを見る。
「……見事な銀髪青眼だな。よく来てくれた」
「…‥ハイ…‥」
なんだろうか?伯爵のルウドを見る目が意味しんだ。
「オーレイ様、僕はしばらくこの国に留まり、いろいろ調べてみたいと思います。街は調べたのですがやはり肝はお城かと」
「城に入るには身元の証明がいるぞ。それなりに名の通った貴族でないと入れないのだ」
「その点はご心配無用かと。このルウドは王宮の騎士なので」
「私の客人として城内入りは出来ます」
「しかしそれではロズが自由に動けないだろう?何かあればルウドの責任になってしまう」
「……そんな怪しい行動をとるわけではないでしょう?城で調べ物するだけなのですから」
「もちろん、そうですよ。ルウドに迷惑かけません」
「そうか…」
それからロズと伯爵が旅の話と質問を繰り返すのをルウドはぼんやり聞いていた。
正直あまり興味を引く内容のものはなかった。
そして帰り際、また再びこの屋敷を訪れる事を約束させられたがその意味が分からなかった。
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