意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第二十九話 魔女ロヴェリナの遺産

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 パーティ会場は建物一つ使用しているとても広い会場である。
 会話をするための大ホールとダンスをするためのダンスホール、食事をするための大部屋、他にも個室が大中小とたくさんある。さらに外の庭園なども解放され皆が自由に行き来できる。
 勿論警備は厳重、手の空いている王国専属騎士は皆借り出される。
 会場の所々に見知った顔の騎士が立っている。

「・・・・・あ」

 騎士と目が合った。彼は何かもの言いたげな顔をしていたがすぐに視線をそらした。

「・・・・・・?」

 ―――なんだろうか?
 それからも何度か同じようなことがあった。騎士たちに何か困ったことがあるのだろうか?
 ともあれ今は女性のエスコート中である。騎士の悩みは後日聞くことにする。





   大ホールでの皇族の挨拶を聞いた後、人々は各々好きに動き出す。
 ルウドはグロリアに付き添ってダンスホールへ入る。

「ふふふっ、一応この日のためにダンスの練習はしていたの。まあ素人レベルですけど」

「別にプロでなくてもいいのですよ。まあ気楽に。私も下手ですがフォローしますよ、それなりに」

「うまくいかなかったら逃げましょう」

「そうですね」


 緩やかな曲に合わせてのんびりとダンスを始める。
 ダンスホールにもたくさん人が居るのでぶつからない様にするのが大変だ。

「可愛らしいお姫さまでしたね。末姫様。それでいてしっかりした感じの。もっと大人し気でふわふわした感じの方かと思っていました」

「外観だけならそんな感じですね、中身がそうではやはり厳しいですが」

「そうですね、国を治める大変な重責を背負っておられるのですから」

「・・・・・」


 皇族の挨拶にまさかティア姫が出てくるとは思わなかった。
 ヒヤリとしたがとっさに顔を隠したし遠くだったので見つからなかったと思う。
 城に戻ったら挨拶に行くべきだと思うがまさかここで見つかるとは思いたくない。
 今この時にあまり悪い事態は考えたくない。


 ルウドとグロリアはダンスを二曲ほど踊ってから移動する。
 友人たちと話すための個室を事前にとっておいた。そこでゆっくり食事もとれるし話もできる。
 二人はその個室へと向かう。









「――――酷い、なんてこと!」

 ティア姫が怒りに震えていた。
 マクレイにはいまだ状況が分からない。

「姫様、一体何が?どうされました?」

「・・・信じられない、許せない!」

「え?どういうことです?」

 ティア姫はぎろりとマクレイをにらみつけ、黙ってどこかへ歩き出す。
 マクレイは黙ってついていくしかない。




 


 個室では友人たちがすでに揃っていて食事の席が整っていた。

「やあ、待たせてしまったかな?」

「いや、構わないよ。もう始めてしまっているし」

 ダミアン、ミーミアとロズ、コレットはすでに席に座って食事を楽しんでいる。
 ルウドとグロリアも席に座りグラスを受け取る。

「よし、みんな揃ったことだしもう一度乾杯だ」

 グラスにワインを注がれて皆で乾杯した。

「ふふっ、王宮の食事、本当に絶品ね。来てよかったわー」

「それはよかった」

 王宮のパーティ客用の食事などルウドも初めてだ。
 見目麗しく味も絶品、とても贅沢なものだ。
 王宮に住んでいてもやとわれ騎士には縁がない。

「私も誘ってもらえて感謝します。お客の立場でなければこんなご馳走にはありつけない」

「そうなのですか」

「仕事でこのような席に出ることはあるのですけどね」

「それは仕方がないですね。ですがパーティに行かないのですか?婚活パーティとか?」

「そもそも私は貴族ではないですから。街の飲み屋くらいは行きますが」

「そうでしたか。まだ貴族ではないのですね。でもこれからは関わっていくのでしょう?」

「王宮のパーティの空気に慣れているなら社交界もすぐに慣れますよ」

「・・・?私は社交をするつもりはありませんが」

「あらまだそこまで話が進んでいないという事?でもルウドさんは貴族になるのでは?」

「まさか、そんなことは」

 どこでそんな話になったのだろうか?
 のんびり考えながらワインの味を楽しんでいると何か外が騒がしい気がした。

「でも婚活はするでしょう?ルウドさんの状況なら相手の幅も広そうだ」

「ふふふ、そうですね。貴族になれば相手も変わりますし」

「決めた相手がいるならその方に合わせた身分になるのも必要ですよ」

「ロズ。そんなつもりは・・・」

「君が好きに決めることだよ」

「・・・・・・」

 ワインを飲み干してふとドアを見るとやはり何か騒がしい気がする。
 少し酔ったかもしれない。

「・・・・・・・」

「――――おやめください!お客様に失礼でしょう!」

「構わないわそんなの!後始末はあなたがするのだから!」

「ええっ?なぜですか?そんな横暴な!」

「頼みもしないのに勝手についてきてそれくらいしなさい!」


 聞き覚えのあるような声がしてルウドは嫌な予感を覚える。
 外で一体何が?嫌あまり知りたくないような。どうするべきか?

「なんだろう?外がなんか騒がしいな」

「・・・・・あ」

 ルウドが迷っているうちにダミアンが席を立ってドアを開けてしまった。
  外の声がはっきり聞こえる。


「お願いですからもうお部屋へ戻りましょう?」

「いやよ!このまま黙っていられるものですか!」

「黙っていてくださいよ?そろそろ我慢することも覚えて下さいよ、いつまでも子供ではないのですから」

「あなたが黙っていなさい!」


「・・・・・・」

 廊下で誰かが騒いでいる。何か聞いたことのある男女の声だ。

「・・・あのう?どうかされたのですか?」

 ダミアンが廊下のほうに声をかけた。
 すると誰かの靴音が近づいてくる。

「・・・あっ」

「お邪魔するわよ」

「・・・・・」

 姫様が現れた。


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