24 / 200
第五話 幻の秘薬と奇跡の姫
3
しおりを挟む本日快晴。この所気候が随分いいので魔法使いゾフィーはふらりと森へ薬草摘みに出かける。この時期は薬草だけでなく木の実なども沢山生っていて動物達も見かける。明るく賑やかでいい。
ゾフィーはお昼前に出かけようと準備していざ出かけようと扉を開けた所で足止めされた。外へ出るとちょうど姫と騎士達がぞろぞろこちらへやってきた。
「ゾフィー殿、お出かけの所申し訳ない」
「ハリス隊長まで?どうかなさいましたか?」
「実はこの子供が…」
何故か子供を抱えたハリスが歯切れが悪そうに子供を差し出す。
子供は目を輝かせてゾフィーを物珍しげに見て叫ぶ。
「魔法使い!すげええ!ホントにいたんだ!」
「……なんですかこの子供は?」
「ゾフィーに用があるんですって」
「姫様、街の子供ですね。よくここまで連れてこれたものだ」
非難めいた視線をハリス隊長に向けると彼は何気に目を逸らした。
「聞いてあげるくらいいいでしょう?ゾフィー」
「国専魔法使いは街の用事を引き受ける事は出来ないのですよ。だから聞くだけ無駄です」
「分かってるけど……折角だし…‥」
「こういう者をいちいち通していてはキリがないでしょう?大体国専魔法使いが街の事に手を出しては街の者の立場がありません。そういうケジメはきっちりつけなければ」
「……‥」
姫が黙ってしまったので子供が慌てて暴れ出す。
「そんな堅いこと言わずに助けてくれよ!魔法使いは何でも出来るのでしょう?どんな病気だって直してくれるはずだ!だから、助けてくれよ!」
子供の必死の懇願に大人達は押し黙った。
ゾフィーは薬草を集めるための籠を背負う。
「ゾフィー、森へ行くの?」
「はい、姫様もご一緒されますか?」
「私はまだ薔薇の手入れがあるの。ちゃんとしないとルウドに怒られるわ」
「それは大変ですね」
「ちょっと!何で無視するんだよっ!こっちは頼んでるんだよ必死で!」
ゾフィーはハリスに抱えられている子供を仕方なく一瞥する。
「話にならん。病気なら町医者に頼め。ハリスさん、とっとと城から追い出して下さい」
「はい」
「ではみなさん、私は森へ行ってきます」
「どうぞ、行ってらっしゃい」
ゾフィーは最早子供など眼中にもなくとっとと森へと歩きだす。
後ろで何か子供の叫ぶ声がしたが意に介さなかった。
「くっそうっ!何なんだよあいつ!ホントに魔法使いかよっ!見掛け倒しじゃないのかよ!信じられねえ!」
「信じられんのはお前だ小僧。よくも国一番の魔法使いに街医者の仕事など持ってきたものだ。お前の要求など通る道理もないだろう」
ハリスは子供を抱え、城門へ歩き出す。
「なんでだよ!くそうっ、困ってる街人への情けもないのかよっ!」
「話にならない。魔法使いを何だと思っているのだ。これだから子供は困る」
「ねえちゃん!お姫様っ!助けてくれよっ!母ちゃんが訳わかんない病気で困ってんだよっ!死んじまったら俺一人になっちまう!」
「ゾフィーは医者じゃないわ。それはきちんとした街のお医者様に見て貰うべきよ」
「―――――っ、それが出来ないから頼んでるんだろっ!」
「姫様、昼食前に薔薇の手入れを済ませてしまうのでしょう?もうすぐ昼食の時間になってしまいますよ。子供は私に任せて薔薇園にお戻りください」
「そうね。でもなんか無責任な感じするけど?」
「そんな事はお気になさらず。この子供が不法侵入者なのですから」
「……そうね。お役に立てなくてごめんなさいね、坊や」
「坊やじゃない!」
ティア姫は困ったように子供を見てから騎士達と共にそそくさと薔薇園の方へ去って行った。ハリスは城門へ進む。
「最悪だ!期待はずれもいいとこだ!何だこの城、偉いくせに優しい奴なんか誰もいない!最低だ!」
「無礼な事を言うな。道理を外れた事をしていて偉そうに何だ。最初から門前払いのお前をわざわざ魔法使いの所まで連れて行って下さった方に対してそんな言い方しかできないのか。非常識で最低なのはお前だ。二度と来るな。元より二度とお顔を拝謁出来る様な身分でもないのだからな」
「――――――!」
ハリスは容赦なく子供を門の外に放り出した。門番にもきっちり子供を中に入れてはならないと釘を刺した。
0
あなたにおすすめの小説
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた
月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。
崖っぷち令嬢の生き残り術
甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」
主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。
その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。
ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。
知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。
清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!?
困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
【完結】番のキミが幸せでありさえすれば それでいい
美麗
恋愛
獣人の国 スピノザ
私、エンリケは王弟として生をうけた。
父と母は番であるため、私と兄はもちろん同母兄弟である。
ただし、番を感じることは稀であり
通常は婚約者と婚姻する。
万が一ではあるが、番の命の危険には
番の悲鳴が聞こえるとの
そんな
話もあるようだ。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる