意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第五話 幻の秘薬と奇跡の姫

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 本日快晴。この所気候が随分いいので魔法使いゾフィーはふらりと森へ薬草摘みに出かける。この時期は薬草だけでなく木の実なども沢山生っていて動物達も見かける。明るく賑やかでいい。
 ゾフィーはお昼前に出かけようと準備していざ出かけようと扉を開けた所で足止めされた。外へ出るとちょうど姫と騎士達がぞろぞろこちらへやってきた。

「ゾフィー殿、お出かけの所申し訳ない」

「ハリス隊長まで?どうかなさいましたか?」

「実はこの子供が…」

 何故か子供を抱えたハリスが歯切れが悪そうに子供を差し出す。
 子供は目を輝かせてゾフィーを物珍しげに見て叫ぶ。

「魔法使い!すげええ!ホントにいたんだ!」

「……なんですかこの子供は?」

「ゾフィーに用があるんですって」

「姫様、街の子供ですね。よくここまで連れてこれたものだ」

 非難めいた視線をハリス隊長に向けると彼は何気に目を逸らした。

「聞いてあげるくらいいいでしょう?ゾフィー」

「国専魔法使いは街の用事を引き受ける事は出来ないのですよ。だから聞くだけ無駄です」

「分かってるけど……折角だし…‥」

「こういう者をいちいち通していてはキリがないでしょう?大体国専魔法使いが街の事に手を出しては街の者の立場がありません。そういうケジメはきっちりつけなければ」

「……‥」

 姫が黙ってしまったので子供が慌てて暴れ出す。

「そんな堅いこと言わずに助けてくれよ!魔法使いは何でも出来るのでしょう?どんな病気だって直してくれるはずだ!だから、助けてくれよ!」

 子供の必死の懇願に大人達は押し黙った。
 ゾフィーは薬草を集めるための籠を背負う。

「ゾフィー、森へ行くの?」

「はい、姫様もご一緒されますか?」

「私はまだ薔薇の手入れがあるの。ちゃんとしないとルウドに怒られるわ」

「それは大変ですね」

「ちょっと!何で無視するんだよっ!こっちは頼んでるんだよ必死で!」

 ゾフィーはハリスに抱えられている子供を仕方なく一瞥する。

「話にならん。病気なら町医者に頼め。ハリスさん、とっとと城から追い出して下さい」

「はい」

「ではみなさん、私は森へ行ってきます」

「どうぞ、行ってらっしゃい」

 ゾフィーは最早子供など眼中にもなくとっとと森へと歩きだす。
 後ろで何か子供の叫ぶ声がしたが意に介さなかった。



「くっそうっ!何なんだよあいつ!ホントに魔法使いかよっ!見掛け倒しじゃないのかよ!信じられねえ!」

「信じられんのはお前だ小僧。よくも国一番の魔法使いに街医者の仕事など持ってきたものだ。お前の要求など通る道理もないだろう」

 ハリスは子供を抱え、城門へ歩き出す。

「なんでだよ!くそうっ、困ってる街人への情けもないのかよっ!」

「話にならない。魔法使いを何だと思っているのだ。これだから子供は困る」

「ねえちゃん!お姫様っ!助けてくれよっ!母ちゃんが訳わかんない病気で困ってんだよっ!死んじまったら俺一人になっちまう!」

「ゾフィーは医者じゃないわ。それはきちんとした街のお医者様に見て貰うべきよ」

「―――――っ、それが出来ないから頼んでるんだろっ!」

「姫様、昼食前に薔薇の手入れを済ませてしまうのでしょう?もうすぐ昼食の時間になってしまいますよ。子供は私に任せて薔薇園にお戻りください」

「そうね。でもなんか無責任な感じするけど?」

「そんな事はお気になさらず。この子供が不法侵入者なのですから」

「……そうね。お役に立てなくてごめんなさいね、坊や」

「坊やじゃない!」

 ティア姫は困ったように子供を見てから騎士達と共にそそくさと薔薇園の方へ去って行った。ハリスは城門へ進む。

「最悪だ!期待はずれもいいとこだ!何だこの城、偉いくせに優しい奴なんか誰もいない!最低だ!」

「無礼な事を言うな。道理を外れた事をしていて偉そうに何だ。最初から門前払いのお前をわざわざ魔法使いの所まで連れて行って下さった方に対してそんな言い方しかできないのか。非常識で最低なのはお前だ。二度と来るな。元より二度とお顔を拝謁出来る様な身分でもないのだからな」

「――――――!」

 ハリスは容赦なく子供を門の外に放り出した。門番にもきっちり子供を中に入れてはならないと釘を刺した。



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