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第八話 真実の書
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しおりを挟む突然やってきたティアはいきなりミザリー姫のおやつをやけ食いし始めた。
「ティア!ああああっ、私のおやつううう!後で食べようと楽しみにとっておいたのにいいいいっ!」
「何よっ!どうせまたどこからか出してくるんでしょ!出しなさいよっ!全部食べてやるっ!食いつくしてぶくぶくに太って嫁になんか行けない醜い身体になってやるっ!」
「ティア!そんな無茶な。数時間でそんなに太らないわよ!お腹壊すわよ!」
「知るもんですか!もっと出しなさいよっ!おかわり!」
「何よおっ、やけ食い?また喧嘩したのね件の彼と。今度は何と言われたのよおお…」
「私なんかと結婚できないって!相手にならないって!絶対あり得ないことだって!」
ティアはおやつをほおばりながら涙を流す。
いくらミザリーでも件の彼の言葉がどれだけ彼女を傷付けたかくらい分かる。
ミザリーだってそんなのは耐えられない。
ミザリーはティアの背をさすりながら優しく言う。
「辛いなら、もうやめたら?あなたならいいお相手幾らでも見つかるわよ?」
「嫌、他になんて考えられない」
「彼を諦めれば楽になれるわ、きっと別の相手が貴方を幸せにしてくれる。あなたの傷を癒してくれる」
「ルウドでなければ意味がないわ。ルウドしかいらない」
「……」
実の所ミザリーにはあの男のどこがいいのか未だにさっぱり分からなかった。
冷たいし、口が煩いし、顔が怖い。
あの男に会って最初から懐く人間などそうそういない。
いつも傷つけられているティアがなぜ未だにあの男がいいというのか理解できない。
ミザリーにはそれ以上かける言葉はなかった。
ティアが諦められないならどうしようもない。
結局ティアは部屋にあるおやつをすべて食いつくして、泣き終えてから出て行った。
一体何をしに来たのか謎だった。
王妃ロゼリアは部屋で刺しゅうなどをしていた。
するとティア姫がやってきた。
「失礼しますわお母様。私資料を捜していますの、書庫を捜させて下さい」
「いいわよ、ティア」
王妃は微笑む。
ティアはなかなか王妃の部屋には来ない。珍しくもやってきた姫は何故か目の下が腫れていた。またどこかで泣いていたのだろうか?
「ティア、またルウドと喧嘩したの?」
「…いいえ、喧嘩じゃないわ」
「じゃあどうしたの?一人で悩んでいないで聞かせて頂戴?」
昔からティアは王妃に遠慮する。部屋にもなかなか近づかない。
原因は分かっているがやはり王妃には寂しい事だ。
ティアは仕方なく本を捜すのをやめて王妃の向かいにある椅子に座る。
「……ルウドが、私との結婚はあり得ないって。私なんか相手にならないって。分かっているけど、知っているけど、……聞きたくなかった……」
「まあ……・」
傷ついた姫を痛ましそうに王妃は見る。
「身分とか立場を考えて言ったのね」
「……あんなに否定する事ないじゃない」
「そうねえ…」
王妃は言葉に窮した。
そもそもティアはルウドに全く愛されていないと思っているが、王妃から見れば目に入れても痛くないほどルウドはティアを愛しているようにしか見えない。
口で何と言おうとも行動の全てがティアを愛していると言っているようにしか思えない。
ティアは知らない。だが周囲の人間でそれを知らないものはなかなかいない。
王妃は娘の横に座り、髪を撫でる。
「ティア、彼を諦めるの?」
「諦めないわ」
繊細で真っすぐで可愛い三番目の娘。
姫が幼い頃にうっかり病気になってしまったせいで姫との時間をルウドに渡してしまった。仕方がなかったとはいえその空白の時間を何度も後悔した。
ティア姫を取り戻した頃には既に姫の心はルウド一色だった。
母に会えたことよりもルウドに会いたいと泣かれた時が一番悔しかった。
「ルウドを、そんなに愛しているの?彼がどんなものでも?」
「愛しているわ」
全身全霊で彼を愛している。そんな姫に誰が何を言えようか。
「…お母様、彼がどんなものでも、ってどういう意味?ルウドの事、何か知ってる?」
「いいえ、知らないわ」
「ホントに?」
「ええ、知らないのは本当よ」
王妃はにこやかに言う。心当たりがあったとて子供達にはけして話す事はないだろう。
王妃の書庫から何冊か本を借りて部屋に戻るとルウドが待っていた。
「……‥」
「………」
「……ルウド、私調べ物するから、部屋を出ていてもいいのよ?」
「私は護衛ですよ。姫の傍を離れはしません」
「じゃあルウドの好きなロマンス小説でも読んでいることね。これを読んで少しは女心を勉強するといいわ」
「…………」
困惑顔のルウドは黙って本を手に取り、椅子に座る。
黙って本を開き、ページを捲る。
「……?」
何だか様子の違うルウドに不審を覚えながらもティアは調べ物に集中する。
集中しだすと傍のルウドの事など吹き飛んでただ欲しい文字を追い捜す。
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