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第十一話 姉の条件
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しおりを挟むしばらくして、主催者のレナン夫妻とパラレウス皇子が現れた。
夫妻と皇子は交互に挨拶をし、様々な催しが始まる。
他国から来た珍しい踊り子たちの珍しい踊りから、とある貴族令嬢の自慢の歌声、更には楽器の演奏など。
少しでも芸に自慢がある者達が目立つ為の席が設けてある。
皇子は立場上熱心に見ているがティアはすぐに飽きた。向かいのアリシアも飽きたらしくエルフィードと仲睦まじく話している。
「…あれってお兄様の為の宴席よね。見え見えだわ」
「いいじゃない、それでお相手がみつかるなら」
「あれで見つかるものかしら?」
レナン夫妻の趣味は良く分からない。
食事を終えた頃を見計らってエリックがにこやかに声をかける。
「ティア様、私と踊って下さいませんか?」
「――――――え……?」
「さっきみたいのではなくて、普通でいいんですよ普通で」
普通でも嫌だ。部屋の壁側で控えていたルウドをちらりと見るとなぜか周りにドレスの貴婦人が居て口説かれて困っていた。
「……‥」
「ああ、あの騎士、壁に居るのに目立つからさっきから女性に大人気みたいだよ。羨ましい」
エリックが微笑ましそうにルウドを眺める。
「騎士がいなくても私が貴方を守るよ。さあ、行きましょう?」
ティアが答えないうちにエリックに手を引かれ、しぶしぶダンスホールに出た。
軽やかなワルツが流れる。
「結構やるねお姫さま。でも残念だな。ずっと浮かない顔だ。そんなに楽しくないかな、私と居るのは?」
「そんな事は…‥」
「それにしても最初見た時は瓜二つと思ったけどしばらく見ていると全然違うね君たち姉妹は。君の方が控え目なんだ。でもまあ私はその方が好きかな」
「……‥」
ティアは不可解そうにエリックを見る。
控え目、初めて聞いた。いつもと言われていることが逆だ。
しかもこの男にはアリシア姫が淑やかそうには見えないらしい。
ワルツが終わり、チークタイムに入るとエリックは遠慮もなくティアを引きよせ抱きかかえる。
「君とはもっと話したいな、このまま終わりにはしたくない」
耳元で囁くように言われてティアは怖気が走った。
泣きたくなって、助けを求めるようにルウドの方を見ると彼は未だに貴婦人達に纏わりつかれていた。
――――――ル、ルウド!
役に立たない。何の為の護衛だと怒りたい。
ダンスが終わって席に戻るとアリシアとエルフィードが消えていた。
「おや、二人はお楽しみの時間に入ったかな?」
「……な、なによそれ…‥?」
「んー?まあ婚約者同士だし中々会えないからね。二人の邪魔しちゃいけないよ。私達も会場を出ようか?」
「……え……?」
周囲を見たが誰もティアに助けの手を出す者はいなかった。
…‥…ル、ルウド!何やってんのよ―――――――――!
ルウドは未だに婦人達に取り巻かれている。
ティアはエリックに肩を抱かれ、会場を後にする。
まずい、これはマズすぎる。
身の危険を感じつつもティアはどうする事も出来ない。
腕を振り払って逃げたいところだがしっかり肩を掴まれていて逃げられそうもない。
「さ、私の部屋で一息入れましょう。姫様の部屋ほどではないですが結構いい部屋をもらったのですよ」
「そ、そう、なら私もそろそろ自分の部屋に戻るわ。つ、疲れたし」
「そんなご遠慮なさらずに。私に部屋でも休めますよ。二人きりで、交流を深めようではありませんか」
「え…それは……ちょっと……」
にこやかなエリックに問答無用で部屋に押し込められた。
「え…・ちょっ……!」
…ル、ルウド――――――っ!
ドアが閉められガチャリと鍵がかけられた。
貴婦人達に取り囲まれて困っているうちにティア姫の姿が消えていてルウドは焦った。
周囲の警備達に聞くとティア姫はエリックに連れられて出て行ったといわれた。
「…ひ、姫様…」
どこへ行ったのだろう?考えうる場所はエリック殿の部屋か?
姫自ら自分の部屋に招き入れるはずがないからそれしか考えられない。
「おやルウド、どうした?顔色が悪いぞ?」
「あ、皇子、すみません、ティア様を見失ってしまって」
「うん?エリックさんと出て行ったろう?そんな大層な事じゃないよ。部屋で話しているのだろう?ルウドは護衛だけど余り姫達の邪魔をしてはいけないよ?」
皇子ににこやかに釘を刺された。
「護衛のルウドは別にティアの恋人ではないのだから」
「……はい…‥そうですね」
それでも護衛としての任がある。ルウドはティアのいるエリックの部屋へと走った。
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