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第十二話 噓と真実の饗宴
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しおりを挟むルウドはティア姫を捜していた。
護衛達に聞いて姫が通った方向を進んでいくとアリシア姫の部屋付近に行き着いた。
現在アリシア姫はエルフィード皇子と共にいるはず。中に入るのは憚られた。
が、部屋を通り過ぎようとすると少しドアが開いていて中が見えた。
「…‥姫…‥?」
中にティア姫が居て何故か中にあるドアの前で伏せている。
「何をされているのです?」
「黙って!」
「……?」
おそらく寝室であろう隣の部屋の少し開かれたドアの隙間を覗くとルウドはさっと顔色を変えた。
「――――――ティア様っ、なななななななに覗いてるんです!」
ルウドはすかさずティアの目と口を腕で覆い隠し、もう片方の腕でティアを抱えて部屋を出る。
「―――――――っ!」
部屋のドアを閉めて廊下を出て、ティアを降ろすと姫は怒りだした。
「何するのよ!今いいとこだったのに!」
「やめなさい!覗きなんてはしたない!」
「後学の為よ!いろいろ知っておく必要があるでしょう?」
「それが姫様のすることですか!知る必要はありません!子供にはまだ早すぎます!」
「子供ってなによ!私もう十六よ!馬鹿にしないでよ!」
「馬鹿になどしてません!ですがしている事は子供じみてますよ!変な好奇心ばかり持つのはやめなさい!」
「何よ、勝手な事ばかり言って!ルウドが教えてくれるわけでもないくせに!」
「……あの…?」
「なんで私が教えるんですか?そんな事は未来の旦那様に教えて貰いなさい!」
「……その、すみません…・?」
「何よ未来の旦那さまって?私の恋人はあなたでしょう?愛してるって言った言葉は嘘だったのね!酷いわあああっ!」
「………」
「いい加減になさい!あんまり我儘言うなら恋人もやめますよ!」
「そんなのいやああああっ!」
ティアはすかさずルウドに飛びついた。やっぱり行動が子供である。
ルウドは一つ息を吐いた。
「あ、あのうお取り込みの所済みません。屋敷の主様の部屋はどこでしょうか?」
「ああ、失礼。レナン夫妻は今隣の夜会会場だと思いますよ。お客さまが居られますから」
「そうですか、有難うございます。行ってみますね」
レナン伯のお客様らしい。恥ずかしい所を見られてしまった。
黒い姿の彼を見送り、二人はバツが悪そうに視線を合わせた。
「ホントにどうなさったのかしら?心配ね」
「心配だわ…」
夜会の会場でひそひそと噂する声が聞こえる。
「お疲れなのかしら?」
「なんだかとても肩を落としてらっしゃるわ。可哀そう」
レナン婦人はとても焦った。このままではとてもまずい。
「パラレウス皇子。少しお部屋でお休みになっては?」
ぼんやりと棒立ちしていた皇子がふと婦人を見る。
「……え、なんですか?」
「お、お休みしましょう。お疲れなのですね。何も気付かなくて申し訳ありません」
「え?私は疲れてなどおりませんよ、嫌だなあ、あはは、あはは、はは…」
笑い声にすら生気がない。一体どうしたのか?
とにかく婦人は皇子を個室に案内して休ませることにした。
皇子は一人になって椅子に座ってぼんやりする。
傍から見たら疲れてる、と思われても仕方がないと思う。
―――どうしたのだ、私は?
おかしいのは分かっている。だけどどうしていいか分からない。
ある時を境に、パラレウスの思考回路が停止して、壊れてしまった。
深く息を吸ってから大きく吐きだす。
「……・」
具合が悪いと言えば悪いのかもしれない。まるで靄がかかったような感情の渦がパラレウスの脳裏に絡みついて苦しくて気持ち悪い。
どうにか忘れようと、知らぬふりをしようとするのに気持ちがどうしても消えてくれなくて、どんどん気分が悪くなる。
何かすごく気持ちが落ち着かなくてざわざわする。
―――私は一体どうしたのだ?
何も考えられない。皇子はこんな自分の状態をどうすることも出来ずにただ無為にぼんやり時間を過ごす。
「う、ふふっ、ふふふふふっ、ふふっ、あはっ、あははははは!おほほほほほほほ!」
金の髪を黄色いリボンでまとめ、タンポポ色のふわふわのドレスを身にまとい、耳と首には緑の宝石を付け、これからパーティにでも行くような装いでミザリー姫は部屋を出た。
異常なテンションで笑いながら先を進む姫に誰も声を掛けない。皆が見て見ぬふりをする。
「ああっ、胸が苦しいっ、どうしましょう?嫌だ私ったら、すごく張り切っているみたいで嫌だわ。別にこんな事普通なのにっ。何でもないのよ。うふふふふふふふっ!」
「お、お嬢様、どうかされましたか?」
「いやあね、あなた!何でもないのよ何でもないったら!おほほほほほほほ!普通よ!普通なのよっ!」
「そ、そうですか……?」
通りがかりの警備兵は心配そうに彼女を見送る。
金髪の淑女は笑いながら踊っている。ただ立っているだけなら素晴らしく美人の女性であるのに動くばかりにかなり異常な方向に損をしている。
「お、お嬢様、どこかお悪いのでは?お休みになった方が?」
どこかの紳士が声をかけると彼女は異常な高笑いを始めた。
「うふふふふふふふふっ!悪くなんか無いわ!絶好調よ!準備万端何時でもオーケイよ!うふふふふふあははははは!おほほほほほほ!」
彼女は止まらない。だれにも止められない。
しかし、王国の姫としての彼女の行動は余りに奇矯が過ぎてこのままでは王家の評判すら地に落としそうである。
「止めなければならないわ。あれを。とにかく捕まえてどこかに隔離した方がいいわね?そしてお医者を呼んでやっぱり見て貰った方がいいわ。おかしな病気だったらどうしよう?」
「ティア様、そんな事は…」
「今止められるのは私しかいないみたいよ。お兄様は放心中。お姉さまはラブラブ中。異常者爆進中のミザリーお姉さまをとっとと片付けなければ気が休まらないわ」
「……」
「さあ行くわよ、あっ、逃げた!」
ティアの動向を察したミザリー姫は意外にも機敏に逃げ去った。
「こんな時ばかり鋭いってどうなのかしら全く」
ぶつぶつ文句を言いながらティアはミザリーを追い掛ける。
護衛のルウドも仕方なくあとに続く。
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