2 / 6
2
しおりを挟む
「アリシア様、少しよろしいですか?」
翌朝、執務室の書類に目を通していた私は、ふいに屋敷の使用人からそう告げられた。
「どなたがいらしたの?」
「……第一騎士団副団長、レオン・エルフォード様でございます」
「――っ」
手にしていた羽ペンが、机に落ちた。
レオン・エルフォード。金髪碧眼の爽やかな騎士。
民衆からの人気も高く、王太子直属の近衛騎士でもある、まさに乙女ゲームの“王道ヒーロー”枠。
そして、ゲーム内ではヒロインと最も純愛的なルートをたどる人物だ。
(なんで……彼まで私のところに?)
頭を抱えたい気持ちを抑えて、私は応接室へと足を運んだ。
「……久しぶりですね、レオン様」
「ええ。けれど、こうしてお会いできて嬉しいです、アリシア様」
微笑みを浮かべる彼のまなざしは、優しく、あたたかい。
相変わらず、絵に描いたような騎士様だ。
だが、それが怖い。なぜなら彼は、ヒロインと出会ってこそ心を開き、恋を育むタイプのキャラクターのはずだから。
にもかかわらず、彼は――私を見つめている。
「突然の訪問、申し訳ありません。ですが、いてもたってもいられなくて……」
「……それで、私にどのようなご用件を?」
あくまで冷静を装って問いかけると、彼は一歩近づいて――深く膝をついた。
そして、信じられない言葉を口にした。
「アリシア・グレイス様。――私と、婚約していただけませんか?」
「――は?」
思わず声が裏返る。
この人、いまなんて?
「婚約……ですって?」
「はい。私はずっと、貴女に憧れていました。凛としていて、誇り高く、誰よりも美しい貴女に。王都の噂なんて、私は信じていませんでした。むしろ、殿下に侮辱されたあの場面を見て……怒りが抑えられなかった」
「……見ていたの?」
「ええ。ですが、貴女はとても堂々としていた。誰にも媚びず、泣きもせず、ただ静かに立ち去るその姿が……」
彼は私の手を取った。温かく、強く、優しい手。
そして、真剣な瞳がまっすぐに私を射抜く。
「もう、誰にも貴女を傷つけさせたくありません。どうか、私の隣に立っていただけませんか?」
「……」
これは夢だ。
夢に違いない。
ゲームの中でも、彼はヒロイン一筋だった。たとえ悪役令嬢が好意を示しても、最終的に彼は選ばない。そういうキャラだった。
それなのに、私に求婚って……どういうこと?
「……申し訳ありませんが、今はお答えできません」
私は静かに手を引いた。
彼が傷ついたような表情を見せたのが心に刺さる。
「……わかりました。けれど、私は諦めません。何度断られても、何度でも参ります。貴女が誰かと結婚するその日まで、私は……」
レオンは立ち上がり、騎士らしい敬礼を残して去っていった。
扉が閉まった後も、私はしばらくその場から動けなかった。
(また、フラグが立ってしまった……)
一夜にして、二人の攻略対象から想いを寄せられるなんて。
これは明らかにおかしい。
私はただ、悪役を演じて婚約破棄を勝ち取っただけのはず。
(もしかして、あのとき私が“美しく婚約破棄された”ことが、何かの分岐条件だった……?)
ゲームをやり込んでいたとはいえ、そんな裏ルートは知らない。
しかも、この勢いだと――
「アリシア様、またお客様が……!」
「……今度は誰よ」
使用人が青ざめながら告げる。
「……第二王子、クリストファー・グレイ様が……」
「……うそ、でしょう……」
第二王子、クリストファー。
アルベルト殿下の弟であり、王位継承権第二位。
長身で銀髪碧眼、涼しげな眼差しと皮肉を含んだ微笑が特徴的な、クールな皮肉屋。
ゲームでは隠しキャラ扱いで、ルートに入るには相当難解な条件が必要だった。
その分、ルートに入れば溺愛度が跳ね上がる、いわゆる“ヤンデレ気質”のキャラクターだ。
「いやはや、まさか兄上が貴女のような才色兼備の令嬢を手放すとは……世の中わからないものだ」
彼は私の執務室に無遠慮に入り、ソファに勝手に腰を下ろした。
「……何のご用件でいらしたのですか、殿下」
「何の用件って? 貴女の様子を見に来たんだよ。だってあんな目に遭った後だ、泣いて寝込んでいるかと思ったのに、意外と元気そうじゃないか」
茶化すような口調。でも、その目は笑っていない。
彼は私の顔をじっと見つめて、ふっと微笑む。
「ふぅん……やっぱり面白いな、アリシア・グレイス。僕の直感は間違っていなかった」
「……は?」
「貴女、僕のものにならない?」
「……」
もう、耳を疑う暇もない。
一日で三人目。攻略対象たちが次々と私に――恋をしてくる。
これはいったい、何の罰ゲームなのだろう。
「いや、いいね。決めた。兄上が捨てたのなら、僕が拾ってあげる。貴女を王妃にするのも悪くない」
「お断りいたします」
即答だった。
「ふふ、即答か。でも、僕は諦めないよ。だって――」
彼は立ち上がり、私の耳元で囁いた。
「貴女のような面白い女性、見たことないからね。……ねえ、どんな顔を見せてくれるのか、楽しみだ」
そのまま彼は、上機嫌に笑って立ち去っていった。
その夜。
私はベッドの上で、両手で頭を抱えていた。
「なんなの……どうして……こんなことに……」
婚約破棄されて、自由を手に入れて、静かに暮らすはずだったのに。
まさか攻略対象たちに次々と求婚されることになるなんて――。
しかもそれぞれが、どう考えても本気の様子で。
(どこで間違えたの……?)
いや、間違っていない。私の計算通り、婚約破棄は成功した。
アルベルト殿下も、今ごろヒロインのセリアと恋を育んでいるはず。
けれど、その代償はあまりにも――
そのとき、部屋のドアがノックもなく開いた。
「……誰!?」
「アリシア……っ!」
声を聞いた瞬間、凍りついた。
そこに立っていたのは――王太子、アルベルト殿下だった。
「どうして……貴方がここに……!」
「話があるんだ……っ、アリシア……! あの日のこと、俺は……」
翌朝、執務室の書類に目を通していた私は、ふいに屋敷の使用人からそう告げられた。
「どなたがいらしたの?」
「……第一騎士団副団長、レオン・エルフォード様でございます」
「――っ」
手にしていた羽ペンが、机に落ちた。
レオン・エルフォード。金髪碧眼の爽やかな騎士。
民衆からの人気も高く、王太子直属の近衛騎士でもある、まさに乙女ゲームの“王道ヒーロー”枠。
そして、ゲーム内ではヒロインと最も純愛的なルートをたどる人物だ。
(なんで……彼まで私のところに?)
頭を抱えたい気持ちを抑えて、私は応接室へと足を運んだ。
「……久しぶりですね、レオン様」
「ええ。けれど、こうしてお会いできて嬉しいです、アリシア様」
微笑みを浮かべる彼のまなざしは、優しく、あたたかい。
相変わらず、絵に描いたような騎士様だ。
だが、それが怖い。なぜなら彼は、ヒロインと出会ってこそ心を開き、恋を育むタイプのキャラクターのはずだから。
にもかかわらず、彼は――私を見つめている。
「突然の訪問、申し訳ありません。ですが、いてもたってもいられなくて……」
「……それで、私にどのようなご用件を?」
あくまで冷静を装って問いかけると、彼は一歩近づいて――深く膝をついた。
そして、信じられない言葉を口にした。
「アリシア・グレイス様。――私と、婚約していただけませんか?」
「――は?」
思わず声が裏返る。
この人、いまなんて?
「婚約……ですって?」
「はい。私はずっと、貴女に憧れていました。凛としていて、誇り高く、誰よりも美しい貴女に。王都の噂なんて、私は信じていませんでした。むしろ、殿下に侮辱されたあの場面を見て……怒りが抑えられなかった」
「……見ていたの?」
「ええ。ですが、貴女はとても堂々としていた。誰にも媚びず、泣きもせず、ただ静かに立ち去るその姿が……」
彼は私の手を取った。温かく、強く、優しい手。
そして、真剣な瞳がまっすぐに私を射抜く。
「もう、誰にも貴女を傷つけさせたくありません。どうか、私の隣に立っていただけませんか?」
「……」
これは夢だ。
夢に違いない。
ゲームの中でも、彼はヒロイン一筋だった。たとえ悪役令嬢が好意を示しても、最終的に彼は選ばない。そういうキャラだった。
それなのに、私に求婚って……どういうこと?
「……申し訳ありませんが、今はお答えできません」
私は静かに手を引いた。
彼が傷ついたような表情を見せたのが心に刺さる。
「……わかりました。けれど、私は諦めません。何度断られても、何度でも参ります。貴女が誰かと結婚するその日まで、私は……」
レオンは立ち上がり、騎士らしい敬礼を残して去っていった。
扉が閉まった後も、私はしばらくその場から動けなかった。
(また、フラグが立ってしまった……)
一夜にして、二人の攻略対象から想いを寄せられるなんて。
これは明らかにおかしい。
私はただ、悪役を演じて婚約破棄を勝ち取っただけのはず。
(もしかして、あのとき私が“美しく婚約破棄された”ことが、何かの分岐条件だった……?)
ゲームをやり込んでいたとはいえ、そんな裏ルートは知らない。
しかも、この勢いだと――
「アリシア様、またお客様が……!」
「……今度は誰よ」
使用人が青ざめながら告げる。
「……第二王子、クリストファー・グレイ様が……」
「……うそ、でしょう……」
第二王子、クリストファー。
アルベルト殿下の弟であり、王位継承権第二位。
長身で銀髪碧眼、涼しげな眼差しと皮肉を含んだ微笑が特徴的な、クールな皮肉屋。
ゲームでは隠しキャラ扱いで、ルートに入るには相当難解な条件が必要だった。
その分、ルートに入れば溺愛度が跳ね上がる、いわゆる“ヤンデレ気質”のキャラクターだ。
「いやはや、まさか兄上が貴女のような才色兼備の令嬢を手放すとは……世の中わからないものだ」
彼は私の執務室に無遠慮に入り、ソファに勝手に腰を下ろした。
「……何のご用件でいらしたのですか、殿下」
「何の用件って? 貴女の様子を見に来たんだよ。だってあんな目に遭った後だ、泣いて寝込んでいるかと思ったのに、意外と元気そうじゃないか」
茶化すような口調。でも、その目は笑っていない。
彼は私の顔をじっと見つめて、ふっと微笑む。
「ふぅん……やっぱり面白いな、アリシア・グレイス。僕の直感は間違っていなかった」
「……は?」
「貴女、僕のものにならない?」
「……」
もう、耳を疑う暇もない。
一日で三人目。攻略対象たちが次々と私に――恋をしてくる。
これはいったい、何の罰ゲームなのだろう。
「いや、いいね。決めた。兄上が捨てたのなら、僕が拾ってあげる。貴女を王妃にするのも悪くない」
「お断りいたします」
即答だった。
「ふふ、即答か。でも、僕は諦めないよ。だって――」
彼は立ち上がり、私の耳元で囁いた。
「貴女のような面白い女性、見たことないからね。……ねえ、どんな顔を見せてくれるのか、楽しみだ」
そのまま彼は、上機嫌に笑って立ち去っていった。
その夜。
私はベッドの上で、両手で頭を抱えていた。
「なんなの……どうして……こんなことに……」
婚約破棄されて、自由を手に入れて、静かに暮らすはずだったのに。
まさか攻略対象たちに次々と求婚されることになるなんて――。
しかもそれぞれが、どう考えても本気の様子で。
(どこで間違えたの……?)
いや、間違っていない。私の計算通り、婚約破棄は成功した。
アルベルト殿下も、今ごろヒロインのセリアと恋を育んでいるはず。
けれど、その代償はあまりにも――
そのとき、部屋のドアがノックもなく開いた。
「……誰!?」
「アリシア……っ!」
声を聞いた瞬間、凍りついた。
そこに立っていたのは――王太子、アルベルト殿下だった。
「どうして……貴方がここに……!」
「話があるんだ……っ、アリシア……! あの日のこと、俺は……」
60
あなたにおすすめの小説
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
婚約破棄された公爵令嬢エルカミーノの、神級魔法覚醒と溺愛逆ハーレム生活
ふわふわ
恋愛
公爵令嬢エルカミーノ・ヴァレンティーナは、王太子フィオリーノとの婚約を心から大切にし、完璧な王太子妃候補として日々を過ごしていた。
しかし、学園卒業パーティーの夜、突然の公開婚約破棄。
「転入生の聖女リヴォルタこそが真実の愛だ。お前は冷たい悪役令嬢だ」との言葉とともに、周囲の貴族たちも一斉に彼女を嘲笑う。
傷心と絶望の淵で、エルカミーノは自身の体内に眠っていた「神級の古代魔法」が覚醒するのを悟る。
封印されていた万能の力――治癒、攻撃、予知、魅了耐性すべてが神の領域に達するチート能力が、ついに解放された。
さらに、婚約破棄の余波で明らかになる衝撃の事実。
リヴォルタの「聖女の力」は偽物だった。
エルカミーノの領地は異常な豊作を迎え、王国の経済を支えるまでに。
フィオリーノとリヴォルタは、次々と失脚の淵へ追い込まれていく――。
一方、覚醒したエルカミーノの周りには、運命の攻略対象たちが次々と集結する。
- 幼馴染の冷徹騎士団長キャブオール(ヤンデレ溺愛)
- 金髪強引隣国王子クーガ(ワイルド溺愛)
- 黒髪ミステリアス魔導士グランタ(知性溺愛)
- もふもふ獣人族王子コバルト(忠犬溺愛)
最初は「静かにスローライフを」と願っていたエルカミーノだったが、四人の熱烈な愛と守護に囲まれ、いつしか彼女自身も彼らを深く愛するようになる。
経済的・社会的・魔法的な「ざまぁ」を経て、
エルカミーノは新女王として即位。
異世界ルールで認められた複数婚姻により、四人と結ばれ、
愛に満ちた子宝にも恵まれる。
婚約破棄された悪役令嬢が、最強チート能力と四人の溺愛夫たちを得て、
王国を繁栄させながら永遠の幸せを手に入れる――
爽快ざまぁ&極甘逆ハーレム・ファンタジー、完結!
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【完結】悪役令嬢のカウンセラー
みねバイヤーン
恋愛
わたくしエリザベート、ええ、悪役令嬢ですわ。悪役令嬢を極めましたので、愛するご同業のお嬢さまがたのお力になりたいと思っていてよ。ほほほ、悩める悪役令嬢の訪れをお待ちしておりますわ。
(一話完結の続き物です)
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる