婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ

文字の大きさ
7 / 7

7

しおりを挟む
 王家と私の商会が提携してから数週間が経過した。表向きは王家の庇護のもと、私の事業は順調に拡大し続けている。しかし、裏では様々な駆け引きが行われていた。

 王家が完全に私の事業を掌握できないことに不満を抱く一派が、密かに動き出していたのだ。

「王家の商会を通さずに流通させるルートを増やしているのは事実か?」

 王宮に呼び出された私は、王太子アルベルトに詰問された。

「ええ、そうです」

 私は隠すことなく答えた。

「なっ……! 貴様、王家を裏切る気か!?」

「いいえ。王家との契約では、“王家の商会と協力する”とは言いましたが、“すべての取引を王家の商会経由にする”とは言っていません」

 アルベルトは顔を真っ赤にして拳を握り締めたが、隣に座る王は冷静に私を見つめていた。

「貴様の狙いは何だ?」

「シンプルなことです。王家に依存せずに、自分の事業を続けること。それだけですよ」

「……なるほどな」

 王は一瞬考え込んだあと、ゆっくりと口を開いた。

「この国の商業は長らく王家の支配下にあった。しかし、貴様の台頭により、貴族や商人たちの意識が変わり始めている」

「変わらなければならない時期なのです。時代は進みます。王家が変化を受け入れられないのなら、私がその役割を担うまで」

 その言葉に、アルベルトが怒りのあまり剣を抜こうとしたが、王が手を挙げて制止した。

「……貴様の考え、理解した。だが、それを許せば王家の権威は揺らぐ」

「いいえ、逆です」

 私は微笑んだ。

「王家が寛容さを示せば、むしろ国民からの信頼は増します。商業を王家が独占するよりも、王家が“支援する”という立場を取ったほうが、より長期的に影響力を維持できるのです」

 王はしばらく沈黙した。

 やがて、静かに頷く。

「……貴様のような者が王太子であれば、国は大きく変わるのだろうな」

「それは……誉め言葉と受け取っておきます」

 王は苦笑しながら、私を見つめた。

「よかろう。貴様のやり方を見守ることにしよう」

 王の許可が下りたことで、王太子アルベルトは完全に孤立した。

 そして、それは王家内の勢力図を変える引き金となった。





 それから数か月後、王太子アルベルトの権力は急速に衰えた。

 商業の自由化を支持する貴族たちが増え、アルベルト派の影響力は縮小。やがて、王太子の座を巡る動きが活発化した。

「王太子殿下、王家の会議で“次期国王にふさわしくない”という意見が出ています」

「な……!」

 アルベルトの顔が青ざめる。

 彼の最大の誤算は、王家の力だけで全てを支配しようとしたことだった。

 その間に私は着実に影響力を広げ、商業界の実権を握った。

 そして——

「アルベルト王太子殿下は、廃嫡が決定しました」

 ついに、アルベルトは王太子の座を失ったのだ。




 アルベルトが失脚し、新たな王太子が指名された。

 それは、アルベルトの弟であり、以前から私の政策を支持していた第二王子、ライナスだった。

「エリザベート、君の助言のおかげで、王家は大きく変わることになる」

 ライナス王太子はそう微笑んだ。

「これからは、商業と王家が対等な関係で発展できるよう、協力していきましょう」

「ええ、もちろん」

 私は静かに頷いた。

 こうして、私の目指した“商業の自由化”は実現した。

 王家の支配から脱した経済は、より活発に動き出し、国の繁栄へとつながっていく。

 そして——

 私はこの国の商業の頂点に立った。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

ほーみ
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...