【短編版】最強悪役令嬢は婚約破棄なんてしない〜ただヒロインを魔王に売り飛ばす〜だって殿下は私のものだもの

降魔 鬼灯

文字の大きさ
2 / 3

後編

しおりを挟む
 婚約者が決まったそうだ。ロザリモンド・バルタイン公爵令嬢。

 俺は、あいつと会った事はないが大嫌いだ。奇しくも同じ日に産まれたせいで、首が座る早さからハイハイ、伝い歩き、発語に至るまで赤ちゃんの頃から比べられまくって、連戦連敗を期してきた。

 その上魔力量、学力全てにおいて俺より遥かに優秀ときたものだ。

 あいつさえいなければ、何度そう思った事か。いつも二番手に甘んじる自分が情けなかった。

 それが政略結婚の相手?

 俺のコンプレックスの元凶が今日来るらしい。

 会いたくない。


☆☆☆☆

 初顔合わせは、格式高く特別室で行うのが通例だ。しかし、俺はあいつが婚約者なのを認めないという意思表示を示すために、俺の執務室前の資料置き場で初顔合わせをすることにした。

 何をしてもあいつと比べられ、失望され続ける俺が、真面目に仕事をすることはないに等しい。

 執務室ほどではないが、もとは応接だったそこも、読まない資料がうず高く積まれてクモの巣が張っている。

 令嬢ならば、一歩も足を踏み入れられないに違いない。




 埃だらけの応接間。お茶も椅子すら用意しない仏頂面の俺の前にあらわれたのは、人形のような可愛らしい少女だった。

 ハチミツを溶かしたようなくるくるカールした淡いハニーブロンドにぱっちりと碧い瞳のお人形。

 くそ可愛いが、残念だな。俺の好みは大人の女だ。いくらくそ可愛くても、好きにはなれんぞ。

「ダリオン殿下、ロザリモンド・バルタインでございます。」
鈴を転がすような声に完璧なカーテシー。ふんっ。マナー教師絶賛のスキルか。なんど貴様と比べられ煮え湯を飲ませられたと思う。 

貴様なぞ、大嫌いだ。

「ダリオンだ。」
仏頂面を隠すことなくちいさく呟いた。

 ふんっ。どうせ貴様には無様に負け続けるんだ。今更マナーがなんだ。

「まあ、ダリオンとお呼びしてもよろしいの?ありがとうございます。私のことは、ローザと呼んでくださいませ。」 

 頬を薔薇色に紅潮させて、潤んだ碧の瞳で見上げられて。
 俺は、ただローザと呼ぶ事しか出来なかった。


 負けてなんかいないぞ。
あいつを呼び捨てにしてやったんだからな。

 俺の呼びかけににっこり微笑むローザ、なんて可愛い。いやいや、絆されるな。 
 コイツは俺のコンプレックスの元凶。


「ダリオン、私以外の女性を愛称呼びしたら、メッですわよ。約束を破ったら、ハリセンボンノーマス。」

 ローザのちいさな白い小指が俺の小指を絡め取った。くるんとしたまつげに縁取られた潤んだ瞳で見つめられて。 

 なにやら可愛すぎる呪文を唱えるピンクのプルプルの唇。

 ローザの全てが可愛すぎて、それからあとの事は覚えていない。



 正気に戻ったのは明け方。大量に溜まっていた執務室の書類を全て処理し終えた後だった。

 すっかり片付いた殺風景な部屋が清々しい。


 そのまま、ずっとサボっていた鍛錬に向かった。精神を整え、身体を鍛えあげる。次回面会は2週間後。

 少しでも精悍に見えるよう、鍛えるぞ。


 だが、言っておくが。

 俺はローザの事が好きなわけではないからな。ヤツは俺の監視下に置かねばならないだけだからな。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

地味令嬢と嘲笑された私ですが、第二王子に見初められて王妃候補になったので、元婚約者はどうぞお幸せに

有賀冬馬
恋愛
「君とは釣り合わない」――そう言って、騎士団長の婚約者はわたしを捨てた。 選んだのは、美しくて派手な侯爵令嬢。社交界でも人気者の彼女に、わたしは敵うはずがない……はずだった。 けれどその直後、わたしが道で偶然助られた男性は、なんと第二王子!? 「君は特別だよ。誰よりもね」 優しく微笑む王子に、わたしの人生は一変する。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

悪役令嬢は妖精よりも賢い

みゅー
恋愛
オーレリアは小説の世界へ転生していることに気づくと、自身が断罪されてしまう悪役令嬢だと気づき破滅を防ぐために奮闘するが……。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

処理中です...