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後編
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婚約者が決まったそうだ。ロザリモンド・バルタイン公爵令嬢。
俺は、あいつと会った事はないが大嫌いだ。奇しくも同じ日に産まれたせいで、首が座る早さからハイハイ、伝い歩き、発語に至るまで赤ちゃんの頃から比べられまくって、連戦連敗を期してきた。
その上魔力量、学力全てにおいて俺より遥かに優秀ときたものだ。
あいつさえいなければ、何度そう思った事か。いつも二番手に甘んじる自分が情けなかった。
それが政略結婚の相手?
俺のコンプレックスの元凶が今日来るらしい。
会いたくない。
☆☆☆☆
初顔合わせは、格式高く特別室で行うのが通例だ。しかし、俺はあいつが婚約者なのを認めないという意思表示を示すために、俺の執務室前の資料置き場で初顔合わせをすることにした。
何をしてもあいつと比べられ、失望され続ける俺が、真面目に仕事をすることはないに等しい。
執務室ほどではないが、もとは応接だったそこも、読まない資料がうず高く積まれてクモの巣が張っている。
令嬢ならば、一歩も足を踏み入れられないに違いない。
埃だらけの応接間。お茶も椅子すら用意しない仏頂面の俺の前にあらわれたのは、人形のような可愛らしい少女だった。
ハチミツを溶かしたようなくるくるカールした淡いハニーブロンドにぱっちりと碧い瞳のお人形。
くそ可愛いが、残念だな。俺の好みは大人の女だ。いくらくそ可愛くても、好きにはなれんぞ。
「ダリオン殿下、ロザリモンド・バルタインでございます。」
鈴を転がすような声に完璧なカーテシー。ふんっ。マナー教師絶賛のスキルか。なんど貴様と比べられ煮え湯を飲ませられたと思う。
貴様なぞ、大嫌いだ。
「ダリオンだ。」
仏頂面を隠すことなくちいさく呟いた。
ふんっ。どうせ貴様には無様に負け続けるんだ。今更マナーがなんだ。
「まあ、ダリオンとお呼びしてもよろしいの?ありがとうございます。私のことは、ローザと呼んでくださいませ。」
頬を薔薇色に紅潮させて、潤んだ碧の瞳で見上げられて。
俺は、ただローザと呼ぶ事しか出来なかった。
負けてなんかいないぞ。
あいつを呼び捨てにしてやったんだからな。
俺の呼びかけににっこり微笑むローザ、なんて可愛い。いやいや、絆されるな。
コイツは俺のコンプレックスの元凶。
「ダリオン、私以外の女性を愛称呼びしたら、メッですわよ。約束を破ったら、ハリセンボンノーマス。」
ローザのちいさな白い小指が俺の小指を絡め取った。くるんとしたまつげに縁取られた潤んだ瞳で見つめられて。
なにやら可愛すぎる呪文を唱えるピンクのプルプルの唇。
ローザの全てが可愛すぎて、それからあとの事は覚えていない。
正気に戻ったのは明け方。大量に溜まっていた執務室の書類を全て処理し終えた後だった。
すっかり片付いた殺風景な部屋が清々しい。
そのまま、ずっとサボっていた鍛錬に向かった。精神を整え、身体を鍛えあげる。次回面会は2週間後。
少しでも精悍に見えるよう、鍛えるぞ。
だが、言っておくが。
俺はローザの事が好きなわけではないからな。ヤツは俺の監視下に置かねばならないだけだからな。
俺は、あいつと会った事はないが大嫌いだ。奇しくも同じ日に産まれたせいで、首が座る早さからハイハイ、伝い歩き、発語に至るまで赤ちゃんの頃から比べられまくって、連戦連敗を期してきた。
その上魔力量、学力全てにおいて俺より遥かに優秀ときたものだ。
あいつさえいなければ、何度そう思った事か。いつも二番手に甘んじる自分が情けなかった。
それが政略結婚の相手?
俺のコンプレックスの元凶が今日来るらしい。
会いたくない。
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初顔合わせは、格式高く特別室で行うのが通例だ。しかし、俺はあいつが婚約者なのを認めないという意思表示を示すために、俺の執務室前の資料置き場で初顔合わせをすることにした。
何をしてもあいつと比べられ、失望され続ける俺が、真面目に仕事をすることはないに等しい。
執務室ほどではないが、もとは応接だったそこも、読まない資料がうず高く積まれてクモの巣が張っている。
令嬢ならば、一歩も足を踏み入れられないに違いない。
埃だらけの応接間。お茶も椅子すら用意しない仏頂面の俺の前にあらわれたのは、人形のような可愛らしい少女だった。
ハチミツを溶かしたようなくるくるカールした淡いハニーブロンドにぱっちりと碧い瞳のお人形。
くそ可愛いが、残念だな。俺の好みは大人の女だ。いくらくそ可愛くても、好きにはなれんぞ。
「ダリオン殿下、ロザリモンド・バルタインでございます。」
鈴を転がすような声に完璧なカーテシー。ふんっ。マナー教師絶賛のスキルか。なんど貴様と比べられ煮え湯を飲ませられたと思う。
貴様なぞ、大嫌いだ。
「ダリオンだ。」
仏頂面を隠すことなくちいさく呟いた。
ふんっ。どうせ貴様には無様に負け続けるんだ。今更マナーがなんだ。
「まあ、ダリオンとお呼びしてもよろしいの?ありがとうございます。私のことは、ローザと呼んでくださいませ。」
頬を薔薇色に紅潮させて、潤んだ碧の瞳で見上げられて。
俺は、ただローザと呼ぶ事しか出来なかった。
負けてなんかいないぞ。
あいつを呼び捨てにしてやったんだからな。
俺の呼びかけににっこり微笑むローザ、なんて可愛い。いやいや、絆されるな。
コイツは俺のコンプレックスの元凶。
「ダリオン、私以外の女性を愛称呼びしたら、メッですわよ。約束を破ったら、ハリセンボンノーマス。」
ローザのちいさな白い小指が俺の小指を絡め取った。くるんとしたまつげに縁取られた潤んだ瞳で見つめられて。
なにやら可愛すぎる呪文を唱えるピンクのプルプルの唇。
ローザの全てが可愛すぎて、それからあとの事は覚えていない。
正気に戻ったのは明け方。大量に溜まっていた執務室の書類を全て処理し終えた後だった。
すっかり片付いた殺風景な部屋が清々しい。
そのまま、ずっとサボっていた鍛錬に向かった。精神を整え、身体を鍛えあげる。次回面会は2週間後。
少しでも精悍に見えるよう、鍛えるぞ。
だが、言っておくが。
俺はローザの事が好きなわけではないからな。ヤツは俺の監視下に置かねばならないだけだからな。
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