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宿題
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そろそろ19時、図書室を閉めなければならない時間だ。
僕はというとあの後も参考書には手を付けることができず、図書室を隅から隅まで綺麗にし
彼女から出された宿題”おすすめの書籍を一冊見繕う”を、全うする為いそいそと本棚を漁っていた。
ただ、よくよく考えてみれば、相当の読書家であろう彼女を納得させられるだけの名著を僕が知っているはずもない。
僕が読んだことのあるような本はきっとあらかた読み尽くしているだろう。
三日で1冊読んでしまう少女を相手に、平凡な浪人生である僕が何をすすめられるというのだ。
いや、むしろそんな彼女だからこそ、こんな僕を選んであんなことを言ったのだろうか。
読み尽くして、読み尽くして読み尽くしてしまったが故に、僕に尋ねたのだろうか。
「…そんなたちじゃないか、」
僕は選ばれるような人間ではないし、彼女はどれだけ書籍を読もうが読み尽くしたとは思うまい。
彼女のことは何も知らないけれど。
名前すら、知らない。
「あらぁ、まだ居たのー?」
官能小説ゾーンであーでもないこーでもないと一人でブツブツ言っていると、図書室の先生が帰ってきた。
き、聞かれたか、?
JKに官能小説をすすめるか否かの自問自答を、聞かれてしまったか、?
「そんなに丁寧にお掃除しなくても大丈夫だからねぇ、今日はもう閉めて帰っていいよ~」
どうやら聞かれてはいないようだ。
聞かれていたら犯罪者扱い、良くって出禁悪くて通報だっただろう。
あの間延びした声にこうも冷や汗をかかされるとは。
手に持っていた書籍を先生に見られぬようスッと本棚に戻し、帰り支度を整える。
結局おすすめの書籍も見つからず、参考書も進まず、成果といえば図書室掃除スキルの向上といったところか。
彼女は明日、何時にやってくるのだろうか。
「じゃあ鍵預けとくからぁ、明日もよろしくねぇ」
早々に身支度を整えた先生はそそくさと図書室を出ていこうとする。
「あ、先生!」
「んー?」
「先生はその、読書好きな生徒におすすめするならどんな本をすすめますか?」
先生の意見をそのまま採用しようというわけではないが、何かヒントになればと思って聞いてみた。
僕一人で考えていてもきっと答えは出ないだろう。
「ん-、そーねぇ。”キノの旅”、かなぁ」
「キノの旅ですか、、それは、どうして?」
キノの旅、僕も読んだことがある。
独特の空気感が読み手を虜にするような、そんな印象だ。
しかし、キノの旅は読みやすく、読書好きにお勧めするにしては少々弱いような…。
「もちろん、私が好きな本だからだよ~。読書好きかどうか、とかどんな相手に、とか、そんなのは考えてないの。私は私が好きなものをすすめると思うなぁ」
「自分が好きなもの…」
その言葉に、ハッとした。
僕は彼女の好きそうなもの、彼女が気に入りそうなものを中心に探していたのだから。
官能は別として。
「そう、自分の好きなもの。人におすすめするものって、相手がその質問をしてきたんならなおのこと、自分の好きなものをすすめるべきだと思うよぉ。
きっと相手もあなたの好きなものを知りたくて、そう質問してきているんでしょうからね」
こんな回答でよかったかしらぁ、と照れ臭そうに微笑む先生に、僕は脱帽する思いだった。
さすが、先生と呼ばれる職業なだけある。
「先生、決まりました。本当にありがとうございます!」
「フフッ、君の桜は遅咲きねぇ、ンフフ」
「え、?なんですか?」
「ううん、何でもないの。さ、帰りましょ~」
そう言うと先生は、なにやらニヤニヤとしながら先に帰ってしまった。
僕も”ある本”を本棚から抜き、図書カウンターに置いてすぐに帰った。
僕はというとあの後も参考書には手を付けることができず、図書室を隅から隅まで綺麗にし
彼女から出された宿題”おすすめの書籍を一冊見繕う”を、全うする為いそいそと本棚を漁っていた。
ただ、よくよく考えてみれば、相当の読書家であろう彼女を納得させられるだけの名著を僕が知っているはずもない。
僕が読んだことのあるような本はきっとあらかた読み尽くしているだろう。
三日で1冊読んでしまう少女を相手に、平凡な浪人生である僕が何をすすめられるというのだ。
いや、むしろそんな彼女だからこそ、こんな僕を選んであんなことを言ったのだろうか。
読み尽くして、読み尽くして読み尽くしてしまったが故に、僕に尋ねたのだろうか。
「…そんなたちじゃないか、」
僕は選ばれるような人間ではないし、彼女はどれだけ書籍を読もうが読み尽くしたとは思うまい。
彼女のことは何も知らないけれど。
名前すら、知らない。
「あらぁ、まだ居たのー?」
官能小説ゾーンであーでもないこーでもないと一人でブツブツ言っていると、図書室の先生が帰ってきた。
き、聞かれたか、?
JKに官能小説をすすめるか否かの自問自答を、聞かれてしまったか、?
「そんなに丁寧にお掃除しなくても大丈夫だからねぇ、今日はもう閉めて帰っていいよ~」
どうやら聞かれてはいないようだ。
聞かれていたら犯罪者扱い、良くって出禁悪くて通報だっただろう。
あの間延びした声にこうも冷や汗をかかされるとは。
手に持っていた書籍を先生に見られぬようスッと本棚に戻し、帰り支度を整える。
結局おすすめの書籍も見つからず、参考書も進まず、成果といえば図書室掃除スキルの向上といったところか。
彼女は明日、何時にやってくるのだろうか。
「じゃあ鍵預けとくからぁ、明日もよろしくねぇ」
早々に身支度を整えた先生はそそくさと図書室を出ていこうとする。
「あ、先生!」
「んー?」
「先生はその、読書好きな生徒におすすめするならどんな本をすすめますか?」
先生の意見をそのまま採用しようというわけではないが、何かヒントになればと思って聞いてみた。
僕一人で考えていてもきっと答えは出ないだろう。
「ん-、そーねぇ。”キノの旅”、かなぁ」
「キノの旅ですか、、それは、どうして?」
キノの旅、僕も読んだことがある。
独特の空気感が読み手を虜にするような、そんな印象だ。
しかし、キノの旅は読みやすく、読書好きにお勧めするにしては少々弱いような…。
「もちろん、私が好きな本だからだよ~。読書好きかどうか、とかどんな相手に、とか、そんなのは考えてないの。私は私が好きなものをすすめると思うなぁ」
「自分が好きなもの…」
その言葉に、ハッとした。
僕は彼女の好きそうなもの、彼女が気に入りそうなものを中心に探していたのだから。
官能は別として。
「そう、自分の好きなもの。人におすすめするものって、相手がその質問をしてきたんならなおのこと、自分の好きなものをすすめるべきだと思うよぉ。
きっと相手もあなたの好きなものを知りたくて、そう質問してきているんでしょうからね」
こんな回答でよかったかしらぁ、と照れ臭そうに微笑む先生に、僕は脱帽する思いだった。
さすが、先生と呼ばれる職業なだけある。
「先生、決まりました。本当にありがとうございます!」
「フフッ、君の桜は遅咲きねぇ、ンフフ」
「え、?なんですか?」
「ううん、何でもないの。さ、帰りましょ~」
そう言うと先生は、なにやらニヤニヤとしながら先に帰ってしまった。
僕も”ある本”を本棚から抜き、図書カウンターに置いてすぐに帰った。
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