【完結】君と創る世界

くみた柑

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【第四章】残酷な世界

父への複雑な思い

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 璃花子さんは、黙って僕を見つめるだけだった。その表情が何を意味するのかわからない。ただ、否定しない沈黙が、かえって僕を押し潰していく。
 とめどなく流れる涙が、枕を濡らしていく。

「こんなの……ひどいよ……」

 声が掠れて、震えていた。
 目を閉じても、脳裏に浮かぶのは可琳の笑顔。それが現実には存在しないとわかっても、心の中で消えることはない。
 璃花子さんは、爪が手のひらに食い込むほど硬く握りしめていた僕の手に、そっと自分の手を重ねた。

「あなたにとって、辛い話ばかりでごめんなさい――」

 璃花子さんの顔は、くしゃくしゃに歪んでいた。目には涙が滲み、言葉が詰まりそうになっているのがわかる。
 他人である僕に寄り添ってくれる、璃花子さんの優しさが、その手から伝わってくる。

「父さんに……会うことはできますか?」

 胸の中に渦巻く怒りと疑問が、溢れ出しそうになっていた。
 どうしてこんな世界を作ったんだ。
 どうして真実を捻じ曲げたんだ。
 どうして可琳のデータを作ったんだ。
 どうして――父さんはこの場にいないんだ。

「八幡くんは――」

 璃花子さんの口元が震え、言葉が止まる。
 一度深く息を吸い込むと、彼女はためらいがちに続けた。

「――亡くなったわ。あなたが事故に遭ってから2ヶ月後。末期の癌で」

 一瞬、世界から音が消え、代わりに自分の心臓の鼓動だけが耳を打ち続けていた。

「でも、これだけは信じて。八幡くんは誰よりも、あなたのことを心配して、愛していた。命が尽きるその時まで、あなたの幸せを願っていたの」

 目の前が滲んでいく。

――愛していた? あの父さんが、僕を……?

 璃花子さんが僕の表情を読み取るように、続けた。

「洵くんのために世界を作ることが、八幡くんにとって最後の希望だったの。意識が戻らなかったとしても、自分がいなくなった後も、あなたがずっと幸せに生きていけるようにって」

   *

 僕にとって都合のいい展開しか起きない世界。
 父さんが、死ぬ前に僕にくれた世界。
 優しい母さんも、親友も、そして恋人もいる完璧な世界。
 眠っていただけの現実こちらの世界には、みんな存在しない。

 父さんは、僕が目覚めることを想定していなかったんだろう。だから僕にだけ、どこまでも優しい世界を作った。
 でもそれがあだとなってしまった。
 僕は、目覚めてしまったから。

 現実がこんなに苦しいなんて。
 どこまでも優しい夢のようなあの世界で、ずっと可琳と一緒に笑っていたかった。
 ずっと、あの甘い夢の中で眠っていたかった。
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