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【第八章】あなたと色づく世界
あなたに会いに
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紅茶とラングドシャ、そしてママの言葉で、お腹も心もすっかり満たされた私は、自室に戻り再びマウスを握りしめた。
一回クリックすれば、私とハチの、「今」と「未来」が変わる。
「んんんん!」
目をぎゅっと瞑り、思い切って「えいっ!」とマウスをクリックする。
ファイルのアップロードが始まった。
始まってしまえば、一気に気持ちが落ち着いていく。
画面に表示された数字がクルクルと変わりながら、少しずつ、ハチの世界が書き換わっていく。
「ふぅ……」
肩の力を抜いた私は、モニターを見つめながら、ハチと再会したときの会話をシミュレーションする。
「ハチがこう言ったら、私がこう返して――いや、そもそもハチがなんて言うかわからないよね? 小学校の同級生って設定にはしたけど、当時のログは消えたままなんだし……私のことを覚えてなくて『どちら様?』って言われたら、私はどうすればいい?」
頭の中でパズルを組み立てるように会話を想像してみる。
「っていうか、ハチって呼んでいいの? 大人なんだから、『八幡くん』とか『洵くん』とか? ……あ、でもママは、二十年ぶりでも、小学校の頃のあだ名のまま呼びあってたって言ってたな……」
思考が渦を巻き、プチパニックな私。
そんな状況の中、画面の表示は変わり続け――正常に、アップロード完了のメッセージが表示された。
β世界は、私がハチと幼馴染だった世界に書き換わった。
時刻はもうすぐ八時。迷っているうちに、ずいぶんと遅くなってしまった。
「やばい!」
同窓会の会場――そこなら自然にハチと出会える、そう思っていたのに。時間がない。急がないと終わってしまう。
私は慌ててβ世界へログインした。
次の瞬間、景色が一変し、私は部屋に立っていた。
姿見に映る自分を見て、思わず息を呑む。
見慣れないシルエット――似合わないと思っていた大人っぽい服を、サラリと着こなしている。
艷やかな髪に、大きな瞳。
「これが……私?」
そっと髪を撫でる。さらさらと指をすり抜ける質感。
ほんのり薄いメイクなのに、瞳はキラキラ輝いていて、頬もほんのりピンク色。思わず見とれてしまうくらい可愛い。
「めっちゃ素敵!」
口元が自然とほころぶ。
私は夢中で鏡の前をクルクル回る。
軽やかにふわりと揺れるスカート。こんな綺麗な自分を見たのは初めてだ。
「いけない、急がないと!」
笑顔のまま、私は同窓会の会場である居酒屋へと駆け出した。
一回クリックすれば、私とハチの、「今」と「未来」が変わる。
「んんんん!」
目をぎゅっと瞑り、思い切って「えいっ!」とマウスをクリックする。
ファイルのアップロードが始まった。
始まってしまえば、一気に気持ちが落ち着いていく。
画面に表示された数字がクルクルと変わりながら、少しずつ、ハチの世界が書き換わっていく。
「ふぅ……」
肩の力を抜いた私は、モニターを見つめながら、ハチと再会したときの会話をシミュレーションする。
「ハチがこう言ったら、私がこう返して――いや、そもそもハチがなんて言うかわからないよね? 小学校の同級生って設定にはしたけど、当時のログは消えたままなんだし……私のことを覚えてなくて『どちら様?』って言われたら、私はどうすればいい?」
頭の中でパズルを組み立てるように会話を想像してみる。
「っていうか、ハチって呼んでいいの? 大人なんだから、『八幡くん』とか『洵くん』とか? ……あ、でもママは、二十年ぶりでも、小学校の頃のあだ名のまま呼びあってたって言ってたな……」
思考が渦を巻き、プチパニックな私。
そんな状況の中、画面の表示は変わり続け――正常に、アップロード完了のメッセージが表示された。
β世界は、私がハチと幼馴染だった世界に書き換わった。
時刻はもうすぐ八時。迷っているうちに、ずいぶんと遅くなってしまった。
「やばい!」
同窓会の会場――そこなら自然にハチと出会える、そう思っていたのに。時間がない。急がないと終わってしまう。
私は慌ててβ世界へログインした。
次の瞬間、景色が一変し、私は部屋に立っていた。
姿見に映る自分を見て、思わず息を呑む。
見慣れないシルエット――似合わないと思っていた大人っぽい服を、サラリと着こなしている。
艷やかな髪に、大きな瞳。
「これが……私?」
そっと髪を撫でる。さらさらと指をすり抜ける質感。
ほんのり薄いメイクなのに、瞳はキラキラ輝いていて、頬もほんのりピンク色。思わず見とれてしまうくらい可愛い。
「めっちゃ素敵!」
口元が自然とほころぶ。
私は夢中で鏡の前をクルクル回る。
軽やかにふわりと揺れるスカート。こんな綺麗な自分を見たのは初めてだ。
「いけない、急がないと!」
笑顔のまま、私は同窓会の会場である居酒屋へと駆け出した。
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