【完結】君と創る世界

くみた柑

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【第八章】あなたと色づく世界

帰っておいで

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 窪くんのラーメン屋さんで、二次会が始まった。
 ――といっても、四人がけのテーブル席にいるのは、窪くん、ハチ、そして私の三人だけ。他の同窓生たちは別のテーブル席で賑やかに盛り上がっている。
 ラーメン作りを手伝うため、窪くんが席を外した。二人きりになって、緊張が見えるハチに、私から話しかけた。

「東京での生活はどう? 楽しい?」

 少しでも気軽に話を進められるように、笑顔を浮かべて訊いたつもりだった。でも――

「……正直、あんまり楽しくはないかな」

 ハチは微かに視線を落としながら、ぽつりと言葉を落とした。

「東京って場所に憧れてただけで……実際には、なりたいものも、やりたいことも見つからない」

 その答えは意外だった。てっきり、充実した日々を送っていると思っていたから。
 東京では楽しく暮らしているって、勝手に思い込んでいた。ログからハチの行動はわかっても、感情まではわからない。
 ハチのその表情は、あの頃――最初に会ったときの、寂しげで、どこか不安そうな顔と重なって見えた。

「そっか……でも、働いてるんだよね。仕事が面白くないとか……あ、人間関係がよくないとか?」

 そう訊ねると、ハチは少しだけ困ったように笑った。

「そうだね。なんていうか……みんな優しいけど、どこか心の距離を感じてしまって、自然に話せないんだ。日々のルーティンに飽きてしまって、楽しいことも、特になくて……」

 話を聞いていると、ハチの問題っていうより、東京にいるAIたちに、ハチと関わるための充分なデータや背景が与えられていなかったことにあるのかもしれない。窪くんのように、強い個性や、深い設定を持つAIたちがいない東京の世界は、ハチにとってどこか薄っぺらく、居心地が悪いのかも。

「そうなんだ……」
 そう相槌をうちながらも、胸が痛む。私の知らないところで、ハチがずっと孤独を感じていたなんて。
 すると、ハチがふいに訊ねてきた。
 
「可琳はいつこっちに戻ってきたの?」
「少し前にね。ハチが東京に行ったって知って、ああ、きちんと夢を叶えたんだなぁって嬉しかったのに」

 私が思い描いていた、東京で輝くハチと、目の前のすっかり笑顔が消えてしまったハチ。そのギャップが胸を締め付ける。それなら――

「楽しくないなら、こっちに帰ってくれば?」

 少しだけ勇気を出して、そう提案してみた。ハチは驚いたように目を見開き、しばらく私の顔を見つめてから、小さく口を開いた。

「地元に……戻る?」

 私はしっかりと頷く。

「だって、こっちには窪くんもいるし、みんなもいるよ。地元ならきっと、もっと安心して過ごせるんじゃないかなって思うんだ」

 ラーメン屋の明るい電球が、ほんのり赤らんだハチの頬を照らす。彼は何かを考え込むように黙り込んでいたけれど、やがて、その瞳の奥に、ほんのり光が差した気がした。

「久しぶりにみんなと会ったら気持ちが揺らぐな」

 ハチが照れたようにはにかむのを見て、私は嬉しくてたまらなかった。

「よーし、帰ってこい!」

 思わずハイテンションで言い放ってしまう。それにハチが笑って、照れくさそうに頭を掻いた。
 ハチが地元に帰ってきた方が、これからもハチに会いやすいし! ……って私情を挟み過ぎ?
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