宗狂の教え

真水

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1章 牢獄編

作戦決行一時間前

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「よし、じゃあ作戦の最終確認といこうか」

9人が集まっても余裕のあった部屋も、今や49人を収めるには狭すぎる。そこで看守に怪しまれぬよう、僕らは人づてに作戦を伝え、深夜の見回りが緩む時間を待って最終の擦り合わせを始めた。

「まず前提の確認から。この牢獄には出口が三つある。だから俺たちは四つの班に分かれて動く。三つは出口で足止め、残りの一班は――」

デリックはゼファーの背中を軽く押し、前へ出させる。

「……え、えっと。こ、ここからは僕が。爆薬に必要なのは木炭と黄色鉱石と……あの、ぼこぼこの薄い石です。モーランさん、しゅ、趣味で石を集めてるそうだから……多分、あります」

言葉を詰まらせながら必死に説明するゼファー。その後を引き取るように、デリックが続ける。

「つまり特別班は、ゼファーを守りながら材料を集める。ここが潰れたら計画は終わりだ。だから武力に優れた者を回す」

その後、各班の編成と役割が一つずつ確認されていった。

「最後に二つだけ言っておく。まず一つ目。モーラン――あいつは化け物だ。遭遇した班は必ず苦戦する。だが班長には破裂音を出す玉を渡してある。音が聞こえれば援軍が駆けつける、それまで耐えろ」

言い終えたデリックは、すぐに僕を見た。

「そして二つ目。細かい作戦変更だ。セドリック君の所属を第四班から第一班へ移す」

「ふざけるな! セドリック様は私と共にいるのが一番安全だ!」

すぐさまガロスが食ってかかる。しかしデリックが何事か耳打ちすると、彼の表情は怒りから驚愕に変わり、次には深く頭を下げた。

――ガロスが、僕を手の届かない場所へ行かせるのを許す?
明らかな違和感。すぐに頭を巡らせる。考えられる答えはひとつ。

「保護者気取りですか、デリックさん? 確かに四班はモーランと遭遇する可能性が高い。でもこれは僕が立てた作戦です。自分だけ安全圏にいるなんて、そんな真似はしません!」

カマをかけつつも、僕は本心をぶつける

「セド、作戦そのものは素晴らしいよ。だけど、君が危険に晒されるのは従者として受け入れられない」

ルシアンが真剣な瞳で言う。

「そうだセドリック君。君が死ねば、俺も困るし、従者たちも悲しむ。だから意地を張らずに安全圏へ」

「セドリック様、私もルシアンの意見に賛成です」

ガロスまでそう口にした瞬間、僕の確信は強まった。短い言葉でガロスを動かすほどの強烈な「裏の作戦」がある。僕の考える「裏の作戦」が合っているならば一班の生存率は高いだろう。けれど僕は、自分可愛さで動いているわけじゃない。仲間を守るためにここにいるのだ。

「僕はもう守られるだけの存在じゃありません。仲間と認めてくれるなら、僕にだって信頼を預けてください。命を賭ける権利を!」

デリックは一瞬目を伏せ、それから顔を上げる。その瞳は僕を見ているようで、どこか遠い誰かを透かして見ているようだった。

「……俺に詰められて泣いてたセドリック君は、どこへ行っちゃったんだろうな」
軽口を叩きつつも、声はわずかに上ずっていた。

「分かった。俺も君を対等に扱おう」

「おい待て、急に何を言い出す! デリック、お前の提案が一番安全策だったはずだろ!」

ルシアンが食ってかかるが、デリックの決意は揺るがなかった。

「作戦はこのまま続行だ。クルスが牢を開け次第、決行する!」

――ネブラ様、見ていますか?
あなた様の信徒はこれから檻を破り、世界に飛び立とうとしています。
どうか一人も欠けることなく、この牢を出られるようお見守りください!
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