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第六話 ステータスボードを見てみよう
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さて、気を取り直して、スラサンに送って貰ったステータスボードを確認するとしようか。
目を閉じて、頭の中でステータスボードと唱えると瞼の裏にデータが浮かび上がってくる感じだ。多分、慣れると目をつむらなくても読めるようになるんだろうと思う。
スキルのレベルは十段階、数字が大きくなるほど強くなる。レベル1は問題なくできる、レベル5で達人、レベル7で王、レベル10で神。"レベル"じゃなくて"段"って考えた方が分かりやすいが、段位表記では世界観的なミスマッチがひどいのでやめといた。
※※※
ヴィオラ
種族 淫魔/インキュバス(魔王種)
従魔 主/レイチ・トモリ
魔力値 583
種族スキル(淫魔)
《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》 レベル1
《睡眠/スリープ》 レベル3
《風殻/ウィンドシェル》レベル2
《魅了/チャーム》 レベル4
《誘惑/セダクション》 レベル3
《幻惑/イリュージョン》 レベル2
《催淫/アフロディジアック》 レベル2
亜空間利用/《夢の門/ドリームゲート》 レベル3
記憶閲覧、操作/《夢の窓/ドリームウィンドウ》 レベル2
意思疎通/スライム
種族スキル(魔王種)
魔石生成
王者の資質 レベル1
従魔スキル(主のみ対象)
知識共有
念話
魔力譲渡
個別スキル
料理 レベル1
※※※
ヴィオラのステータスに、危うくお茶噴くところだった。もう飲み終わってたから噴かずに済んだけど。
いや、そうだろうなとは思ってたよ、淫魔なんだし?でも、見事にエロ魔法だらけで、もう壮観というか。自分で戦う気は一切ないってスキルだな。敵と遭遇しても、エロで篭絡して乗り切るんだろうな、と思ってしまった。
それにしても、魔力値凄い一方で体力値の記載が無いのはなんでだ?
俺の疑問にスラサンが答えた。
「スライムや夢魔など、一部の魔物は魔力によって体が形作られていますから、そもそも体力という概念が無いのです。もし魔力を使い切ったら、消滅します」
「つまり、俺らで言う体力値と魔力値を両方含んだ数値ってことなのか」
呟いて、ふと昨日のことを思い出す。スラサン、昨日だいぶ無茶してたよね?魔力無くなって動くのも辛いって。あれ、マジで消滅の危機だったんじゃん!なにやってんの?!
「スラサン、昨日……」
「申し訳ございません、主。もうしません……」
スラサンがちっちゃくなった。
「ホントだよ。練習に命賭けるとか、ただの馬鹿だよ?!やめてよね、スラサンは大切な存在なんだから!」
ヴィオラが眉間に皺を寄せて言った。
あの時はヴィオラを過保護と思ってたけど、この話を聞くと、あの反応は納得だ。そして、俺も同意見だ。スラサンは俺をチートにしてくれる(かもしれない)唯一無二の存在なのだ。
「スラサン、魔法禁止」
「はい……」
俺の言葉にスラサンがますます身をちっちゃくする。
今となっては、スラサンにヴィオラの護衛させるとかとんでもない話だったな。スラサンこそ全力で守らなきゃいけないじゃないか。
って、あれ?ひょっとして、この三人の中で一番価値が低いの、俺?
……気を取り直して、続き!今はヴィオラのステータスだ!俺はぶるぶると頭を振って思考を切り替え、再びステータスボードに目を落とす。
ヴィオラのスキルの中でちょっと異質で目を引くのは、《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》。治癒系の魔法持ってたのはちょっと意外だ。ただ《治癒力上昇》で《治癒》ではないんだな。これはどの程度使えるんだろう?
「ヴィオラ、《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》ってどんな魔法?」
「ん?それね、僕はまだちゃんと使ったことないんだ。セックスした相手に自然にかかるらしいんだけど」
「は?」
「ローズさんが言うには、どんなにハードなプレイしても、長丁場のセックスで困憊してもちょっと眠っただけでスッキリ回復させられる超便利な魔法なんだって!淫気をくれた相手への淫魔のお礼なんだってさ!」
「へ、へえ……」
発動条件がセックスって、さすが淫魔の魔法だな。まあ、さほど期待はできなさそうだ。それこそ、ハードな行為で受けた傷や疲労を癒やす程度の効果に留まるんだろう。
清々しいほど見事にエロに特化した魔物だな、マジで。
で、その下。種族スキルの意思疎通/スライムってのが謎だな。なんでスライム限定?確かにヴィオラ、スラサンには進化前からメロメロだったけど。その疑問をヴィオラに投げかけると、こんな答えが返ってきた。
「淫魔とスライムは昔からの共生関係なんだよ!例えば、エッチの時に……」
「もういい」
続けようとするヴィオラを制した。朝っぱらからエロ話続きで、もうお腹いっぱいだ。
けど、やっぱり無視できない存在感あるな、『魔王種』の一語は。こんだけエロに特化した魔物に、その自己のアイデンティティとも言えるエロを捨てさせてしまう、たった三行。
…王者の資質、か。
「次だ、次」
次のデータは、俺!
※※※
レイチ・トモリ
種族 人間
年齢 28歳
性別 男
職業 冒険者 D級
戦士 レベル3
魔物使い レベル2
体力値 211
魔力値 186
職業スキル(戦士)
剣術(片手剣) レベル3
徒手格闘 レベル2
職業スキル(魔物使い)
《従魔契約/テイム》 レベル2
《従魔解除/テイムキャンセル》
《意思疎通(魔物)/コミュニケート》 レベル1
《捕獲/キャッチ》 レベル2
《鎮静/カームダウン》 レベル1
念話/従魔
知識共有/従魔
魔力譲渡/従魔
※※※
……見なきゃ良かった。そう思ってしまうほど、ショボいステータス。よく、これで冒険者になろうなんて思ったよな。取り柄は体力だけか。あと、謎に魔力豊富なんだけど、魔法スキルがほとんどないから使い道がないんだよな。
ちなみに昨日スラサンが倒した牙猪、大火球一発でこんがり丸焼きにできるけど、その消費魔力が平均10だから、もし俺が火魔法の適正持ってたら18発撃ててたの!あーもったいねー!魔物使い魔法なんて、魔力の使い所ほとんどねーし。
……次だ、次!さあ、本命、スラサン!
※※※
スラッシュ・サンダー
種族 ワイズスライム
従魔 主/レイチ・トモリ
魔王の眷属 忠誠/ヴィオラ
魔力値 12
種族スキル(スライム)
物理攻撃不能
溶解液
情報共有
種族スキル(ワイズスライム)
思考能力
言語理解
従魔スキル(主のみ対象)
知識共有
念話
魔力譲渡
※※※
……あれ?魔法、どこにもないけど?魔法を共有できるって聞いて俺は昨夜からわくわくしすぎて、ヴィオラに《睡眠》かけられなきゃ朝までずっと魔法のこと考えてニヤニヤしてただろうってくらい、楽しみにしてたんだけど。
「スラサン。魔法、どこにもないんだけど?」
「申し訳ありません主、説明不足でした。魔法はスライムとして共有している知識の中に存在しているものなので、私個体のステータスとしては記載できないのです」
「あ、なるほど。じゃ、この後で送って貰えるんだね?」
「はい。ただ、何ぶん数が多いので、抜粋してお送り致します」
「多いの?!スライムの魔法が?!」
「体得した魔法ではなく、知識としての魔法です。これまでに我々スライムが浴びてきた魔法の全ての記憶をデータ化したものですから」
その言葉と共に脳内に知識が流れ込んで来る。
む。抜粋したという言葉を少し疑うくらいには、多かったぞ。スライム倒すのに、そんな色々な魔法使うか?
首をひねりつつ、俺は今受け取ったデータを呼び出した。
※※※
スライム記憶庫 魔法データ(抜粋)
火魔法
《着火/ファイア》
《加温/ウォーム》
《加熱/ヒート》
《灯火/ライト》
《火弾丸/ファイアバレット》
《火球/ファイアボール》
《火炎壁/フレイムウォール》
《火炎噴射/フレイムジェット》
《爆発/エクスプロージョン》
《陽炎乱舞/フレアストーム》
《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》
水魔法
《水生成/ウォーター》
《氷生成/アイス》
《凍結/フローズン》
《浄水/ピュリファイウォーター》
《蒸発/エヴァポレーション》
《水刃/ウォーターブレード》
《水弾丸/ウォーターバレット》
《氷弾丸/アイスバレット》
《水球/ウォーターボール》
《氷球/アイスボール》
《滝生成/ウォーターフォール》
《氷壁/アイスウォール》
《吹雪/ブリザード》
《降雨/レインフォール》
《集中豪雨/クラウドバースト》
《絶対零度の牢獄/アブソリュートゼロプリズン》
風魔法
《微風/ブリーズ》
《送風/ウィンド》
《強風/ブラスト》
《風弾丸/ウィンドバレット》
《風噴射/ウィンドジェット》
《高圧空気爆弾/ハイプレッシャーボム》
《風刃/ウィンドブレード》
《風刃乱舞/ウィンドスラッシュ》
《風盾/ウィンドシールド》
《風殻/ウィンドシェル》
《爆風/ウィンドブラスト》
《窒息/サファケート》
《真空領域/エンプティネス》
《浮遊/フロート》
《飛行/フライ》
《風話/ブリングボイス》
《雷撃/サンダー》
《天の雷撃/ライトニングストライク》
地魔法
《岩作成/クリエイトロック》
《石弾/ストーンバレット》
《岩弾/ロックバレット》
《砂球/サンドボール》
《石盾/ストーンシールド》
《大地の壁/アースウォール》
《砂嵐/サンドストーム》
《石散弾/ストーンショット》
《岩石雨/ロックレイン》
《隕石衝突/メテオストライク》
《大地の槍/アーススピア》
《地円蓋/アースドーム》
《流砂/クイックサンド》
《身体保護/ボディプロテクション》
《身体硬化/ボディハードニング》
治癒魔法
《治癒/ヒール》
《解毒/キュアポイズン》
《解呪/ディスペル》
死霊魔法
《魂食/イートソウル》
《死者蘇生/ゾンビフィケーション》
精神魔法
《睡眠/スリープ》
《魅了/チャーム》
《誘惑/セダクション》
《幻惑/イリュージョン》
《催淫/アフロディジアック》
《激昂/インフュリエイト》
《威圧/オーバーフェルム》
《混乱/コンフュージョン》
《支配/マインドドミネーション》
空間魔法
《転移/テレポート》
無属性魔法
《魔力反射/マジックリフレクション》
※※※
いや。
あのさぁ。
スライムが浴びた魔法だよね?
誰だよ!スライム倒すのに《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》とか使ったヤツ!どう考えてもおかしいだろ?!
「スラサン……これ、全部使える魔法?見せただけとか言わない?俺、魔法適性無しでかろうじて使えたのが魔物使い魔法だったはずなんだけど」
「適性?スライムが蒸発の危険があるため火魔法が使えないとか、そういった理由とは別の話ですか?もともと人間の体には魔法に対する不適性などは無いはずです。ただ、精霊に拒否されると魔法が一切使えなくなるようです。精霊を怒らせてしまい、習得した魔法が全て使えなくなったという人間の話は聞いたことがあります」
「精霊……怒らせるようなことなんてなかったはずだけど……っていうか、俺、この世界に来たの三年前だし。突然現れた異分子だから拒否されてた?」
「そうかもしれませんな。拒否というより、存在を認識されていなかったのかもしれません。そう言えば人間は七歳の年に神殿で洗礼を
受ける習慣があるようです。洗礼を受け、魔法の力を得ると。主は洗礼を受けていないのではありませんか?」
「受けるわけがないな。知らなかったし。だからか」
「恐らくは」
「じゃ、逆になんで急に使えるようになったんだ?洗礼を受けてないのは変わらないのに」
「ワイズスライムの主となったからでしょう。スライムは全ての精霊の友です。近年不在だったワイズスライムが出現し、魔王及び魔王種しか認められないはずのその主の座に人間がついた、と精霊たちには注目されていたようです。そしてレイチ様を受け入れた精霊がいたのでしょう」
「スライムと精霊が友達?」
「はい。スライムを友とするものは多うございます。淫魔や竜などはその最たる存在です」
「竜?!竜とスライムって、すげー組み合わせだな。最強生物と最弱生物が友達とか」
「多くの上位竜はその体にスライムを住まわせています。スライムたちに、その鱗の隙間などに入り込む虫や汚れなどを食わせ、清潔を維持しているのです」
「あ、なるほど」
それはあっちでも聞いたことがある話だ。象の背に留まる鳥みたいなものだな。
「じゃあ、極大陽炎獄《メガフレアプリズン》とか隕石衝突《メテオストライク》とかってもしかして……」
「共生している竜が人間に討たれた際に、共に死んだスライムが残した記憶です」
「あー、なるほど。理解した」
巻き込まれただけでも魔法食らったことに変わりはないよな。たまたま居合わせて食らった魔法も含まれてるんだろう。ほんとどこにでもいるし。
攻撃魔法だけじゃなく、生活魔法も習得できたのはありがたい。皆が当たり前に使える生活魔法が使えないって、結構肩身狭かったんだ。
きっと従魔として受けたり、魔法練習の的にされたりしたんだろうな。《岩作成》あたりはきっと、出現した岩の下敷きになったスライムがいたんだろう。スライム魔法に歴史ありだ。
さて。色々な魔法を一気に習得したわけだけど、デカい魔法は必要魔力も膨大だ。魔法が使えない人間にしては多いと思ってた魔力も、これだけの魔法を使うとなるとショボい。《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》なんてぶっ放した日にゃ、一気に魔力は空っケツだし。一応使用可能みたいだけど、実質的には使えない魔法だな。
っていうか、D級冒険者がもってたところで、全く使用する機会なんてある訳がない。見たとこ、相当数がただ"持ってるだけ"になりそうだ。
とは言え、これで俺もめでたく"魔法戦士"なわけだ!さあ、そろそろ出発だ!いつでも来い、魔物ども!魔法戦士レイチ様が片付けてやるぜっ!!って、街道を歩くだけならそうそう魔物と遭遇するわけないけどな!
目を閉じて、頭の中でステータスボードと唱えると瞼の裏にデータが浮かび上がってくる感じだ。多分、慣れると目をつむらなくても読めるようになるんだろうと思う。
スキルのレベルは十段階、数字が大きくなるほど強くなる。レベル1は問題なくできる、レベル5で達人、レベル7で王、レベル10で神。"レベル"じゃなくて"段"って考えた方が分かりやすいが、段位表記では世界観的なミスマッチがひどいのでやめといた。
※※※
ヴィオラ
種族 淫魔/インキュバス(魔王種)
従魔 主/レイチ・トモリ
魔力値 583
種族スキル(淫魔)
《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》 レベル1
《睡眠/スリープ》 レベル3
《風殻/ウィンドシェル》レベル2
《魅了/チャーム》 レベル4
《誘惑/セダクション》 レベル3
《幻惑/イリュージョン》 レベル2
《催淫/アフロディジアック》 レベル2
亜空間利用/《夢の門/ドリームゲート》 レベル3
記憶閲覧、操作/《夢の窓/ドリームウィンドウ》 レベル2
意思疎通/スライム
種族スキル(魔王種)
魔石生成
王者の資質 レベル1
従魔スキル(主のみ対象)
知識共有
念話
魔力譲渡
個別スキル
料理 レベル1
※※※
ヴィオラのステータスに、危うくお茶噴くところだった。もう飲み終わってたから噴かずに済んだけど。
いや、そうだろうなとは思ってたよ、淫魔なんだし?でも、見事にエロ魔法だらけで、もう壮観というか。自分で戦う気は一切ないってスキルだな。敵と遭遇しても、エロで篭絡して乗り切るんだろうな、と思ってしまった。
それにしても、魔力値凄い一方で体力値の記載が無いのはなんでだ?
俺の疑問にスラサンが答えた。
「スライムや夢魔など、一部の魔物は魔力によって体が形作られていますから、そもそも体力という概念が無いのです。もし魔力を使い切ったら、消滅します」
「つまり、俺らで言う体力値と魔力値を両方含んだ数値ってことなのか」
呟いて、ふと昨日のことを思い出す。スラサン、昨日だいぶ無茶してたよね?魔力無くなって動くのも辛いって。あれ、マジで消滅の危機だったんじゃん!なにやってんの?!
「スラサン、昨日……」
「申し訳ございません、主。もうしません……」
スラサンがちっちゃくなった。
「ホントだよ。練習に命賭けるとか、ただの馬鹿だよ?!やめてよね、スラサンは大切な存在なんだから!」
ヴィオラが眉間に皺を寄せて言った。
あの時はヴィオラを過保護と思ってたけど、この話を聞くと、あの反応は納得だ。そして、俺も同意見だ。スラサンは俺をチートにしてくれる(かもしれない)唯一無二の存在なのだ。
「スラサン、魔法禁止」
「はい……」
俺の言葉にスラサンがますます身をちっちゃくする。
今となっては、スラサンにヴィオラの護衛させるとかとんでもない話だったな。スラサンこそ全力で守らなきゃいけないじゃないか。
って、あれ?ひょっとして、この三人の中で一番価値が低いの、俺?
……気を取り直して、続き!今はヴィオラのステータスだ!俺はぶるぶると頭を振って思考を切り替え、再びステータスボードに目を落とす。
ヴィオラのスキルの中でちょっと異質で目を引くのは、《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》。治癒系の魔法持ってたのはちょっと意外だ。ただ《治癒力上昇》で《治癒》ではないんだな。これはどの程度使えるんだろう?
「ヴィオラ、《治癒力上昇/インクリースヒーリングパワー》ってどんな魔法?」
「ん?それね、僕はまだちゃんと使ったことないんだ。セックスした相手に自然にかかるらしいんだけど」
「は?」
「ローズさんが言うには、どんなにハードなプレイしても、長丁場のセックスで困憊してもちょっと眠っただけでスッキリ回復させられる超便利な魔法なんだって!淫気をくれた相手への淫魔のお礼なんだってさ!」
「へ、へえ……」
発動条件がセックスって、さすが淫魔の魔法だな。まあ、さほど期待はできなさそうだ。それこそ、ハードな行為で受けた傷や疲労を癒やす程度の効果に留まるんだろう。
清々しいほど見事にエロに特化した魔物だな、マジで。
で、その下。種族スキルの意思疎通/スライムってのが謎だな。なんでスライム限定?確かにヴィオラ、スラサンには進化前からメロメロだったけど。その疑問をヴィオラに投げかけると、こんな答えが返ってきた。
「淫魔とスライムは昔からの共生関係なんだよ!例えば、エッチの時に……」
「もういい」
続けようとするヴィオラを制した。朝っぱらからエロ話続きで、もうお腹いっぱいだ。
けど、やっぱり無視できない存在感あるな、『魔王種』の一語は。こんだけエロに特化した魔物に、その自己のアイデンティティとも言えるエロを捨てさせてしまう、たった三行。
…王者の資質、か。
「次だ、次」
次のデータは、俺!
※※※
レイチ・トモリ
種族 人間
年齢 28歳
性別 男
職業 冒険者 D級
戦士 レベル3
魔物使い レベル2
体力値 211
魔力値 186
職業スキル(戦士)
剣術(片手剣) レベル3
徒手格闘 レベル2
職業スキル(魔物使い)
《従魔契約/テイム》 レベル2
《従魔解除/テイムキャンセル》
《意思疎通(魔物)/コミュニケート》 レベル1
《捕獲/キャッチ》 レベル2
《鎮静/カームダウン》 レベル1
念話/従魔
知識共有/従魔
魔力譲渡/従魔
※※※
……見なきゃ良かった。そう思ってしまうほど、ショボいステータス。よく、これで冒険者になろうなんて思ったよな。取り柄は体力だけか。あと、謎に魔力豊富なんだけど、魔法スキルがほとんどないから使い道がないんだよな。
ちなみに昨日スラサンが倒した牙猪、大火球一発でこんがり丸焼きにできるけど、その消費魔力が平均10だから、もし俺が火魔法の適正持ってたら18発撃ててたの!あーもったいねー!魔物使い魔法なんて、魔力の使い所ほとんどねーし。
……次だ、次!さあ、本命、スラサン!
※※※
スラッシュ・サンダー
種族 ワイズスライム
従魔 主/レイチ・トモリ
魔王の眷属 忠誠/ヴィオラ
魔力値 12
種族スキル(スライム)
物理攻撃不能
溶解液
情報共有
種族スキル(ワイズスライム)
思考能力
言語理解
従魔スキル(主のみ対象)
知識共有
念話
魔力譲渡
※※※
……あれ?魔法、どこにもないけど?魔法を共有できるって聞いて俺は昨夜からわくわくしすぎて、ヴィオラに《睡眠》かけられなきゃ朝までずっと魔法のこと考えてニヤニヤしてただろうってくらい、楽しみにしてたんだけど。
「スラサン。魔法、どこにもないんだけど?」
「申し訳ありません主、説明不足でした。魔法はスライムとして共有している知識の中に存在しているものなので、私個体のステータスとしては記載できないのです」
「あ、なるほど。じゃ、この後で送って貰えるんだね?」
「はい。ただ、何ぶん数が多いので、抜粋してお送り致します」
「多いの?!スライムの魔法が?!」
「体得した魔法ではなく、知識としての魔法です。これまでに我々スライムが浴びてきた魔法の全ての記憶をデータ化したものですから」
その言葉と共に脳内に知識が流れ込んで来る。
む。抜粋したという言葉を少し疑うくらいには、多かったぞ。スライム倒すのに、そんな色々な魔法使うか?
首をひねりつつ、俺は今受け取ったデータを呼び出した。
※※※
スライム記憶庫 魔法データ(抜粋)
火魔法
《着火/ファイア》
《加温/ウォーム》
《加熱/ヒート》
《灯火/ライト》
《火弾丸/ファイアバレット》
《火球/ファイアボール》
《火炎壁/フレイムウォール》
《火炎噴射/フレイムジェット》
《爆発/エクスプロージョン》
《陽炎乱舞/フレアストーム》
《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》
水魔法
《水生成/ウォーター》
《氷生成/アイス》
《凍結/フローズン》
《浄水/ピュリファイウォーター》
《蒸発/エヴァポレーション》
《水刃/ウォーターブレード》
《水弾丸/ウォーターバレット》
《氷弾丸/アイスバレット》
《水球/ウォーターボール》
《氷球/アイスボール》
《滝生成/ウォーターフォール》
《氷壁/アイスウォール》
《吹雪/ブリザード》
《降雨/レインフォール》
《集中豪雨/クラウドバースト》
《絶対零度の牢獄/アブソリュートゼロプリズン》
風魔法
《微風/ブリーズ》
《送風/ウィンド》
《強風/ブラスト》
《風弾丸/ウィンドバレット》
《風噴射/ウィンドジェット》
《高圧空気爆弾/ハイプレッシャーボム》
《風刃/ウィンドブレード》
《風刃乱舞/ウィンドスラッシュ》
《風盾/ウィンドシールド》
《風殻/ウィンドシェル》
《爆風/ウィンドブラスト》
《窒息/サファケート》
《真空領域/エンプティネス》
《浮遊/フロート》
《飛行/フライ》
《風話/ブリングボイス》
《雷撃/サンダー》
《天の雷撃/ライトニングストライク》
地魔法
《岩作成/クリエイトロック》
《石弾/ストーンバレット》
《岩弾/ロックバレット》
《砂球/サンドボール》
《石盾/ストーンシールド》
《大地の壁/アースウォール》
《砂嵐/サンドストーム》
《石散弾/ストーンショット》
《岩石雨/ロックレイン》
《隕石衝突/メテオストライク》
《大地の槍/アーススピア》
《地円蓋/アースドーム》
《流砂/クイックサンド》
《身体保護/ボディプロテクション》
《身体硬化/ボディハードニング》
治癒魔法
《治癒/ヒール》
《解毒/キュアポイズン》
《解呪/ディスペル》
死霊魔法
《魂食/イートソウル》
《死者蘇生/ゾンビフィケーション》
精神魔法
《睡眠/スリープ》
《魅了/チャーム》
《誘惑/セダクション》
《幻惑/イリュージョン》
《催淫/アフロディジアック》
《激昂/インフュリエイト》
《威圧/オーバーフェルム》
《混乱/コンフュージョン》
《支配/マインドドミネーション》
空間魔法
《転移/テレポート》
無属性魔法
《魔力反射/マジックリフレクション》
※※※
いや。
あのさぁ。
スライムが浴びた魔法だよね?
誰だよ!スライム倒すのに《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》とか使ったヤツ!どう考えてもおかしいだろ?!
「スラサン……これ、全部使える魔法?見せただけとか言わない?俺、魔法適性無しでかろうじて使えたのが魔物使い魔法だったはずなんだけど」
「適性?スライムが蒸発の危険があるため火魔法が使えないとか、そういった理由とは別の話ですか?もともと人間の体には魔法に対する不適性などは無いはずです。ただ、精霊に拒否されると魔法が一切使えなくなるようです。精霊を怒らせてしまい、習得した魔法が全て使えなくなったという人間の話は聞いたことがあります」
「精霊……怒らせるようなことなんてなかったはずだけど……っていうか、俺、この世界に来たの三年前だし。突然現れた異分子だから拒否されてた?」
「そうかもしれませんな。拒否というより、存在を認識されていなかったのかもしれません。そう言えば人間は七歳の年に神殿で洗礼を
受ける習慣があるようです。洗礼を受け、魔法の力を得ると。主は洗礼を受けていないのではありませんか?」
「受けるわけがないな。知らなかったし。だからか」
「恐らくは」
「じゃ、逆になんで急に使えるようになったんだ?洗礼を受けてないのは変わらないのに」
「ワイズスライムの主となったからでしょう。スライムは全ての精霊の友です。近年不在だったワイズスライムが出現し、魔王及び魔王種しか認められないはずのその主の座に人間がついた、と精霊たちには注目されていたようです。そしてレイチ様を受け入れた精霊がいたのでしょう」
「スライムと精霊が友達?」
「はい。スライムを友とするものは多うございます。淫魔や竜などはその最たる存在です」
「竜?!竜とスライムって、すげー組み合わせだな。最強生物と最弱生物が友達とか」
「多くの上位竜はその体にスライムを住まわせています。スライムたちに、その鱗の隙間などに入り込む虫や汚れなどを食わせ、清潔を維持しているのです」
「あ、なるほど」
それはあっちでも聞いたことがある話だ。象の背に留まる鳥みたいなものだな。
「じゃあ、極大陽炎獄《メガフレアプリズン》とか隕石衝突《メテオストライク》とかってもしかして……」
「共生している竜が人間に討たれた際に、共に死んだスライムが残した記憶です」
「あー、なるほど。理解した」
巻き込まれただけでも魔法食らったことに変わりはないよな。たまたま居合わせて食らった魔法も含まれてるんだろう。ほんとどこにでもいるし。
攻撃魔法だけじゃなく、生活魔法も習得できたのはありがたい。皆が当たり前に使える生活魔法が使えないって、結構肩身狭かったんだ。
きっと従魔として受けたり、魔法練習の的にされたりしたんだろうな。《岩作成》あたりはきっと、出現した岩の下敷きになったスライムがいたんだろう。スライム魔法に歴史ありだ。
さて。色々な魔法を一気に習得したわけだけど、デカい魔法は必要魔力も膨大だ。魔法が使えない人間にしては多いと思ってた魔力も、これだけの魔法を使うとなるとショボい。《極大陽炎獄/メガフレアプリズン》なんてぶっ放した日にゃ、一気に魔力は空っケツだし。一応使用可能みたいだけど、実質的には使えない魔法だな。
っていうか、D級冒険者がもってたところで、全く使用する機会なんてある訳がない。見たとこ、相当数がただ"持ってるだけ"になりそうだ。
とは言え、これで俺もめでたく"魔法戦士"なわけだ!さあ、そろそろ出発だ!いつでも来い、魔物ども!魔法戦士レイチ様が片付けてやるぜっ!!って、街道を歩くだけならそうそう魔物と遭遇するわけないけどな!
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