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89 「ツバキ文具店」
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こんにちは。
今回もまた、お勧め本のご紹介です。
〇「ツバキ文具店」
小川 糸・著 / 幻冬舎(2016年)
実はこちら、私は未読だったところ、学校の先生のお一人がお勧めくださった本です。
と申しますのも、今年は勤務校で、図書委員会のイベントのひとつとして「先生方からのオススメ本」というのをやっておりましてね。
図書委員が先生たちにお願いして、それぞれにおススメの本を決めていただき、POPも書いていただいて特設コーナーを作ろう、というものでした。
先生方、お忙しいなか一生懸命書いてくださいまして、かなりの数が集まりまして。夏休みに向けて、みんなが本を選ぶよいきっかけになったように思います。
さてさて。
そんな中、とても読書がお好きなとある先生が今回おススメしてくださったのがこちらの本!
表紙デザインがとても穏やかな雰囲気で、中学生がぱっと手に取る感じではないのですが、これが本当によかったのです。
舞台は現代の鎌倉。
そう、あの鎌倉です!
実はわたくし、昨年個人的に鎌倉幕府を題材にしたとある小説を書きまして。その関係で、昨年、ひとりぶらっと鎌倉に旅をしてきたのです。
先生がおっしゃるには、「書かれているお店とか、実在してるんですよ~。料理とかも本当にあるんですって」とのこと。
これはもう、読むしかないっ!
お話の主人公のお名前は「鳩子さん」とおっしゃる若い女性。鳩といえば鎌倉の鶴岡八幡宮ですよね。冒頭ですぐにその説明が入ります。鶴岡八幡宮の「八」の文字は、向かい合った鳩の意匠になっていること、そこから鳩子さんの名前がつけられたこと。
この女性は、鎌倉の北東にあるとあるちいさな文具店を営んでいます。日々を丁寧に過ごし、お隣に住む「バーバラ夫人」(と呼んでいますが普通に日本人の女性です)と仲良く交流しつつ、こまやかに生活を営んでいる人。バーバラ夫人からは、「ポッポちゃん」と呼ばれています。
実は彼女の仕事は文具店だけではなく、そこで「代書屋」をしているというのです。
代書屋というと、他人様から命じられた内容をきれいに文書化するお仕事……かと思いきや!
なんとこの方、筆や万年筆、ガラスペンなど筆記具やインクの銘柄にも非常にこだわり、紙の材質、封書のデザイン、はては貼る切手まで、非常にこまやかに神経を使うのです。
実際にお客様からの依頼で書いた手紙が載せられて小説の一部になっているのですが、それもまた驚き。字体も文体も、なにもかもが違う。まるで、本当にそのお客様ご本人が書いたのであるかのような出来上がりなのです!
お客様にはいろんな人がいます。まさに老若男女が、これまでの他人との関係に苦しみ、挙げ句に「手紙を書く」という一事に困って彼女に救いを求めてきます。
そこに現れてくる、お客様それぞれの人生や人間模様を鳩子さんはじっくりと聞き取って、文章を起こしていくのです。……いやもう、すごい。「これこれこう書いて」と下書きを渡されるわけではなく、文面そのものを最初からおこすのですから。
そして鳩子さん自身にも、とある心のしこりが。自分を育ててくれた人であり、「代書屋」としての先生でもある祖母への難しい思いを抱えて生きているのです。このことも、作品全体を通じて下地に流れる大切なテーマとなっています。
それぞれのお客様について、章に分かれた構成になっているので、非常に読みやすいと感じました。
なおこの作品には続編もございます。
〇「キラキラ共和国」
小川 糸・著 / 幻冬舎(2017年)
こちらに関しては、紹介するともう「ツバキ文具店」のネタバレオンパレードになってしまいますので、タイトルのみご紹介しておきますね。
両方とも、登場するお店が鎌倉のどのあたりにあるのか、冒頭のイラスト地図に載せてあります。この本を片手に、また鎌倉に行きたくなってしまう……!
ということでよろしかったら、こちらもまたお手にとってみてくださいね。
それでは、今回はこのあたりで!
今回もまた、お勧め本のご紹介です。
〇「ツバキ文具店」
小川 糸・著 / 幻冬舎(2016年)
実はこちら、私は未読だったところ、学校の先生のお一人がお勧めくださった本です。
と申しますのも、今年は勤務校で、図書委員会のイベントのひとつとして「先生方からのオススメ本」というのをやっておりましてね。
図書委員が先生たちにお願いして、それぞれにおススメの本を決めていただき、POPも書いていただいて特設コーナーを作ろう、というものでした。
先生方、お忙しいなか一生懸命書いてくださいまして、かなりの数が集まりまして。夏休みに向けて、みんなが本を選ぶよいきっかけになったように思います。
さてさて。
そんな中、とても読書がお好きなとある先生が今回おススメしてくださったのがこちらの本!
表紙デザインがとても穏やかな雰囲気で、中学生がぱっと手に取る感じではないのですが、これが本当によかったのです。
舞台は現代の鎌倉。
そう、あの鎌倉です!
実はわたくし、昨年個人的に鎌倉幕府を題材にしたとある小説を書きまして。その関係で、昨年、ひとりぶらっと鎌倉に旅をしてきたのです。
先生がおっしゃるには、「書かれているお店とか、実在してるんですよ~。料理とかも本当にあるんですって」とのこと。
これはもう、読むしかないっ!
お話の主人公のお名前は「鳩子さん」とおっしゃる若い女性。鳩といえば鎌倉の鶴岡八幡宮ですよね。冒頭ですぐにその説明が入ります。鶴岡八幡宮の「八」の文字は、向かい合った鳩の意匠になっていること、そこから鳩子さんの名前がつけられたこと。
この女性は、鎌倉の北東にあるとあるちいさな文具店を営んでいます。日々を丁寧に過ごし、お隣に住む「バーバラ夫人」(と呼んでいますが普通に日本人の女性です)と仲良く交流しつつ、こまやかに生活を営んでいる人。バーバラ夫人からは、「ポッポちゃん」と呼ばれています。
実は彼女の仕事は文具店だけではなく、そこで「代書屋」をしているというのです。
代書屋というと、他人様から命じられた内容をきれいに文書化するお仕事……かと思いきや!
なんとこの方、筆や万年筆、ガラスペンなど筆記具やインクの銘柄にも非常にこだわり、紙の材質、封書のデザイン、はては貼る切手まで、非常にこまやかに神経を使うのです。
実際にお客様からの依頼で書いた手紙が載せられて小説の一部になっているのですが、それもまた驚き。字体も文体も、なにもかもが違う。まるで、本当にそのお客様ご本人が書いたのであるかのような出来上がりなのです!
お客様にはいろんな人がいます。まさに老若男女が、これまでの他人との関係に苦しみ、挙げ句に「手紙を書く」という一事に困って彼女に救いを求めてきます。
そこに現れてくる、お客様それぞれの人生や人間模様を鳩子さんはじっくりと聞き取って、文章を起こしていくのです。……いやもう、すごい。「これこれこう書いて」と下書きを渡されるわけではなく、文面そのものを最初からおこすのですから。
そして鳩子さん自身にも、とある心のしこりが。自分を育ててくれた人であり、「代書屋」としての先生でもある祖母への難しい思いを抱えて生きているのです。このことも、作品全体を通じて下地に流れる大切なテーマとなっています。
それぞれのお客様について、章に分かれた構成になっているので、非常に読みやすいと感じました。
なおこの作品には続編もございます。
〇「キラキラ共和国」
小川 糸・著 / 幻冬舎(2017年)
こちらに関しては、紹介するともう「ツバキ文具店」のネタバレオンパレードになってしまいますので、タイトルのみご紹介しておきますね。
両方とも、登場するお店が鎌倉のどのあたりにあるのか、冒頭のイラスト地図に載せてあります。この本を片手に、また鎌倉に行きたくなってしまう……!
ということでよろしかったら、こちらもまたお手にとってみてくださいね。
それでは、今回はこのあたりで!
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