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立派な教会を出立し、のどかな丘を下り街の大通りをゆっくりと通る。道の端からこちらをガン見する子供たちと、手を振ってアピールする若者達。大人は拝んでいる人が多い気がする。
街を抜けた後も歓声が鳴りやまなかったから、後続の馬車に勇者でも乗っていたのかもしれない。しばらく進むと揺れを感じるようになり、スピードを上げたことが分かった。
1人乗り用に作られたようなこの馬車は、サイズ的には4人乗りだ。扉側の向かい合う席は定番通り椅子として使うようになっているが、反対の窓側は足を降ろすスペースがなく横になれるようになっている。
誰にも見られない事ですし、靴を脱いで遠慮なく寛ぐことにする。
車窓からは日本では見られないような広大な緑が覗き、電線のない空は透き通っていてとても清々しい気分になる。とはいっても早々に飽きて時間を持て余し、十二分にストレッチを堪能するはめになった。
一度死んだらしい私の体は、それでもまだ肩凝りに悩まされているのは何故なのか。解せぬ。
「御使い様、どうぞお召し上がりください」
途中で冷たいジュースと瑞々しい葡萄が差し入れされた。
通り道なのかわざわざ立ち寄っているのか2時間おき程度に3つの町で休憩し、夕方ごろにお城に到着した。
休憩の時にも軽くお菓子がでてくるものだから、食べた分を消耗しようとストレッチはだんだんと激しくなり、正直もうかなり疲労がたまっている。
「御使い様、身支度を整えた後王との晩餐会へと招かれています」
「了解です」
まだ食べさせられるのか。っていうか身支度よりも礼儀作法をレクチャーして欲しい。
お辞儀は最敬礼45度でよろしいのですか?それとも膝まづくタイプの文化ですか?面を上げよ待ちですか?
「王にはどのようにご挨拶すればよろしいでしょうか。その、人の常識には疎くて」
自分で言っていてかなりイタイな。私は一体何者なのよ。
「御使い様は何もなさらなくてよろしいかと。王の話に耳を傾けていただければ十分です」
こういう場合は遠慮なんかせずに本当のことを教えて欲しいものだ。まぁどうせ勇者も一緒だろうし、勇者の真似をしよう。
部屋に案内されて、シンプルながら刺繍や宝石の縫い付けが凄い衣装に着替えさせられる。髪を複雑に丁寧に結われてジャラジャラ飾られ、同時進行で軽くメイクを施される。
沢山いた街の人もお世話してくれるメイドさん達も、金髪銀髪赤毛に茶髪とそこまでファンタジーっぽさはない。カラフルな群れに私だけ黒髪だと浮いていただろうが、あんまり気にしないでよさそうで良かった。
けど向こうからしたら目立たないからこうやって気合入れてゴージャスにしてくれてるんだろうなぁ…。
特に美人でもないし威厳もへったくれもなくて申し訳ない!何で私の見た目そのままなの?
ゴージャスに仕上げてもらった後は、直ぐに晩餐会とやらが始まった。
っというか始まっていた。王冠を付けたおじさまの隣で、勇者ははにかんでいる。え、そこ緊張すべきところじゃないの?この国の王様は民に混じったりする気さくな感じ?
「ようこそ我が国へ、御使い殿。私はこの国を治めるガイアード=リグリスだ」
私が部屋に入ると、真っ先に王様が反応して近づいてきた。
これはあれか、リグリス国のガイアードさんなのかしら。日本とは逆に苗字が後のパターン。でも別にここは日本ではないってだけで外国でもないから法則が分からない。ガイアード様と呼ぶべきかリグリス様が正解なのか、困るわ。
「お初にお目にかかります。勇者を導くよう神に使わされた、エナと申します。どうぞお見知りおきを」
深々と頭を下げる私に、王様は気さくに手を差し出してきた。はい握手。って、そうか"王"って呼べばいいんだ。私はあくまでも人の陣営外の勢力だから、様は付けないほうが良いかも。下に見られちゃだめだもんね。
「どうか息子を支えてやってほしい、立派な勇者になれるように」
「はい、誠心誠意お力に」
ん、今息子って言った?
「かの大陸へは加護のない者は立ち入れないと聞く。まずはこの城にて能力を高め、旅立つように。エナ殿はお前の世話係ではないのだから、身の回りの事もできるようにならなくてはな」
「はい父上、頑張ります!」
なんとまぁ王子様でしたか。スペック高いな。
その後は立ち寄った街の様子だとか、神のお告げの話だとか親子で会話が弾んでいた。数週間前に勇者に指名されたらしいんだけど、その報告今なんだ?家族って言ってもやっぱり王ともなるとあんまり会話する時間もないのかもね。
私はお高いホテルのバイキングみたいな料理を全種類堪能し、眠たくなったところで適当に引き上げることにした。
街を抜けた後も歓声が鳴りやまなかったから、後続の馬車に勇者でも乗っていたのかもしれない。しばらく進むと揺れを感じるようになり、スピードを上げたことが分かった。
1人乗り用に作られたようなこの馬車は、サイズ的には4人乗りだ。扉側の向かい合う席は定番通り椅子として使うようになっているが、反対の窓側は足を降ろすスペースがなく横になれるようになっている。
誰にも見られない事ですし、靴を脱いで遠慮なく寛ぐことにする。
車窓からは日本では見られないような広大な緑が覗き、電線のない空は透き通っていてとても清々しい気分になる。とはいっても早々に飽きて時間を持て余し、十二分にストレッチを堪能するはめになった。
一度死んだらしい私の体は、それでもまだ肩凝りに悩まされているのは何故なのか。解せぬ。
「御使い様、どうぞお召し上がりください」
途中で冷たいジュースと瑞々しい葡萄が差し入れされた。
通り道なのかわざわざ立ち寄っているのか2時間おき程度に3つの町で休憩し、夕方ごろにお城に到着した。
休憩の時にも軽くお菓子がでてくるものだから、食べた分を消耗しようとストレッチはだんだんと激しくなり、正直もうかなり疲労がたまっている。
「御使い様、身支度を整えた後王との晩餐会へと招かれています」
「了解です」
まだ食べさせられるのか。っていうか身支度よりも礼儀作法をレクチャーして欲しい。
お辞儀は最敬礼45度でよろしいのですか?それとも膝まづくタイプの文化ですか?面を上げよ待ちですか?
「王にはどのようにご挨拶すればよろしいでしょうか。その、人の常識には疎くて」
自分で言っていてかなりイタイな。私は一体何者なのよ。
「御使い様は何もなさらなくてよろしいかと。王の話に耳を傾けていただければ十分です」
こういう場合は遠慮なんかせずに本当のことを教えて欲しいものだ。まぁどうせ勇者も一緒だろうし、勇者の真似をしよう。
部屋に案内されて、シンプルながら刺繍や宝石の縫い付けが凄い衣装に着替えさせられる。髪を複雑に丁寧に結われてジャラジャラ飾られ、同時進行で軽くメイクを施される。
沢山いた街の人もお世話してくれるメイドさん達も、金髪銀髪赤毛に茶髪とそこまでファンタジーっぽさはない。カラフルな群れに私だけ黒髪だと浮いていただろうが、あんまり気にしないでよさそうで良かった。
けど向こうからしたら目立たないからこうやって気合入れてゴージャスにしてくれてるんだろうなぁ…。
特に美人でもないし威厳もへったくれもなくて申し訳ない!何で私の見た目そのままなの?
ゴージャスに仕上げてもらった後は、直ぐに晩餐会とやらが始まった。
っというか始まっていた。王冠を付けたおじさまの隣で、勇者ははにかんでいる。え、そこ緊張すべきところじゃないの?この国の王様は民に混じったりする気さくな感じ?
「ようこそ我が国へ、御使い殿。私はこの国を治めるガイアード=リグリスだ」
私が部屋に入ると、真っ先に王様が反応して近づいてきた。
これはあれか、リグリス国のガイアードさんなのかしら。日本とは逆に苗字が後のパターン。でも別にここは日本ではないってだけで外国でもないから法則が分からない。ガイアード様と呼ぶべきかリグリス様が正解なのか、困るわ。
「お初にお目にかかります。勇者を導くよう神に使わされた、エナと申します。どうぞお見知りおきを」
深々と頭を下げる私に、王様は気さくに手を差し出してきた。はい握手。って、そうか"王"って呼べばいいんだ。私はあくまでも人の陣営外の勢力だから、様は付けないほうが良いかも。下に見られちゃだめだもんね。
「どうか息子を支えてやってほしい、立派な勇者になれるように」
「はい、誠心誠意お力に」
ん、今息子って言った?
「かの大陸へは加護のない者は立ち入れないと聞く。まずはこの城にて能力を高め、旅立つように。エナ殿はお前の世話係ではないのだから、身の回りの事もできるようにならなくてはな」
「はい父上、頑張ります!」
なんとまぁ王子様でしたか。スペック高いな。
その後は立ち寄った街の様子だとか、神のお告げの話だとか親子で会話が弾んでいた。数週間前に勇者に指名されたらしいんだけど、その報告今なんだ?家族って言ってもやっぱり王ともなるとあんまり会話する時間もないのかもね。
私はお高いホテルのバイキングみたいな料理を全種類堪能し、眠たくなったところで適当に引き上げることにした。
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