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「エナ、ご指導よろしくお願いします」
翌朝朝食を丁度食べ終えた頃、私が滞在させてもらってる部屋に王子が訪ねてきた。
即座に侍女ちゃんがお茶を用意する。あぁ、私の分はいらないのに…今飲み終えたところなんだけどな。
「こちらこそよろしくお願いします。ルドヴィーク、そちらの方は?」
「ルドヴィーク様の従者でマルクと申します。お二方の補助をさせていただきますのでお見知りおきを」
補助、と曲しているが、実質お目付け役であり教育係ね。なんせ異世界人の私と世間知らずな王子のサポート役だもの、きっと彼が一番苦労するハズ。
そして彼が一番状況を把握しているはずだ。
「さて、まずは何から始めましょう?私は神より勇者を導くようにと使わされただけなのですが…現在の能力値などをお聞きしても?」
「そうですね、何でもできる能力を神から授かりました」
うん、神から選ばれた=神から力を貰ったってとこは知ってるの。
能力値への反応がないのは、この世界にレベルや数値化されたステータスがないという事でいいのかな。
「何でも、とは例えば?」
「…魔法が使えるようです」
「火や水や土等、人の手がなくとも生まれる自然現象を操る事ができる術だとされていますね」
魔法の説明をされた。魔の勇者なんだから、そりゃそうなるでしょうね。
「それで、どの様な魔法が使えるのですか?」
「……」
なぜ黙る。説明しずらいのかな?
「ではルドヴィーク、この花を消して見せてください」
目の前のテーブルの上の花瓶から、赤い薔薇を一本引き抜く。
突きつけてやれば、可哀想ぐらい目が泳いだ。
「それは…例えばどのように?」
「燃やすなり枯らすなり飛ばすなり、やりやすいようにどうぞ」
私の言葉を聞いてどれかに決めたのか、じっと赤い薔薇を見つめるルドヴィーク。まつ毛が長い。
「……」
心の中で、10まで数えた。未だ何も起こらない。でもルドヴィークは睨むように赤い薔薇から視線を外さない。魔法をかけてるところなのかな?呪文はなくていいのかな?何でもできるって言ったから見せて貰おうと思ったけど、まだ能力を授かっただけだから魔法覚えてないのでは?
「ルドヴィーク」
30秒まで数えて、掲げた薔薇をそっと下げた。
「今何を考えていましたか?」
「どうやって花を消そうか考えていました」
「まだそこだったの!?」
実力がちっとも分からない!システムも仕様も分からない。どうしろと。
「魔法を使おうとすると、何かこう…言葉が頭の中に浮かぶとか、体が熱くなるだとか変化はありますか?」
「ないです」
「んぬ…どうやら私が指南する以前の問題のようなのですが、この城に魔法使いはいますか?」
私が大人しくしていたマルクに話を振ると、彼は少し驚いたように答えた。
「魔法はもうこちら側には残っていません。300年前に途絶えて、今では物語の中でしか」
「そ、そうだったのですね」
なるほどな!えーっと、だったらなおさら…どうすればいいの?
「その魔法が出てくる物語はすぐに用意できますか?どのように伝わっているのか知る必要があるようです」
「歴史書なら書庫に行けば…絵本ならそこの棚にありますけど」
「絵本でいいです」
逆に何で豪華客室に絵本が?と思ったけど、見て秒で納得。繊細な挿絵が物凄く綺麗な本だった。
文字は案の定記号で読めなかったけど、絵で何となくわかる部分もある。
まず、魔法陣は浮かんでないし地面に描いてもいない。杖は持っていたり持ってなかったりと様々。魔法を使って良そうな場面ではキャラクターは口を開けている。
ということは、呪文で発動するタイプの魔法ってことね。
「謎は全てとけました。多分ね。ルドヴィーク、この薔薇を燃やして下さい…いえ、燃やそうとしてください」
「…はい」
「この花が燃える所を想像して、燃えろ!とか火よ!とか爆ぜろ!とか言ってみて下さい」
素直なルドヴィークは、言われた通り薔薇を睨みつけながら燃えろ!火よ!爆ぜろ!と口にする。
残念ながら、何も起こらない。
「じゃあ次、ファイア!メラ!ホットグリル!とかどうかしら」
言われた通りに既存ゲームの呪文を唱えるルドヴィーク。これはふざけ過ぎたので予想通りだけど、何も起こらない。
「呪文が違うのでしょうね、何か文献はありませんか」
「呪文、といいますと?」
「ある言葉を口にすると、ある事象が発生するというか…。喉が渇いたわ、というとさっと飲み物が運ばれてくるみたいなものでしょうか」
未だに薔薇を睨みつけていたルドヴィークが、不思議なものを見るように顔を上げた。
「"喉が渇いた"、それが呪文なのですか」
「いえこれはただ貴方達に分かりやすいかなと思っただけで…」
トプトプトプ……
「殿下!」
ルドヴィークのティーカップから、紅茶が溢れている。ほうほうほうほう、成程。何でもできるタイプの魔法、なるほどね。これはきっと魔法学校のような呪文を覚えるパターンではなくて、クエストみたいに魔法屋さんで呪文を買うわけでもなくて、マジカルプリンセス的に本当に何でもできるやつだ。
私がニヤニヤしている間に、紅茶の洪水は終わった。自分の意思で止めたのか、もう魔力が尽きたのか。カップをひっくり返した程度の被害しかない。
「いいわね、どんどんいきましょう。他に何かあるかしら?」
この調子だと、私はすぐにお役御免となりそうだ。
翌朝朝食を丁度食べ終えた頃、私が滞在させてもらってる部屋に王子が訪ねてきた。
即座に侍女ちゃんがお茶を用意する。あぁ、私の分はいらないのに…今飲み終えたところなんだけどな。
「こちらこそよろしくお願いします。ルドヴィーク、そちらの方は?」
「ルドヴィーク様の従者でマルクと申します。お二方の補助をさせていただきますのでお見知りおきを」
補助、と曲しているが、実質お目付け役であり教育係ね。なんせ異世界人の私と世間知らずな王子のサポート役だもの、きっと彼が一番苦労するハズ。
そして彼が一番状況を把握しているはずだ。
「さて、まずは何から始めましょう?私は神より勇者を導くようにと使わされただけなのですが…現在の能力値などをお聞きしても?」
「そうですね、何でもできる能力を神から授かりました」
うん、神から選ばれた=神から力を貰ったってとこは知ってるの。
能力値への反応がないのは、この世界にレベルや数値化されたステータスがないという事でいいのかな。
「何でも、とは例えば?」
「…魔法が使えるようです」
「火や水や土等、人の手がなくとも生まれる自然現象を操る事ができる術だとされていますね」
魔法の説明をされた。魔の勇者なんだから、そりゃそうなるでしょうね。
「それで、どの様な魔法が使えるのですか?」
「……」
なぜ黙る。説明しずらいのかな?
「ではルドヴィーク、この花を消して見せてください」
目の前のテーブルの上の花瓶から、赤い薔薇を一本引き抜く。
突きつけてやれば、可哀想ぐらい目が泳いだ。
「それは…例えばどのように?」
「燃やすなり枯らすなり飛ばすなり、やりやすいようにどうぞ」
私の言葉を聞いてどれかに決めたのか、じっと赤い薔薇を見つめるルドヴィーク。まつ毛が長い。
「……」
心の中で、10まで数えた。未だ何も起こらない。でもルドヴィークは睨むように赤い薔薇から視線を外さない。魔法をかけてるところなのかな?呪文はなくていいのかな?何でもできるって言ったから見せて貰おうと思ったけど、まだ能力を授かっただけだから魔法覚えてないのでは?
「ルドヴィーク」
30秒まで数えて、掲げた薔薇をそっと下げた。
「今何を考えていましたか?」
「どうやって花を消そうか考えていました」
「まだそこだったの!?」
実力がちっとも分からない!システムも仕様も分からない。どうしろと。
「魔法を使おうとすると、何かこう…言葉が頭の中に浮かぶとか、体が熱くなるだとか変化はありますか?」
「ないです」
「んぬ…どうやら私が指南する以前の問題のようなのですが、この城に魔法使いはいますか?」
私が大人しくしていたマルクに話を振ると、彼は少し驚いたように答えた。
「魔法はもうこちら側には残っていません。300年前に途絶えて、今では物語の中でしか」
「そ、そうだったのですね」
なるほどな!えーっと、だったらなおさら…どうすればいいの?
「その魔法が出てくる物語はすぐに用意できますか?どのように伝わっているのか知る必要があるようです」
「歴史書なら書庫に行けば…絵本ならそこの棚にありますけど」
「絵本でいいです」
逆に何で豪華客室に絵本が?と思ったけど、見て秒で納得。繊細な挿絵が物凄く綺麗な本だった。
文字は案の定記号で読めなかったけど、絵で何となくわかる部分もある。
まず、魔法陣は浮かんでないし地面に描いてもいない。杖は持っていたり持ってなかったりと様々。魔法を使って良そうな場面ではキャラクターは口を開けている。
ということは、呪文で発動するタイプの魔法ってことね。
「謎は全てとけました。多分ね。ルドヴィーク、この薔薇を燃やして下さい…いえ、燃やそうとしてください」
「…はい」
「この花が燃える所を想像して、燃えろ!とか火よ!とか爆ぜろ!とか言ってみて下さい」
素直なルドヴィークは、言われた通り薔薇を睨みつけながら燃えろ!火よ!爆ぜろ!と口にする。
残念ながら、何も起こらない。
「じゃあ次、ファイア!メラ!ホットグリル!とかどうかしら」
言われた通りに既存ゲームの呪文を唱えるルドヴィーク。これはふざけ過ぎたので予想通りだけど、何も起こらない。
「呪文が違うのでしょうね、何か文献はありませんか」
「呪文、といいますと?」
「ある言葉を口にすると、ある事象が発生するというか…。喉が渇いたわ、というとさっと飲み物が運ばれてくるみたいなものでしょうか」
未だに薔薇を睨みつけていたルドヴィークが、不思議なものを見るように顔を上げた。
「"喉が渇いた"、それが呪文なのですか」
「いえこれはただ貴方達に分かりやすいかなと思っただけで…」
トプトプトプ……
「殿下!」
ルドヴィークのティーカップから、紅茶が溢れている。ほうほうほうほう、成程。何でもできるタイプの魔法、なるほどね。これはきっと魔法学校のような呪文を覚えるパターンではなくて、クエストみたいに魔法屋さんで呪文を買うわけでもなくて、マジカルプリンセス的に本当に何でもできるやつだ。
私がニヤニヤしている間に、紅茶の洪水は終わった。自分の意思で止めたのか、もう魔力が尽きたのか。カップをひっくり返した程度の被害しかない。
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