上 下
9 / 50

閑話 ベッドの中で(ティア)

しおりを挟む
 ロウ、眠ったかな……。迷惑掛けちゃったね。
 トルトとアルオスにも。多分、私の事がなかったら、最初の予定どおり四人でパーティー組んでたよね。
 二人も、笹山北校生だったのかな?
 …………
 『お前がアヤノってのは、いくらなんでも無理があるって』
 『王子に取り入るにしても、アヤノは無いぞ、アヤノは』
 ……信じてもらえなかった。
 家族だと思ってたのは私だけ?……それとも、家族でもおかしいって思う程、私がブスなのかな……。

 昇君……
 『お前がアヤノな訳ない!! 嘘をつくな!!』
 『マジかよ…… 本当にお前がアヤノなのかよ』
 『チッ、もう良い』
 昇君、どうして? 今の私じゃ駄目なの?
 昇君が愛したのは、あの綾乃だったからなのかな……。
 今日、私が私だって分かってもらえたのに、『チッ、もう良い』だった……。それだけで終わっちゃった。
 私たちの関係は、それだけの関係だったのかな?
 三年近く付き合って、愛し合ったはずなのに、あれだけで終わりなのかな……。
 私の顔が変わったから? ブスになったから?
 でも、それでも、直ぐに切り捨てられるのかな?
 もし私が逆の立場だったら、ずっと先の事までは分からないけど、会って直ぐって事は無いと思う。
 仮に、好きじゃなくなるとしても、戸惑いつつ付き合っていく内に、違和感とか感じて、少しずつ気持ちがずれていく感じだと思う。
 絶対に、直ぐじゃないよね。
 ……昇君が好きだったのは、私の顔?
 それとも、私がアヤノだったから?
 私の顔が綾乃じゃなくなったから、いらなくなったの?
 私がアヤノじゃなくなったから、いらなくなったの?
 それとも、元々私の事を愛していたんじゃなくて、私がアヤノだったから付き合ってた?
 違うよね、違うはずだよね。そんな事ないよね。
 ねえ、違うよね…………。
 
 メグちゃん、サーちゃん、ミーちゃん、会いたいよ。
 会って、いっぱい話したいよ。抱きついて泣きたいよ。
 あの中にみんなはいなかったのかな?
 いたら、絶対会いに来てくれるはずだよね。
 来てくれないって事は、あそこにはいなかったんだ。
 どこにいるんだろう?
 もしかしたら、あの新幹線の事故で、助かったのかな?
 みんな、同じ所にいたけど、もし、助かったのなら、その方が良いよね。
 会えないけど、その方が良いよね。
 会えないけど……。
 …………
 昇君…… あなたにとって私ってなんだったのかな?
 これだけで終わっちゃうような関係だったのかな?
 それとも、やっぱり、元々愛してくれてなかったのかな?
 ………………あ、駄目。頭の中がぐるぐるして、考えがループしていく。
 まともに考えられないよ。
 …………
 みんな、私がアヤノだったから、あの顔だったからフアンでいてくれたのかな?
 私って、何?
 私って、アヤノ? それとも綾乃? それともティア?
 私はアヤノじゃないと価値がないのかな?
 今のティアじゃ駄目なのかな。いらない子なのかな。
 みんなにも捨てられるのかな?
 ……アリオスとトルトみたいに、ロウも私を捨てるのかな?
 『嫁のもらい手が無かったら、俺がもらってやるよ』
 『最悪、俺がいると思えば楽だろう』
 『俺としても、ティアなら全然問題ないしな』
 ロウ……
 ロウと結婚……
 嫌じゃないよね。全然変な感じはしないし。
 ……ロウ。
 ロウは、私をティアとしてみてくれてる。アヤノでも綾乃でもなく、今の、このティアとして。
 だったら、大丈夫だよね?
 ロウ……。
 『骨は拾ってやるよ』
 ……骨はないよね、骨は。
 ……ロウって、時々口が悪いんだよね。もう。
 
 生きなきゃね。私は、やらなくちゃいけない事がいっぱいあるの。
 だから、生きなくちゃいけないの。
 もし、ミーちゃん達がこの世界に来てたら、会わなくちゃいけないし。
 ミミちゃんやシェーラにも迷惑掛けたくないし、頑張んなくっちゃ。
 ……昇君の事は、全然振り切れてなんか無いけど、でも、生きていかなくっちゃいけないの。
 悲しみや絶望に飲み込まれちゃ駄目。私はティア。綾乃もアヤノももういない。私はティア。
 ロウ、私がティアでいられるように支えてね。
 ……もし、本当にもらい手がなかったら、骨、拾ってね。絶対だよ。
しおりを挟む

処理中です...