この気持ちは、あの日に。

篠宮 楓

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教えて、

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 辺りが、オレンジ色に溶けていく。

 いつの間にか夕陽の時間になっていたらしい。
 明日の晴れを確信するような綺麗な夕焼けが、おにーさんの後ろに広がっていた。誰もいない公園は、オレンジに染め上げられている。それは例外なく、私とおにーさんをも。


 色に、溺れそうな感覚。


「君が、俺と同じ電車に乗るのは少なかったと思う。たまに見かける程度だったから。けれど俺と話す様になってから、それがどんどん増えて。もしかしてって、思ったんだ」


「もしか、して」

 同じ言葉を、私が呟く。
 それは、私もあの頃思っていた言葉。

「そう。もしかして、この子も俺の事が好きなんじゃないか……って」

 おにーさんの、独壇場だ。
 困ったように、照れたように。はにかむような笑顔は、あの頃と同じ。
「だから君と電車で会わなくなって、最初は体調を崩したと思った。でも日が経つにつれて気が付いたんだ。泣きそうだった、最後の君の顔。あれは、どういう事だったんだろうって」
「……おにーさんが何かした、と。そう思ったんですか」
「うん。だって、前日までは同じ態度だったんだから。きっと何か嫌われてしまう事をしてしまったんだろうと。謝りたかったけど、事情を聴きたかったけど、俺もすぐ就職して……転勤してしまったから」

「転勤?」

「うん、研修で地方支社にね。それで、つい最近こっちに戻ってきたんだけど」


 さっきから、一問一答状態だ。
 私の問いに、沢山の答えをくれる。きちんと、教えてくれる。
 それは、きっと。

「もう、誤解させたくないから」

 私の考えを見透かす様に、おにーさんは呟いた。

「もう、二度と避けられたくないから」

 真剣なその声音に、治まりかけていた私の鼓動がとくとくと早まっていく。

「君にとっては過去形かもしれないけれど、俺にとっては現在進行形なんだ」

 頬に触れていた右手の親指が、私の唇の上をゆっくりと辿った。



「しつこくて、ごめん。でも、終わらせたくないんだ。君に会って、実感した」

「……実感?」

 そう問えば、おにーさんはにこりと笑みを浮かべた。

「君への気持ちは、あの頃と一緒だって事」




 俺は、あの頃も、今も、現在進行形で、君を想っています。




 丁寧に紡がれる言葉に、私の首から上は沸騰した。
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