奴隷少年の華麗なる逆転人生〜運しかスキルが無いので家を追い出されました〜

あるちゃいる

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生まれは良かったのに⑤

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 羽扉の付いた酒場は昼間はめし処、夜はめし処兼酒場、二階では賭場を開いている店にナラクは従者の少年二人でやって来た。
 少年の名はルカン。
 元々鍛冶屋の息子だったが、親が酒とギャンブルに嵌り借金を作って蒸発。当然働ける年齢になってなかったルカンは借金の方に取られ闇で売られて、鉱山で働く様になった。
 その鉱山でもオヤジの見様見真似で覚えた技を使って荒稼ぎしていたが、バレて袋叩きにあい、虫の息で医務室で寝ていた所をセダスに助けられた。
 年齢はナラクの二つ上という事で歳も近いからとセダスに教育係として引き抜かれてから、すっかりセダスを慕うようになった。
 恩人の言う事に報いたかったルカンは、ナラクの世話を焼きまくった。
 それをすればセダスも喜んでくれたから、常識も現在進行形で教えている。主に圧政している王の悪口から吹き込んでるところだ。

 その恩人が目に掛けてるナラクが落ち込んでると分かったその日の夜に酒でも呑んで忘れるというやり方を教える為に行き付けの店に来たという訳だ。
 最初こそ酒とツマミで呑んでるだけだったが、落ち込む理由を聞き出したルカンは、半信半疑だったのと少しでも勝てば落ち込む理由が軽減するだろうと考えて、賭博に誘った。

 最初こそ渋っていたナラクだったが、物は試しと先輩が言うもんだから一回だけと言い二階へとやって来た。

 賭博と言っても貴族達がやるようなルーレットなんて物は無い。
 簡単で分かりやすさと一回一回の勝負の速さから、丁半博打に似ている物しかない。

 六面体ある内の半分を黒く染めただけの簡単なサイコロを使い、どちらの目が出るかを賭けるのだ。
 丁半博打の様な木のコップにサイコロを入れ、机の上でコップをふるう。
 当然いかさまと難癖をつける奴用に机の下には仕掛けが出来ない様に普通の机でやる。

 「いいか?マル。お前が先に賭けろよ?そうしたら俺がその逆に賭けるからな?」
 「はい、分かりました」
 「それから、お前は五ペルサづつ賭けな、一番安い掛け金だ」
 「分かりました」
 「よし、席が二つ空いたら混ざるぜ?」
 「はい」

 「さぁ!さぁ!次が始まるぜ!今夜は種が沢山あるからよ!勝てば大金が手に入るぜ!」
 胴元が叫ぶと、負け込んだ人達から順に抜けていき、二人分の席が空いた。
 「混ざるぜ!二人だ!」
 そう言うとルカンは、席代を二人分払う。
 「ほいよ!お?ルカンじゃねーか、久し振りだな!そっちの兄さんは見ねぇ顔だ」
 「おう、最近お屋敷の方に入った新入りだよ」
 「へぇ!それじゃ給金は良さげって事だな!(カモ来たコレ?)」
 そう言うとニヤリと笑う。
 白・黒賭博は簡易なだけあってサイコロを振るのも技術次第で思い通りに出せたりする。
 当然八百長が出来ない机でやる為に苦肉の策で憶えた技術だった。

 まず先に胴元(親とする)がコップにサイコロを入れたらゲームの開始合図で、白か黒のうちのどちらかに掛け金をBETする。その後で机にカップを伏せて置いて、出た目で勝ち負けを決めるやり方だ。
 全部の場所に賭けてもトータル的に儲かる方の目を出すのがツボ振り師の腕の見せ所だった。

 普通に考えても親が有利な賭博だったが、他に遊べる物も無い世界なので、どこの賭博場でも人気の遊びだ。
 「さぁ!始めるぜ!」
 親がコップにカラコロを入れる。
 「じ、じゃあ僕は黒に五ペルサ」
 そう言うと財布から五ペルサ出して置く。
 それを見てから、ルカンは八ペルサ出して、白に賭けた。他の皆も賭け始め黒の方が多かった。

 「さぁ!勝負‼」
 と、コップが机の上に置かれる。
 ドキドキしながら待つ二人……
 「白!」
 「やったぜ!」とルカンは十六ペルサを受け取る。

 「さぁ次いくぞ!はったはった!」
 さっそくナラクから巻き上げたと気分を上げていくツボ振りはニヤリと笑う。
 「じゃあ白に五ペルサ」
 「んじゃ俺は黒に二十ペルサ」
 周りも賭けていき、勝負っ!て、出た面は黒だった。

 そんな調子でナラクの財布から金が無くなるまで続き、ナラクは更に落ち込む。その傍らで大儲けしたルカンは、ナラクと肩を組んで賭博部屋から出ると、階段の上から酒場で呑んでる奴等全員に向かって叫ぶ。

 「今夜の酒は俺の奢りだ!たらふく呑みやがれ!」
 その声を聞いた店の客たちは大喜びで拍手喝采と歓声をあげた。

 「じゃあ、僕はもうお金無いから帰ります……」と、これ以上落ちない筈の肩を落として帰ろうとするが、ルカンは止める。
 「何言ってんだ? 金ならここにあるんだ全て俺が奢ってやる!呑んで食え!」

 そう言うとルカンは、階段を勢い良く降りていき、カウンターで酒とツマミになる物を頼みに行った。

 当然大勝ちされた側の店は今日は赤字になると覚悟をしていたが、ルカンの大盤振る舞いで酒が大量に売れた事でプラスになっていく。

 この時代、水より酒のが値段は安かったし、栄養補給も兼ねていたので子供でも酒は呑んでいた。原価も安く沢山飲まれても大した儲けにはならない。だが、酒を呑めば食いたくなるのがツマミってなもんで、肉やら魚が大量に売れ始めた。
 これで、賭博の負け分もチャラどころか、プラスになるのだった。

 ルカンは他の客に担ぎ出されて店の中央で金貨の雨を降らせていた。
 ナラクは慣れない店と全く解決しなかった自分のスキルに嘆き、カウンターの端っこに座ると、奢りと出された酒をチビチビ飲み始めた。

 「よぉ兄さんのお連れさんが儲けさせてくれてるから、これお礼な!食ってくれ!」
 と、出されたのは高級肉だった。
 「あ、有難うございます……」
 そう言うと、それを突きながら食べて呑んでとしていたら、いつの間にかほろ酔いになる。
 そして、気が付くと自室の馬小屋で寝ていた。

 まるで最初は夢かと思ったが、吐き気と頭痛に襲われたので、夢じゃないと気付かされる。

 隣の馬房では、イビキを盛大にかきながらルカンも寝ているようだ。
 取り敢えず今日が休日で良かったと安堵したナラクは井戸で水を呑んだあと再び眠ることにした。


◇セダス視点◇


 羽扉を開けて入って来たセダスは額を抑えると、店の真ん中で酔っ払ってる従者のルカンを確認した。
 付いて来た部下にルカンを気絶させて部屋に連れて行けと目で合図すると、カウンターでどんよりとしているナラクに近付くと、首の後ろを叩き気絶させた。

 周りは酒で酔っ払っているので、咎める奴は居なかったし、セダスの顔を知ってる店主は青褪めたまま俯いてるので、カウンターに金貨を置くと
 「口止め料」と呟いて、ナラクを抱き上げて外に出ると、いつもの馬車が店の前に横付けされていた。

 そこに優しく寝かせると、起こさない様にゆっくりと走り出した。

 (取り敢えずルカンにバレていると見ていいな……)と、考え頭痛の種がまた一つ増えてしまったと頭を抱えるセダスだった。
 
 
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