奴隷少年の華麗なる逆転人生〜運しかスキルが無いので家を追い出されました〜

あるちゃいる

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生まれは良かったのに➃

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 石畳が続く先に噴水を中心にして縁取るように建物が立ち並ぶ。
 大きな商会だったり、商業、冒険者、加治等のギルドが所狭しと並び建ち、深夜だというのに明るく照らされ昼夜問わず多くの人が出入りしている。この街の中心だった。
 その中でも一際ひときわ大きくきらびやかな装飾で彩られているのが教会だった。

 セダスは教会の真ん前に馬車を停めると、ナラクを連れて門を叩く。

 暫くすると扉が少し開き、中から神父が顔を覗かせた。
 「こんな夜更けに何用ですかな?」
 如何にも時間を考えろ的な顔で夜中の訪問者に声をかけた。
 「急ぎ頼みたいことがある」
 その言葉を鬱陶しいとばかりに
 「日が昇った跡にしてください、こんな夜更けに非常識ですぞ?」と、無下に追い払おうと相手の顔も見ないで扉を閉めようとした瞬間、扉に脚を挟んで閉めさせ無い様にするセダス。

 「なんて無作法な!」と、憤り文句を言おうと顔を初めて見た瞬間神父は固まった。
 「な⁉セ、セダス様⁉」
 そこに居た人物を見て冷や汗を掻きながら扉を閉めようとしていた力を抜き、扉を開く神父。
 「先に名を言って下されば直ぐに開けましたのに……」
 と、平身低頭になりながら後ろへ三歩ほど下がる。
 セダスはその行動を見て溜息を吐くと
 「神の子である神父が人を見て態度を変えるとは何事だ?」
 と、少し苛立ちを垣間見せながら咎める。
 「ははは、神は平等でも人の世は平等ではありませぬゆえ……」
 と、苦笑いで返す。
 「全く世も末だな」呆れた物言いに溜息しか出ないのか、セダスは首を横に振った。
 「して……この様な時間に如何されましたかな?」
 「ああ、すまんが選定の儀式をやり直し、詳しく内容を教えて欲しい者が居てな、連れてきた」
 そう言うと後ろのナラクを扉の中に引き入れた。
 それを見て顔色を変え、恐る恐る聞く。
 「お、恐れながら……そこの者は……もしや……」
 この者はこの街でも表裏をよく知る神父なので、ナラクの素性を正確に知っていた。

 「ちゃんと調べ告げてくれ」
 真剣な眼差しでセダスが言うと、神父も訳ありなのかと思ったがはい分かりましたと聞き分けよく言うことは出来なかった。
 「そ、それは貴方の主様のお望みですか? それとも……」と、言い淀みチラリとナラクを見る神父。

 その後の言葉を続けさせまいと被せるように違うと伝え
 「主はこの者の素性も知らぬお方……当然これは内密の話だ」
 そう言うとセダスは金貨の入った小袋を懐から出して、神父に握らせた。

 その重みを確かめ顔に出る喜びを隠しながら渋々了承したフリをして、ナラクとセダスを奥の部屋へと招き入れた。

 「くれぐれも内密でお願いしますよ? 貴方様も……」
 確認するかの様にセダスとナラクを見て呟くと、ナラクの頭に手を置いて、神の言葉を呟く。
 すると、手を翳した先から光り輝き暗い部屋をも明るく照らし出した。

 神父しか出来ない技で、人に与えられた神の掲示を引き出し見る事が出来る。
 簡単に言うと上位鑑定である。

 その鑑定書は神の言葉で綴られており、神父にしか読めない。
 因みにセダスは神父だった事もあるので読めるが、それを知る者は居ない。

 【ナラクランド・G・ヴァラーベルド】


 年齢十五
 加護 無し
 スキル 無し
 ユニークスキル 
 神運(大器晩成型)
 自分の周りの運を善悪関係無く無意識の内に高めていく力がある。
 王の器

 その掲示を一部だけ隠して全て伝えた神父を胡乱げな眼差しで見ていたセダス。隠していた一部を言うと内戦が始まってしまいそうなので、王太子の母が箝口令を敷いた。
 金で動く神父がうっかり箝口令の内容を口にしないか怪しかったので、目を離さす神父を見ていたのだ。

 因みにナラクは第三十六階位ではあるが、現王妃から産まれた順で言えば三男坊にあたる。
 生まれた順で階位が決まっていったので三十六位になるが、本筋の王位継承権として見るなら、有力候補に該当する。
 そのままを本人に伝えたらいつか王の耳に入る事になる。
 なのでナラクに伝えたのは
 神運の部分を強運に変え、大器晩成型であると伝える。

 「大器……晩成型?」
 「……って事は……現状は変わらないと言うことですか……何も?……」

 それが全てだとしか神父もセダスも言えなかったので、ガクリと膝を付いて落ち込むナラクをセダスは慰める事しか出来なかった。

 自由気ままに育ったナラクを憂いて箝口令まで敷き情報を閉したのには理由があった。
 現政権を握る悪政の王と一部の良く無い貴族達に謳われる現国王ラヴァーベルドに知られると、益々圧政が加速すると考えられた。
 次代の王である王太子も現王と変わらぬくらい腹黒いので、ナラクの存在は害悪でしかなかった。
 父や兄を慕う今のナラクでは、その内その者たちの手にナラクが落ちるのが火に見るより明らかだった為、本人にも周りにも完全に隠す必要があったのだ。
 スキルが無いと分かった事で隠れ蓑としても良い理由が出来た。
 セダスに頼み込み実行させた王妃が暗躍した結果、奴隷に落とし名も表に出させない様に取り計らう事に成功した。
 少しやり過ぎて一部の者に情報が漏れ、心を折られたのは誤算だったが概ね予定通りに事が進み、奴隷市場で第二王子の目に触れる事にはなったが、隠す場所で言えば申し分無いので、上手く第二王子の元へ送った。というのが事の真相である。
 灯台下暗し作戦である。

 第二王子であるセダスの主は、弟の存在すら忘れてしまう程で、自身の興味以外は憶えてさえいない。
 二年ほど前に母である王妃が顔を見に行ったら、新しく入った侍女と間違え、部屋の掃除を頼んだくらいの人物だった。
 王になろうと言う意思も無かったので、それを利用する事にしたのだ。



 「大器晩成型……」
 トボトボと肩を落として歩く後ろで、もう一つの金貨が入った袋を渡し、固く口止めを約束させたセダスは、急いでナラクの跡を追って外へと消えた。

 馬車が出る音がしたあと、そっと扉を閉めながら神父は呟く。

 「大器晩成型とはいえ流石(神)運の持ち主……箝口令が敷かれたから儲けにならぬと思っていたが……」
 ニヤニヤする顔を隠す事も出来ずに金貨の入った袋を揺らしながらほくそ笑んだ。

 その次の日には教会へ訪れる人々が普段の倍に増え、お布施もたんまりと頂き神父の懐は潤った。

 「また来ねーかなアイツ……」
 そう呟きながら金貨を数えては酒を煽る生臭神父だった。





 その次の日、何となく落ち込んでる様子のナラクに気が付いた少年は彼を賭場に誘った。

 【この国は奴隷制度を表向きは禁止している為、奴隷は従者として扱われている。なので、どの店も入店拒否はしていないから、普通に飯も食えるし酒も呑みに出歩ける。強制力は弱めだが、店を開いたりする事は出来ない。現代で言うところの副業を禁止された社畜的な扱い】閑話休題

 ナラクと少年が街へと行った同じ時間、セダスはお忍びで街に来ていた人物に呼び出されていた。

 「セダス……あなたわたくしとの約束憶えておいででしょうね?」
 「はい、勿論憶えてますとも!」
 洒落たカフェの個室で豪華なソファーに苛立たしげに座り、出されたケーキを食べもせずにホークでブスブス刺し崩していく。
 
 仕立ての良い黒い服はシンプルに纏められ、一般貴族の御婦人の様な出で立ちに、顔を隠す様に頭から黒いベールを被り、時折覗かせる瞳は鋭くセダスのカイゼル髭を見ている。
 ピンと上を向いてるカイゼル髭が口を開くたびに揺れる。その動きが何となく好きだったので眺めているが、セダスは睨まれていると思い込み冷や汗を流す。

 「報告ではあなた……深夜に私の息子を連れ出して教会に行ったそうね?」
 「あ……その様な事は……」
 「情報は上がっているのよ?」
 そう言うと一枚の羊皮紙を出して机に置いた。
 「貴方ね……あの子に全て話してないでしょうね? もし話が少しでも漏れたら……何が起こるか想像すらしたくないわ……」

 「ま、間違いなく取り合いになるかと……」
 「わかっているならちゃんと約束通りにしてくれないと困るわ!」
 「も、申し訳ありません!王妃様!」

 そう言うとセダスは正座して平伏した。

 「あの子にはまともな教育が必要なの、それと常識と父や兄の悪行をしっかり見定められる目が!」
 ナラクは素直過ぎて父も兄も疑う事なく取り繕った話を信じている節が見られた。それを強制的にでも変えないと悪政が加速してその内、民が心身共に疲弊する事になる。
 国を捨ててくれるならまだしも、社畜どころか喜んで多くの税金を払いながら死に物狂いで働く様になる。それが神運の恐ろしさだった。

 ナラクを制する者がその恩恵が授かれると誰もが知れば、必ず良くない事が起こる。

 「くれぐれも悟られぬ様に動きなさいよ?」
 「はっ、肝に銘じて……」

 セダスに釘を刺した婦人は言いたい事を言うと満足して帰っていった。

 「はぁ……怖かった」
 と、安堵したのもつかの間、セダスの子飼いから一枚の報告書が届き、急いで賭場へと向かったセダス

 今迂闊な事を仕出かす訳には行かないと必死の形相で賭場の扉を開くとそこには……

 盛大に飲み会が開かれており、金貨が乱れ飛んでいて、その中心ではしゃぐ従者の少年と端っこのカウンターでチビチビと酒を飲んでるナラクの姿だった。
 
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