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空への旅①
しおりを挟むカケルは窓から外を眺めていた、遠ざかる地面を遠ざかる森を遠ざかる故郷を時折歓声を上げながら眺めていた。少し怖さもあったのか、小刻みに震えていたのが見えた。
遠ざかる景色とは裏腹に妖精達は空へ上がれば上がるほど増えていったので、それを見たら安堵したのか震えは治まっていた。
マイは庭に出て寝そべり下を覗き込んでいた。キラキラ光る赤スラの中に居る妖精達を眺めていた。
ちゃんと飛んでるかサボってないか見張っているんじゃないかと俺は思っている、それ程ジーッと眺めていた。
そこへ、空に居た翅妖精が近付いて来たのをガシっと掴むと耳元へシノ母へと伝言を頼んでいた。
口の動きで「母へ」と言っているのは分かったが、他の言葉は首を正面に向けてしまったので何を言っているのかは見えないし、声も聞こえなかったので分からなかったが、多分行ってきますと言いそびれたからそんな処だろう。
俺はといえばハンモックにぶら下がりながら、カケルとマイをボーッと眺めていた。一応長男だから、二人が震えていたら慰めてやろう、励ましてやろうと構えていたが、空に浮いているという怖さは既に無くなっているようなので、一先ず安心しているところだ。
空の旅は風に揺られて飛ばされるかと思っていたのだが、無風だったのでそのまま真っ直ぐ浮かんでいった。
窓からは翅妖精が時折出たり入ったりして遊んでいた。そのうちの一匹をガシっと掴んで父様への伝言を頼んだ
「今から行きますのでよろしくお願いします!あ、僕はタケルと言います!弟にカケルと妹にマイが居ます!もうすぐ会える事を願っています」
そう伝言を頼むと窓から放りなげた。妖精はそのまま、空へとピューンと飛んでいきやがて見えなくなった。
「タケル、父様には初めて会いに行くけど大丈夫かなぁ?」
「大丈夫とは?」
「僕達のこと理解してくれるかなぁ?」
「内田さんの話じゃ僕達はシノ母と顔が似てるからひと目見たら分かるよって言ってたし大丈夫だよ」
「そっか!ドキドキするなぁ。どんな人なのかなぁ……楽しみだなぁ」
「シノ母と皆の話と全く違うから何とも言えないよな実際」
シノ母は「優しい人だよ」といつもいう。
内田さんは「……」無言で肩を震わせていた
亮ちゃんは「エロい人だよ」と顔を赤らめながらいう。それを聞いたときは、変態なのかと疑った。
田島さんや新島さんは「面白いやつだよ」と呆れながらいう。
月島さんは「関わった事に後悔はしてないかな?」と、苦笑いしていた
ウンディーネさんやシルフさんとはあまり話した事が無いのでよく知らない。好意的には思ってるらしいが、封印した事にも後悔してない様なのでなんとも言い難い。
そして、カケルもマイも封印した事に怒っているので妖精族を良く思っていないフシがある。伝言用妖精もぞんざいに扱ってる所を見ればその恨みも分かりやすい。
だからか、シノ母の周りにしかウンディーネさんとかシルフさんは近寄らないでいる。
完全に憎んでいる訳では無いのがまだ救いかも?
まぁ、何にしても今から会いに行って連れ帰ろうとしてるんだから、遅かれどんな人か分かるだろう。
暫く空の旅を楽しんでいると、先程の妖精が伝言を携えて戻ってきた。真っ直ぐ僕のところへ戻ってきたので間違いない。マイが送った奴だったら、真っ直ぐマイの元へ向かうだろうからな。
「シノの子供達か?そうか、何歳に成ったか分からんが、まぁ待ってるよ」
そんな優しそうな声が返ってきた。
玄関の扉が勢い良く開いたと思ったらマイが飛び込んできて
「今の声は誰の声!?もしかして父様!?」
俺のところへ飛んできて翅妖精を奪い取ると、再生!と、叫んで翅妖精の口へ砂糖の欠片をねじ込んだ。
妖精伝言サービスの研究チームが、最近発表した麹村のトップニュースが、妖精伝言サービスのシステムで新しく伝言をインプットしなければ対価を払えば繰り返し聴くことが出来るっという物だった。
最近の流行りで恋人同士で同じ妖精を持ち、ポケットに忍ばせた砂糖菓子で繰り返し愛の囁きを聴くのがトレンドになっていた。
聞き取れない声も繰り返し聞けば理解出来るので、砂糖菓子が飛ぶように売れていった。
中でもチロルチョコは小さいながらも甘くて美味しいと評判になっていて、妖精達の間でも人気を独占しているらしい。
マイは普段は氷砂糖の欠片を使っているが、大事な話の場合はチロルチョコを使うらしい。そして、今もチロルチョコのホワイトヌガーを口いっぱいにほうばり、幸せそうにンッチョンッチョ言いながら食ってる翅妖精を食べ終わるまで待ち、繰り返し繰り返し耳元で囁いて貰ってるマイを眺める。
よっぽど会いたいのかウットリしてる……
何か違う扉開けてないか心配になりつつも、晩御飯にする事にした。
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