異世界団地

あるちゃいる

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53話

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 前方でエンジン音が朝靄の中響き渡り、静寂だった街の朝をぶち壊した。 ガクンッと、前方に引っ張られた馬車も、ガラガラと硬い地面の上を小石を蹴散らしながら進む。 サスペンションが入っているとはいえ、流石に木製の車輪では振動を打ち消す事は出来ないようで、スピードを上げる車に括り付けられた馬車の中は酷い事に成っていた。

 「ちょっとオヤジに言ってくる!」

 そう言って時速40kmで走る馬車から飛び出して馬車を引っ張る車に文句を言いに行った一樹が、実はとっくに人間を辞めていた事に気付いた。

 車がゆっくり停車し、パパを連れて一樹が戻ってきて、車輪の交換を提案していた。
 パパは猫ニャンに何事か囁くと、猫ニャンを抱えて消えた。 一時間後猫ニャンとパパが帰ってきて直ぐに馬車の改造を始めた。
 更に一時間が過ぎた頃ようやく出発した、時速70kmで走る車の後ろをほぼ揺れずに走る馬車。 エアサスと30インチシト○エン用のタイヤをどっかから買ってきたパパはそれを馬車に取り付けるためにシャーシを馬車に取り付けた(猫ニャンが)そのお陰で安定走行が可能になったそうで、スピードが更に上がることになった……

 円さんや他の方々は、はしゃぎながら窓から見える景色を眺めている。

 このまま走れば明日の朝には王都へ着くらしい。
先に出て、今現在野営中の問題の貴族を追い越して進んでると言えば、話し合いは用意周到で望めるからかなり有利に話が進むと皆さんは(悪い顔しながら)微笑んだ。
 夜を徹して走る車を一樹が運転している。 流石に徹夜して走るのは、パパは無理だと判断した結果だった。 私も助手席に乗り込んで話し相手になっているんだけど、さっきからチラチラ見えるスビードメーターが100km超えそうになってて少し怖い。
 流石に早く走り過ぎなんじゃ無かろうか……
車と馬車が揺れないように猫ニャンが魔法で固めたお陰で事故に繋がるような動きはしていないが…… 街道はじゃり道なのを一樹は忘れているのか、気付いてさえ、いないのかも知れない。

 じゃり道を100kmで走る、考えただけでも怖い…… それにさっきゴブリンを撥ねた気がした。

 バンッ!

 また何か撥ねた音がする…… ライトにうつる色は緑だったからゴブリンだろうけど…… 流石に飛ばしすぎなので、注意しようとしたら

 「見えてきたぞ! 王都の城壁だ!」

 そう言って一樹はようやくスピードを落とし始めた、確か到着は明日の朝だったはずが、まだ深夜3時を少し過ぎたくらいだ…… それだけでもどれだけのスピードを出していたかが分かる。

 絶対にあちらの世界で一樹の運転する車には乗らないと私は誓った。

 夜明けまではまだ少し時間があるので、仮眠することになった。

 ぬくぬくとした布団の中でグースカ寝てた猫ニャンを馬車の上に置いて、警戒してね? と言ったらグズり出したので、寒くない様に日本酒を二本渡したら喜んで引き受けてくれた。

 4時間ほど寝たら大分頭はスッキリした、外に出ると太陽が異常な改造で原型が無くなった車と馬車を照らしていた。

 城壁の方を眺めると流石の王都だ、朝にも関わらず大勢の人達が出入りしていた。 商人風の人や近隣農家の人が、朝市にでも店を出すのか門の前に行列を作り並んでいた。

 中からは冒険者がクエストにでも行くのか数人のパーティで森へと歩いていたり、商人風の人が馬車に乗って護衛も連れて出ていったりと、本当に出入りが多かった。

 こんなに人が多いと流石に疲れちゃいそうだ。
やはり私はあの街がのんびりしていて好きだと思った。
 きっと、パパもアーニャも一樹も同じ事を思うだろう。 早く問題の男をぶっ倒して街に帰らなきゃ、そう思って私は砥石を出して剣を研ぐのだった。
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