53 / 56
53話
しおりを挟む前方でエンジン音が朝靄の中響き渡り、静寂だった街の朝をぶち壊した。 ガクンッと、前方に引っ張られた馬車も、ガラガラと硬い地面の上を小石を蹴散らしながら進む。 サスペンションが入っているとはいえ、流石に木製の車輪では振動を打ち消す事は出来ないようで、スピードを上げる車に括り付けられた馬車の中は酷い事に成っていた。
「ちょっとオヤジに言ってくる!」
そう言って時速40kmで走る馬車から飛び出して馬車を引っ張る車に文句を言いに行った一樹が、実はとっくに人間を辞めていた事に気付いた。
車がゆっくり停車し、パパを連れて一樹が戻ってきて、車輪の交換を提案していた。
パパは猫ニャンに何事か囁くと、猫ニャンを抱えて消えた。 一時間後猫ニャンとパパが帰ってきて直ぐに馬車の改造を始めた。
更に一時間が過ぎた頃ようやく出発した、時速70kmで走る車の後ろをほぼ揺れずに走る馬車。 エアサスと30インチシト○エン用のタイヤをどっかから買ってきたパパはそれを馬車に取り付けるためにシャーシを馬車に取り付けた(猫ニャンが)そのお陰で安定走行が可能になったそうで、スピードが更に上がることになった……
円さんや他の方々は、はしゃぎながら窓から見える景色を眺めている。
このまま走れば明日の朝には王都へ着くらしい。
先に出て、今現在野営中の問題の貴族を追い越して進んでると言えば、話し合いは用意周到で望めるからかなり有利に話が進むと皆さんは(悪い顔しながら)微笑んだ。
夜を徹して走る車を一樹が運転している。 流石に徹夜して走るのは、パパは無理だと判断した結果だった。 私も助手席に乗り込んで話し相手になっているんだけど、さっきからチラチラ見えるスビードメーターが100km超えそうになってて少し怖い。
流石に早く走り過ぎなんじゃ無かろうか……
車と馬車が揺れないように猫ニャンが魔法で固めたお陰で事故に繋がるような動きはしていないが…… 街道はじゃり道なのを一樹は忘れているのか、気付いてさえ、いないのかも知れない。
じゃり道を100kmで走る、考えただけでも怖い…… それにさっきゴブリンを撥ねた気がした。
バンッ!
また何か撥ねた音がする…… ライトにうつる色は緑だったからゴブリンだろうけど…… 流石に飛ばしすぎなので、注意しようとしたら
「見えてきたぞ! 王都の城壁だ!」
そう言って一樹はようやくスピードを落とし始めた、確か到着は明日の朝だったはずが、まだ深夜3時を少し過ぎたくらいだ…… それだけでもどれだけのスピードを出していたかが分かる。
絶対にあちらの世界で一樹の運転する車には乗らないと私は誓った。
夜明けまではまだ少し時間があるので、仮眠することになった。
ぬくぬくとした布団の中でグースカ寝てた猫ニャンを馬車の上に置いて、警戒してね? と言ったらグズり出したので、寒くない様に日本酒を二本渡したら喜んで引き受けてくれた。
4時間ほど寝たら大分頭はスッキリした、外に出ると太陽が異常な改造で原型が無くなった車と馬車を照らしていた。
城壁の方を眺めると流石の王都だ、朝にも関わらず大勢の人達が出入りしていた。 商人風の人や近隣農家の人が、朝市にでも店を出すのか門の前に行列を作り並んでいた。
中からは冒険者がクエストにでも行くのか数人のパーティで森へと歩いていたり、商人風の人が馬車に乗って護衛も連れて出ていったりと、本当に出入りが多かった。
こんなに人が多いと流石に疲れちゃいそうだ。
やはり私はあの街がのんびりしていて好きだと思った。
きっと、パパもアーニャも一樹も同じ事を思うだろう。 早く問題の男をぶっ倒して街に帰らなきゃ、そう思って私は砥石を出して剣を研ぐのだった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる