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二話
しおりを挟む【山村】山の村と書いて山村と読む筈だ。決してポツンと一軒家風の単なる山小屋を山村とは呼ばないはずだ!
昨晩は畑で採れた大根を手で折って、井戸から水を汲んで鍋に入れそれを薪で煮てから味付けも無いまま貪り食った。まさか塩さえも無いとは思ってなかった。流石に酷いと思ったが文句を言える相手も居ない。
なので次の日の朝から家の周りを散策しながら歩いているのだが、一向に人に出会えなかった。代わりに猿がいた日本猿だろう。それと、兎や鹿や狸何かも歩いてた。人を怖がっていない所を見ると、数年から数十年人と関わって居ない様だ。
とりあえず山を登って高台から周りを見渡す事にしたのだが……獣道しかなかった。
一応頂上へと着いたが森の様で景色は見えなかった。仕方なく昔を思い出しながら木に登り見渡せる高さまで登って見たのだが。
車の中で説明していた隣近所やスーパーやコンビニらしき建物は無かった。全て森であった……
まさか、山村は後から出来るとか?俺が第一村人なのか?と、木の上で途方に暮れていると遠くの方で木々が動いていた、それはよーく見ると重機のようだ……と思う。あの大きさなら重機だろう。黄色くはなかったが……まぁいいさ、重機は。っていうか本当にまさかの第一村人だったらしい……。
力無く木から降り、種火に使えそうな枝なんかを拾いながら山を下って行き、家の裏側へとやって来た。其処に枝をバラバラと置いて、井戸へと向かい水を桶に汲んで風呂へと入れる。
数十回も繰り返すと腰が痛くなった。
取り敢えず五右衛門風呂の中に半分位の水が貯まるまで繰り返した後、火を付ける。拾ってきた枝がパチパチと燃えだしたら薪を焚べてお湯を沸かす。
昨晩寝る前に風呂に入ろうと探したら五右衛門風呂が見付かって途方に暮れたあとそのまま(不貞寝)寝たのだ。
まだ元気なうちに水をはろうと思っていたので、適度な運動(散策)の後なら体も動くだろうと思ったが、結構な重労働だったらしい
腰をさすりながらもお湯を暖め、頃合いになったので躰を洗った後、湯に浸かった。薪の匂いと森の香りで実に気持ちよかった。が!
全てやって貰えて、飯が出てくるなら快適だったのだが、この後は昨晩煮ただけの大根の残りを食うだけだと思うと実に不快だった。
「何が隣近所の人は優しいだよ。誰もいねーじゃねーか!居たのは動物だけだったわ!」
風呂に浸かりながら思わず叫んだ。理不尽すぎるだろ?隣近所は後から出来ますからとか言うならまだしも……最初は間違ったんじゃないかと思ったが、表札は俺だしその下に書いてあった番地も説明の通りだったから早々に諦めた。
諦めたが納得した訳ではない。まぁ、文句を言っても仕方ないと思い明日は山に狩りに行こうと、昨日見つけた弓矢を思い浮かべ楽しむことにした。
そうやってテンションでも上げていかなければやって行けなかった。
◇◇◇
次の日も天気は良く、狩りには最適な日だった
納屋から矢を10数本筒に入れて持ち、弓を肩に担いで序に縄も反対側に担ぐ、そして山へと入る。家の周りで狩りはせずに、少し入った所で狩ることにする。特に意味はない。何となくだ
狩猟免許なんて気の利いた免許も持ってないが、仕方ないだろう?別に取れと言われてもいないし、他に誰も住んでないのだから……
さてさて、狩りである。モンハンもやってたしMMORPGでは、必ず短剣か弓を選ぶくらいの弓好きである。少しワクワクしながら矢を番え……るが、実践は初めての俺。当たるわけが無いだろ!?
山に入る前に気付くべきだった。が、ワクワクが勝っていたため気付かなかった。何とも間抜けな話だが、仕方ないと思う。
そうこうしてると、手を伸ばせば届く場所に兎が現れた。何だこの無警戒さんは……呆れながらも矢を手に持ち握る混むと、素早く首に刺した。
躊躇はなかったと思う。深々と刺さった矢からは兎の血が流れ、刺されたショックで兎は死んだらしい、手間が省けたとそのまま血抜きをする。
納屋にあった刃渡り20センチくらいの捌き用ナイフを手に取り首を更に切り首を落とす。後ろ足を持って逆さにすると、持ってきた縄で後ろ脚を縛り木の枝に吊るす血が垂れる場所に穴を掘り、捌いていく……が、上手く出来ない。本当にこれで良いのかもわからないまま、腹の皮を摘み上げて其処にナイフを入れてスーッと上へ下へと切っていく。内臓がデローンと出て来て少し青褪めながら陰部を切り落とすとズルンと内臓だけが地面に落ちた。
どこをどう切って、内臓が何故落ちたのかもわからないまま、取り敢えず吊るし肉の様にするイメージで肉から皮を剥いでいく。
なるべく脂を皮に残さない様にゾリゾリと切っていくが、中々上手くいかないものだな
ざく切りに成りながらも何とかイメージどおりに捌くことが出来た。重さ的には5キロかそこらだろうが初狩には成功したようだ。
内臓も食えるはずだが、今のところは無理だった……なので土に返す方向で考え、皮と肉を持って家に帰った。皮の鞣し方も何処かに書いてあったと思い納屋へと向かおうとしたが、先に肉を焼いてしまおうと、土間へと入っていった。
土間の鍋があるのと対になってる網だけが掛けてある竈に種火に火を付けていく。薪まで火がつくには少し時間が掛かるので、火吹き竹を使って火力を上げていく、呼吸困難になる手前で団扇に変えて火が薪に付くまで煽る。
そのまま、燃えだしたら鉈で骨から肉を剥ぎ取り筋を切り一口大にしたら網に乗せていく。
骨は隣の鍋に放り込んだ。
隣の鍋に水を足して骨と大根とを煮込むことにした。
竈から燃えてる薪を一本移して隣も燃やして、弱火にしたかったのであまり強く燃やさないように気をつけた。
クツクツいってきたら薪を散らして火を弱めて煮込んでいく。焼いてた肉を端っこに避けてから、畑に駆け出して、大根を追加した。井戸で洗って戻ってくると、肉は焦げそうになっていた。
慌てて皿に盛り、次の肉を焼いていった。
すべての肉を焼き終わると、皿に乗せてテーブルに置いて、お椀に大根スープをいれる。食器を探っていたら塩コショウが出て来たのでそれで味を整えた。肉にも焼いた後少しかけといた。
米は炊いてなかったが、食器が置いてあった場所に芋焼酎の4リットルペットボトルも見つかったので、それを飲む事にした。
コップに注いで手を合わせ「頂きます!」してから、肉を摘みパクリとする。
多少獣臭いが我慢できるレベルだった。塩コショウした肉は噛めば噛むほど肉汁が滴り、苦労して捌いた事を労うかのように口に心に染みていった
薄っすらと涙が流れたのを誰も居ないのに照れ隠ししながら袖で拭き取り、芋焼酎で流した。
こんなに苦労して食べたのは初めてだった事もあり、美味さは生きた人生で一番美味かったかもしれない。その夜は大変満足して呑みながら食いながら歌いながら騒いでいた。一人しか居ない山の中だ、誰構うことなく騒ぎ倒した。そして、そのまま毛布を掛けて酔い潰れる様に寝むるのだった。
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