生まれ変わっても無能は無能 ~ハードモード~

大味貞世氏

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第2章 再会、集結

第2話 バッドステータス

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素晴らしきかな。王都センゼリカ。
リアル王子と友達になった事で、門の通過は顔パス。
罪人2人の引き渡し後、アムールは豪華な馬車で王城へと帰って行った。

「是非とも遊びに来てくれ。公務で出ていなければ、存分に持て成すぞ」
「おう、またなアムール」
「またねぇ。その内遊びに行くよ」
人々の往来の中での挨拶に、爺やさんが苦笑いを浮かべる。

正直僕らに、王制のルールなんて知ったこっちゃない。

「宿はローレンライを2人の名で抑えておく。後に専用の通用証を謝礼付きで届けておく」
すっかり成長したアムールが、堂々と周りを仕切ってる。
その姿は、王道から外れても自分の足で歩こうとする、自信で満ち溢れていた。

何かの切っ掛けで人は変わる。
やさぐれてた梶田君も、何かで変わってくれれば・・・ありゃ無理か。

到着当日は、入場門脇に在った重来客用の貴賓館へ宿泊。
大きなお風呂と、フカフカのベッドで生返ったわぁ。

旅を共にした冒険者さんたちと過ごし、貴重な経験談をお聞きした。
勉強にはなった・・・。後半、高級ワインが入らなければ。
大半を忘れてしまったので、かなり勿体ない事をした。

今回は、翌朝隣に知らない女性が寝てた。ってのは無かったので安心して欲しい。

朝になり、内門を潜る。さて、いよいよ待ちに待った王都へ。

大まかな区画は上位から、王城、王宮、宮廷、貴族街、城下街、人民街、貧民街と段になって連なっている。アムールに提示された宿屋は城下街に在る。

東京都心程じゃないけど、町中の往来は多く、人々の顔は生き生きと活気に溢れる。

「広いねぇ。都会って感じ」
「ちゃんとした都市って、何処もこんな感じかな」

商店街を軽く巡って、城下街の冒険者ギルド本部へと入場。
ツーザサ支部とは違う活気。人数多い。依頼書も多い。運営する側のスタッフの動きも早い。

受付も上のベテラン用。中の中級者用。下のルーキー駆け出し者用。3列設けられ、受付スタッフも全員が男性。重篤な怪我を負って、一線を退いた人たちが主。

冷静に華を飾る女性の姿は表には少なく見える。

行かせろ行かせないとかで罵声が飛び交う前面には、男でないと必ず嘗める人が出るからね。

被受け構わず、皆真剣に遣り取りをしている。自分や仲間の命が掛かってる。リーダーたちの重要な役割だ。僕らみたいに友達同士でってのは少数なのだろう。

「何だか」
「凄いねぇ」

この狂乱の中でも割りに大人しい新人枠の列の後ろに並んだ。
大概の新人は、この時点で挫折してしまう人も少なくないらしい。
僕らはぶっちゃけ目的が全く別の場所に在るから、関係ないっちゃ関係ない。

-スキル【無知無能・関心】並列スキル【調整】発動が確認されました。-

比較的優しい依頼は本来の新人たちに残すべきで、僕らは1ランク上の依頼を探す。
B級ベアーのような強敵に挑む訳じゃない。E級の上、D級全般の依頼狙いで。

順番が回ってきた。

「正式登録の申請に来ました。タッチーです」
「同じく。ヒオシです」

「おー君らか。B級上位のビッグベアーをたったの4人で討伐したって噂の新人は」
いや、見物してただけですけど?苦笑いでやんわりお返し。

気の所為か、周囲の冒険者たちの動きが止まっているような・・・。

「資格条件は既に満たしている。奥の部屋でちゃちゃっと発行手続きするから。おーい、例の新人来たよ。ロンさん頼める?」
奥で事務作業に追われていた、中年眼鏡のスラッとしたおば様が振り向いて応えた。
「はいよ。坊やたちかい?成程ねぇ。案内するよ、付いてきな」
外観の厳つい先生感と、言動のギャップが激し過ぎる。
この人だったら特に嘗められる事もないんじゃ・・・。

別に優しく丁寧を期待してた訳じゃないよ。

受付奥の部屋に通された。割りに広い部屋に大テーブル一つ。5脚の椅子。
豪華でも質素でもない普通の椅子と机。

照明ランプ代わりに、輝く石が部屋の4隅の上方に固定化されている。きっと魔石に違いない。
奥手の小テーブルに、レジ台みたいな金属製の箱のような物が一つ。

あれで発券するのかなぁ。

「ランプも消耗品でねぇ。勿体ないからさっさとやるよ。細かい説明は、ながら言うからしっかりとお聞き」
「「はい」」

先ずは書類。僕らの場合は既にある程度書き込まれた紙を、一旦退出したロンさんが戻って来た時に僕らの前に置いてくれた。

血判状。どちらかの親指先端に針を刺し、少量の血で判を押す。
偽物や偽造の防止には血と指紋は欠かせない。他にも方法はあるって言ってたけど、これが一番手っ取り早く確実。

「チュウチュウ吸っときな。傷薬なんてやらないよ」

久々に味わう、自分の血の味・・・。生きてるんだなぁ。

「サインはどっちでもいいよ。どうせ自動で書き込まれるからねぇ。それより・・・、本当に2人同時でいいんだね?」

何の確認だろう?2人で首を捻っていいよと答え返した。

「たまに居るんだ。自分たちのステータス見せ合って、仲間割れする輩がね・・・」
ステータス!?キタコレ!やっと自分たちの能力値が解る。

ロンさんの何だか悲しそうな表情に、爆上げテンションが一瞬で収まった。
この世界ではそれ程重要で大切。要は金の卵のようなレアスキルが見つかった場合。
その後に起こる事は容易に想像出来た。

「「大丈夫です!」」力強く答え直した。

「・・・何を見ても、その決が鈍らない事を祈るよ」

2枚の紙が後部の穴から吸い込まれ、箱全体が輝いた。それから前面の穴から出て来た2枚の定期カードサイズの厚紙。

先ずはロンさんが手に取り・・・、目を見開いて絶句していた。早く見せてよぉ。
「・・・なんだい・・・、こりゃ・・・。わたしゃ、どうすれば・・・」

震える手で渡されたカードを、わくわく拝見。やっぱ異世界って言ったら、コレがなくちゃ。
「お、ヒオシのスキルの狂戦士って格好良いねぇ。バーサーカーかぁ」
それに比べ。
「タッチーの、無知無能・関心ってwww。聞いた事ないわ」
僕もだよ!気にしてた事をズバリ。
膝から崩れて、乙ポーズ。これをリアルでやる事になるとは・・・。

「ロンさん。さっきから顔色悪いよ。大丈夫?」
僕が復帰しても、まだロンさんは固まったままだった。

「大丈夫、ではないねぇ。こんな秘密を抱えてちゃ、うかうか酒も飲めやしないよ。私が知り得る範囲で助言するから、よーく聞いて頭に刻みな!」


表面から。

名前欄。タッチー・ムノウ。ヒオシ・クルスマ。ファミリーネームが付いたね。通称で呼んでたアダ名がそのまま。だっさとかは言わないで。傷付くから。
そんな家名は聞いた事ないよ!なぜか怒られた。

種族名。2人とも人間種(異世界人)。モロバレ・・・。
死んでも黙っておきな!どうか怒りを静めて下さい。先生に怒られてるみたいで凹む。

ギルドランク。E級。正式登録時の初期ランク。
登録時の本部地名。当然、センゼリカ。ランクの一段下側に。

レベル。あったの!?と、「???」が書かれていた。
わたしゃ知らないよ!!一喝されました。

主要能力値。スキルやレベル含め、全部が青文字で書かれてる。詳細は別途記述にて。
青字って事は、上限を示す物じゃない。これからまだまだ進化する表れだと申されております。
無知無能の進化先がサッパリ不明?

討伐欄。これとランクだけはギルド内にて後記述式。スペース的な問題だろう。
ギルドに認められれば書き込める。主に腕の自慢にしか使えない。
ほぼほぼ記入する馬鹿は居ないって話。

自慢気に人にペラペラ話す→賞金、報奨金をがっぽり持っているのがバレる
→荒くれチンピラ、盗賊に狙われる。

お金に困った仲間に毒を盛られた事例も有り。ロンさんが悲しそうに話してくれた。

有用なスキルが知られてしまうと、常に裏切りと仲間割れの要素が付き纏う。
仲間内でも登録証を見せ合わないのは、そんな理由から。

ビッグベアーを書くか?あんな戦いで自慢出来ると思う?
僕らも、この欄を使う事は無い。この先もずっと。


次に裏面。スキルに関しては先程の説明通りに。

「狂戦士ってのは特に注意が必要だよ。国の軍部にでも知られてみな。坊やたちを囲おうと、戦捷国家が血眼になる。この国だってそうさ。充分に気を付けな」
言動には注意しないと。特にアムールのとこに遊びに行った時には。

オプション欄。僕がアイテムBOX(無限)。ヒオシが(極大)。来た来た一番欲しい物。でも。

「・・・僕ら、パシリにされる?」
「面倒になったら。・・・また逃げちゃうか?」

「アイテムBOX自体は珍しい物じゃない。付く子には付く。しかしねぇ。普通は小か中まで。激レアで大までさ。極大や無限なんざ聞いた事もない。その心配通り、荷物持ち含め、何でも盗める凶悪犯にもなれちまう。収納制限も付いてなさそうだしねぇ」
生物でもいける口?こればかりは試してみないと・・・。隣のヒオシが目に付いた。

ヒオシの肩を掴んで。
「収納!」
「え!?ちょ、まっ」瞬間で本人と衣服と装備丸ごとが消え去った。

「取出し!」
反対隣の空間からヒオシの腕が生えてきたので、即座に引っ張り出す。
「・・・ぜぇ、ぜぇ。殺す気か!!」
「ごめん、ごめん。どうしても試してみたくって」
どうやらBOX内では空気が無く、超絶寒かったらしい。

「お返し!収納!」
足首を掴まれて、真っ暗な空間に景色が切り替わった。
ホントに寒い。足を着けられる地面も無ければ呼吸の為の空気も無い。宙に浮いてるみたいな。

これが無重力空間です!と説明されたら、納得して貰えるだろうか。宇宙には行った事ないので知りませんなぁ。確か絶対零度の空間だったっけ。

差詰めこのBOXは、何でも入る巨大冷凍庫のイメージ。

「・・・ハァ、ハァ・・・。ヒオシ、マジでごめん・・・」
「二度とやらない。生き物入れるのだけは厳禁で!」
ヒオシと握手を交し、固く固く誓い合った。

「自分たちで試すとは・・・。度胸がいいんだか単なる馬鹿なのか。人攫いにだけは成らないでおくれよ」
中の人。数分で死ぬからね・・・。海行ったら冷凍魚、放り込むだけで自動作成出来るかも。
川魚で試すか。犠牲になる魚には申し訳ない。

オプション説明は以上。気になったのは、我らが疑惑スキルの隣から下段まで、歪な空欄が並んでいた事。これは何ですかと問うと。

「こいつは予測だけどねぇ。空欄が在るって事は、まだ何かが入る。またはその可能性を秘めているって所かねぇ」

後追いで何か付くのかなぁ・・・。何かの条件を満たすとか?
例えば命の危険とか・・・。何かに着けハードだね。見方を変えれば、これが現実。

BOXも狂戦士も、充分にチートの類いになるかもだけど、それだけで無敵な訳じゃない。
能力を伸ばして行くのも自分たちの努力次第。
何にしろ、危険が付き纏う。死ぬ確率だって他の人と変わらない。
冒険者とはそう言った職業。

チートを使った商人ルート?スキルの使い用では、その道も有りだろうけど・・・。
無知無能で何が出来るの?

僕だけ酷くない?


「それにしても・・・。坊やたちが、あの召喚された異世界人とはねぇ。噂の新人てどころの話じゃないさね。こればっかしは、ギルマスのマクベスにも話を通さなきゃならない。悪いね」

「いいえ。何方にしろ、冒険者を続ける上で何時かはバレるので」
「寧ろ、ここでその情報を聞けただけでも有り難いです。対策方法も色々考えられるし。その程度の覚悟は、俺らはしてる積もりです」

「いい目だねぇ。各国の要人との接見には気を付けな。仲良しのおバカ王子は良しとして。宮廷には必ず居ると言っていい、看破スキル持ちに見られた日には。坊やたちの自由は終わりだと諦めな」

冒険者ギルドは国政とは関係がない完全中立。国の介入が有った場合、ギルド総出で引っ越すと脅してやれば国は何も言えない。それ程に世界には強力な魔獣や魔物が溢れ、軍部や騎士団だけでは全てを対処するのは不可能。

ただそれは普通の対処方法。異世界人となるとギルドでは抱え切れない、守り切れない。
存在が知られてしまった時点でアウト。

僕らの自由な旅も、そこで終わりかぁ。

無能な僕だけなら、逃げられる可能性は無くも無い。でもそれは、親友のヒオシを切り捨てる事に他ならない。ここまで旅を共にした命の恩人を。

「僕らは、もう逃げません。バレたらバレた時に考えます」
「パシリからは絶対逃げるけどな。命令して来る奴ら、全員ボコって」
例えそれが国が相手だろうと。ヒオシならやっちゃうだろうなぁ。
なんせバーサーカーだし。

大笑いし合った後で、部屋を退出。ロンさんにギルド3階まで連れて行って貰う。
ギルマスに会う為に。

ロンさんが乱暴にノックした後で。
「重要案件だ。入るよ!」ロンさん強ぇな!心強い。

「ちょ・・・、まだいいよって言ってないよ!ロンジーさん」
ロンさんって、ロンジーさんなんだな。

おぉダンディーおじさん。分厚い眼鏡をクイクイ上げ上げ。デスクで大量の書類に埋もれそう。

隣のデスクの秘書官の女性も、ビックリして手を止めてしまっている。

結構可愛い。僕らの少し上っぽい人。

「最優先事項さ。ボヤッとしてないで、2人ともさっさとお座り!」
「「は、はい!」」手を書類から離し、直立で立ち上がる。

実はロンさんがここのマスターなんじゃ?

指令のまま、接客席にそれぞれ座る。上座ってどっち?
解らないので適当に、空いた席へ。

マクベスさんが杖を着きながら右足を引いていた。彼も引退者。

命があっても、こんな状態も有り得る。異世界人だって例外じゃない。
僕らも気を引き締める。何もかも上手く行く保証は、何処にも無いんだから。

「ジョルディ。茶はいい。座ってな」
着席してから立とうとした秘書さんを制した。
「はい」額の汗をハンカチで拭っている。そんな怖いんだ・・・。

「手短に。こっちがクイーズブラン本部、ギルドマスターのマクベス。そっちがマクベスの娘のジョルディ。私はロンジー。下の事務を取り仕切ってる。この2人は信用出来る。ここでの情報が漏れようものなら、この私が2人の首を刈りに行くからね!」
凄ぇ。2人が怯え切って震えてる。

マスターとジョルディさんの関係性は紹介前に何となく解ってた。
見つめ合う仕草とか、顔付きのベースも良く似てたから。親子かなと。

「まずはコレを」
接客テーブルの上に、僕らのカードを並べてロンさんが2人を睨んでから手を離した。
「ロンさんが慌てるくらいだ。どれどれ・・・」
マクベスさんからカードを手に取り、固まった。続けて。
「私も拝見します」
固まった父の手からカードを取って、凝視。

「は?え!?・・・狂戦士・・・、BOX無限に極大・・・」
目を何度か擦っては、見直していた。
「加えて。異世界人・・・」

マクベスさんが眼鏡を外し、目頭を押さえて背もたれに身体を預け息を吐く。
「クゥーー。もう少ししたらベンジャムから他の召喚者も来ると言うこの時に。まさかこっちでも見つかってしまうとは・・・」

「それだけじゃないよ。よく見な」
「レベル?に、青字。スキル欄の空き具合・・・。他の召喚者の方も、もしかして」

「恐らくね。他の子も何かしら突飛な物を持ってると見ていい。あんたら、無知無能なんざ。聞いた事あるかい?」

「いえいえ。全く以て生まれてこの方、欠片も聞いた事もないですな」
隣のジョルディさんは大きく頷いただけ。私が知るワケないじゃんて。

「隠す方法は、何かありますか?」

「レアスキルの【隠匿】なら、隠したい部分を本人以外には見えなくする事は出来る。しかしそれには、本人自身がスキルを所有してないと発動は出来ない」

「やってみる?」
ヒオシも対処方法を考えてたらしい。
「おけ」

カードを返して貰い。掌に乗せて念じてみた。
僕らはまだ、自由な旅がしたい。仲間以外に誰にも知られず、このままずっと。
お願いします。責めてこれ位、願いを聞いくれ。

-スキル【隠蔽・極み】発動が確認されました。
 それに伴い、並列スキル【隠密】【隠蔽】が任意に発動可能状態となります。-

閉じていた目を開き、スキル欄を改めて確認する。
やった・・・。出来た!

「隠蔽・極みが出ましたよ」2人とも。嬉しさ余ってヒオシとハイタッチ。

「なんてこったい」
「こんなにも簡単に」
「凄いですね。末恐ろしい」

これって泥棒し放題じゃ・・・。
「これなら女子風呂も覗き放題に・・・」
ヒオシィィィーーー。口に出てるから!

ロンさんが僕らの前に仁王立ち。ジョルディさんの冷めた目が印象的。
「もう一回、言ってみな!!」

お説教と往復ビンタが数分間続いた。・・・どうして、僕まで・・・。

「フンッ。若いからと、直ぐに調子に乗る。これだから新米は!どんなにスキルを極めようが、流石に目の前に居れば誰でも気付くわ!勘違いすんじゃないよ!」
興奮冷め依らないご指摘。痛み入ります。
そりゃそうっすよねぇ・・・。

「「申し訳、ありません・・・」」ほっぺが赤を通り過ぎて、3倍位膨らんでるんじゃないかなぁ。
実の母上様にも、こんなに平手を貰ったことなんて無い。

「ロンさん・・・。チャンピオンb」ヒオシ、今は逆撫では止めようよ。

「下でも言ったように。変わらず看破持ちには気を付ける事。手揉みで擦り寄って来る奴らには特に注意!いいね?」
最後のいいねはとても優しかった。青白い小鳥は飛ばなかったけど・・・。

「程々にな。私でも庇い切れなくなったら、容赦なく情報を公開する」
眼鏡を掛け直したマクベスさんの忠告。
何か事案が起きたら、僕らが一番に疑われるね、これ。

「これから、お二人は。どうされますか?」ジョルディさんが事務的ーー。
ヒオシが余計な事言うから、行き成り嫌われちゃったじゃん。

「冗談はこれ位にして。僕らは、これから来る6人と何処かで会いたいと考えています」

「予定の彼らは、王宮へ国交来賓として数日を過ごし。その後にこの本部に来る事となっている。但し、会うのはどうだろう。ベンジャムの監視が数人張り付いているはずだ。
こちらがどんなに慎重でもあちらの彼らが、君らを見つけて口を滑らすとも限らない。
君らはアムール王子の繋がりで王宮まで出入りは出来る。しかし、事前に彼らとだけ話が出来る機会は、極僅かと見ていいだろう」

僕らは通用証が貰える。王宮までは入り放題。でも待てよ。
「どうしてマクベスさんたちは、僕らが通用証を貰えるのを知ってるんですか?」

「君らは昨夕。山程人が居る往来で、誰が聞いているかも解らないのに、堂々と。
さも当たり前のように、重要情報を大声で、王子と仲良く話しをして別れたそうじゃないか?
私たちでなくとも、なぜ知らないと思っているのかね。口は災いの元。今後は気を付け給え」
やっべぇ。自分たちで情報発信してたんだった。

「幸い王子の用意するローレンライは、国の直営宿。機密は絶対的に守られる。不正も通用証の横取りも発生しない。と見て私たちは放置した。その点は安心していい。一々ギルドの登録証を見せる必要もない。君らの顔は既に知らされている頃合だ」
知らない所で、自分たちの情報が回ってるんだ。ある意味ネットよりも怖い。

何処で会うのかが問題かぁ。監視が外れるチャンス。あるのかなぁ。

僕らは唸りながら、無意識でBOXを開き、手持ちの道具袋、金袋、武器、登録証を次々に出し入れして使用感を片手間で試していた。

僕の道具袋はキュリオさんから、出発記念に貰った物。可愛い猫のステッチが入っている。
あの居酒屋は「猫猫亭」って名前。家族揃って猫好きなんだなぁ。

もう中身よりも袋が大切。別の袋買って、これは仕舞っておこうと思う。
成長して、ツーザサに戻るのが楽しみ。

キュリオさんが、他の男に抱かれている姿を想像してしまった。
恋人でもないのに、それは僕の勝手。でも胸のざわめきは暫く収まらなかった。

-スキル【嫉妬】発動を確認されました。
 これに伴い、上位スキル【無知無能・関心】が【無知無能・大関心】へと進化しました。
 並列派生スキル【感情抑制】が【感情制御】へと進化しました。-

「タッチー。顔怖いぞ?」
「うん。ちょっと嫌な想像してたわ」
などと言ってる間に。

「もう、使い熟しているのかい・・・」
「流石は召喚者」
「末でなくとも、恐ろしい」

僕らは2人して、何が?の顔を傾けた。3人の呆れた表情と、深い溜息が忘れられない。
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