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第191話 獄炎竜洞窟再び
興味が湧いた。只その一言に尽きる。
異常に元気過ぎる朝。
疲れてもいない。魔力も消費していないのに。上位竜の生血は飲んではならないと再認識。
「私はちゃんと忠告はしましたよ」
ロイドさんのお小言。
「「うん」」
昨夜から飛び立ったクワンはまだ帰らない。グーニャは徹夜でルームランナーで走り続けたとか。
「でも実験と実証は大切だ。人に飲ませて自分たちは飲まないってのは通らんよ」
「嘗めてました。御免なさい」
「私は別の意味で眠れませんでした。隣室が煩くて。次は私をラザーリアに届けてからにして下さい」
「「はい」」
ご想像にお任せ。
シュルツも絵を仕上げた後でお爺ちゃんと一緒に徹夜でルームランナーで走り続け。揃って現在爆睡中らしい。
「まあいいや。クワンが戻ったら溶岩洞窟行くけどロイドはどうする?」
「ご遠慮してお昼寝します。耐性が有っても翼の一部は焼け焦げますから」
あらまぁ。
「ソラリマ。レイルに行きたいか聞いてみて」
『…誰が行くかボケが!!明日暇ならスフィンスラーの続きに行こう。だそうだ』
行きたくないと。
「明日かぁ。のんびりするのは明後日にして今日明日頑張りますか」
「そうね。早めに終わらせたいし。進みが悪かったら3層位にして」
面倒な事程お早めに。
年越し用の蕎麦粉も買えたらいいねと朝食を作っている途中でクワンが帰宅。
「クワッ」
「只今ニャ」
「お帰りぃ。クワンティさんは何処まで行ってたのかな?」
「クワァ」
「転移無しで南西大陸の奥地へ。白蛇さんの子供たちにご挨拶に。お土産に茸を拾って来たニャン」
健全だ。
「偉いわねぇ。滑子が有るならお味噌汁に入れましょ」
「クワッ!」
キッチンカウンターに出された滑子の束を洗って解して豆腐と若芽の味噌汁にIN。
鮭の切り身と大根おろしに目玉焼き。梅干しと納豆を添えて。
何て純粋な日本食。
「「頂きます」」日本式の挨拶で。
今日はロイドも箸を使い出した。
「あれ?カル何時の間に?」
「密かに練習してました。木の実拾いや取り出す時に。慣れると食べ易い物なのですね」
喋りながら別箸でクワンとグーニャの納豆を混ぜ混ぜ。
仲良く綺麗に完食。ロイドの箸捌きも綺麗だった。
俺たちよりもかも…。
残り少なくなった緑茶でまったり。
「ホントは買いに行きたいんだけど」
「ブチ切れ中の帝国に行くのはなぁ…」
残念。
来年矛を収めてくれるのを願って御馳走様。
「クワンさん。ちょっと仮眠して溶岩洞窟行こうと思うのだが体調は如何かね」
「クワッ」
「体調はバッチリニャ。仮眠すると爆睡コースなので休憩して行った方が良いニャン」
百里有るな。
「仰る通り」
「1時間位したらサクッと行こー」
程良く眠いが全く疲れていない朝。
魔物も居ない。誰も入れない洞窟を探索しに行くだけさと軽く考えていた。
この時までは。
今日の朝の収穫報告はたったの10粒。
「うーん微妙」
プリタ博士のご意見は。
「普段通りの水で様子を見ましょう。枯れても隣が有りますし。殻を砕いた粉や肥料もあちらで試した方が」
「そうねぇ。こっちは何も与えず様子を見守るか」
「ふぁい!」
参考データの1つにはなる。
洗い物は侍女衆に任せ。寝室にペッツを連れ込み入念に装備品を整えロイドに念話を送ってそこから飛んだ。
---------------
「「なんで?」」
「クワ?」
「はてニャ?」
洞窟入口に入った時の俺たちの第一声。
以前よりも増した熱量と熱風。各所から噴き上がるドロドロの溶岩と火柱。
そして…夥しい量の溶けた人骨と崩れた魔石。
『レイルが言うには。北に駐留していた馬鹿共が妾が居ないなら獄炎竜も居ないと確信して挙って突入したらしい』
「「は?」」
『設置式の転移道具を使ったようだな。距離指定の。北に何人残っているかは良く見えんが激減はしている』
「…それって詰り」
「私たちと戦う前に。自滅しちゃったの?」
『そうなるな』
んなアホな。強者と戦わずに済んだのは有り難いけど。
「じゃあこの先に何か居るの?」
『…妾は一匹だけと言った覚えは無いがのぉ』
「「はぁぁ!!??」」
一旦洞窟の外に出て作戦会議。
「どうしますかねフィーネさん。日を改めると言うのは」
「良案だけど先延ばしは良くないよ。ちょっと睡眠不足以外は体調は万全だしさ。這い出て暴れたら南部は壊滅よ」
「乾燥した森林地帯が火の海になるのは困るな。放置すれば中央の町まで被害が及ぶ。竜の谷まで行かないと黒竜様は無関心。聖剣も就寝中みたいだし」
「早めに討伐しよう私たちで」
『地面に埋まっていた卵が一代目の血を啜り。より凶悪で凶暴。勇者に親を殺された恨みを強く感じる』
なんですと!
「俺たちが戦ってたのを下で聞いてたのか」
「尚更ここから逃げられないじゃん。もう離脱は諦めよう。多分スタンを追い掛けて来るわ」
「外で飛ばれるのは非常に拙い!」
入口まで来てしまった以上は引き返せない。
これも自分たちで撒いた種。それを摘み取るのも自分たちの役目で責任です。
「カルに氷炎斧と骨槍借りて来る。何処に居るか聞いて」
至急至急。ロイドさんは今何処?
「隣の寝室です」
「ロイドの方の寝室だって」
折り返したフィーネを含めて方針を練って突入開始。
洞窟内部の基本構造は障害物が増えただけで同じ。魔物も強くなっていたがラインナップは同一。
落ちた魔石は無視をして。道具類が現われたらクワンとグーニャで全回収。
お馬鹿さんたちが落として行った物で溶けていない物はお帰りの際のお土産に拾い集める。
駆け足で辿り着いた最深部。そこで待ち構えていたのはオレンジに輝く機体。
『待っていたぞ…勇者よ』
「待たせたな」
初代よりはやや小振りの体躯。
スピードUP感が半端無い。
見渡す限り機影は1個体。だが俺たちが降りた時点で宙に浮き。背鰭が全分離して40近い火の鳥に変化。
終わりの見えない戦いが始まった。
飛翔する取り巻きはソラリマ装備のクワンに任せ。残りで本体と対峙。
兎にも角にも地表まで下ろさないとお話にならない。
豪快な火炎ブレスをロープで往なしている間に両翼をフィーネとグーニャの蔦鞭で根元から簀巻きにし。その巨体を地面に引き摺り落とした。
太い首を振り乱して吐き続けられる炎が途切れた隙間を狙って氷炎蝋を吸温状態で投入。
表面温度を奪い、再燃しない内に上の処理が終わったクワンが縦横無尽に分厚い鱗を剥いで回った。
絶叫してのた打つ獄炎竜。しかし両翼を押さえられ前進も後退も叶わない。
長い尻尾も届かぬ距離から大きく鱗が剥がれた箇所を煉獄で作り出した氷柱。フィーネの骨槍と氷瀑を打ち込み体力を奪いに掛かった。
徐々にその無尽蔵な体力も尽き果て。厳つい顎を地面に横たえた。
止めはトルネードクワンが真上から広い眉間を串刺しにして終幕。
虫の息の獄炎竜が念話で喋り始めた。
『勇者よ…我も…連れて行ってくれぬか』
「外に出たいって?」
『閉じ込められて千年以上…。二度迄も…お前たちに敗れたのだ。認めよう…そして我にも自由な…世界を』
「て言われてもなぁ。一緒には連れて行けないよ。外では目立つし、何れ黒竜様にもご挨拶に行くんだ。
お前がどう言う経緯で里を出たか知らんけど。只じゃ済まんだろ」
「とばっちりは嫌よ。黒竜様のお怒り買いたくないもの」
クワンとグーニャも同意。
『我は捨てられたのだ…黒竜に。それで怒り任せに暴れ回った。その付けが…この様だ。今更戻ろうと…戻るまいと黒竜に取っては同じ。機嫌を損ねることは…無い』
我が儘っ子が目障りだったのかな。
「連れて行くってどんな風に?」
『その腕の紋様は…空だ。そこに…棲まわせて欲しい』
そんな事出来るの?
「そんなんしたら俺も周りも大火傷じゃん。詳しく知らんけども」
『ふん…。何も知らぬか。それを作った最初の勇者は…勝利した我に言った。何時か…必ず我を越える勇者がここへ来る。その時入れる器を持たせてやると』
「ベルさん…。適当過ぎだよ」
案外自棄糞で証を作った疑惑。
『我を連れて行かねば…。またここで復活するぞ。何度でも…な』
それは困る。
「解ったよ。ベルさん信じてやってみる。どうすればいい」
「復活されても困るしね」
『紋様で…我の一部に触れてくれ。我の魂が移り…小さな我を呼び出せる技能が…付与されるだけだ。他は何も変わらぬ』
ホントかよ。
「問題起きたら破棄して昇霊門でかっ飛ばすからな」
『承知…した』
召喚獣のスキルねぇ。西大陸で使えるか。人目に付くと面倒だし。
右腕の鎧を解除しギプスを外して歩み寄り。
寝そべる獄炎竜の顎先に触れた。
互いの全身が一瞬白く輝き、紋様に集約された。
獄炎竜の瞳は完全に閉じられ。息絶えた。
「スタンさん。何か体調の変化は?」
「紋様の内側が朱色に染まっただけで特に何も」
死に際に嘘は吐かんか。
心配するフィーネさんが鎧の上から額をペタペタ。
「やっぱ解んないや」
「でしょうね」
「遺体と地面掘って根刮ぎ回収して出よう」
「お腹ペコペコ。の前にお風呂」
獄炎竜グランドバグナーデ(2体目・死骸)
巨大な火炎魔石の最上位石、
古代竜の生血、骨、泪✕2、瞳、
大量の獄炎竜の肉、皮、鱗、髭、牙、吐息袋、
尻尾、背鰭、逆鱗、
憤怒の長刀、枯土の長槍、滅実の円月輪、
防炎の中盾、非溶のブーツ、非溶の兜、
炎帝の鎧、片翼の指貫、冷徹な簪、寒空の月影
「何となく。前回の武装はベルさんが落とした物で今回のは組織の奴らが落とした物ぽいな」
「ぽいですねぇ。一旦外でお風呂にしましょ。そろそろ水分入れないと拙いわ」
仰る通りで!
外の平場に大型バスタブを置き、虹玉入れて装備のままダイブ。で水筒からリゼルオイル入りの温い紅茶を飲み合う昼下がり…の夜空を見上げた。
「蕎麦粉先に買っときゃ良かったなぁ」
「そうですなぁ~」
「クワァ~」
「ニャ~」
年末までにまた来ましょ。
風呂の中で鎧とギプスを外して腕を夜空に掲げた。
特技:竜呼(名無し)
名前を呼ぶと出現。もう一度呼ぶと収納
「名前俺が付けるみたいだ。何にしよ」
「うーん。難しいですねぇ。人の名前に寄せ過ぎると同一人物と知り合った時に飛び出ちゃうし」
ムッズ。
空を見上げると丁度真上の新月が目に入った。
「ルーナにするかな。名前に使うのはまあまあ珍しい。南東大陸にはルーナデオンとルーナリオンって国が在るけど地名だし」
「ふーん。悪くないんじゃない?将来の子供の名前候補に入れてたけど…」
「え?じゃあ別のにするか」
「いいわよ別に。またゆっくり考えましょう。先の話だしね」
「そか。悪いけど確定で」
特技:竜呼(ルーナ)
スキル欄に入った。
「ルーナ!」出でよと念じて。
紋様の中の朱色が消えてポンと掌サイズの超小型獄炎竜が俺の頭上に出現した。
「ルーナ…。悪くない名だ」
「どうだい。久々の外の感想は」
ルーナは周囲を見渡してから天を仰いだ。
「懐かしい…。とても。風が、気持ち良いと感じたのは初めてかも知れない」
「召喚って只名前呼んだだけでも適用するのか?」
「いや。出ろだの戻れだの。明確な想いを念じなければ勝手に出入はしない。名の改名も主の自由だ。改名するなら戻した時に与えて欲しい」
そう言うと俺の左肩に座り。鎧の上から頬を擦り付けた。
「序列は最下位で良い。お願いだ。どうか捨ててくれるな。次に捨てられたら…己が制御出来なくなる」
「大人しくしててくれれば捨てたりはしないさ。知人に怪我させたら容赦しないけどな。その時はキッツいお仕置きだぞ」
「承知。主の記憶は読ませて貰った。取り敢えず北西沿岸に居る塵共を消炭に変え」
「待てい!大人しくするって言った側から特攻してどうすんだよ」
「面白い子だね」
「あそこに居る奴らの半数は傭兵だ。もしかしたら騙されて乗ってる人も居るかも知れない。聖剣が船の破壊を数隻に留めたのにも理由が有る筈だ。攻撃するのはまだ早い」
北大陸含め、自滅した奴らは存じません。
「気を付けよう。指示が有るまで待つ」
投入タイミングがシビアだぜ。
「これから飯にするけど何食べる?」
「我は要らん。主が食した余剰分から勝手に供給される。偶に洞窟の奥で掘った溶岩石を食わせて欲しい。それだけだ」
「あれはルーナ専用の餌になるのか…。掘った下から出て来た山盛りの卵の殻って何?」
「短期間で成体になる為に最も強い個体に乗り移って他を全て捕食した結果だ」
「おぉ…」
共食いしちゃったとさ。
「卵の殻も人間に取ってはかなりの硬質素材になる。昨年取得した我の肉も一年過ぎて頃合いだ。リゼルオイルで食せば旨いと思う。…我が直接喰らうと暴走するから止めた方が良い」
「おーそれは良い事聞いた。どうやって使おうか悩んでたんだ。ちょい怖かったりして」
「1年熟成させるんだ。直ぐに食べるとどうなるの?」
「…力が有り余ってまた寝られなくなるぞ。それで良ければ無害だが」
「「熟成決定!」」
2日連続の徹夜は厳しすぎる。
ルーナを虹玉風呂で遊ばせている間に急遽開催BBQ。朝作った御握りと一緒に。
素焼きで食べてもクリーミーで濃厚な味わい。リゼルオイルを塗って焼いたら程良い甘みと香りが加わり舌の上で蕩けた。
「「ん~~」」
「クワ~」
「蕩けるニャ~」
お肉なのに新食感!
「ヤバい!お砂糖レスのデザートみたい。スタン駄目。今回はここまで。お腹パンパンで動けなくなる」
追加しようとしたら手を掴まれて止められた。
止められなかったら際限なく食っていたかも。
しっかり者の嫁さんで良かった。
風呂から上がったルーナに拳大の溶岩石を与えてみるとラッコみたいに腹に抱えてガリガリボリボリ美味しそうに食べていた。
焼き用の調理器具にでもしようと考えていたが配分を見直した方が良さそうだ。
鎧を装備し直して洞窟へ再突入。
精神的に不安定になるからとルーナは腕に戻して。
最奥から卵の殻と流路を変えないレベルで溶岩石の採取。帰りの道中で魔石と使えそうな道具や武装を探索して集めた。
炎魔石以外で見付かった物。
怒濤の懐中時計、不燃の空瓶数本、疾風のブーツ、
奮起の笛、改変の冠の5種。
道中の上位魔物からのドロップ品。
サラマンダー 火蜥蜴の皮
ヘルハウンド 炎狼の毛皮
フレアビースト 高熱結合の針と小槌
フレアバット 火蝙蝠の羽と牙
そしてルーナをここへ縛り付けていた媒体である封印結界の燭台を6本殻の下から発見。
持って行くか悩んだが敵の中枢に制作者が居るのなら渡す訳には行かないと全て持ち去る事にした。
色々と予想外だったが収穫が異常に多い1日となった。
---------------
夕方前に帰宅。
侍女衆3名、ロイド、ソプラン、シュルツ。ミランダが心配で早上がりしたカーネギを加えた計7名に本日の成果報告と。
ルーナのお披露目。
状況を垣間見ていたロイド以外は絶句。当然っす。
「常に俺が内包してるし何時でも戻せる。空を散歩させる時もクワンに同行して貰う。心配は要らない」
硬直から戻ったソプランが。
「安全性は理解したが…。お前が老衰で死んだらどっかでルーナが暴れ出すのか?」
「我の寿命は主と共に在る。天寿も同じ。もう卵を産む必要も無い。
途中の外傷で死なせはせん。首さえ残れば再生して見せよう。隣の家に有る人体構造の本を読めば完璧だ」
再生スキルゲットだぜ!
「今度借りて複写するかな。暇な時に」
「まあそれなら安心?か」
好奇心の塊シュルツが挙手。
「触れても宜しいですか?」
「俺以外に触られるのがまだ嫌なんだと。フィーネですら」
「拒絶された」
「残念です…」
「もう暫く慣れが必要だ。これまで散々蹂躙して来た人間にベタベタ触られるのは心情的にな…。理解を求める」
カーネギも漸く落ち着き。
「お、大きく。なるのか?」
「今の二十倍程度なら常用。元の大きさだと精々五分。その後は戻って休まないと再稼働不能だ。
背鰭が尻に刺さっても良いなら人間一人は運べる」
「乗り物としては無理だな。その前に国と戦争になる」
「だ、よな…」
しっかり管理しますからとルーナを戻して各員の報告を拝聴した。
ソプランから。
「紙の枯渇問題は即決で認可が下りた。やっぱお嬢様に絵描いて貰って正解だったぜ。メルシャン様よりミラン様が目の色変えて食い付いてた」
「そうでしょうとも」
「すんません」
シュルツが続けて。
「紙の認可後。昼過ぎからハイネの運搬が始まりました。歩留まりの遅れは二日で取り戻せるそうです。若い工夫さんが尋常ではないやる気を見せまして。
恒久的な変更か従来紙と併売するかは別途協議です。ですが新作を手にしてから従来に戻せるのかは疑問ですね。一枚当りの実価格もお安いですし」
「多分無理だろうな。戻るの」
「あれを知ったら無理よ」
「運搬に合わせてポム工房への納品も完了しました。近日中に新作ベッドと椅子を本棟のロビーに並べ。オリオン関係者を集めて品評会を開きます。
エリュダー商団本部にも連絡は入れますが。態々お呼び立てするよりもお兄様がモーランゼアへ行った時に現品を持ち込まれた方が早いかと思います」
「そうするよ。紹介するだけだし」
「あっちは原産地が近いもんね。特許の兼ね合いも有るけどこっちが先行してるし。エリュトマイズさんなら控えてくれるでしょ」
デッカい恩売ったしな。
〆はプリタ博士。
「リゼルモンドの収穫量は朝昼先程変わらず十粒でした。お嬢様の鑑定で成分変質は皆無です。明日以降も観察を続けます。
お隣は一気に六本も植えてしまったのでお祭り騒ぎです。こちらの傾向を横展開して食品や医薬品。洗剤や石鹸類に加工され期間限定品として販売予定どぅえす!」
「変質しても有毒成分を取り除けば医薬品は残せるし。期間限定は妥当かな」
「余剰分は試供品としてこちらや城へ。知人関係者に留まらず一週間後には王都中に広まるでしょう。
ブートストライトの種を除去した果実はハイネで先行販売を始めました。次の組から王都の市場でも。
種は植樹用、こちら用、お隣用で三等分。こちらの食用はまだ数が少ないので一般販売は未定です。
胚を漬ける梅酢がお二人の使用分を残し。今年分を使い果たしました。
その代用としてリゼルオイルで素揚げにした物を地下蔵へ収めるよう変更しました。後程ご試食を」
「お、普通に美味しそうだな。この場の皆で食べてみようか」
全員賛成。プリタと一緒に取りに行き。半分食材で埋まった地下蔵の籠から鷲掴みで瓶に入れ上に運んだ。
皆でカリッと一粒。
「おぉ。ほろ甘いアーモンドみたいになるんだ」
「こっちの方が香ばしくて食べやすいかも。後でペリーニャに持って行こ」
「焼いた竜肉と一緒に持ってけば?」
「あ、そうする」
「アローマ。今朝ナンシャさんから手紙来てたから明日リゼルオイルと一緒に小瓶に詰めて持ってってあげて」
「畏まりました」
「お兄様。そのお肉の解禁予定は」
「ロイドが食べられないから…3日後以降の何処かで。連続してミランダのお腹に負担掛けるのも悪いし」
「そ、そうですね。昨日のあれでは自分の身体が追い付きませんものね」
「私の事はお構いなく。暫く自重すれば良い物かと。昨日ので懲りました」
「大変、だったんだぞ」
カーネギがムッと顔を向けた。
「それは素直に御免。ミランダは除外するべきだった」
「御免なさい」
「いいえ。自分で希望した事ですから。幸い流れてもいませんし」
危ない所だった。あれは妊娠初期の人に飲ませてはいけない。猛省…
シュルツが話題を変えて。
「明日。試作時計を本組みします。明後日のミーシャさんのお見合い会前にご確認を」
「明後日午前はお墓参りだから。昼過ぎに見に行くよ。それ見てモーランゼアの予約取りに行く」
「はい!お墓参りは御爺様も行かれるので皆さんで行きましょう」
結構な大所帯になりそうだ。
夕食は全員本棟で食べ。昨日のリセットをしましたとさ。
異常に元気過ぎる朝。
疲れてもいない。魔力も消費していないのに。上位竜の生血は飲んではならないと再認識。
「私はちゃんと忠告はしましたよ」
ロイドさんのお小言。
「「うん」」
昨夜から飛び立ったクワンはまだ帰らない。グーニャは徹夜でルームランナーで走り続けたとか。
「でも実験と実証は大切だ。人に飲ませて自分たちは飲まないってのは通らんよ」
「嘗めてました。御免なさい」
「私は別の意味で眠れませんでした。隣室が煩くて。次は私をラザーリアに届けてからにして下さい」
「「はい」」
ご想像にお任せ。
シュルツも絵を仕上げた後でお爺ちゃんと一緒に徹夜でルームランナーで走り続け。揃って現在爆睡中らしい。
「まあいいや。クワンが戻ったら溶岩洞窟行くけどロイドはどうする?」
「ご遠慮してお昼寝します。耐性が有っても翼の一部は焼け焦げますから」
あらまぁ。
「ソラリマ。レイルに行きたいか聞いてみて」
『…誰が行くかボケが!!明日暇ならスフィンスラーの続きに行こう。だそうだ』
行きたくないと。
「明日かぁ。のんびりするのは明後日にして今日明日頑張りますか」
「そうね。早めに終わらせたいし。進みが悪かったら3層位にして」
面倒な事程お早めに。
年越し用の蕎麦粉も買えたらいいねと朝食を作っている途中でクワンが帰宅。
「クワッ」
「只今ニャ」
「お帰りぃ。クワンティさんは何処まで行ってたのかな?」
「クワァ」
「転移無しで南西大陸の奥地へ。白蛇さんの子供たちにご挨拶に。お土産に茸を拾って来たニャン」
健全だ。
「偉いわねぇ。滑子が有るならお味噌汁に入れましょ」
「クワッ!」
キッチンカウンターに出された滑子の束を洗って解して豆腐と若芽の味噌汁にIN。
鮭の切り身と大根おろしに目玉焼き。梅干しと納豆を添えて。
何て純粋な日本食。
「「頂きます」」日本式の挨拶で。
今日はロイドも箸を使い出した。
「あれ?カル何時の間に?」
「密かに練習してました。木の実拾いや取り出す時に。慣れると食べ易い物なのですね」
喋りながら別箸でクワンとグーニャの納豆を混ぜ混ぜ。
仲良く綺麗に完食。ロイドの箸捌きも綺麗だった。
俺たちよりもかも…。
残り少なくなった緑茶でまったり。
「ホントは買いに行きたいんだけど」
「ブチ切れ中の帝国に行くのはなぁ…」
残念。
来年矛を収めてくれるのを願って御馳走様。
「クワンさん。ちょっと仮眠して溶岩洞窟行こうと思うのだが体調は如何かね」
「クワッ」
「体調はバッチリニャ。仮眠すると爆睡コースなので休憩して行った方が良いニャン」
百里有るな。
「仰る通り」
「1時間位したらサクッと行こー」
程良く眠いが全く疲れていない朝。
魔物も居ない。誰も入れない洞窟を探索しに行くだけさと軽く考えていた。
この時までは。
今日の朝の収穫報告はたったの10粒。
「うーん微妙」
プリタ博士のご意見は。
「普段通りの水で様子を見ましょう。枯れても隣が有りますし。殻を砕いた粉や肥料もあちらで試した方が」
「そうねぇ。こっちは何も与えず様子を見守るか」
「ふぁい!」
参考データの1つにはなる。
洗い物は侍女衆に任せ。寝室にペッツを連れ込み入念に装備品を整えロイドに念話を送ってそこから飛んだ。
---------------
「「なんで?」」
「クワ?」
「はてニャ?」
洞窟入口に入った時の俺たちの第一声。
以前よりも増した熱量と熱風。各所から噴き上がるドロドロの溶岩と火柱。
そして…夥しい量の溶けた人骨と崩れた魔石。
『レイルが言うには。北に駐留していた馬鹿共が妾が居ないなら獄炎竜も居ないと確信して挙って突入したらしい』
「「は?」」
『設置式の転移道具を使ったようだな。距離指定の。北に何人残っているかは良く見えんが激減はしている』
「…それって詰り」
「私たちと戦う前に。自滅しちゃったの?」
『そうなるな』
んなアホな。強者と戦わずに済んだのは有り難いけど。
「じゃあこの先に何か居るの?」
『…妾は一匹だけと言った覚えは無いがのぉ』
「「はぁぁ!!??」」
一旦洞窟の外に出て作戦会議。
「どうしますかねフィーネさん。日を改めると言うのは」
「良案だけど先延ばしは良くないよ。ちょっと睡眠不足以外は体調は万全だしさ。這い出て暴れたら南部は壊滅よ」
「乾燥した森林地帯が火の海になるのは困るな。放置すれば中央の町まで被害が及ぶ。竜の谷まで行かないと黒竜様は無関心。聖剣も就寝中みたいだし」
「早めに討伐しよう私たちで」
『地面に埋まっていた卵が一代目の血を啜り。より凶悪で凶暴。勇者に親を殺された恨みを強く感じる』
なんですと!
「俺たちが戦ってたのを下で聞いてたのか」
「尚更ここから逃げられないじゃん。もう離脱は諦めよう。多分スタンを追い掛けて来るわ」
「外で飛ばれるのは非常に拙い!」
入口まで来てしまった以上は引き返せない。
これも自分たちで撒いた種。それを摘み取るのも自分たちの役目で責任です。
「カルに氷炎斧と骨槍借りて来る。何処に居るか聞いて」
至急至急。ロイドさんは今何処?
「隣の寝室です」
「ロイドの方の寝室だって」
折り返したフィーネを含めて方針を練って突入開始。
洞窟内部の基本構造は障害物が増えただけで同じ。魔物も強くなっていたがラインナップは同一。
落ちた魔石は無視をして。道具類が現われたらクワンとグーニャで全回収。
お馬鹿さんたちが落として行った物で溶けていない物はお帰りの際のお土産に拾い集める。
駆け足で辿り着いた最深部。そこで待ち構えていたのはオレンジに輝く機体。
『待っていたぞ…勇者よ』
「待たせたな」
初代よりはやや小振りの体躯。
スピードUP感が半端無い。
見渡す限り機影は1個体。だが俺たちが降りた時点で宙に浮き。背鰭が全分離して40近い火の鳥に変化。
終わりの見えない戦いが始まった。
飛翔する取り巻きはソラリマ装備のクワンに任せ。残りで本体と対峙。
兎にも角にも地表まで下ろさないとお話にならない。
豪快な火炎ブレスをロープで往なしている間に両翼をフィーネとグーニャの蔦鞭で根元から簀巻きにし。その巨体を地面に引き摺り落とした。
太い首を振り乱して吐き続けられる炎が途切れた隙間を狙って氷炎蝋を吸温状態で投入。
表面温度を奪い、再燃しない内に上の処理が終わったクワンが縦横無尽に分厚い鱗を剥いで回った。
絶叫してのた打つ獄炎竜。しかし両翼を押さえられ前進も後退も叶わない。
長い尻尾も届かぬ距離から大きく鱗が剥がれた箇所を煉獄で作り出した氷柱。フィーネの骨槍と氷瀑を打ち込み体力を奪いに掛かった。
徐々にその無尽蔵な体力も尽き果て。厳つい顎を地面に横たえた。
止めはトルネードクワンが真上から広い眉間を串刺しにして終幕。
虫の息の獄炎竜が念話で喋り始めた。
『勇者よ…我も…連れて行ってくれぬか』
「外に出たいって?」
『閉じ込められて千年以上…。二度迄も…お前たちに敗れたのだ。認めよう…そして我にも自由な…世界を』
「て言われてもなぁ。一緒には連れて行けないよ。外では目立つし、何れ黒竜様にもご挨拶に行くんだ。
お前がどう言う経緯で里を出たか知らんけど。只じゃ済まんだろ」
「とばっちりは嫌よ。黒竜様のお怒り買いたくないもの」
クワンとグーニャも同意。
『我は捨てられたのだ…黒竜に。それで怒り任せに暴れ回った。その付けが…この様だ。今更戻ろうと…戻るまいと黒竜に取っては同じ。機嫌を損ねることは…無い』
我が儘っ子が目障りだったのかな。
「連れて行くってどんな風に?」
『その腕の紋様は…空だ。そこに…棲まわせて欲しい』
そんな事出来るの?
「そんなんしたら俺も周りも大火傷じゃん。詳しく知らんけども」
『ふん…。何も知らぬか。それを作った最初の勇者は…勝利した我に言った。何時か…必ず我を越える勇者がここへ来る。その時入れる器を持たせてやると』
「ベルさん…。適当過ぎだよ」
案外自棄糞で証を作った疑惑。
『我を連れて行かねば…。またここで復活するぞ。何度でも…な』
それは困る。
「解ったよ。ベルさん信じてやってみる。どうすればいい」
「復活されても困るしね」
『紋様で…我の一部に触れてくれ。我の魂が移り…小さな我を呼び出せる技能が…付与されるだけだ。他は何も変わらぬ』
ホントかよ。
「問題起きたら破棄して昇霊門でかっ飛ばすからな」
『承知…した』
召喚獣のスキルねぇ。西大陸で使えるか。人目に付くと面倒だし。
右腕の鎧を解除しギプスを外して歩み寄り。
寝そべる獄炎竜の顎先に触れた。
互いの全身が一瞬白く輝き、紋様に集約された。
獄炎竜の瞳は完全に閉じられ。息絶えた。
「スタンさん。何か体調の変化は?」
「紋様の内側が朱色に染まっただけで特に何も」
死に際に嘘は吐かんか。
心配するフィーネさんが鎧の上から額をペタペタ。
「やっぱ解んないや」
「でしょうね」
「遺体と地面掘って根刮ぎ回収して出よう」
「お腹ペコペコ。の前にお風呂」
獄炎竜グランドバグナーデ(2体目・死骸)
巨大な火炎魔石の最上位石、
古代竜の生血、骨、泪✕2、瞳、
大量の獄炎竜の肉、皮、鱗、髭、牙、吐息袋、
尻尾、背鰭、逆鱗、
憤怒の長刀、枯土の長槍、滅実の円月輪、
防炎の中盾、非溶のブーツ、非溶の兜、
炎帝の鎧、片翼の指貫、冷徹な簪、寒空の月影
「何となく。前回の武装はベルさんが落とした物で今回のは組織の奴らが落とした物ぽいな」
「ぽいですねぇ。一旦外でお風呂にしましょ。そろそろ水分入れないと拙いわ」
仰る通りで!
外の平場に大型バスタブを置き、虹玉入れて装備のままダイブ。で水筒からリゼルオイル入りの温い紅茶を飲み合う昼下がり…の夜空を見上げた。
「蕎麦粉先に買っときゃ良かったなぁ」
「そうですなぁ~」
「クワァ~」
「ニャ~」
年末までにまた来ましょ。
風呂の中で鎧とギプスを外して腕を夜空に掲げた。
特技:竜呼(名無し)
名前を呼ぶと出現。もう一度呼ぶと収納
「名前俺が付けるみたいだ。何にしよ」
「うーん。難しいですねぇ。人の名前に寄せ過ぎると同一人物と知り合った時に飛び出ちゃうし」
ムッズ。
空を見上げると丁度真上の新月が目に入った。
「ルーナにするかな。名前に使うのはまあまあ珍しい。南東大陸にはルーナデオンとルーナリオンって国が在るけど地名だし」
「ふーん。悪くないんじゃない?将来の子供の名前候補に入れてたけど…」
「え?じゃあ別のにするか」
「いいわよ別に。またゆっくり考えましょう。先の話だしね」
「そか。悪いけど確定で」
特技:竜呼(ルーナ)
スキル欄に入った。
「ルーナ!」出でよと念じて。
紋様の中の朱色が消えてポンと掌サイズの超小型獄炎竜が俺の頭上に出現した。
「ルーナ…。悪くない名だ」
「どうだい。久々の外の感想は」
ルーナは周囲を見渡してから天を仰いだ。
「懐かしい…。とても。風が、気持ち良いと感じたのは初めてかも知れない」
「召喚って只名前呼んだだけでも適用するのか?」
「いや。出ろだの戻れだの。明確な想いを念じなければ勝手に出入はしない。名の改名も主の自由だ。改名するなら戻した時に与えて欲しい」
そう言うと俺の左肩に座り。鎧の上から頬を擦り付けた。
「序列は最下位で良い。お願いだ。どうか捨ててくれるな。次に捨てられたら…己が制御出来なくなる」
「大人しくしててくれれば捨てたりはしないさ。知人に怪我させたら容赦しないけどな。その時はキッツいお仕置きだぞ」
「承知。主の記憶は読ませて貰った。取り敢えず北西沿岸に居る塵共を消炭に変え」
「待てい!大人しくするって言った側から特攻してどうすんだよ」
「面白い子だね」
「あそこに居る奴らの半数は傭兵だ。もしかしたら騙されて乗ってる人も居るかも知れない。聖剣が船の破壊を数隻に留めたのにも理由が有る筈だ。攻撃するのはまだ早い」
北大陸含め、自滅した奴らは存じません。
「気を付けよう。指示が有るまで待つ」
投入タイミングがシビアだぜ。
「これから飯にするけど何食べる?」
「我は要らん。主が食した余剰分から勝手に供給される。偶に洞窟の奥で掘った溶岩石を食わせて欲しい。それだけだ」
「あれはルーナ専用の餌になるのか…。掘った下から出て来た山盛りの卵の殻って何?」
「短期間で成体になる為に最も強い個体に乗り移って他を全て捕食した結果だ」
「おぉ…」
共食いしちゃったとさ。
「卵の殻も人間に取ってはかなりの硬質素材になる。昨年取得した我の肉も一年過ぎて頃合いだ。リゼルオイルで食せば旨いと思う。…我が直接喰らうと暴走するから止めた方が良い」
「おーそれは良い事聞いた。どうやって使おうか悩んでたんだ。ちょい怖かったりして」
「1年熟成させるんだ。直ぐに食べるとどうなるの?」
「…力が有り余ってまた寝られなくなるぞ。それで良ければ無害だが」
「「熟成決定!」」
2日連続の徹夜は厳しすぎる。
ルーナを虹玉風呂で遊ばせている間に急遽開催BBQ。朝作った御握りと一緒に。
素焼きで食べてもクリーミーで濃厚な味わい。リゼルオイルを塗って焼いたら程良い甘みと香りが加わり舌の上で蕩けた。
「「ん~~」」
「クワ~」
「蕩けるニャ~」
お肉なのに新食感!
「ヤバい!お砂糖レスのデザートみたい。スタン駄目。今回はここまで。お腹パンパンで動けなくなる」
追加しようとしたら手を掴まれて止められた。
止められなかったら際限なく食っていたかも。
しっかり者の嫁さんで良かった。
風呂から上がったルーナに拳大の溶岩石を与えてみるとラッコみたいに腹に抱えてガリガリボリボリ美味しそうに食べていた。
焼き用の調理器具にでもしようと考えていたが配分を見直した方が良さそうだ。
鎧を装備し直して洞窟へ再突入。
精神的に不安定になるからとルーナは腕に戻して。
最奥から卵の殻と流路を変えないレベルで溶岩石の採取。帰りの道中で魔石と使えそうな道具や武装を探索して集めた。
炎魔石以外で見付かった物。
怒濤の懐中時計、不燃の空瓶数本、疾風のブーツ、
奮起の笛、改変の冠の5種。
道中の上位魔物からのドロップ品。
サラマンダー 火蜥蜴の皮
ヘルハウンド 炎狼の毛皮
フレアビースト 高熱結合の針と小槌
フレアバット 火蝙蝠の羽と牙
そしてルーナをここへ縛り付けていた媒体である封印結界の燭台を6本殻の下から発見。
持って行くか悩んだが敵の中枢に制作者が居るのなら渡す訳には行かないと全て持ち去る事にした。
色々と予想外だったが収穫が異常に多い1日となった。
---------------
夕方前に帰宅。
侍女衆3名、ロイド、ソプラン、シュルツ。ミランダが心配で早上がりしたカーネギを加えた計7名に本日の成果報告と。
ルーナのお披露目。
状況を垣間見ていたロイド以外は絶句。当然っす。
「常に俺が内包してるし何時でも戻せる。空を散歩させる時もクワンに同行して貰う。心配は要らない」
硬直から戻ったソプランが。
「安全性は理解したが…。お前が老衰で死んだらどっかでルーナが暴れ出すのか?」
「我の寿命は主と共に在る。天寿も同じ。もう卵を産む必要も無い。
途中の外傷で死なせはせん。首さえ残れば再生して見せよう。隣の家に有る人体構造の本を読めば完璧だ」
再生スキルゲットだぜ!
「今度借りて複写するかな。暇な時に」
「まあそれなら安心?か」
好奇心の塊シュルツが挙手。
「触れても宜しいですか?」
「俺以外に触られるのがまだ嫌なんだと。フィーネですら」
「拒絶された」
「残念です…」
「もう暫く慣れが必要だ。これまで散々蹂躙して来た人間にベタベタ触られるのは心情的にな…。理解を求める」
カーネギも漸く落ち着き。
「お、大きく。なるのか?」
「今の二十倍程度なら常用。元の大きさだと精々五分。その後は戻って休まないと再稼働不能だ。
背鰭が尻に刺さっても良いなら人間一人は運べる」
「乗り物としては無理だな。その前に国と戦争になる」
「だ、よな…」
しっかり管理しますからとルーナを戻して各員の報告を拝聴した。
ソプランから。
「紙の枯渇問題は即決で認可が下りた。やっぱお嬢様に絵描いて貰って正解だったぜ。メルシャン様よりミラン様が目の色変えて食い付いてた」
「そうでしょうとも」
「すんません」
シュルツが続けて。
「紙の認可後。昼過ぎからハイネの運搬が始まりました。歩留まりの遅れは二日で取り戻せるそうです。若い工夫さんが尋常ではないやる気を見せまして。
恒久的な変更か従来紙と併売するかは別途協議です。ですが新作を手にしてから従来に戻せるのかは疑問ですね。一枚当りの実価格もお安いですし」
「多分無理だろうな。戻るの」
「あれを知ったら無理よ」
「運搬に合わせてポム工房への納品も完了しました。近日中に新作ベッドと椅子を本棟のロビーに並べ。オリオン関係者を集めて品評会を開きます。
エリュダー商団本部にも連絡は入れますが。態々お呼び立てするよりもお兄様がモーランゼアへ行った時に現品を持ち込まれた方が早いかと思います」
「そうするよ。紹介するだけだし」
「あっちは原産地が近いもんね。特許の兼ね合いも有るけどこっちが先行してるし。エリュトマイズさんなら控えてくれるでしょ」
デッカい恩売ったしな。
〆はプリタ博士。
「リゼルモンドの収穫量は朝昼先程変わらず十粒でした。お嬢様の鑑定で成分変質は皆無です。明日以降も観察を続けます。
お隣は一気に六本も植えてしまったのでお祭り騒ぎです。こちらの傾向を横展開して食品や医薬品。洗剤や石鹸類に加工され期間限定品として販売予定どぅえす!」
「変質しても有毒成分を取り除けば医薬品は残せるし。期間限定は妥当かな」
「余剰分は試供品としてこちらや城へ。知人関係者に留まらず一週間後には王都中に広まるでしょう。
ブートストライトの種を除去した果実はハイネで先行販売を始めました。次の組から王都の市場でも。
種は植樹用、こちら用、お隣用で三等分。こちらの食用はまだ数が少ないので一般販売は未定です。
胚を漬ける梅酢がお二人の使用分を残し。今年分を使い果たしました。
その代用としてリゼルオイルで素揚げにした物を地下蔵へ収めるよう変更しました。後程ご試食を」
「お、普通に美味しそうだな。この場の皆で食べてみようか」
全員賛成。プリタと一緒に取りに行き。半分食材で埋まった地下蔵の籠から鷲掴みで瓶に入れ上に運んだ。
皆でカリッと一粒。
「おぉ。ほろ甘いアーモンドみたいになるんだ」
「こっちの方が香ばしくて食べやすいかも。後でペリーニャに持って行こ」
「焼いた竜肉と一緒に持ってけば?」
「あ、そうする」
「アローマ。今朝ナンシャさんから手紙来てたから明日リゼルオイルと一緒に小瓶に詰めて持ってってあげて」
「畏まりました」
「お兄様。そのお肉の解禁予定は」
「ロイドが食べられないから…3日後以降の何処かで。連続してミランダのお腹に負担掛けるのも悪いし」
「そ、そうですね。昨日のあれでは自分の身体が追い付きませんものね」
「私の事はお構いなく。暫く自重すれば良い物かと。昨日ので懲りました」
「大変、だったんだぞ」
カーネギがムッと顔を向けた。
「それは素直に御免。ミランダは除外するべきだった」
「御免なさい」
「いいえ。自分で希望した事ですから。幸い流れてもいませんし」
危ない所だった。あれは妊娠初期の人に飲ませてはいけない。猛省…
シュルツが話題を変えて。
「明日。試作時計を本組みします。明後日のミーシャさんのお見合い会前にご確認を」
「明後日午前はお墓参りだから。昼過ぎに見に行くよ。それ見てモーランゼアの予約取りに行く」
「はい!お墓参りは御爺様も行かれるので皆さんで行きましょう」
結構な大所帯になりそうだ。
夕食は全員本棟で食べ。昨日のリセットをしましたとさ。
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