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第136章:竜鱗の外套デス

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 バァン!

 「竜王はいるか!」

 我輩は城に戻り、王の間に来ていた。しかし、王の姿はどこにもない。

 「こんな時に何処へ行った…?」

 我輩が玉座を睨みつけていたその時だった。

 「おかえりーちゅ!!」

 「ぬぅ!?」

 ドサッ!!

 見慣れない巨大な子供が我輩に覆い被さってきた。邪魔な…!!

 「退け!!邪魔だ!!」

 「いやああああ!!いやでちゅ!!離れまちぇん!!」

 でちゅ…?こいつ、あのガキ竜か?

 「貴様…何故人型に…!!」

 「あちしも本当は嫌なんでちゅ!でも、おじいちゃまが人の姿じゃないとおきゃくちゃまは遊んでくれないって言うから!」

 あの狸ジジイめが…!!我輩をダシに孫娘に人の型をとらせている…!!

 「兎に角邪魔だ!!さっさと退け!!」

 我輩は思い切り足を蹴り上げてガキ竜を跳ね上げる。

 「うわーい!!たかい!!きゃはははは!!」

 「ふん!」

 ドッガシャアアアアン!!

 そのまま落ちてきたガキ竜の横腹を蹴りつけ、壁に埋め込む。見事に嵌ったな。

 「きゃはははは!!面白い!!もっかいもっかい!!」

 「やかましい!!我輩はそれどころでは…」

 待てよ?此奴、今我輩の背後から現れた。それに我輩は気づけなかった。…そう言えば、此奴が最初、天井裏にいた時も、我輩すぐには気づけなかったな…

 「おい。ガキ。」

 「ガキじゃない!キリカでちゅ!!」

 「やかましい。貴様、気配消し…まざりを使えるのか?」

 「なんで人がまざりを知ってるでちゅか?」

 「答えろ。」

 「使えまちゅ!竜なら誰でも使えるでちゅ!」

 なんだと…そうだったのか。ならば別に、竜王に習わずとも良いが…

 「貴様、その技を我輩に教えろ。」

 「無理でちゅ!!」

 「やかましい。」

 ドカン!

 我輩は壁を蹴って更に壊し、ガキ竜娘を掘り起こす。

 「だって人には鱗がないでちゅ!」

 「うろこだと…?」

 「鱗から周りになじむでちゅ!鱗が無いとなじめまちぇん!!」

 鱗…そうか…我輩としたことが、失念していた。本来の力を。

 「隠れ兜。」

 我輩の首に、即座に隠れ兜が纏い着く。そして隠れ兜の外套は、我輩の意を汲み、その形を鱗状に変えてゆく。

 「うわぁ…なんだか背中が寒いでちゅ…」

 そして、竜の鱗のようになった外套は、我輩にぴたりと纏わりつき、その気配を消した。

 「凄い…これは…!!」

 フハハハ…隠れ兜の真髄だ。これならばまざりと遜色なかろう。

 「バレバレでちゅ!」

 「何!?」

 どういうことだ!?

 「姿形と気配はいないぐらい完璧に消えてまちゅ!!でも魔力がだだ漏れでバレバレでちゅ!!」

 「魔力だと…!?」

 我輩、この世界に生まれてこの方、魔法など使ったことも無いぞ!?というか我輩、魔力を持っていたのか…!!

 「ガロロロロロ…面白いことをやってるねぇ。爺さんも混ぜちゃくれないかい?」

 その時、頭上から声が響いた。見上げると本来の姿の竜王が、我輩とガキ竜を見下ろしていた。

 「お前…最初からそこにいたのか…!」

 「ガロロロロロ…さもありなん。」

 面白い…どうやらまざりとは、まだ奥があるようだ。我輩の興味を掻き立てるに相応しい奥がな。
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