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第137章:魔力なぞ分からん!!…デスッテ

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 「ガロロロロロ。ノバーン殿。其方の魔力は最初からずうっと漏れ出ていた。よくそのような稚拙な魔力操作で、かような力をふるえるものだと思っていたよ。」

 竜王は人の型に変化しつつ、我輩を見定めるように見てくる。

 「魔力…我輩、魔力など使った事がない。」

 「其方の中身を知っとる今ならば納得というもの。魔力など使わずとも至高の力を備えておるのだから。」

 竜王は我輩よりも小さな老人になり、我輩を見上げながら言う。

 「猪口才な…そんな事はどうでもいい。さっさと"まざり"を教えろ。」

 「無理だねえ。」

 「お前…!」

 「落ち着いてくれ。まざり…即ち魔混まざりとは、高度な魔力操作ありきの技。それ無くして魔混は使えないんだよ。」

 「…」

 魔力操作…ときたか… 

 「ではまずその魔力操作から教えろ。」

 「ふむ…」

 こうして、我輩の魔力操作訓練が始まった。

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 「結論を言うぞ。無理だ。」

 現在、日が暮れ、月が薄らいに輝いている。

 我輩は魔力操作はおろか、魔力を感じることすらできずにいた。

 「やかましい!お前の説明が悪い!!なんなのだ腹の中央の熱とは!死の王が熱など感じるか!!」

 「いやいや、そんなこと言われてもなあ…赤ん坊にもできるのに…」

 「魔力など使った事がないと言っているだろう!!我輩をそこらのガキ風情と一緒にするな!戯け者!!」

 「ええ~…」

 魔力なぞ元世には無かったと何度も言っているのに、此奴らそれは理解できないとのたまう。おのれ…こうなったら……

 「…ふーーー…しばし待て、竜王。」

 「んん?諦めるのか?」

 「違う!…代わりを寄越す。」

 「は?」

 そして我輩は胡座を掻き、瞑想を始めた。魂を体から引き離し、本来の姿に戻る。

 行き先は…我が魂中、エウレスの元だ。

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 僕はノバーン・エウレス。

 気付いた時からこの場所にいる。

 最初は嫌だった。僕の体を、僕じゃない奴が使ってた。大嫌いだった。

 でも、僕の中にはあいつの気持ちが流れ込んできていた。

 "憎い…憎い憎い憎い……"

 あいつはずうっと憎いと思ってた。

 お父さんやお母さんを、助けてはくれたけど…

 怖い…

 だから僕は、あいつに逆らえなかった。

 あいつはお父さんやお母さんに、お兄ちゃんやお姉ちゃんに嘘をついて過ごしてた。  

 お姉ちゃんが泣いた。

 その時、僕は初めて怒った。あいつは僕の前に現れて、約束してくれた。

 話したら分かった。あいつは…ハデスおじさんはそんなに怖いひとじゃなかった。

 言ってることは難しいし、言葉遣いも怖いけど…でも、最初と違って、おじさんは皆んなのことを考えるようになってた。

 だから僕は、おじさんに体を預けることにした。

 体を取り返すために育てた力も返したし、おもちゃもあげた。

 僕はおじさんの中から、外を見るだけでいい…

 ……来い。…

 え?

 ………来いエウレス…

 いいの?

 …お前の力が必要だ……

 僕の…?

 ………我輩に力を貸せ…

 『エウレス…!!』

 「うん…!」
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