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十三話

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 ローズの姿を見つけ、少し嬉しく思っていた時に兄上からローズの名前が出て、心底驚いた。

 兄上は婚約者がいながらメイドであるローズに手を出そうとしたという事だろうかと、少し軽蔑しそうになった。

 だが兄上いわく、ローズが兄上を慕っていただけとのこと。

 ローズが兄上を慕う?

 ウソだろうと、心の中で思わず思ってしまう。

 何故ならばローズは明らかに兄上のようなタイプは好まないであろうと考えるから。

 ローズは頭がいい。だからこそ要点を得た会話を楽しむし、兄上のように少し予想外の動きをする人は苦手なのではないだろうかと考えてしまう。

 兄上はとても優しい。呪われた僕にだって普通に接してくれるし気遣ってくれる。だが、たまに天才となんとかは紙一重という言葉が頭をよぎる。

 数年前までは真面目に行っていたと聞いていた王太子教育も滞っているとの話も耳にする。何かあったのだろうかと思うが、その辺の話は僕には聞かせたくないのか、他の者に聞いても曖昧に流されるだけとなった。

 王子なのにもかかわらず、僕にはあまり情報を得る手段がない。

 それが歯痒い。

 できる事ならば、ローズの両親に挨拶をし、ローズをメイドと言う立場からどうにか自分の婚約者という立場にできないだろうかと考えている。彼女のうちは貴族のようだし、不可能ではないと思う。

 ただし、それは呪いを解いてからだ。

 ローズはとても優しい。

 だからこそ、可愛そうだと婚約を受け入れてもらいたくなかった。だからこそ我慢だと思ってこの数年過ごしてきたのだが、一緒にいる時間が増えれば増えるほどにローズを愛おしく思ってしまう。

 我慢と自分の理性を律する日が続いている。

 十三歳とはいえ、自分は男だ。なのにローズは自分をまだほんの子どもと思っているのか無防備な姿をさらし、こちらを困らせてくる。

 そんなローズが昔兄上を好きだった?

 腑に落ちないけれど、もしそれが本当だとしたら年下の自分など眼中にないのだろうかと不安に思う。兄上と自分とでは明らかに違い過ぎる。

 ローズは可愛い。本来ならばすでに嫁に行っていてもいいはずの年齢だ。

 そう思うと、呪いの事よりもローズが自分の傍から居なくなってしまうのではないかという不安の方が大きくなっていく。

 兄上の事が本当に好きだったのかと問い詰めたいと言う思いと、聞きたくないという思い。

 自分の矛盾した心の動きに、女々しいなとため息が漏れてしまう。

 けれど、今更ローズを手放す気はない。

 力が欲しい。

 呪いなど早く解呪し、ローズを手に入れる力が欲しい。

 ローズの手を握ると、その頬がバラ色に染まる。可愛らしく照れているローズの姿を見れば、自分の気持ちが一方的なものでは無いと希望を抱く。

 可愛いローズ。早く君にこの思いを伝えられたらいいのに。

 






 
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