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二十五話

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 タージニア王国とリベラ王国との間には今、緊迫した状況が続いている。その理由としては公にはされていないが、第二王子の婚約者である令嬢とタージニアの姫君との間に何かがあったとの噂が広まっているらしい。

 その事を聞いた瞬間、ローズはさっと顔を真っ赤に染め上げた。

 第二王子の婚約者ということは、ローズとジルとの婚約が、ジル自身にばれているという事である。

 こんな事になるならば、早々に自分で伝えるのであったとローズは頭を抱えた。

 ジルは、どう思っただろう。そうローズは大きくため息をつく。

 侍女だと思っていた女が実は自分の婚約者だったなんて、きっとジルは驚いたに違いない。幻滅をされていたらどうしようかとローズは動揺してしまった。

 会うのが気まずい。

 けれども、会わなければどうにもならない。さらには、一国の王子にどうやって平民が会えると言うのだろうかと頭を悩ませていた。

 結局ローズはゴランとルルーに話を聞いた後すぐに村を出立して、タージニア王国の王都を目指した。女の一人旅は危ないという忠告から、男装しており、その姿は小汚い少年そのもので、ローズを女と疑う人はほとんどいなかった。

 王都まではかなりの日数がかかったが、到着する頃には金も底をついており、これからどうしたらいいだろうかとローズは途方に暮れた。

「どうしよう・・・。」

 城下町からは豪華絢爛な城の様子が見えるが、手を伸ばしても遠くて、あの場所へどうやったらたどり着けるのか、ローズには見当もつかなかった。

 とにかくどうにか今日の寝床を確保しなければとローズが路地裏を歩き出した時、角を曲がってきた一人の女性とぶつかり、ローズはよろめいて、体を壁にぶつけた。

「いった・・・」

「も、もうしわけございません。」

 女性は自身もふらついて倒れそうになるのを壁に手をついてどうにか踏みとどまった様子だった。

 そんなに慌ててどうしたのだろうかと見ていると、女性は顔を真っ青に染めて震えながら言った。

「ど、どうかお許しください。」

「え?」

 自分のような平民に、ぶつかったくらいで彼女が許しを請う必要などないはずなのに、その怯えようにローズは首を傾げた。

「怒っていないですよ。その・・・大丈夫ですか?」

「え?・・・本当に、怒っていませんか?」

 青ざめた顔で震える女性に、ローズは肩をすくめて見せた。

「大丈夫です。このくらいで怒りませんよ。貴方こそ、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」

 そう声をかけると、女性は涙をぽろぽろと流し始めると、何とローズに抱き着いて声を上げて泣き始めてしまったのである。

 突然の事に、ローズはどうすることも出来ず、ただ、優しく女性が落ち着くように背中を撫でるしかなかった。



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