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二十七話

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 ローズはその後リシーの口添えもあって、リシーと同じ洗濯女中として王城で働くことが決まった。部屋も、リシーと同じ部屋になり、安堵していたのだが、その部屋は狭い上に、恐ろしく古いベッドと洋服ダンスで、さすがのローズも驚いた。

「すごいね。」

 思わず苦笑を浮かべながら、最初の頃そう口にすると、リシーも頷いた。

「私達は今一番下っ端だから、本当に一番酷い部屋なのよ。でも、ローズが居れば私はきっとこれから毎日楽しいわ!」

 そんなリシーの明るい言葉に、ローズも嬉しくなるのだった。

 洗濯女中の仕事は朝が早い上に、先輩達からいいように仕事を押し付けられるものだから、リシーもローズも昼食までの間にへろへろになっていた。

 それでも、二人いることによって食事はくいっぱぐれ無いように声を掛け合ってどちらかが必ず取りに行くようにして、仕事も、流れ作業で行う事でかなり時間を短縮できるようになっていった。

 数日もすればローズも仕事内容に慣れ始めた。

「あぁ、そう言えばローズ。何でもリベラ王国の第二王子が今日到着するらしいわ。もっと早く到着する予定だったのに、国境付近でいざこざがあって遅れたみたい。」

「いざこざ?」

「うん。何でも、国境で中々入国の手筈が出来なかったらしいわ。でも今日には到着するって言うから城の中は大忙しみたいよ。うちのお姫様は一体何をしでかしたのかしらね?」

「そう・・・ねぇ。」

 ローズがジルがタージニア王国へと来るらしいとの話を村で聞いたのは半月ほど前になる。半月もの間足止めがあったということだろうか。

 けれど、とにかくジルがここへやってくる。

 ローズはそれだけで嬉しくなり、思わず笑みを浮かべた。

「え?もしかしてローズも王子様見たいの?」

「ん?もって、どういう意味?」

「リフレ王国の第二王子と言えば、呪いに打ち勝った正統なる王位継承者ってかなり話題になったのよ。だから、この国でも、一目見て見たいっていう乙女は多いのよー。ほら、うちの国は呪術は認められているけれど、普通は呪いなんてもの身近にはないし、なんか、夢物語みたいじゃない?」

「あぁ。ねぇ、リシー。ターニジア王国で呪術が使えるっていうのはどんな人なの?」

「ん?限られているわよ。城の呪術師か、もしくは裏社会の呪術師くらいじゃない?呪術ってもし返されれば危険だし、そんな使うことないわよ。怖いしね。」

 ローズが思っていたよりもタージニア王国には呪術を使用できる者は少ない。リシーの言った通り、城の呪術師か裏社会の呪術師くらいのものである。そしておそらくサリーは、城の呪術師が行った呪術の対価、もしくは、呪術が返された呪いを身に受け、衰弱していってたものと思われる。

 ハイリスクな呪術を、サリーを生贄にすることでノーダメージで使っていた呪術師達には反吐が出る。

 絶対にサリーの苦しみを分からせてやると、ローズは心に誓うのであった。

 そして、その日の夕方、タージニア王国の王城に、リベラ王国第二王子であるジルが到着した。ローズもどうにか一目ジルを見たいと人々が集まる街道沿いで待ち構えようとしたのだが、あまりの人の多さに、近くで見るのは諦め、少し離れた時計台の上から、ジルが通るのを今か今かと待った。

 そして、騎士団を率いて馬に乗ったジルが、かなり小さくではあるが見えた。

 自分の見慣れた黒髪ではなく、王家の色である金色の髪に青い瞳の元の姿に戻ったジルを見た瞬間、ローズは心臓が煩いくらいに鳴った。

 よかった。

 ローズは胸を押さえ、涙を堪えながらジルの姿を見つめた。

 騎士団を率いる姿は、最後に会ったジルよりも少し大人びていた。きっと身長も伸びたのだろう。凛々しくなったその姿に、ローズは喜びを感じる。

 もう、呪いに蝕まれていた頃のジルではない。

 第二王子として立派に立ち、きっと皆に祝福されている。

「良かった。ジル様・・本当に・・・・良かった。」

 ジルの姿をしっかり見たいのに、ローズの瞳からは大粒の涙が溢れるのであった。



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