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十一話 久しぶりの痛み
私は殴られ慣れています。小さなころからエレン様の奴隷をしていたから、殴られたり蹴られたりすることには耐性がついていて、痛くても我慢できます。
でも、エレン様は阿呆なので私を本当に傷つけられる言葉で攻撃されることは少なかったのです。
だから、トーマス様について、言葉でえぐられることには、慣れていません。
「なんだと? お前、本当に生意気なんだよ! ふざけやがって! お前みたいな女、トーマス殿が相手にするわけがないだろう。あちらは高位貴族だぞ?」
そうです。それは分かっていたことです。
トーマス様はご両親を亡くされて、若くして爵位を継がれました。ですから、自分の地位が確立するまで婚約者を決められないと、今まで婚約者がいないまま過ごされていると噂で聞いたことがあります。
地位を確立するためには、婚約者も大切です。
アナスタシア様ならば、トーマス様にぴったりでしょう。
そんなこと、言われなくてもわかっています。
「アナスタシア様は、絶世の美女だぞ? まぁ、マリア嬢の方が俺は好みだけれど、アナスタシア様くらい完璧な令嬢はなかなかいない。トーマス殿にはぴったりだ。お前なんか、足元にも及ばない」
アナスタシア様といえば、女性のあこがれの的であり、社交界の花です。そんな方と自分では雲泥の差であることは分かっています。
「トーマス殿がお前に恋愛感情を抱くことは絶対にないぞ。お前は自分の立場をちゃんと自覚しろよ。お前は俺に捨てられた女だぞ? トーマス殿は、そんな傷物の女には興味ないだろ」
自覚しているのに、それを言葉にして言われると辛いものがあるのだと、私は初めて知りました。
胸に痛みが走り、アナスタシア様の方が絶対にトーマス様には似合っていると分かっているのに、それでもその事実が上手く呑み込めません。
「私は……そんな、おこがましいこと思っていません」
「っは。本当にか? 本当に、ないと、言い切れるか?」
にやにやとした笑みを浮かべたエレン様の言葉は、私の心の中をえぐっていきます。
「少しは、そんな思いあがった考えがあったんだろう? っふ。バカな女」
思いあがっていたのでしょうか。
あり得ないからと、そんなこと思わないように、考えないように、高望みなどしないようにと思っていました。
ですが、胸が痛いです。
目頭が熱くなり、私はうつむいてしまいます。
「泣いた? え? み、ミリー? お前、泣いているのか?」
成長してからはほとんど泣くことのなかった私が泣いたのが、そんなに驚くことなのでしょうか。
ですが、私だって人間です。涙くらい、でます。
「っふ、あはは! お前、本当ばっかだなぁぁぁ! ふっぐぅぅぅぅ」
「え?」
顔をあげると、殴り飛ばされているエレン様の姿が見えて、私は目を丸くしてしまいました。
でも、エレン様は阿呆なので私を本当に傷つけられる言葉で攻撃されることは少なかったのです。
だから、トーマス様について、言葉でえぐられることには、慣れていません。
「なんだと? お前、本当に生意気なんだよ! ふざけやがって! お前みたいな女、トーマス殿が相手にするわけがないだろう。あちらは高位貴族だぞ?」
そうです。それは分かっていたことです。
トーマス様はご両親を亡くされて、若くして爵位を継がれました。ですから、自分の地位が確立するまで婚約者を決められないと、今まで婚約者がいないまま過ごされていると噂で聞いたことがあります。
地位を確立するためには、婚約者も大切です。
アナスタシア様ならば、トーマス様にぴったりでしょう。
そんなこと、言われなくてもわかっています。
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「トーマス殿がお前に恋愛感情を抱くことは絶対にないぞ。お前は自分の立場をちゃんと自覚しろよ。お前は俺に捨てられた女だぞ? トーマス殿は、そんな傷物の女には興味ないだろ」
自覚しているのに、それを言葉にして言われると辛いものがあるのだと、私は初めて知りました。
胸に痛みが走り、アナスタシア様の方が絶対にトーマス様には似合っていると分かっているのに、それでもその事実が上手く呑み込めません。
「私は……そんな、おこがましいこと思っていません」
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ですが、私だって人間です。涙くらい、でます。
「っふ、あはは! お前、本当ばっかだなぁぁぁ! ふっぐぅぅぅぅ」
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