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第三十三話

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 王城内でハンスの妃探しのためのお茶会が開かれていた。

 会場内は色とりどりの花々で飾られており、令嬢方は美しく着飾ってはいるものの水面下でお互いに牽制しあっているが、噂話というものは、どこでもささやかれる。

 そして、そんな噂話の話題としてもちきりなのが、氷の宰相として知られるルルドとその婚約者アマリーの恋愛活劇である。

 ハンスの命を救ったアマリーがルルドと恋に落ちるという恋愛活劇は今有名になっており、令嬢方はその話題でもちきりであった。

「本当に素敵ねぇ。」

「でも、氷の宰相でしょう。私この前横を通りましたら、表情が恐ろしくて、凍えあがりましたわ。」

「ねぇ。私も氷の宰相と恋などできそうにないわ。やはり、ウソなのではなくって?」

「ですわよねぇ。あの氷の宰相が恋など。」

「それにお相手はあの、ポチャッ娘令嬢のアマリー様でしょう?」

「ふふ。そうそう。」

「でも、あの変容ぶりには驚きましたわぁ。」

「恋の力は偉大ですわねぇ。」

「え?あれって恋の力で痩せましたの?」

「私は踊りを毎日かかさずして痩せたって聞きましたわ!」

「私はマッサージの力と聞きましたわ!」

「えぇ?私は武術と精神の鍛練で痩せたって聞きましたわぁ。」

「どれが本当なのかしらねぇ。」

「あ、見てくださいませ!氷の、、、?」

「あら?氷の、、、、?」

「氷の宰相??」

 令嬢方の視線はハンスと共に現れたルルドに向けられた。

 だが、皆が硬直してしまう。

 氷の宰相と言われるルルドは、その眼光はすさまじく、冷静沈着であり、冷たい印象の男であるはずである。

 そう。

 そのはずである。

「ルルド様。本当に私もお邪魔してしまってよろしいのですか?」

「あぁ。アマリー。陛下がぜひにとの事だから、すまないが頼む。」

「ふふ、私はルルド様と一緒ですから嬉しいですわ。」

 ルルドにエスコートされるアマリーは可愛らしく微笑んでおり、それを愛おしそうにルルドは見つめた。

 そこには、氷の宰相は居なかった。

 甘い瞳でアマリーを見つめ、そして、優しく宝物を扱うかのような様子でアマリーに触れるルルドに、会場にいた令嬢らは内心で悲鳴を上げた。

(誰よ!氷の宰相って言ったのは!)

(ぜんぜん、氷の宰相じゃないじゃない!)

(あんなに素敵な方なら、私が婚約者になりたいわ!)

(今からでもアマリー様を蹴落とせば行けるのではないかしら?)

(その通りね!)

 令嬢方はハンスがダメだった時の為にルルドも標的に決めた。

 その様子を見つめていた護衛のテイラーは大きくため息をついた。

「考えがだだもれだなぁ。」

 この二人の甘々っぷりをずっと見せ続けられているテイラーは口から砂糖を吐きそうになっていた。

 あれほど日々笑わないルルドが、アマリーがいるときは終始笑顔である。

 その為、落差の激しさに驚かされるし、しかもアマリーと一緒にいるとずっとデロデロに甘い姿を見せ続けられるのである。

 はっきり言って辛い。

 毎日砂糖を吐きそうになりながら、テイラーは必死に堪える日々を送っていた。

 そして、令嬢らに思う。

 安易にルルドに近づけば恐ろしいことになるからやめておいた方がいいと。

 テイラーは切実なため息をついた。






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