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第二十三話
しおりを挟む祟り神を癒し、他の四人の神々の穢れも癒すのは容易な事ではなかった。
玉枝は森の奥の霊山にて、神々の世話をしながら長い時を過ごす。
最初こそ文句ばかり呟いていた四人の神々も、祟り神の表情が明るくなるにつれてその口を閉じ、笑顔を見せるようになっていった。
そして時は流れる。
霊山に清らかな風が吹き、そして全ての穢れが消え去った。
『本当に穢れを祓うとは・・・玉枝・・感謝する。』
祟り神はその姿を美しい金色に輝く姿へと帰ると、慈愛に満ちた微笑を浮かべる。
袖には四人が控えており、そちらもまた本来の姿を取り戻し澄んだ瞳で玉枝を見ていた。
「私は自分の役目を果たしただけにございます。」
神は立ち上がると、玉枝の額に口づけを落とし笑みを深めた。
『薬師玉枝。そなたに祝福を。』
玉枝は頭を下げ、そして薬箱を背負うと霊山を下りる。
「玉枝。やっとまた旅に出られますね。」
雫の声に玉枝は苦笑を浮かべ、焔の言葉に噴き出して笑いそうになる。
「あー。あいつら本当に性格最初は悪かったのに、今では正反対だぜ。穢れって怖いなー。」
「ふふ。本当にそうだね。でも・・・今回の原因は元々人間にあったからねぇ・・・本当に、人間っていうのは怖い生き物だ。」
玉枝はそう言うと思いきり背伸びをすると、首を回し、そして空を見上げた。
「はぁ。でも、どうにか癒す事が出来て良かった。あれ以来、人間も神の領分に手を出さなくなったようだし、まぁ一安心ではあるけどね。・・・・鈴も、元気に暮らせたといいなぁ。」
神々と人との間で一体何があったのかは、玉枝には関係のない事だ。
そして鈴がどうなったかも関係のない事。
けれども、玉枝は空を見上げて思った。
あの小さな幼子が元気に幸せになっていればいいなと。
「玉枝。これからどうするんですか?」
「やっと一仕事終わったし、どこか温泉にでも入りに行くか?」
「ふふ。温泉は、見つけたら入ろうね。あー。行きたいところがあるから、そこに行こうか。」
「どこですか?」
玉枝はにっこりとほほ笑みを浮かべると、二人には言わずに森を歩く。
緑が生い茂る森は、何年たとうともその姿を変える事が無い。
何故ならば、ここは神々の住まう森。
人は決してその領分を犯すことが出来ない。
世界の中心は人ではないのだから。
「玉枝ー。ここ、久しぶりですねぇ。」
「本当に、久しぶりだなぁ。」
大きな岩の前に玉枝は立ち、笑みを浮かべた。
「さぁ、そろそろ起きるころだろう?・・薬師のひよっこの性根を鍛えてやらなきゃね。」
岩の傍に寝ていた二人の獅子が顔を上げ、玉枝の姿に目を丸くする。
光が溢れ、巨大な岩が二つに割れた。
玉枝はにっこりと笑い、そして薬師としての旅をまた続けるのであった。
完
★★★★★★★
これにて、薬師のお話は終わりとなります。
最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
またどこかでお会いできることを楽しみにしております。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(9件)
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はじめまして。
すらすらと読みやすかったです。楽しませていただきました。ありがとうございます♪
読んでくださり、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら良かったです!
すらすらと読みやすかったです。
楽しませていただきました。ありがとうございます♪
完結おめでとうございます!
穏やかながらもヒヤッとする展開が楽しかったです(*’∀’)
お体に気をつけてくださいね
ありがとうございます!
体には本当に気を付けなければならないなだと思いました。
かさかさスライムさんも体調には気を付けなけれてくださいね!!