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第十四話
しおりを挟む飛びたい。空を自由に飛びたい。
青い空。
美しく輝く、青い空。
高く、高く。
誰よりも高く空を飛んでみたい。
翼が欲しい。
だから作った。
けれど翼があっても、飛ぶことを人間は許されない。
飛びたい。
飛べない。
飛びたい。
二人はバカだった。
だから飛べるならと何でも信じてしまうのだ。
そんな二人はこの建物の中にいる人物達をまずは観察していた。
アーロというこの国の長は、奇妙な機械を使い誰かと連絡を取り合っている様子でありその声には“警戒”が感じられた。緊張感を持ったその雰囲気から、話す相手もそれなりの人物なのだと言う事が窺えた。
「何故今まで言わなかった?・・王位継承式まで・・あとわずかだぞ・・・」
『今更、お前がそれをいうの?』
アーロは押し黙り、そして厳しい口調で言葉を返した。
「では、俺にどうしろというのだ?」
『それは私が決めることじゃないわ。』
「お前はいつもそうだ。肝心なことになると口を出さなくなる。」
『私が決めるべきことではないから。』
アーロは唇を噛み、拳を強く握っていた。
「俺は常に国のためにと思い、動いてきたつもりだ。お前にこんな形で裏切られるとは思っても見なかった。」
すると、話し相手はクスクスと笑い声を立てている様子であった。
『裏切る?裏切ったつもりはないわ。私はいつもお前を想っている。そして、この国の行く末についても考えがあり行動しているのよ。』
アーロは押し黙った。
話し相手は、静かにアーロに告げた。
『これからこの国を支えていくのはあの子。そしてあの子が決断したことならば私はそれを尊重するわ。』
「・・・・・わかった。」
『けれどそれは私の意見。お前はお前なりにあの子に真摯に接してやって。』
「あぁ。」
二人の会話はそこで途切れた。
フライ兄弟は、その様子から何か只ならぬ気配を感じながらも、バカだから深くは考えもせずにその天井裏から立ち去った。
そして、真夜中をすぎたころ、フライ兄弟は静かに部屋に侵入していた。
その部屋は四十畳ほどの広さがあり、他の部屋とは少し違い、装飾品も煌びやかな物が多い部屋であった。
「クラット。準備はいいか。」
「アラット。もちろんだ。」
小さな声でそう声を掛け合うと、フライ兄弟はベッドの両脇に立った。そして呼吸を合わせるとベッドに寝ている少女の体を押さえつけたのである。
少女は驚き、じたばたと暴れるが口をテープで止められてしまい、叫び声をあげることができないでいた。
フライ兄弟はそんな少女を麻袋に押し込んだ。
「さあ急いで行こう!」
「あぁ。この国は侵入も難しかったからな。長居は無用だ!」
「本当に。長居しないほうがいいよねぇ。僕も早くこの国から出て行きたいよ。」
「そうだそうだ。早く出て行こう。」
「え・・・うん。そうだな。」
「けどさ、どこから出て行くの?」
「入ってきた場所からに決まっているだろう。水は少しばかり冷たいが、用水路の中を通ればすぐだったじゃないか。用水路にも網がしてあるけど、だいぶ痛んでいたし壊すのは簡単だったなぁ。」
「そうだね。案外簡単に入れて拍子抜けしたもんな。」
「なるほどねえ。用水路か。今まで試した事がなかったなぁ。よく気付いたね。」
「まぁね。こうした警備の厳しい国は意外とそういうところが盲点になるんだよなぁ。」
「そうそう。だから、案外侵入は簡単だよなぁ。」
「なるほどねぇ。そうなんだーーー。勉強になるなぁ。」
「ところで気になるんだけれど。」
「俺も気になるんだけれど。」
『キミは誰だい?』
二人は声を揃えてそう少年に尋ねた。
少年は言った。
「トイ=ブルーバードだよ。」
「へぇ。あの・・・で?」
「いつのまに、ここに?」
「最初からいたよ。」
フライ兄弟は驚いていた。
トイはにっこりと笑みを浮かべながら、青いマントを翻して床に敷いた。
「さあさあお立会い。あなた方の好きなものがこのマントから出てくるよ。」
フライ兄弟は、バカだった。だから、思わずウキウキしながらそのマントを見つめていた。
そしてトイは、容赦ない男であった。
マントからふわふわと出てきた大きなシャボン玉二つをトイは手のひらに取ると、手のひらで回転させ、勢いをつけて二人の顔面に引っ付けたのである。フライ兄弟は驚いたが、本当の驚きはここからである。
シャボン玉はどんどんと顔に密着していき、皮膚にはいついてくる。それをはがそうと足掻いても、ぬるっと滑ってまったく取れないのである。
「なんだこれはぁぁ!」
「く・・・くるしぃ・・・!」
二人は呼吸がだんだんと苦しくなり、意識が遠のくのを感じた。だが、そこで急にシャボン玉が割れ呼吸ができるようになる。
フライ兄弟は大きく胸を上下させ、息をぜーはーぜーはーと吸ったりはいたりしている。
「と・・・突然何をするんだ。」
アラットにそういわれ、トイは言った。
「いやいや、誘拐犯が何を言うんだよ。」
「誘拐?俺達は、この子を見つければ空を自由に飛べる術が手にはいるっていわれて連れて行こうとしているだけだ。」
トイはその言葉に、眉間に皺を寄せると言った。
「それを誘拐といわずになんと言うつもりなんだよ?」
フライ兄弟は、呆然としていた。
呆然としたまま、お互いの顔を見つめ、そして呆然としたままトイの方をまた見つめてきた。
トイは、頬を引き攣らせながら苦笑を浮かべ、はっきりと言った。
「キミ達のしようとしていることは誘拐だ!大の大人が何を言っているんだよ!」
フライ兄弟は、力をなくしたかのようにその場に座り込んだ。
けれど、フライ兄弟は足元でバタバタと暴れている麻袋を見て、慌ててその袋を開けた。
「す・・すすす・・・すまない!誘拐だって思わなかったんだ!」
「ほ・・・ほほほ・・本当に申し訳ない!謝ってもしょうがないんだろうけれど!すまない!」
フライ兄弟は慌てた口調でそういいながら、麻袋を開け、中から少女を解放した。けれど、その麻袋の中から出てきたのは少女ではなかった。
それは人型のブリキのおもちゃであった。どこをどう見てもそれは人ではなく、どうしてフライ兄弟が間違える事が出来たのかも疑わしい。
そんなブリキのおもちゃを見てフライ兄弟は悲鳴を上げた。
「俺達のせいで女の子が人形になっちまった!」
「ああぁっぁ・・・どうしよう!ああっぁぁ・・・・どうしよう!」
フライ兄弟はいつの間にか涙を流し始めており、トイは静かに、額に手をあて大きく息を吐いた。
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