【完結】玩具の青い鳥

かのん

文字の大きさ
15 / 31

第十四話

しおりを挟む

 飛びたい。空を自由に飛びたい。
 青い空。
 美しく輝く、青い空。
 高く、高く。
 誰よりも高く空を飛んでみたい。
 翼が欲しい。
 だから作った。
 けれど翼があっても、飛ぶことを人間は許されない。
 飛びたい。
 飛べない。
 飛びたい。
 二人はバカだった。
 だから飛べるならと何でも信じてしまうのだ。

 そんな二人はこの建物の中にいる人物達をまずは観察していた。

 アーロというこの国の長は、奇妙な機械を使い誰かと連絡を取り合っている様子でありその声には“警戒”が感じられた。緊張感を持ったその雰囲気から、話す相手もそれなりの人物なのだと言う事が窺えた。

「何故今まで言わなかった?・・王位継承式まで・・あとわずかだぞ・・・」

『今更、お前がそれをいうの?』

 アーロは押し黙り、そして厳しい口調で言葉を返した。

「では、俺にどうしろというのだ?」

『それは私が決めることじゃないわ。』

「お前はいつもそうだ。肝心なことになると口を出さなくなる。」

『私が決めるべきことではないから。』

 アーロは唇を噛み、拳を強く握っていた。

「俺は常に国のためにと思い、動いてきたつもりだ。お前にこんな形で裏切られるとは思っても見なかった。」

 すると、話し相手はクスクスと笑い声を立てている様子であった。

『裏切る?裏切ったつもりはないわ。私はいつもお前を想っている。そして、この国の行く末についても考えがあり行動しているのよ。』

 アーロは押し黙った。

 話し相手は、静かにアーロに告げた。

『これからこの国を支えていくのはあの子。そしてあの子が決断したことならば私はそれを尊重するわ。』

「・・・・・わかった。」

『けれどそれは私の意見。お前はお前なりにあの子に真摯に接してやって。』

「あぁ。」

 二人の会話はそこで途切れた。

 フライ兄弟は、その様子から何か只ならぬ気配を感じながらも、バカだから深くは考えもせずにその天井裏から立ち去った。

 そして、真夜中をすぎたころ、フライ兄弟は静かに部屋に侵入していた。

 その部屋は四十畳ほどの広さがあり、他の部屋とは少し違い、装飾品も煌びやかな物が多い部屋であった。

「クラット。準備はいいか。」

「アラット。もちろんだ。」

 小さな声でそう声を掛け合うと、フライ兄弟はベッドの両脇に立った。そして呼吸を合わせるとベッドに寝ている少女の体を押さえつけたのである。

 少女は驚き、じたばたと暴れるが口をテープで止められてしまい、叫び声をあげることができないでいた。

 フライ兄弟はそんな少女を麻袋に押し込んだ。

「さあ急いで行こう!」

「あぁ。この国は侵入も難しかったからな。長居は無用だ!」

「本当に。長居しないほうがいいよねぇ。僕も早くこの国から出て行きたいよ。」

「そうだそうだ。早く出て行こう。」

「え・・・うん。そうだな。」

「けどさ、どこから出て行くの?」

「入ってきた場所からに決まっているだろう。水は少しばかり冷たいが、用水路の中を通ればすぐだったじゃないか。用水路にも網がしてあるけど、だいぶ痛んでいたし壊すのは簡単だったなぁ。」

「そうだね。案外簡単に入れて拍子抜けしたもんな。」

「なるほどねえ。用水路か。今まで試した事がなかったなぁ。よく気付いたね。」

「まぁね。こうした警備の厳しい国は意外とそういうところが盲点になるんだよなぁ。」

「そうそう。だから、案外侵入は簡単だよなぁ。」

「なるほどねぇ。そうなんだーーー。勉強になるなぁ。」

「ところで気になるんだけれど。」

「俺も気になるんだけれど。」

『キミは誰だい?』

 二人は声を揃えてそう少年に尋ねた。

 少年は言った。

「トイ=ブルーバードだよ。」

「へぇ。あの・・・で?」

「いつのまに、ここに?」

「最初からいたよ。」

 フライ兄弟は驚いていた。

 トイはにっこりと笑みを浮かべながら、青いマントを翻して床に敷いた。

「さあさあお立会い。あなた方の好きなものがこのマントから出てくるよ。」

 フライ兄弟は、バカだった。だから、思わずウキウキしながらそのマントを見つめていた。

 そしてトイは、容赦ない男であった。

 マントからふわふわと出てきた大きなシャボン玉二つをトイは手のひらに取ると、手のひらで回転させ、勢いをつけて二人の顔面に引っ付けたのである。フライ兄弟は驚いたが、本当の驚きはここからである。

 シャボン玉はどんどんと顔に密着していき、皮膚にはいついてくる。それをはがそうと足掻いても、ぬるっと滑ってまったく取れないのである。

「なんだこれはぁぁ!」

「く・・・くるしぃ・・・!」

 二人は呼吸がだんだんと苦しくなり、意識が遠のくのを感じた。だが、そこで急にシャボン玉が割れ呼吸ができるようになる。

 フライ兄弟は大きく胸を上下させ、息をぜーはーぜーはーと吸ったりはいたりしている。

「と・・・突然何をするんだ。」

 アラットにそういわれ、トイは言った。

「いやいや、誘拐犯が何を言うんだよ。」

「誘拐?俺達は、この子を見つければ空を自由に飛べる術が手にはいるっていわれて連れて行こうとしているだけだ。」

 トイはその言葉に、眉間に皺を寄せると言った。

「それを誘拐といわずになんと言うつもりなんだよ?」

 フライ兄弟は、呆然としていた。

 呆然としたまま、お互いの顔を見つめ、そして呆然としたままトイの方をまた見つめてきた。

 トイは、頬を引き攣らせながら苦笑を浮かべ、はっきりと言った。

「キミ達のしようとしていることは誘拐だ!大の大人が何を言っているんだよ!」

 フライ兄弟は、力をなくしたかのようにその場に座り込んだ。

 けれど、フライ兄弟は足元でバタバタと暴れている麻袋を見て、慌ててその袋を開けた。

「す・・すすす・・・すまない!誘拐だって思わなかったんだ!」

「ほ・・・ほほほ・・本当に申し訳ない!謝ってもしょうがないんだろうけれど!すまない!」

 フライ兄弟は慌てた口調でそういいながら、麻袋を開け、中から少女を解放した。けれど、その麻袋の中から出てきたのは少女ではなかった。

 それは人型のブリキのおもちゃであった。どこをどう見てもそれは人ではなく、どうしてフライ兄弟が間違える事が出来たのかも疑わしい。

 そんなブリキのおもちゃを見てフライ兄弟は悲鳴を上げた。

「俺達のせいで女の子が人形になっちまった!」

「ああぁっぁ・・・どうしよう!ああっぁぁ・・・・どうしよう!」

 フライ兄弟はいつの間にか涙を流し始めており、トイは静かに、額に手をあて大きく息を吐いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

処理中です...