死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか

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最終章

120話

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「ヒルダが生きているとは……本当ですか?」

 私が聞いていた話では、ヒルダはアイゼン帝国にて重罪に問われたと聞いていた。
 かつて帝国に対しての明確な敵対行為をとった彼女だ、死罪は免れない。
 ゆえに彼女が生きているというシュイク様の言葉が信じられなかった。

「生きているはずですよね、ジェラルド宰相殿」

 私の疑問に答えるようにシュイク様が尋ねる。
 視線を向けられたジェラルド様は、少しの沈黙の後にゆっくり頷いた。

「おっしゃる通り、ヒルダは生きております。我がアイゼン帝国の地下牢にて幽閉しています」

「本当なのですね……ジェラルド様」

「カーティア様、ご報告をしないままで申し訳ありません」

「いえ、謝罪は大丈夫です。私から過去の事は話さないでいいとジェラルド様にも言っていたから、気を遣ってくださっていたのですよね」

 ジェラルド様もシルウィオも、きっと好きで隠していた訳ではない。
 私が過去を知りたくないと言っていたから、その要望に応えてくれていただけだ。
 それ故に謝罪は必要ないが、純粋な疑問は当然沸き上がる。

「でも、ヒルダは死罪になったと聞いておりましたが……刑は執行されなかったのですか?」

「いえ、すでに死罪となって絞首刑が執行されました」

「え? なら……」

「回数にして、すでに二十回は絞首刑は執行されています」

 私の聞き間違いだろうか、今……二十回と言った?
 人が絞首刑になる回数など、一回で終わるはずなのに。
 疑問が止まぬ私に、ジェラルド様が説明してくれた。

「彼女は絞首刑の度、その類まれなる魔法によって死を防いでいるのです」

「……なる、ほど。そういうことですね」

「ええ、我が国としては国家を巻き込んだ事件を起こした彼女に対し、法治国家として法に則って処罰を下さねばならない。故にアイゼン帝国の死罪である絞首刑を執行しております」

「でも、法の下での処罰である絞首刑では……ヒルダは死罪にできないということですね」
 
 難しい問題だ。
 国家犯罪者であるヒルダを、アイゼン帝国としては然るべき法の下で処罰を下したい。
 それこそが他国へと法治国家である事を示し、敵対意志には厳粛に対応する意思表示になるのだから。
 しかし、その法の処罰である絞首刑ではヒルダは死なない。

「彼女は魔法に長け。幾ら手段を防いでも生存しております。彼女に害をなせるとすれば……同じく魔力に長けたシルウィオ陛下やシュイク殿下のみでしょう」

 そう聞くと、ヒルダがどれだけ厄介な魔女だったのかが良く分かる。
 私が本当に運が良かっただけで、シルウィオ達に出会えてなければ勝ち目がなかったのだろう。

「対応方法はなく、ヒルダは現在は終身刑として地下に幽閉されています」

「俺が刑を下しても良かったのだがな」

「いえ、シルウィオ陛下自身が独自に刑を執行するのではなく、我らも国として意地を示し、刑を執行せねば他国に示しがつきませぬ」

「分かっている」

 シルウィオが呟く、その瞳は怒りに染まっていた。
 やはり、過去の事でも未だに私が害された事に怒ってくれているのだろう。
 その気持ちに嬉しくなりながらも、シュイク様に尋ねる。

「でも今はヒルダがいれば、リルレットが助かる可能性があるのですよね」

「はい、カーティア皇后。彼女の魔力は膨大だ。可能性は高いと言ってもいい」

 なら……
 それだったら、私の中での答えは決まっていた。
 シルウィオへと視線を合わせる。


「シルウィオ、ヒルダに会わせて」


   ◇◇◇

 アイゼン帝国の地下牢。
 城内の外れに設置された堅牢な門を開き、多くの兵が警備する階段を降りていく。
 その厳重な警備に、ここが重罪人を幽閉する帝国の牢なのだと思い知る。

 幾つかの重たい門を抜けた先では、なんとすでにグレインが立っていた。
 どうやらこの先の門を開く際、アイゼン帝国でも許可を得た騎士が帯同してなければならないようだ。
 もし重罪人が逃げ出した際、直ぐに対処できるように……

 それだけ、厳重な管理がされている牢だとよく分かる。

「事情は聞いております、カーティア様。俺もリルレット姫を救うためなら、お力添えできれば嬉しいです」

「ありがとうございます、グレイン。この先の門を開いてくれますか」

「はい」

 優秀騎士であるグレイン、そして宰相であるジェラルド様が持つ鍵にて門が開かれる。
 その先には、黒々とした檻の中で座るヒルダがいた。

「ヒルダ……本当に」

 かつてグラナート王国にて栄華を誇り、美しき毒花であった彼女。 
 紫色の髪は松明の光で怪しく光り、その肌は未だにきめ細かく白く透き通る。
 しかし、かつての美は損なわれ初めており……身体は痩せて、髪には白髪が混ざる。

 私達の来訪に気付いたのか、彼女は琥珀色の瞳を開いた。

「カ……カーティア……」

「お久しぶりですね。ヒルダ」

 まるで夢だと思うかのように、虚ろであったヒルダの表情。
 しかし私を見つめ始めて、彼女の瞳が大きく見開かれる。

「あぁ、また会えて嬉しいわ。お会いできるなんて光栄です、カーティア皇后様」

 意外、といった言葉が心を埋める。
 私が最後に見た時とは違い、殊勝な態度にて跪いたヒルダ。

 その思惑がまるで読めずに困惑する。
 久しぶりの対面にて虚を突かれたのは、こちら側からであった。

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