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番外編
その後の物語② アーシアside
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「来てくれてありがとう……ございますた。アーシさん」
たどたどしい丁寧な言葉遣いで、ディノ殿下が私へと礼をする。
緊張した面持ちで、ニコリと笑う姿は可愛らしい。
「お招きくださり、感謝します。ディノ殿下」
「え、えっと……ど、どうぞおかけになってくださ、どうぞです」
「ふふ、殿下。おかけになってくださいで大丈夫ですよ」
今、私はディノ殿下の言葉遣いの練習に付き合っている。
一国元首といえど、丁寧な言葉遣いを心掛けなければならない。
特に若くして王となる事が宿命づけられた殿下にとって、他国からの視線は自然と厳しくなる。
言葉遣いを含めて、マナーは身を守るために学ぶべき重要なものだ。
「うー。やっぱり……ディノ、言葉遣いを覚えるのは、にがて」
「ふふ、でも以前よりも、お上手になっておりますよ」
「ほんと?」
褒めた途端、花が咲いたかのように明るく笑う殿下に自然とこちらも胸が喜色に染まる。
出来る事なら褒め倒したいが、それが殿下のためとなるかは別だ。
「では、殿下。次は他国の王家と初めて会った際の挨拶の練習を……」
「ディノ、休憩したい! いいよね? お母様!」
そういえば、かなり時間が経っており、殿下も疲れるころ合いだ。
思わず没頭してしまっていた。
直ぐに判断を、傍で見ていた側妃のテセア様に仰げば、彼女は微笑みと共に頷く。
「ええ、ディノもアーシアさんも休憩してちょうだい」
「やた!」
答えを聞いた瞬間には、殿下は部屋に置いてある本棚から絵本を持ち出す。
そして、私の隣に座ってキラキラと輝いた瞳を向けた。
「アーシさん。またよんでほしいの。いい?」
「ふふ、もちろんですよ。殿下」
開いた絵本は、もう何度も読んだけれど、殿下はいつだって初めて聞くように嬉しそうだ。
その幼子の期待を裏切らぬよう、今日も気持ちを込めて読んであげよう。
「~~ということで、お菓子の住人は今日も元気に暮らしております」
「ふふ、ディノね。これすき」
「喜んでもらえて嬉しいです。殿下」
絵本を読み終える頃には、殿下は私の膝上に座って好きなページを開く。
子供らしい重みに、私にも子がいれば……殿下のような年頃だったのではと、ありもしない幻想を描いてしまった。
まぁ、今の私は相手もいないのに子が出来るはずもない。
そう考えながらも、思わずある男性の顔が浮かび、熱くなる頬を隠すように思考を振り払う。
「殿下、今度はどんなお話を読みましょうか」
「えっとね~」
次の本を選ぼうと立ち上がった刹那。
トントンと小気味いいリズムで扉がノックされ、陽気な声色が部屋へと囁かれた。
「殿下、はいってもよろしいですかな?」
「あ、ブルーノおじさんだ! どうぞ!」
殿下の許諾を得て、ブルーノ閣下が部屋へと入室する。
まず殿下とテセア様へと形式通りの礼を終え。
閣下は私へと視線を向けた。
「アーシア嬢。執筆の調子はどうだ? 新作ができれば、私に最優先で見せるようにな」
「はい。ブルーノ閣下、まだ書いている途中ですが……良いものができそうです」
「楽しみにしているぞ。嬢の本を読むのが、今の私と妻の生きる糧だからな!」
高らかに笑うブルーノ閣下に微笑みを返す。
期待の言葉に重圧は感じずに、むしろ嬉しく思うのは閣下が心から私の書く物語を待ってくれているからだろう。
ルーシェ様の気持ちも、今なら少しは分かる気がする。
早く、自分の物語を見てもらいたいのだ。
「さて、ディノ殿下。マナー講義に難儀していると聞いておりますが、調子はどうですかな?」
「ブルーノおじさん、なんぎ? ってなに?」
「ははは……それでは今日は、我が国の言葉について、ご教授させてください」
流れるように、ディノ殿下の興味を引いて文学を閣下が教える。
その仕草や、教え方は……学園で過ごしていた際の講師を思わせるほどに丁寧だ。
「いつもありがとうございます。ブルーノ様。お忙しい中でディノを気にかけてくださって……」
テセア様の謝辞に、閣下は「よいよい」と笑う。
ブルーノ閣下にとって、次期国王となるディノ殿下に会うという事は次代の王家に大きく貢献している。
このスフィクス王国にて今や最大の貴族家となったブルーノ閣下が、殿下と親身である事実のみで、殿下が即位した際の威厳は十分に引き立つのだから。
「殿下、この文字は……こう書くのですぞ」
「うん、みてて。ディノ、この字ももう書けるよ」
「おぉ! 流石ですな。殿下!」
殿下があらかた勉強を終え、疲れてしまってお昼寝の時間となった。
その際、残された大人組は別室にて軽い談笑の時間を過ごす。
いつも通りに世間話だけの予定であったが、今日はテセア様が大きな話題を私へと投げかけた。
「ところでアーシアさん。貴方は新しい結婚相手は考えてはいないの? 例えば……ヴォルフとか」
「っ!!」
見透かされたような問いに、言葉に詰まると、テセア様がいたずらっぽく微笑んだ。
その笑みに、肯定を込めた頷きを返した。
「やっぱり、分かるのですね」
「もちろんよ、貴方はともかく。ヴォルフなんて分かりやすいもの」
「ふ、ふふ。ですよね。ヴォルフ様は隠しているつもりですけど」
ヴォルフ様の秘めている想いは手に取るように分かる。
それでもなお、私からは言及しないのは……理由があった。
「テセア様。私は恋情に小賢しい女です。前回の失敗がちらつき、ヴォルフ様の想いを気付きながら、受け身の姿勢でいるのだから」
「……」
「かつて私が追っていたレジェスは、一度も振り向いてくれず、私が見せたのはいつも冷たい瞳と、遠ざかる背中だけでした」
吐露した気持ちが、情けなくも続いてしまう。
同情を求めた訳ではないが、そんな雰囲気にしてしまっているかもしれない。
「だからヴォルフ様を追いかけて……背中を見せられたならと、少し……怖いのもあります」
ヴォルフ様は、きっと私に背中を見せたり。
遠ざけたり、嘲笑ったり、罵倒などしないと分かってる。
しかし私は小賢しくも、警戒心だけは人並み以上に育ってしまっていた。
加えて決して口にはしないが、方法が無かったとはいえ……私は幾人かの死を招いた。
仕方ない事……と簡単に切り捨てる事も、まだ出来ぬ気持ちもある。
「なので私からは、彼に迫るような事は……しておりません」
「そうなの……」
「それに曖昧な状態である事も悪くありません……私は政略で婚約をする必要がないので、気楽な身ですから」
これも本音だ。
想いを告げる前の状態とは……形容できぬ居心地の良さがある。
吐露した言葉に、ブルーノ閣下は腕を組んで呟いた。
「父は結婚など許さんぞ。アーシア嬢」
「え?」
確かにお父様のように慕っているが、いざ言われると反応に戸惑う。
だが、閣下のニヤリと笑う頬に、冗談だと理解する。
「冗談だ」
「思わず、本気だと思ってしまいました」
「ふっはは。だがアーシア嬢……ヴォルフは遅々として動けぬ男かもしれんぞ?」
「閣下に分かるのですか?」
「シュイクもそうだが、えてして剣に愚直に生きる男共は奥手だ。前王家騎士団長も剣を置くまで独身だったからな」
「そうなのですね……」
今のヴォルフ様は、確か二十八の歳だ。
一般的に騎士が引退するのは三十五の歳……なるほど、確かに遠そうだ。
彼自身も男爵家の次男の生まれで、婚儀に焦る必要がないからなおさら。
「それでも、今は気楽に過ごします。それがお互いにとってより良いはずですから」
互いの気持ちに気付いていながら、想いを告げない日々。
それを続けるのに、若干の迷いはあるが……現状維持でいいのだと結論を説く。
ブルーノ閣下もテセア様もそれ以上は言及せず、笑って頷いてくれた。
そんな折、隣の部屋からディノ殿下の「おかーさま」と呼ぶ声が聞こえる。
どうやらお昼寝から起きたようだ。
「では、殿下の勉強の続きといきましょうか」
「そうだな。アーシア嬢は殿下にやる気を出してもらうため、終わった際は絵本でも読んであげてくれ」
「はい!」
閣下と共に、殿下の未来のためにとまい進する。
こんな日々も悪くない。
「……先の話の続きだがな、アーシア嬢」
「ブルーノ閣下?」
殿下の部屋へ戻る途中、ブルーノ閣下が私だけに聞こえるように呟く。
その背中から、冗談が混じらぬ声色で……
「私はまだ、嬢を娘にする野望は諦めておらぬぞ」
「それは……どういう意味で……」
「嬢の存在は、長き王家の歴史でも異端。子爵家から離れて爵位もなき身でありながら、今や社交界での注目の花。さらに国の危機を救った女性を……周囲が黙ったままでは居るはずない」
その言葉の意味を理解し、答えに詰まる。
私の反応に、ブルーノ閣下がいたずらっぽく笑った。
「アーシア嬢を妻にしたいと思う者は好敵手揃いだ。そして、どこぞの馬の骨にやるなら、私が娘にするため手を尽くす。ヴォルフを悠長に待ってられんからな」
自身の立場、王国での優位性を考えれば。
悠長に待ってもいられないのだと、暗に込められた言葉。
私はそれを理解し、自身がどう動くべきなのかを再度、思慮することにした。
たどたどしい丁寧な言葉遣いで、ディノ殿下が私へと礼をする。
緊張した面持ちで、ニコリと笑う姿は可愛らしい。
「お招きくださり、感謝します。ディノ殿下」
「え、えっと……ど、どうぞおかけになってくださ、どうぞです」
「ふふ、殿下。おかけになってくださいで大丈夫ですよ」
今、私はディノ殿下の言葉遣いの練習に付き合っている。
一国元首といえど、丁寧な言葉遣いを心掛けなければならない。
特に若くして王となる事が宿命づけられた殿下にとって、他国からの視線は自然と厳しくなる。
言葉遣いを含めて、マナーは身を守るために学ぶべき重要なものだ。
「うー。やっぱり……ディノ、言葉遣いを覚えるのは、にがて」
「ふふ、でも以前よりも、お上手になっておりますよ」
「ほんと?」
褒めた途端、花が咲いたかのように明るく笑う殿下に自然とこちらも胸が喜色に染まる。
出来る事なら褒め倒したいが、それが殿下のためとなるかは別だ。
「では、殿下。次は他国の王家と初めて会った際の挨拶の練習を……」
「ディノ、休憩したい! いいよね? お母様!」
そういえば、かなり時間が経っており、殿下も疲れるころ合いだ。
思わず没頭してしまっていた。
直ぐに判断を、傍で見ていた側妃のテセア様に仰げば、彼女は微笑みと共に頷く。
「ええ、ディノもアーシアさんも休憩してちょうだい」
「やた!」
答えを聞いた瞬間には、殿下は部屋に置いてある本棚から絵本を持ち出す。
そして、私の隣に座ってキラキラと輝いた瞳を向けた。
「アーシさん。またよんでほしいの。いい?」
「ふふ、もちろんですよ。殿下」
開いた絵本は、もう何度も読んだけれど、殿下はいつだって初めて聞くように嬉しそうだ。
その幼子の期待を裏切らぬよう、今日も気持ちを込めて読んであげよう。
「~~ということで、お菓子の住人は今日も元気に暮らしております」
「ふふ、ディノね。これすき」
「喜んでもらえて嬉しいです。殿下」
絵本を読み終える頃には、殿下は私の膝上に座って好きなページを開く。
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まぁ、今の私は相手もいないのに子が出来るはずもない。
そう考えながらも、思わずある男性の顔が浮かび、熱くなる頬を隠すように思考を振り払う。
「殿下、今度はどんなお話を読みましょうか」
「えっとね~」
次の本を選ぼうと立ち上がった刹那。
トントンと小気味いいリズムで扉がノックされ、陽気な声色が部屋へと囁かれた。
「殿下、はいってもよろしいですかな?」
「あ、ブルーノおじさんだ! どうぞ!」
殿下の許諾を得て、ブルーノ閣下が部屋へと入室する。
まず殿下とテセア様へと形式通りの礼を終え。
閣下は私へと視線を向けた。
「アーシア嬢。執筆の調子はどうだ? 新作ができれば、私に最優先で見せるようにな」
「はい。ブルーノ閣下、まだ書いている途中ですが……良いものができそうです」
「楽しみにしているぞ。嬢の本を読むのが、今の私と妻の生きる糧だからな!」
高らかに笑うブルーノ閣下に微笑みを返す。
期待の言葉に重圧は感じずに、むしろ嬉しく思うのは閣下が心から私の書く物語を待ってくれているからだろう。
ルーシェ様の気持ちも、今なら少しは分かる気がする。
早く、自分の物語を見てもらいたいのだ。
「さて、ディノ殿下。マナー講義に難儀していると聞いておりますが、調子はどうですかな?」
「ブルーノおじさん、なんぎ? ってなに?」
「ははは……それでは今日は、我が国の言葉について、ご教授させてください」
流れるように、ディノ殿下の興味を引いて文学を閣下が教える。
その仕草や、教え方は……学園で過ごしていた際の講師を思わせるほどに丁寧だ。
「いつもありがとうございます。ブルーノ様。お忙しい中でディノを気にかけてくださって……」
テセア様の謝辞に、閣下は「よいよい」と笑う。
ブルーノ閣下にとって、次期国王となるディノ殿下に会うという事は次代の王家に大きく貢献している。
このスフィクス王国にて今や最大の貴族家となったブルーノ閣下が、殿下と親身である事実のみで、殿下が即位した際の威厳は十分に引き立つのだから。
「殿下、この文字は……こう書くのですぞ」
「うん、みてて。ディノ、この字ももう書けるよ」
「おぉ! 流石ですな。殿下!」
殿下があらかた勉強を終え、疲れてしまってお昼寝の時間となった。
その際、残された大人組は別室にて軽い談笑の時間を過ごす。
いつも通りに世間話だけの予定であったが、今日はテセア様が大きな話題を私へと投げかけた。
「ところでアーシアさん。貴方は新しい結婚相手は考えてはいないの? 例えば……ヴォルフとか」
「っ!!」
見透かされたような問いに、言葉に詰まると、テセア様がいたずらっぽく微笑んだ。
その笑みに、肯定を込めた頷きを返した。
「やっぱり、分かるのですね」
「もちろんよ、貴方はともかく。ヴォルフなんて分かりやすいもの」
「ふ、ふふ。ですよね。ヴォルフ様は隠しているつもりですけど」
ヴォルフ様の秘めている想いは手に取るように分かる。
それでもなお、私からは言及しないのは……理由があった。
「テセア様。私は恋情に小賢しい女です。前回の失敗がちらつき、ヴォルフ様の想いを気付きながら、受け身の姿勢でいるのだから」
「……」
「かつて私が追っていたレジェスは、一度も振り向いてくれず、私が見せたのはいつも冷たい瞳と、遠ざかる背中だけでした」
吐露した気持ちが、情けなくも続いてしまう。
同情を求めた訳ではないが、そんな雰囲気にしてしまっているかもしれない。
「だからヴォルフ様を追いかけて……背中を見せられたならと、少し……怖いのもあります」
ヴォルフ様は、きっと私に背中を見せたり。
遠ざけたり、嘲笑ったり、罵倒などしないと分かってる。
しかし私は小賢しくも、警戒心だけは人並み以上に育ってしまっていた。
加えて決して口にはしないが、方法が無かったとはいえ……私は幾人かの死を招いた。
仕方ない事……と簡単に切り捨てる事も、まだ出来ぬ気持ちもある。
「なので私からは、彼に迫るような事は……しておりません」
「そうなの……」
「それに曖昧な状態である事も悪くありません……私は政略で婚約をする必要がないので、気楽な身ですから」
これも本音だ。
想いを告げる前の状態とは……形容できぬ居心地の良さがある。
吐露した言葉に、ブルーノ閣下は腕を組んで呟いた。
「父は結婚など許さんぞ。アーシア嬢」
「え?」
確かにお父様のように慕っているが、いざ言われると反応に戸惑う。
だが、閣下のニヤリと笑う頬に、冗談だと理解する。
「冗談だ」
「思わず、本気だと思ってしまいました」
「ふっはは。だがアーシア嬢……ヴォルフは遅々として動けぬ男かもしれんぞ?」
「閣下に分かるのですか?」
「シュイクもそうだが、えてして剣に愚直に生きる男共は奥手だ。前王家騎士団長も剣を置くまで独身だったからな」
「そうなのですね……」
今のヴォルフ様は、確か二十八の歳だ。
一般的に騎士が引退するのは三十五の歳……なるほど、確かに遠そうだ。
彼自身も男爵家の次男の生まれで、婚儀に焦る必要がないからなおさら。
「それでも、今は気楽に過ごします。それがお互いにとってより良いはずですから」
互いの気持ちに気付いていながら、想いを告げない日々。
それを続けるのに、若干の迷いはあるが……現状維持でいいのだと結論を説く。
ブルーノ閣下もテセア様もそれ以上は言及せず、笑って頷いてくれた。
そんな折、隣の部屋からディノ殿下の「おかーさま」と呼ぶ声が聞こえる。
どうやらお昼寝から起きたようだ。
「では、殿下の勉強の続きといきましょうか」
「そうだな。アーシア嬢は殿下にやる気を出してもらうため、終わった際は絵本でも読んであげてくれ」
「はい!」
閣下と共に、殿下の未来のためにとまい進する。
こんな日々も悪くない。
「……先の話の続きだがな、アーシア嬢」
「ブルーノ閣下?」
殿下の部屋へ戻る途中、ブルーノ閣下が私だけに聞こえるように呟く。
その背中から、冗談が混じらぬ声色で……
「私はまだ、嬢を娘にする野望は諦めておらぬぞ」
「それは……どういう意味で……」
「嬢の存在は、長き王家の歴史でも異端。子爵家から離れて爵位もなき身でありながら、今や社交界での注目の花。さらに国の危機を救った女性を……周囲が黙ったままでは居るはずない」
その言葉の意味を理解し、答えに詰まる。
私の反応に、ブルーノ閣下がいたずらっぽく笑った。
「アーシア嬢を妻にしたいと思う者は好敵手揃いだ。そして、どこぞの馬の骨にやるなら、私が娘にするため手を尽くす。ヴォルフを悠長に待ってられんからな」
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