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億万長者への道01《総売上:0円》
黒咲芙蓉という男 Ⅰ
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--歌舞伎町・中華料理屋。
「ほーん。んで、大層な志でホスト目指してここに来たってわけね。一文無しで」
「お前バカだろ?」と黒咲はため息をつく。俺は口いっぱいに食べ物を頬張りながら、右へと首を傾けた。
確かにちょっと考え無しだったかもしれないけど。実際こうして辿り着けた訳だし、黒咲サンがホストにしてくれるらしいし。馬鹿じゃないよ、うん。
自己完結して「このショーロンポー、おいしい!」と目の前の男を見やれば、彼は再び大きなため息をつくのだ。
「あー、まあいい。なんとなくお前のことは掴めた」
「ええー、もう?すごいねえ」
「伊達にこの曲者揃いの街で何年も過ごしてないんでね。多少話せば、大体の傾向は分かる」
あれから「話がてら飯でも食いに行くか」と黒咲に連れられてやってきたのは、歌舞伎町で有名……らしい高級中華料理屋。田舎出身なもんで、俺は知らないけど。
ちなみに足を踏み入れた瞬間、厨房から店長らしき人が飛んできて、問答無用で個室に突っ込まれた。驚きのVIP待遇である。この人、ほんと何者?
「じゃあさあ、俺のことどんな奴だと思ったの?黒咲サンは」
「馬鹿」
「へ?」
「ただの馬鹿」
「ええ~!?嘘だ嘘!ほんとにそれだけえ!?」
身を乗り出し抗議した俺に、黒咲は声を上げて笑った。無駄にいい笑顔なのがちょっと腹立つ。
「っくく、まー冗談半分本気半分ってとこだ。少なくとも歌舞伎町にはいねータイプだし、うちの店に放り込んだら面白そうではある」
そうして黒咲は俺の顔を一瞥すると、やけに真剣な顔で言った。
「あと、なにより顔が良い。お前がどーしようもねえ馬鹿でも、その顔のクオリティで最終なんとかなる。……今どき整形すりゃそれなりの顔には持ってけるが、お前の場合、整形では到達できない領域だからな。希少度が高い」
「へええ」
「ド田舎にいたんじゃイマイチ実感が湧かないかもしれんが、自分の顔の良さは自覚しといた方が得だぞ」
「あ、自覚してマス。おれかっこいい!」
「……あーはいはい、そーでっか」
「かっこいいってよかジャンル的には綺麗とか可愛いじゃね?」と呟いた黒咲は無視して、俺は残りの中華料理をひたすら胃の中へ掻き込んだ。俺、やっぱかっこいいんだ!
「ねえ。てゆーかさあ、黒咲サンって何者?」
食事もひと段落ついたところで、ふと疑問を投げ掛ける。さっきうちの店がどうとか言ってたけど、ご飯に夢中で詳しく聞きそびれていたのだ。
「んあ、そういえばお前に自己紹介してなかったな」
黒咲はそう言って、胸元のポケットへ手をやる。慣れた様子で四角い紙……名刺を取り出すと、俺の目の前へひょいと差し出した。
「えと、『ONLYgroup 会長』……?」
黒いシックな名刺の顔写真の上。金字で書かれた文言を読み上げる。ONLYgroupってなに?そもそも会長って?
俺の疑問を察したのか、黒咲はこちらに向き直り頷いた。
「そ。ここら辺で一番でかいホストグループの会長……まあ分かりやすく言うと、グループで一番偉いヒトってことだな」
「よろしくな、世羅杏樹くん?」と口端をあげる黒咲サン。
受け取った名刺をまじまじと見つめ、目の前の男と何度も見比べる。間違いなく同じだ。黒咲芙蓉……黒咲、会長。
「っええーーー!?!」
--ってことはおれ、歌舞伎町についてそうそう、トップのお眼鏡に叶ったってこと!?
驚きと嬉しさに塗れた俺の叫び声が、やけに高そうな中華料理屋の個室に木霊した。
「ほーん。んで、大層な志でホスト目指してここに来たってわけね。一文無しで」
「お前バカだろ?」と黒咲はため息をつく。俺は口いっぱいに食べ物を頬張りながら、右へと首を傾けた。
確かにちょっと考え無しだったかもしれないけど。実際こうして辿り着けた訳だし、黒咲サンがホストにしてくれるらしいし。馬鹿じゃないよ、うん。
自己完結して「このショーロンポー、おいしい!」と目の前の男を見やれば、彼は再び大きなため息をつくのだ。
「あー、まあいい。なんとなくお前のことは掴めた」
「ええー、もう?すごいねえ」
「伊達にこの曲者揃いの街で何年も過ごしてないんでね。多少話せば、大体の傾向は分かる」
あれから「話がてら飯でも食いに行くか」と黒咲に連れられてやってきたのは、歌舞伎町で有名……らしい高級中華料理屋。田舎出身なもんで、俺は知らないけど。
ちなみに足を踏み入れた瞬間、厨房から店長らしき人が飛んできて、問答無用で個室に突っ込まれた。驚きのVIP待遇である。この人、ほんと何者?
「じゃあさあ、俺のことどんな奴だと思ったの?黒咲サンは」
「馬鹿」
「へ?」
「ただの馬鹿」
「ええ~!?嘘だ嘘!ほんとにそれだけえ!?」
身を乗り出し抗議した俺に、黒咲は声を上げて笑った。無駄にいい笑顔なのがちょっと腹立つ。
「っくく、まー冗談半分本気半分ってとこだ。少なくとも歌舞伎町にはいねータイプだし、うちの店に放り込んだら面白そうではある」
そうして黒咲は俺の顔を一瞥すると、やけに真剣な顔で言った。
「あと、なにより顔が良い。お前がどーしようもねえ馬鹿でも、その顔のクオリティで最終なんとかなる。……今どき整形すりゃそれなりの顔には持ってけるが、お前の場合、整形では到達できない領域だからな。希少度が高い」
「へええ」
「ド田舎にいたんじゃイマイチ実感が湧かないかもしれんが、自分の顔の良さは自覚しといた方が得だぞ」
「あ、自覚してマス。おれかっこいい!」
「……あーはいはい、そーでっか」
「かっこいいってよかジャンル的には綺麗とか可愛いじゃね?」と呟いた黒咲は無視して、俺は残りの中華料理をひたすら胃の中へ掻き込んだ。俺、やっぱかっこいいんだ!
「ねえ。てゆーかさあ、黒咲サンって何者?」
食事もひと段落ついたところで、ふと疑問を投げ掛ける。さっきうちの店がどうとか言ってたけど、ご飯に夢中で詳しく聞きそびれていたのだ。
「んあ、そういえばお前に自己紹介してなかったな」
黒咲はそう言って、胸元のポケットへ手をやる。慣れた様子で四角い紙……名刺を取り出すと、俺の目の前へひょいと差し出した。
「えと、『ONLYgroup 会長』……?」
黒いシックな名刺の顔写真の上。金字で書かれた文言を読み上げる。ONLYgroupってなに?そもそも会長って?
俺の疑問を察したのか、黒咲はこちらに向き直り頷いた。
「そ。ここら辺で一番でかいホストグループの会長……まあ分かりやすく言うと、グループで一番偉いヒトってことだな」
「よろしくな、世羅杏樹くん?」と口端をあげる黒咲サン。
受け取った名刺をまじまじと見つめ、目の前の男と何度も見比べる。間違いなく同じだ。黒咲芙蓉……黒咲、会長。
「っええーーー!?!」
--ってことはおれ、歌舞伎町についてそうそう、トップのお眼鏡に叶ったってこと!?
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