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億万長者への道01《総売上:0円》

黒咲芙蓉という男 Ⅱ

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「ええ、黒咲サンて、と、トップなの!?」
「ああ」
「ここら辺で……歌舞伎町で、一番でっかいホストグループの!?」
「そゆこと」

 「俺が立ち上げたんでな。そりゃ俺が一番偉いわ」と黒咲は肩を竦める。

「もっとさあ、早く言ってよ!そしたらもっと………ううん、なんか、ちゃんとしたのに!」
「いや、もう手遅れだろ。てかお前猫かぶりなんて出来ないだろが」
「そ、それはそうだけどお……」

 それなら確かに、顔が効くと言っていた理由やここでのVIP待遇も頷ける。この街で一番経済が回るのは間違いなく夜の商売。その中の筆頭であるホストグループトップとなれば、そりゃあ気軽に逆らえまい。

「ってことで、お前は俺のグループ店舗で働いてもらうから」
「……ほんとにいいの?」
「ああ。ってかまあ、うちとしては大歓迎だ。なにせ『歌舞伎町で一番』のブランド保つのも大変でな……相当厳選してっから、人手が足りねえんだ」
「厳選してるのに、こんな適当に?てか、なんで俺?」
「さっきも言っただろ。顔。……あと、面白そうだから」

 なんでもないようにそう言ってのける黒咲に、俺は滅多にしない苦笑いを返した。 
 怖そうに見えて緩くて、真面目そうに見えて適当で。ますますこの人のことが読めない。……まあ、悪い人ではなさそうだが。

「ちなみにお前に行ってもらおうと思ってる店舗は、俺のグループ内でも一番の店な」
「……マジですか?」
「大マジ。ある程度統一感欲しいし、本来その店舗……『Noise』に関しては身長とか経験とか色々基準設けてるんだけどな」

 「ま、お前の場合特例」と黒咲は眉をあげた。

「だ、大丈夫かなあ」
「トップ店舗なだけあってキャストも血の気の多い奴らが多いけど。かわい子ちゃんには優しくしてくれるだろ、多分」
「うん……うん?」
「あんま同じ系統揃えすぎても、反発し合うから困りもんだよなあ。……その点お前は、なんか緩いし、今までにいないタイプだし。可愛い後輩気質的なもんも感じるからな」

 ″NO.1ホストになって、億万長者!″を目指して上京してきたものの。いざチャンスに直面すると、人はこうも不安になるらしい。今になって、ホスト漫画であった陰湿ないじめやら客とのあれやこれを思い出してしまったのだ。……俺、面倒事は嫌い。あと、痛いのも。
 ソワソワと落ち着かない様子の俺を見かねたらしい。黒咲はため息をつくと、その筋張った手を俺の頭の上にずし、と乗せた。

「ひぇ、な、なに?」
「おいこら。ホストになりてーってあんだけ騒いでたのはお前だろ?なに怖気付いてんだ」
「ううう」
「どうせ馬鹿なんだから、ごちゃごちゃ考えても無駄だろ。なんかあったら俺がどうにかしてやるし……まあ、一先ずやってみ」

 「な?」と諭すように語りかけてくる黒咲。

「……やって、みる」

 真剣な眼差しでこちらを見つめる金目に、俺は思わず頷いてしまったのだった。
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