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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活〜怒涛の進学編〜
春休み
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「ハァ…気が短いのは嫌われるぜ?!せっかく助けてやったってのに…わかってる、わかってるって!ったく…話には順序ってもんがあるだろ?こう見えて俺はお前を気に入ってんだぜ?でなきゃ危ない橋渡ってまであの結界を超えて来たりしない。」
「結界?」
「そ!あの魔法塔には結界が張ってあって、妖精や精霊がごまんと閉じ込められてんだ。俺はその中でも特に古株さ!隙をついて抜けて来るくらい朝飯前ってなワケ。ただし、鏡からは出られない。契約者が居ないと。」
「なるほど、それで俺にその契約者とやらになれって話か…」
正体はまだ不明だが、このうるさいお喋り野郎は魔法学棟に何らかの理由で封印され、鏡に縛られた妖魔の一種らしい。
どうやらデイビッドは出入りしている間に目を付けられ、体の良い契約者候補に選ばれてしまったようだ。
勝手にペラペラよく喋る自分の姿をイライラしながら見ていたが、これ以上話を聞く必要はないと踏んだデイビッドは、立ち上がって鏡に近づいた。
「そうそう!わかってくれたぁ?!俺がいればどんなピンチにも駆けつけるし、何が来ようと護ってやれるぜ?!今日のはホンの小手調べ。ちょっとしたサービスだよ。役に立ったろう?どうだい?毎度毎度あっちゃこっちゃからちょっかい出されて、そろそろ嫌気も差してんじゃねぇか?なぁ、俺達手を組んでみ…待て待て!待って!ねぇ話聞いてた?!ここまで話させといてそれはないんじゃない?!もう少し話し合お?ちょっ…お願い!鏡ひっくり返さないで!あーーーー!!!」
姿見を裏返すと、部屋にはまた静寂が戻った。
最後まで未練がましく騒いでいたが、人外との契約など何があろうと願い下げだ。
元より、善悪から常識、価値観、ものの捉え方、どれ一つ取ってもズレのある存在に、自分の運命は預けられない。
代償の話を聞いていない内は、まだ仮の契約にすらならないはずだ。
面倒だが、このまま諦めてくれるのを待つしかない。
「戻りましたよ。あれ?なんで鏡裏返ってんです?」
エリックが消毒液のボトルを抱えて帰ると、部屋の姿見が裏返しになり、壁掛けのエチケットミラーもひっくり返っていた。
「あーちょっと…うるさかったんで…?」
「鏡が?!デイビッド様、大丈夫ですか?疲れてんじゃないですか?」
昼間の襲撃や怪我の事もあり、やたら心配されたデイビッドは、早くに横にさせられてしまい、仕方なく目を閉じた。
春の祭りも終わると、日毎に暖かさが増して緑が一気に芽吹き、野も山も賑やかだ。
人も生き物も浮足立ち、春の日差しに全てのものが喜んでいる。
そして麗らかなある春の日、ラムダ国王立学園の3年生は、ついに卒業を迎えた。
年末のノエルでも使用した豪勢なホールで、真に大人の仲間入りを果たす晴れの舞台。
そしてフォーマルなドレスに身を包んだ卒業生達が式を終え、学園に最後の別れを言いに集まっている。
「窮屈!」
「退屈…」
「あ~疲れたぁ…」
「と言うわけで抜けてきちゃったよ、僕達。」
そんな中、ベルダ研究室の卒業しない組4人は早くから式場を抜け出し、デイビッドの所にたむろしていた。
「せめて着替えてから来いよ!狭いんだよ!部屋が!布で!!」
「少しくらいいいじゃない。どうせ親同伴で身動き取れないんだから、一休みくらいさせなさいよ。」
豪華なドレスが部屋いっぱいに広がり、ソファに集まると足の踏み場がなくなってしまう。
そんな4人が囲んでいるテーブルには、大きなケーキが並んでいて、ヴィオラがニコニコお茶の支度をしている。
「シェル先輩素敵です!皆様も、今日は本当におめでとうございます!」
「ありがとうヴィオラ、貴女も2年生おめでとう!」
「後輩に言われるとなんだか照れちゃうね!」
「まさかこんなにケーキがあるなんて!お祝いしてくれるの?すっごい嬉しい!」
「こっちがイチゴで、真ん中がムースを挟んだ奴で、これがチョコレート!シフォンケーキにプチシューにプリンもありますよ!」
それぞれ好きなケーキを手に、紅茶のカップで乾杯すると、今日という日がより一層特別に感じられる。
「3年間…あっという間だったわ。」
「色々あったよね。ほとんど忘れちゃったけど。」
「最後の3ヶ月が濃すぎて他の記憶が掠れたよ…」
「あと1年、最後までよろしく!」
エリックがカメラを持ち出してきて4人を写すと、デイビッドも呼ばれるが頑なにフレームには入ろうとしなかった。
楽しくお茶会をしていたが、やがてエドワードとイヴェットは家族の元へ戻らねばならなくなり、エリザベスも呼び出しの魔道具が鳴って、残るシェルリアーナに手を振ると渋々行ってしまった。
「…お前は帰らねぇのかよ?」
「あら、ドレスも自前で用意したから、今日こそ帰らずにいられるわ。ケーキおかわり!」
「院生は寮を出るんじゃねぇのか?」
「王族護衛の特例よ!あと1年、ヴィオラのお隣でいられるの!」
「嬉しいです!私、シェル先輩とずっと一緒がいい!」
「もうっ!ヴィオラってば可愛いこと言うんだから!!」
ヴィオラは全教科高得点の優秀な生徒として、2年生から特待生のクラスに入る事になった。
学科は関係無く、選抜された生徒を集めた特別クラスで、選ばれるだけで名誉とされる。
実力主義のこのクラスならば後ろ指を差される心配も無く、ソフィアとチェルシーとアニスも一緒で心強い。
残念ながらローラとミランダは選考に落ちてしまったが、2人は別にやることもあるので気にしないと言っていた。
卒業生を送ると学園もいよいよ春休み。
それぞれ進学後の用意もあるため、一月と長めの休みに入る。
残る者はほとんどいないため、学園内は夏休みより閑散としていて、とても静かだ。
ヴィオラも一度家に帰り、3日程ローベル子爵と過ごす事になっている。
子爵とは年末のデビュタントに会って以来、手紙も数回だったので、ヴィオラの顔を見るなりまた大泣きだった。
「デイビッド様、無視して下さい…」
「いや、そんな訳にもいかねぇよ!?」
夕刻過ぎに王都内の子爵邸までヴィオラを送って行ったデイビッドが、2人で馬車から降りるなり子爵がその場で泣き崩れてしまい、娘に冷めた目で見られているのを宥めてから帰るというハプニングも起きて大変だった。
そんな事もあり、デイビッドの周りはいつもより更に静かだ。
時間もあるので久々に庭先の畑の世話をしながら、新しく作る鳥小屋の場所を片付けていると、裏の大門から馬車と自転車が1台入って来た。
「デイビッド様ぁ!エルムの大使館からお呼びがありましたので急ぎお越し下さぁい!」
見るとすっかり商会に馴染んだテッドが、にこやかに手を降っている。
「大使館?!なんの用だ?わかった、直ぐ行く。」
手を振り返すと、テッドはまた自転車に乗って郊外の街へ戻って行った。
「今のテッド君ですか?」
「そう、休み中は商会でバイトしてんだよ。」
「エルムといえば、最近セルジオ君を見ませんね。」
「姉貴に押し付けられた仕事片すんで、毎日大使館に帰ってるらしい。もう包帯も取れたろうしな。」
デイビッドは泥だらけの服を着替え、エリックを連れて、テッドが呼んで来た馬車でエルムの大使館を目指した。
馬車が着くなり慌てた従業員達が現れ、2人を中へ案内してくれる。
しかし、何やらいつもと様子が違う。
ぎこちない様な何かを気にしている様な、気持ちの悪い対応に疑問が残り、デイビッドが訝しんでいると奥から大きな荷物が運ばれて来た。
「これは………」
「ええと…あの…エルムの商家より、大使館を通してデイビッド様にと贈られて参りました物でして…その…」
「あぁ…事情はわかった…」
目の前に運ばれてきたのは、金襴緞子と豪奢な紗織りの羽織りに包まれ、金銀細工に花飾りで彩られた見事な輿に乗せられた丸々太った真っ黒な豚の亡骸だった。
「結界?」
「そ!あの魔法塔には結界が張ってあって、妖精や精霊がごまんと閉じ込められてんだ。俺はその中でも特に古株さ!隙をついて抜けて来るくらい朝飯前ってなワケ。ただし、鏡からは出られない。契約者が居ないと。」
「なるほど、それで俺にその契約者とやらになれって話か…」
正体はまだ不明だが、このうるさいお喋り野郎は魔法学棟に何らかの理由で封印され、鏡に縛られた妖魔の一種らしい。
どうやらデイビッドは出入りしている間に目を付けられ、体の良い契約者候補に選ばれてしまったようだ。
勝手にペラペラよく喋る自分の姿をイライラしながら見ていたが、これ以上話を聞く必要はないと踏んだデイビッドは、立ち上がって鏡に近づいた。
「そうそう!わかってくれたぁ?!俺がいればどんなピンチにも駆けつけるし、何が来ようと護ってやれるぜ?!今日のはホンの小手調べ。ちょっとしたサービスだよ。役に立ったろう?どうだい?毎度毎度あっちゃこっちゃからちょっかい出されて、そろそろ嫌気も差してんじゃねぇか?なぁ、俺達手を組んでみ…待て待て!待って!ねぇ話聞いてた?!ここまで話させといてそれはないんじゃない?!もう少し話し合お?ちょっ…お願い!鏡ひっくり返さないで!あーーーー!!!」
姿見を裏返すと、部屋にはまた静寂が戻った。
最後まで未練がましく騒いでいたが、人外との契約など何があろうと願い下げだ。
元より、善悪から常識、価値観、ものの捉え方、どれ一つ取ってもズレのある存在に、自分の運命は預けられない。
代償の話を聞いていない内は、まだ仮の契約にすらならないはずだ。
面倒だが、このまま諦めてくれるのを待つしかない。
「戻りましたよ。あれ?なんで鏡裏返ってんです?」
エリックが消毒液のボトルを抱えて帰ると、部屋の姿見が裏返しになり、壁掛けのエチケットミラーもひっくり返っていた。
「あーちょっと…うるさかったんで…?」
「鏡が?!デイビッド様、大丈夫ですか?疲れてんじゃないですか?」
昼間の襲撃や怪我の事もあり、やたら心配されたデイビッドは、早くに横にさせられてしまい、仕方なく目を閉じた。
春の祭りも終わると、日毎に暖かさが増して緑が一気に芽吹き、野も山も賑やかだ。
人も生き物も浮足立ち、春の日差しに全てのものが喜んでいる。
そして麗らかなある春の日、ラムダ国王立学園の3年生は、ついに卒業を迎えた。
年末のノエルでも使用した豪勢なホールで、真に大人の仲間入りを果たす晴れの舞台。
そしてフォーマルなドレスに身を包んだ卒業生達が式を終え、学園に最後の別れを言いに集まっている。
「窮屈!」
「退屈…」
「あ~疲れたぁ…」
「と言うわけで抜けてきちゃったよ、僕達。」
そんな中、ベルダ研究室の卒業しない組4人は早くから式場を抜け出し、デイビッドの所にたむろしていた。
「せめて着替えてから来いよ!狭いんだよ!部屋が!布で!!」
「少しくらいいいじゃない。どうせ親同伴で身動き取れないんだから、一休みくらいさせなさいよ。」
豪華なドレスが部屋いっぱいに広がり、ソファに集まると足の踏み場がなくなってしまう。
そんな4人が囲んでいるテーブルには、大きなケーキが並んでいて、ヴィオラがニコニコお茶の支度をしている。
「シェル先輩素敵です!皆様も、今日は本当におめでとうございます!」
「ありがとうヴィオラ、貴女も2年生おめでとう!」
「後輩に言われるとなんだか照れちゃうね!」
「まさかこんなにケーキがあるなんて!お祝いしてくれるの?すっごい嬉しい!」
「こっちがイチゴで、真ん中がムースを挟んだ奴で、これがチョコレート!シフォンケーキにプチシューにプリンもありますよ!」
それぞれ好きなケーキを手に、紅茶のカップで乾杯すると、今日という日がより一層特別に感じられる。
「3年間…あっという間だったわ。」
「色々あったよね。ほとんど忘れちゃったけど。」
「最後の3ヶ月が濃すぎて他の記憶が掠れたよ…」
「あと1年、最後までよろしく!」
エリックがカメラを持ち出してきて4人を写すと、デイビッドも呼ばれるが頑なにフレームには入ろうとしなかった。
楽しくお茶会をしていたが、やがてエドワードとイヴェットは家族の元へ戻らねばならなくなり、エリザベスも呼び出しの魔道具が鳴って、残るシェルリアーナに手を振ると渋々行ってしまった。
「…お前は帰らねぇのかよ?」
「あら、ドレスも自前で用意したから、今日こそ帰らずにいられるわ。ケーキおかわり!」
「院生は寮を出るんじゃねぇのか?」
「王族護衛の特例よ!あと1年、ヴィオラのお隣でいられるの!」
「嬉しいです!私、シェル先輩とずっと一緒がいい!」
「もうっ!ヴィオラってば可愛いこと言うんだから!!」
ヴィオラは全教科高得点の優秀な生徒として、2年生から特待生のクラスに入る事になった。
学科は関係無く、選抜された生徒を集めた特別クラスで、選ばれるだけで名誉とされる。
実力主義のこのクラスならば後ろ指を差される心配も無く、ソフィアとチェルシーとアニスも一緒で心強い。
残念ながらローラとミランダは選考に落ちてしまったが、2人は別にやることもあるので気にしないと言っていた。
卒業生を送ると学園もいよいよ春休み。
それぞれ進学後の用意もあるため、一月と長めの休みに入る。
残る者はほとんどいないため、学園内は夏休みより閑散としていて、とても静かだ。
ヴィオラも一度家に帰り、3日程ローベル子爵と過ごす事になっている。
子爵とは年末のデビュタントに会って以来、手紙も数回だったので、ヴィオラの顔を見るなりまた大泣きだった。
「デイビッド様、無視して下さい…」
「いや、そんな訳にもいかねぇよ!?」
夕刻過ぎに王都内の子爵邸までヴィオラを送って行ったデイビッドが、2人で馬車から降りるなり子爵がその場で泣き崩れてしまい、娘に冷めた目で見られているのを宥めてから帰るというハプニングも起きて大変だった。
そんな事もあり、デイビッドの周りはいつもより更に静かだ。
時間もあるので久々に庭先の畑の世話をしながら、新しく作る鳥小屋の場所を片付けていると、裏の大門から馬車と自転車が1台入って来た。
「デイビッド様ぁ!エルムの大使館からお呼びがありましたので急ぎお越し下さぁい!」
見るとすっかり商会に馴染んだテッドが、にこやかに手を降っている。
「大使館?!なんの用だ?わかった、直ぐ行く。」
手を振り返すと、テッドはまた自転車に乗って郊外の街へ戻って行った。
「今のテッド君ですか?」
「そう、休み中は商会でバイトしてんだよ。」
「エルムといえば、最近セルジオ君を見ませんね。」
「姉貴に押し付けられた仕事片すんで、毎日大使館に帰ってるらしい。もう包帯も取れたろうしな。」
デイビッドは泥だらけの服を着替え、エリックを連れて、テッドが呼んで来た馬車でエルムの大使館を目指した。
馬車が着くなり慌てた従業員達が現れ、2人を中へ案内してくれる。
しかし、何やらいつもと様子が違う。
ぎこちない様な何かを気にしている様な、気持ちの悪い対応に疑問が残り、デイビッドが訝しんでいると奥から大きな荷物が運ばれて来た。
「これは………」
「ええと…あの…エルムの商家より、大使館を通してデイビッド様にと贈られて参りました物でして…その…」
「あぁ…事情はわかった…」
目の前に運ばれてきたのは、金襴緞子と豪奢な紗織りの羽織りに包まれ、金銀細工に花飾りで彩られた見事な輿に乗せられた丸々太った真っ黒な豚の亡骸だった。
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