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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活〜怒涛の進学編〜
結界の装置
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街への支援が始まり、上からの命で広場に出され、瓦礫を魔法で集め家々の復興作業に当たらされていたレオニードは、教会の上階から異様な魔力が噴き出している事に気が付いた。
(まさか、まだ教会の連中が中に残っているのか?忌々しい…街中に引きずり出して尋問でもしてくれようか?!)
その場を後にして崩れかけた教会に近づいて行くと、上のステンドグラスのある部屋の窓が大きく開き、なんと中から多重結界に閉じ込められた巨大な魔石の装置が浮き上がって来た。
(何だあれは!?)
窓から覗く数名の顔触れには見覚えがあり、その中にシェルリアーナの姿を見つけると、レオニードは喜びと驚きと心配とちらっと見えたエリックへの怒りで思わず叫んでしまった。
「シェルリアーナーーッ?!」
「話しかけんなっ!!今集中してんだよ!だぁってろアホが!!」
「え゙ぇ゙ぁーーーっっ?!!」
愛しの義妹に口汚く罵られ、膝から崩れ落ちたレオニードの上をふよふよと大きな魔道具が飛んでいく。
下にいるヴィオラとエリザベスが誘導するが、加減が難しくよろよろと軌道が不安定で覚束ない。
「木にぶつかっちゃう!」
「あ!もうちょっと右!違う反対の右!」
「それは左では?」
「アタシから見て右!あ、じゃ左か!」
「これは…キツイね…すごい抵抗力…」
「盗まれたりしないよう、色々施されてんでしょうね…」
「絶対に落とさないで!!あとあんまり斜めにしないで!エドの方もっと出力上げて!!」
「ごめん…もうあんまり持ちそうにない…」
「わ…私もですぅ…」
「頑張って!!とにかく下につけば後は何とかなるから!!」
そこへデイビッドが荷車を引いてやって来た。
「これでいいか?!」
「うん!振動は魔法で軽減するから、ひとまずこれに乗せるよ!!」
「エリック様!もっとそっち引っ張って!!」
「ジェットの結晶…持ってくれば良かった…」
繊細かつ魔法抵抗の強い巨大魔石を、まずは全員の結界で包み、それを浮かせて更に細い糸の様に紡いだ魔力で上と下から支えながら、安全な場所まで動かしていく。
しかしそれにもかなりの魔力と、気が遠くなるような集中力を要し、全員が必死に魔力を練っていたが、ついにバランスを崩して装置がぐらりと傾きかけた。
全員が息を呑んだその時、横から別の力が加わり、装置を支えながら荷台の上に引き降ろした。
「え?!なに?成功?!!」
「あ、前髪の人!ありがとうございます!!」
「お、前髪!お前もいたのか!」
「助かったぁ!前髪先輩ありがとー!」
「レオニードだアホ共め!私はシェルのために力を貸しただけだ!!貴様等に礼を言われる筋合いは無い!!」
悪態を吐くレオニード相手にも、ヴィオラは進み出て頭を下げた。
「でも、とても助かりました!本当に感謝します!」
「ほ…ほう?少しは礼儀も持ち合わせているようだな…」
レオニードが前髪をかき上げる横で、ヴィオラは今度はデイビッドに抱きついた。
「うまくいって良かったですね!デイビッド様!」
「流石にあれ壊したら不味いからな。」
「一瞬本気でヒヤッとしました!あの人が居てくれて良かったです!」
「魔力の腕は確かなんだろうが…ヴィオラは一発くらい殴ってもいいんだぞ?」
「もういいです。興味ないので!」
「ぎぃぃぃーっっ!!」
道の端で奇声を上げるレオニードの横を更にシェルリアーナ達が通り過ぎて行く。
「あ!やっぱり前髪君だ!」
「ちゃんと仕事してるんだね、前髪の癖にエライエライ!」
「その前髪は相変わらずなんですね。お疲れ様です先輩。」
「だからレオニードだと言ってるだろう、がっ?!」
キーキーうるさいレオニードの背中を、今度は誰かの足が蹴飛ばした。
「っ誰だ!人を気安く蹴りよって…シェ…シェル?!」
「ひとまず、助かった事にだけはお礼を言ってあげるわ。流石高位魔力持ちね…悔しいけど、今の私じゃ敵わないわ…」
「シェル……いや!誰の上着だそれは?!」
「はい!僕のですぅ!」
「背中が破れたから借りたのよ。」
「は?背中?破れ…?!シェル!!私のを貸すから!そんなヤツの上着なんか着てないで…」
「イヤよ。ストーカーの着てた服なんて、気持ち悪い!」
一蹴されたレオニードは、その場で固まってしまい、動かなくなった。
「変わった人ですね。」
「ああ、頭ん中も変わってんだ。好きにさせといてやれよ。」
「装置の固定できたよ!!これで車が揺れても大丈夫のはず!」
「こんなん持って帰ったら、アーネスト殿下ひっくり返っちゃいませんかね?」
「少なくとも、国王には一泡吹かせられるな。」
「困るだろうなぁ…宗教関係者が秘匿してた古代亡国のアーティファクトなんて持って来られても…」
キリキリと静かに動き続けるこの装置は、教会の闇から王家の闇へ静かに移し、もう表には出て来ないで欲しい物だ。
城に帰ると全員へとへとになっていた。
「疲れました…」
「あー…もう何にもしたくないぃ~!」
「さすがに堪えたね…でも、皆無事で本当に良かった…」
「そうね。ありがとエリック。上着、洗って返すわ。」
「いえいえ~、お役に立ててなによりですよ!」
人目に付かない間に城内に装置を運び込み、宮廷魔術師達に後を任せると、待ちかねたアリスティアやアザーレアが飛んで来た。
「シェル様!!ご無事で…ご無事で良かった!ありがとうございます!貴女のおかげで私も兄も無事でした…本当になんとお礼を言ったらいいのか…」
「護衛ですもの。それが仕事ですわ。」
「本当に危なかったんだよ!!それを元気になった途端また無茶して…」
「さぁすぐに中へ!まずは埃を落として着替えましょう!?」
アリスティアに引かれて進むシェルリアーナの後ろでは、ヴィオラが既につかまっていた。
「あ…あの…アザーレア様…?」
「ヴィオラ!なんと勇ましく健気で慈愛に満ちているのだ!!惚れ直してしまったぞ?!疲れただろう、今夜はゆっくり風呂にでも浸かって休むといい!」
アザーレアに横抱きにされ、顔を赤くしながら連れて行かれるヴィオラを、今回まだ体力の余っているデイビッドは何も言わず見送った。
「連れてかれちゃいましたね。」
「まぁ、いつもの事だろ。」
「あれ?デイビッド君、どこ行くの?」
「一度商会の方見てくる。何ともないだろうが、この騒ぎで何か起きてないか確認したらすぐ戻る。」
「でしたら僕も!」
「休んどけよエリック、俺は魔力を使わない分、そこまでくたびれてねぇから、大丈夫だ。」
そう言ってデイビッドは再び街に出て行った。
大通りを挟んで中心街には被害らしい被害もなく、教会の騒ぎにも気付かず、祭りを楽しむ人々が大勢いたそうだ。
しかし貴族街の入り口にはいつもの倍以上の警備が敷かれ、通行を規制し商人であろうとも易々と中へは入れない様になっていた。
教会派の貴族が多く、今回の騒動で顰蹙を買ってしまった者も大勢いるので、これは必要な措置なのだろう。
グロッグマン商会でも、店や商売自体に被害は無かったが、今後街の動きを見て必要な物資の放出も考えているそうだ。
ぐるり街中を歩いて、また城へ戻る道すがら、瓦礫を運んでいる車が倒れているのに気が付いた。
若い魔導師が集めた瓦礫を積むのに失敗したらしい。
「大丈夫か?」
いつものクセでデイビッドが声を掛け、瓦礫の片付けに手を貸そうとした次の瞬間、よろよろ立ち上がったローブの魔導師が、懐から素早く剣を抜いた。
「あ゙っ!!?」
「貴様が…貴様さえいなければ神は我等を見捨てなかったのに!!」
心臓を狙われたが、咄嗟に躱したため肩口にナイフが突き刺さり、ギリギリと肉を裂いていく。
刃を引き抜かれそうになり、相手の腕ごと押さえたが、腹を蹴られて倒れた身体にはナイフだけが残された。
「くたばれこの悪魔!!」
留めとばかりに魔力の剣を向けられたが、ベストに施された防御が効いてこちらは弾いてくれた。
「チッ…だが、まぁいいだろう。精々苦しんで死ぬがいい!!」
そう言い捨てて走り去る背中が、ぼやけて良く見えない。
(これは…毒か…)
ナイフには深い溝が掘られ、何かがこびり付いている。
傷が異様に痛み、手足が痺れ、喉からは血も込み上げて来た。
デイビッドは首をもたげ、掠れた視界に空を映した。
(まさか、まだ教会の連中が中に残っているのか?忌々しい…街中に引きずり出して尋問でもしてくれようか?!)
その場を後にして崩れかけた教会に近づいて行くと、上のステンドグラスのある部屋の窓が大きく開き、なんと中から多重結界に閉じ込められた巨大な魔石の装置が浮き上がって来た。
(何だあれは!?)
窓から覗く数名の顔触れには見覚えがあり、その中にシェルリアーナの姿を見つけると、レオニードは喜びと驚きと心配とちらっと見えたエリックへの怒りで思わず叫んでしまった。
「シェルリアーナーーッ?!」
「話しかけんなっ!!今集中してんだよ!だぁってろアホが!!」
「え゙ぇ゙ぁーーーっっ?!!」
愛しの義妹に口汚く罵られ、膝から崩れ落ちたレオニードの上をふよふよと大きな魔道具が飛んでいく。
下にいるヴィオラとエリザベスが誘導するが、加減が難しくよろよろと軌道が不安定で覚束ない。
「木にぶつかっちゃう!」
「あ!もうちょっと右!違う反対の右!」
「それは左では?」
「アタシから見て右!あ、じゃ左か!」
「これは…キツイね…すごい抵抗力…」
「盗まれたりしないよう、色々施されてんでしょうね…」
「絶対に落とさないで!!あとあんまり斜めにしないで!エドの方もっと出力上げて!!」
「ごめん…もうあんまり持ちそうにない…」
「わ…私もですぅ…」
「頑張って!!とにかく下につけば後は何とかなるから!!」
そこへデイビッドが荷車を引いてやって来た。
「これでいいか?!」
「うん!振動は魔法で軽減するから、ひとまずこれに乗せるよ!!」
「エリック様!もっとそっち引っ張って!!」
「ジェットの結晶…持ってくれば良かった…」
繊細かつ魔法抵抗の強い巨大魔石を、まずは全員の結界で包み、それを浮かせて更に細い糸の様に紡いだ魔力で上と下から支えながら、安全な場所まで動かしていく。
しかしそれにもかなりの魔力と、気が遠くなるような集中力を要し、全員が必死に魔力を練っていたが、ついにバランスを崩して装置がぐらりと傾きかけた。
全員が息を呑んだその時、横から別の力が加わり、装置を支えながら荷台の上に引き降ろした。
「え?!なに?成功?!!」
「あ、前髪の人!ありがとうございます!!」
「お、前髪!お前もいたのか!」
「助かったぁ!前髪先輩ありがとー!」
「レオニードだアホ共め!私はシェルのために力を貸しただけだ!!貴様等に礼を言われる筋合いは無い!!」
悪態を吐くレオニード相手にも、ヴィオラは進み出て頭を下げた。
「でも、とても助かりました!本当に感謝します!」
「ほ…ほう?少しは礼儀も持ち合わせているようだな…」
レオニードが前髪をかき上げる横で、ヴィオラは今度はデイビッドに抱きついた。
「うまくいって良かったですね!デイビッド様!」
「流石にあれ壊したら不味いからな。」
「一瞬本気でヒヤッとしました!あの人が居てくれて良かったです!」
「魔力の腕は確かなんだろうが…ヴィオラは一発くらい殴ってもいいんだぞ?」
「もういいです。興味ないので!」
「ぎぃぃぃーっっ!!」
道の端で奇声を上げるレオニードの横を更にシェルリアーナ達が通り過ぎて行く。
「あ!やっぱり前髪君だ!」
「ちゃんと仕事してるんだね、前髪の癖にエライエライ!」
「その前髪は相変わらずなんですね。お疲れ様です先輩。」
「だからレオニードだと言ってるだろう、がっ?!」
キーキーうるさいレオニードの背中を、今度は誰かの足が蹴飛ばした。
「っ誰だ!人を気安く蹴りよって…シェ…シェル?!」
「ひとまず、助かった事にだけはお礼を言ってあげるわ。流石高位魔力持ちね…悔しいけど、今の私じゃ敵わないわ…」
「シェル……いや!誰の上着だそれは?!」
「はい!僕のですぅ!」
「背中が破れたから借りたのよ。」
「は?背中?破れ…?!シェル!!私のを貸すから!そんなヤツの上着なんか着てないで…」
「イヤよ。ストーカーの着てた服なんて、気持ち悪い!」
一蹴されたレオニードは、その場で固まってしまい、動かなくなった。
「変わった人ですね。」
「ああ、頭ん中も変わってんだ。好きにさせといてやれよ。」
「装置の固定できたよ!!これで車が揺れても大丈夫のはず!」
「こんなん持って帰ったら、アーネスト殿下ひっくり返っちゃいませんかね?」
「少なくとも、国王には一泡吹かせられるな。」
「困るだろうなぁ…宗教関係者が秘匿してた古代亡国のアーティファクトなんて持って来られても…」
キリキリと静かに動き続けるこの装置は、教会の闇から王家の闇へ静かに移し、もう表には出て来ないで欲しい物だ。
城に帰ると全員へとへとになっていた。
「疲れました…」
「あー…もう何にもしたくないぃ~!」
「さすがに堪えたね…でも、皆無事で本当に良かった…」
「そうね。ありがとエリック。上着、洗って返すわ。」
「いえいえ~、お役に立ててなによりですよ!」
人目に付かない間に城内に装置を運び込み、宮廷魔術師達に後を任せると、待ちかねたアリスティアやアザーレアが飛んで来た。
「シェル様!!ご無事で…ご無事で良かった!ありがとうございます!貴女のおかげで私も兄も無事でした…本当になんとお礼を言ったらいいのか…」
「護衛ですもの。それが仕事ですわ。」
「本当に危なかったんだよ!!それを元気になった途端また無茶して…」
「さぁすぐに中へ!まずは埃を落として着替えましょう!?」
アリスティアに引かれて進むシェルリアーナの後ろでは、ヴィオラが既につかまっていた。
「あ…あの…アザーレア様…?」
「ヴィオラ!なんと勇ましく健気で慈愛に満ちているのだ!!惚れ直してしまったぞ?!疲れただろう、今夜はゆっくり風呂にでも浸かって休むといい!」
アザーレアに横抱きにされ、顔を赤くしながら連れて行かれるヴィオラを、今回まだ体力の余っているデイビッドは何も言わず見送った。
「連れてかれちゃいましたね。」
「まぁ、いつもの事だろ。」
「あれ?デイビッド君、どこ行くの?」
「一度商会の方見てくる。何ともないだろうが、この騒ぎで何か起きてないか確認したらすぐ戻る。」
「でしたら僕も!」
「休んどけよエリック、俺は魔力を使わない分、そこまでくたびれてねぇから、大丈夫だ。」
そう言ってデイビッドは再び街に出て行った。
大通りを挟んで中心街には被害らしい被害もなく、教会の騒ぎにも気付かず、祭りを楽しむ人々が大勢いたそうだ。
しかし貴族街の入り口にはいつもの倍以上の警備が敷かれ、通行を規制し商人であろうとも易々と中へは入れない様になっていた。
教会派の貴族が多く、今回の騒動で顰蹙を買ってしまった者も大勢いるので、これは必要な措置なのだろう。
グロッグマン商会でも、店や商売自体に被害は無かったが、今後街の動きを見て必要な物資の放出も考えているそうだ。
ぐるり街中を歩いて、また城へ戻る道すがら、瓦礫を運んでいる車が倒れているのに気が付いた。
若い魔導師が集めた瓦礫を積むのに失敗したらしい。
「大丈夫か?」
いつものクセでデイビッドが声を掛け、瓦礫の片付けに手を貸そうとした次の瞬間、よろよろ立ち上がったローブの魔導師が、懐から素早く剣を抜いた。
「あ゙っ!!?」
「貴様が…貴様さえいなければ神は我等を見捨てなかったのに!!」
心臓を狙われたが、咄嗟に躱したため肩口にナイフが突き刺さり、ギリギリと肉を裂いていく。
刃を引き抜かれそうになり、相手の腕ごと押さえたが、腹を蹴られて倒れた身体にはナイフだけが残された。
「くたばれこの悪魔!!」
留めとばかりに魔力の剣を向けられたが、ベストに施された防御が効いてこちらは弾いてくれた。
「チッ…だが、まぁいいだろう。精々苦しんで死ぬがいい!!」
そう言い捨てて走り去る背中が、ぼやけて良く見えない。
(これは…毒か…)
ナイフには深い溝が掘られ、何かがこびり付いている。
傷が異様に痛み、手足が痺れ、喉からは血も込み上げて来た。
デイビッドは首をもたげ、掠れた視界に空を映した。
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